再生の結界師   作:画鋲的存在

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これまた安直なサブタイトル


第九話 戦闘 ココリリス

「こないのか? ではワシから行くぞ!」

 

 ココリリスは体に岩を纏わせ、予備動作など無しに突進した。

 

「っ! 速い!」

 

 ココリリスは岩を纏っていて耐久に特化している分、四神獣の中で一番動きが鈍い。

 

 しかしそれでも、この世界の平均的な水準から見ると、異次元と言える程の速度を出せる。ディルは、その見た目により、動きが鈍いと見立てていたため不意を突かれるが、突進が単調だったために難無く回避した。

 

「ほう、やはり避けられるか……」

 

「アルに比べればマシだ」

 

「あやつと比べられてもな……」

 

 そう対話しながらもココリリスは回避した際に必ず出来る隙に合わせ、直径ニメートル程の太さに岩を尖らせた。

 

 そしてそれをディルに向かって勢いよく伸ばし、それと同時に周りの岩からも同じような形の岩を作って突き刺そうとしていった。

 

 そしてそれ速さは先程の突進とは比べものにならなかった。

 

「ちぃっ! こう来るとは!」

 

 ディルはその攻撃を避けようとしたが間に合わず横腹に掠った。その威力はは絶大で、あらかじめ張ってあった防膜結界を貫通し、さらに横腹の三割がえぐられる程だ。

 

「ぐっ…… クソッ」

 

「この程度も避けられぬとはまだまだじゃな」

 

「なら、お前に行動させなければ大丈夫だな」

 

「ほっほっほっ、やってみい。出来るものならな」

 

 これにより、ココリリスの速さと的確に隙を突いて来る判断能力を目の当たりにしたディルは、このままでは一方的になぶられるだけだと察して攻勢に出ることにした。既にえぐられた横腹は再生し始めている。

 

 ディルは、ココリリスの身体全体を覆うようにナイフを投げる。そしてそのナイフに基本魔法の《衝撃波》を流し込み、その衝撃によってナイフを瞬間的に加速させた。

 

 強い磁石に引き寄せられているように、ナイフがココリリスを蜂の巣にせんとばかりに襲い掛かる。

 

「む? 何じゃこれは? 小雨みたいじゃな」

 

「たとえ小雨だろうが台風だろうが濡れることには変わり無いだろう?」

 

「ワシは濡れても風邪は引かんぞ」

 

 もちろん、蜂の巣に出来るはずもなく、せいぜい牽制くらいしか出来ない。だが、この攻撃は牽制の他にココリリスの弱点を探す役割もあるのだ。

 

 しかし、ココリリスはその攻撃を意にもとめず、同じような岩のトゲを、物量を倍増させながら反撃していった。

 

 そして無数のトゲがディルを襲っていく。

 

「っ!」

 

「これくらい無いとワシは傘を広げんよ」

 

 ディルは横腹の怪我により、思うように身体が動かず、集中攻撃を喰らってしまった。

 

 そしてその砂埃から影が現れることもなく、視界が広がるまでの数秒間は沈黙に包まれていた──

 

「おーい、くたばっとらんかー?」

 

「……」

 

「なんじゃー? 風邪引いて声でも出せなくなったのかー?」

 

 

 

 

 

 

「……俺は傘だけは良いのを持ってるからな」

 

 ──砂埃が晴れると、方膝は地面に着いているが、辛うじて姿勢を保っているディルがいた。

 

「ほほう、上手いこと耐えたの」

 

 そう、ディルは結界魔法により、鬼のような猛攻を耐え凌ぐことが出来たのだ。

 

 どのように耐えたか──それは、使える魔法をありったけ使った“ごり押し”であった。

 

 ただ、何も考えている訳ではなかった──

 

 ──まず、被弾覚悟で最初のトゲを《衝撃波》で破壊し、破片を作る。

 

 そのまま、以降のトゲに対して、破片と触れるような場所に《衝撃結界》を展開し、岩のトゲの威力を多少和らげつつ、同時に衝突時の衝撃を破片に伝わらせてはじき飛ばす。

 

 そして《反射結界》を辺りにバラバラに展開し、はじき飛ばした破片を更に四方八方へと反射し、飛び回らせる。その際、破片を“核”として《隔離結界》を発動し、破片をそれぞれ隔離することによってトゲの勢いを九割緩和する。

 

 最後に、他の結界を重ねていって、トゲの勢いを完全に殺し、防御しようとしていたのだ──

 

 だが、それでも、完璧に防げた訳では無かった。

 

 展開した結界は全て破壊され、本体のディルも服はボロボロになり、両腕と右足はえぐれていて、他の場所も切り傷だらけであった。

 

