「寒っ」
ディル達は“南氷の神獣”ベンギルオンが住む氷山、ベルーにいた。そこは氷山なだけあり、ろくに寒さ対策をしていないディルはその寒さに震えるのであった。
「ん? なんだこれ?」
寒さをどうにか出来ないかと考えていたディルに、いつの間にか白い毛皮が覆いかぶさっていた。
「お困りのようだね、お嬢さん」
ディルの横から出てきたのはベンギルオンであった。ディルはその姿を見て、驚きと納得の表情を同時に見せた。
(ペンギンだ……)
ベンギルオンはぼけっとしているディルを見て盛大な勘違いをかました。
「ん? どうしたんだい? お嬢さん、まさかこの僕に惚れちゃったりして?」
「違うわっボケ!」
ディルはベンギルオンと初対面であることも忘れ、素を出してしまった。
「おう…… ひどいじゃないか…… 初対面なのに……」
「初対面の人に惚れちゃった? なんて聞く方がひどいわ!」
「おい、ベンギルオン、そしてディル、そこまでにしておけ」
アルフェールはベンギルオンとディルの言い合いが長くなりそうになったため、呼び止めた。
「はいはい、せっかくこの子をからかおうとしてたのに」
「むう……」
ディルはここでベンギルオンの手玉に取られてたことを知り、自己嫌悪に陥った。そして、ここでココリリスの忠告を思い出した。
(本当にくせ者だった……)
「で、僕のところに何の用? 様子を見れば先にフォルテシアちゃんとババアのところに寄ってたでしょ?」
「ああ、そうだ。最後にお前のところに挨拶させに来た」
「ディルだ…… です…… よろしく…… お願い…… します。あと毛皮ありがとうございます」
ディルは今更敬語を使うのは恥ずかしがったが、何とか言い切った。
「あれ~お嬢さん…… いや、ディルちゃんだったね、急に畏まったけど、なんで?」
「うぐっ」
ディルは痛いところを突かれ、声が出てしまった。
「別にいいだろ…… 礼儀ってもんだ……」
「礼儀ってあのババアが良く言ってたね。別に無くてもいいよそんなもん」
それがココリリスを指していることはディルも薄々気がついたが、気にしないことにした。
「そうか…… まあ、その方が俺としても気が楽だが」
「おっ気が合うね、一緒にお茶どう?」
ここでアルフェールはベンギルオンの言葉で疑問を持ったことを聞いた。
「いや、こんなところに茶があるのか?」
「ふふふ、僕を崇めてくれている国がお茶の名産地でね、よく貢ぎ物にお茶っぱが入っているんだ」
「なるほどな」
そしてベンギルオンが唐突にあることを提案した。
「そうだ、僕の住家に来ない? 寒さも凌げるし」
「そうだな、行こう」
その提案に対し、悪いことは何もない。それにこの寒さを凌げるとあっては即答するのも無理はないだろう。
「うん」
こうして一同はベンギルオンの住家に向かったのであった。
「遠くね?」
「まぁ、この山越えた先にあるからね」
すぐに着くと思っていたが、そうなって来るとしばらくは歩き続けることになる。そのことを知ったディルは寒さで身震いした。
「マジか」
そうこう移動している内に、一体の白い熊と鉢合わせた。
「おお、ちょうどいい、あいつの肉と毛皮は一級品だからね、狩ろうか」
「貰ったのはこいつの毛皮か」
「そうそう、よーし僕の力を見せちゃうぞ」
そんなやり取りをしているうちにベンギルオンに気付いた白い熊は逃げ出そうとしていた。流石に神獣とやり合うのは分が悪く、それに自分が狙われていることに本能的に察知したからであろう。
「逃がさないよ」
ベンギルオンは、一瞬でその白い熊を氷を纏わせ拘束した。そして、それに感心してぼうとしているディルに何かしらの魔法を掛けた。
「え? これは?」
「僕の本領は補助なんだ、さ、ディルちゃん、やっちゃえ」
「分かった」
ディルが白い熊に向かおうとすると体が軽くなったように感じた。そのまま走ろうとするといつもの数倍速く走れた。一瞬で詰めより、息の根を止めようとナイフで首を斬ろうとすると、白い熊の頭が飛んだ。
「あれ? あんまり力を込めてなかったのに…… すげぇなこれ」
「ふふふ、そうだろう? 少しは僕を見直してくれたかい?」
「ああ、さすがだ」
そうこうしているうちにベンギルオンは白い熊を解体した。そして持とうとしていたが、悪戯を思いついたような笑顔で、それをアルフェールに頼むことにした。
「ということで暇そうなアルフェール君、これお願い」
「は? なんで我が?」
「ディルちゃんも言ってあげて」
「アルは何もしてないだろ」
さすがにディルに正論を言われると拒否する訳にもいかないので、アルフェールは渋々解体した白い熊を持つことにした。
「ここを抜けるともう僕の住家だよ」
そこは骨と毛皮だけで出来た割にはオシャレな家が建っていた。
「ささ、入っちゃって」
「お邪魔しまーす」
ディル達は早々にベンギルオンの住家に入って行った。
展開はやい?
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疾風の如くはやい
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別に
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ダレない程度におそく
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もっとかっ飛ばせ!