「満身創痍じゃな。降参か?」

 

「……降参はしない──」

 

 そう言い切ると同時に、ココリリスの目へ目掛けてナイフを投げ、地面に《衝撃波》を出すことによって砂埃を出した。

 

「目くらましじゃな…… じゃが、無駄じゃ」

 

 ナイフは目に当たっても弾かれ、砂埃の視界妨害も、魔力を探知してディルの居場所を探すことで意味を無くした。

 

「ふむ、ナイフが回り込んで来てるな。ま、これも無駄じゃ」

 

 同時に魔力を帯びたナイフが回り込んで来たが、ココリリスは脅威でないと判断し、特に気にすることは無かった。そして、視界が晴れてきたので魔力探知をやめた。

 

「って…… ありゃ? ディルの奴は?」

 

 視界が晴れると、そこにはディルの姿が無かった。あったのは、ココリリスがディルのシルエットだと勘違いしていた岩と、多量の魔力が込められているナイフであった。

 

「この魔力はディルの物だと思ってたが違かったのじゃ…… ということは……」

 

「そういうことだな」

 

 魔力探知を発動させると、後ろに反応があった。そして振り向くと、ディルの姿があった。つまり、ディルはココリリスの背中にいつのまにか乗っていたのだ。

 

「……まんまと一杯食わされたわい。ナイフに紛れ込んでいたのじゃな」

 

 そう、砂埃を立てた際に回り込んでいたナイフに、《隠密結界》を発動させて姿を隠していたディルが紛れ込んでいたのである。

 

 《隠密結界》は、目に見えなくなるが、魔力で探知される弱点がある。その弱点を逆に利用したのだ。

 

「そしてお前は飛んできたナイフを意にもとめないからな」

 

「そうじゃな…… じゃが、おぬしも脅威でないことに変わりはないじゃろうて」

 

 そう言い切っると同時に、ココリリスは身体に《衝撃結界》を纏わせ、高速で跳ねることによってディルをはじき飛ばした。

 

「ッ!」

 

「そちらの攻撃はワシには効かん。じゃから、これを避けきったらおぬしの勝ちにしてやってもよいぞ」

 

 はじき飛ばされたディルは、結界を足場にすることにより空中で体勢を立て直せた。だが、気配がして上を見ると、空から無数の隕石が落ちて来ているのが分かった。

 

「さーて、どう避けるのじゃ?」

 

「これは…… 本気でマズイ……」

 

 結界の足場を使って、高低差を利用して避けていたが、隕石の物量が多過ることにより次第に限界が見えてきた。

 

「どうしよ…… まずは地面に……」

 

「ほいっと」

 

「!?」

 

 一旦体勢を立て直そうと地面に降りたが、その瞬間に地面が大きく揺れた。

 

「なっ!? 聞いてない!」

 

「ワシはこれだけとは言っておらんぞ」

 

 そう、ココリリスはディルが地面に降りたと同時に大地震を起こしたのだ。ディルはこれを直に受け、体の感覚が狂わされ動けなくなった。そのため、大きな隙を晒すことになった。

 

 それにより、迫り来る隕石を避けることが出来なくなってしまった。

 

「………… 参りました……」

 

 ディルが降参するのと同時に、隕石が音もなく崩れ落ちた。

 

「さて、これで終わりじゃな」

 

「そこまで」

 

 アルフェールの合図と共に、ココリリスの試練(うらさはらし)が幕を閉じた。

 

 

_______________________________________________

 

 

 

「ここまで出来たのなら合格じゃな。受け取るがいい」

 

 いきなり手元に茶色の球が落ちてきて、ディルは慌ててそれを掴んだ。それを見ていたココリリスは、タイミングを見計らってその茶色の球の説明をした。

 

「東岩の証じゃ。これでいつでも話せるぞ。あと、土の力を込めているから自由に土や岩を加工出来るぞ」

 

「おおっ! ありがとうございます!」

 

 ディルは先程の激闘などとうに忘れ、敬語で感謝を述べた。

 

「もういいか。次に行くぞ」

 

 次を急かすようにしているアルフェールを横目に、ココリリスは次に目指すであろう場所にいる神獣について注意をしていた。

 

「おお、もう行くのか。次は南か…… 気をつけろ、ベンギルオンの奴はくせ者じゃぞ」

 

 あのココリリスがいうほどのくせ者とはどのような輩だろうかと思いながらも、ディルは次の知り合いが出来ることに期待を膨らませていた。

 

「分かりました。行ってきます」

 

 そうしてディル達は岩山を出発し、“南氷の神獣”ベンギルオンが住む氷山に向かった。

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