再生の結界師   作:画鋲的存在

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第十三話 日常

「おい、起きろ」

 

「うう…… 眠い……」

 

 朝六時にアルフェールに叩き起こされたディルは、目を擦りながらも立ち上がった。これがいつもの朝の様子だ。そしてディルは着替え、朝食を作っている。今日のメニューは定番の山菜のスープだ。

 

「あ~見に染みる……」

 

「ほら、そんなこと言ってないでさっさと外に出ろ」

 

「へーい」

 

 朝一からアルフェールの訓練が始まる。主に実践の訓練だ。かれこれ百年以上続けているため、アルフェールの手加減している攻撃を九割方受け流せるようになった。

 

 そして五時間程経つと、今度は狩りの時間だ。

 

「ぜえ…… はぁ……」

 

「お前は本当に体力無いな」

 

 普通の人間は五時間も死ぬ気で動きつづけれない。人間であるディルもそのことは知っていたため、無理を言うアルフェールに対しつい皮肉が出てしまった。

 

「仕方ないだろ、アルみたいな化け物じゃないからな」

 

「誰が化け物だ。早く魔力出し切って狩りに行け」

 

「分かった分かった」

 

 ディルはこれまた百年以上続けているため、魔力切れによる疲労をなんとも思わなくなっている。そして百キロはある重りを担ぎ、狩りにいった。

 

 魔力切れを繰り返すことにより魔力量が増えるので、ディルは神獣には劣るもののほぼ無尽蔵の魔力を持っている。最近この事実に気がついたディルは、アルフェールを改めて尊敬した。

 

「今日は何にしようかな~♪」

 

 狩りといってもこの山ではディルは敵無し(アルフェール以外)なため、鼻歌交じりに獲物を探している。

 

「……蛇発見」

 

 正確には見ていなく、気配で感じとっただけである。

 

(蛇はでかいし美味いから逃さないようにしよう)

 

 ディルは気配を消して、巨大な蛇に近寄ると、ナイフを頭に投げ一発で仕留めた。

 

(よしよし…… 血抜きをして…… 後は木の実と山菜をいくつか取って返ろう)

 

 アルフェールも狩りをするので、ディルは自分の分だけで十分である。

 

 帰りながら、道にある木の実と山菜を取ったあと、疲労のためディルはしばらく家でごろごろしていた。そして昼になり、食事をとったあとは魔法の訓練である。

 

 ディルは先日、ベンギルオンに言われた固有魔法を考えていた。

 

(どうせなら凄い魔法にするか…… 時間もたくさんあるし)

 

「う~ん……」

 

(何も思いつかない…… 考えるだけにしておこう)

 

 ディルは固有魔法の件は置いておいて、結界魔法の研究を始めた。ここ最近の研究成果は、防膜魔法と隠蔽結界の重ねがけをしたり、投げナイフに衝撃結界を付与したことだ。

 

 今日の研究は防膜結界と衝撃結界を組み合わせる研究だ。しかし、防膜結界が薄すぎたため、衝撃が自分にも来るという結果に終わった。

 

 その研究を切り上げ、次はココリリスが持ってきた本を夜まで読みあさっている。ディルが今日読んでいる本は魔物についての本である。魔物の生まれ方についてはこうだった。

 

 魔物とは、溜め込み過ぎることにより生き物の体の魔力量の許容量を超える、つまり限界突破(キャパオーバー)を起こして突然変異をおこし、凶暴化した生物のことを指している。

 

 突然変異といっても様々で、単純に巨大化する、爪や牙などが肥大化する、毒などを持つなど、元が同じ生物でも変異の違いによって全く別の魔物へ変わっていくのだ。

 

 ディルが遭遇した狼や狩られた蛇は、許容量を超えた魔力を留めるため、単純に肉体を巨大化しただけの生物であり、そのため知性があった。だが、余りに魔力を溜め込み過ぎて、限界突破(キャパオーバー)となった魔物は強力で、それでいて知性を失い暴走する。

 

 しかし、かなり強力な龍や神獣ともなると、魔力に呑まれておらず、知性がある。つまり生物としての格が違うということだ。

 

 生物には、当然人間も入っており、その人間限界突破(キャパオーバー)すると、肉や皮、内臓がただれ落ち、腐っていくことになる。この姿はいわゆるゾンビであり、そのまま全て肉体がただれ落ちると骨だけの状態、スケルトンとなる。

 

 このことを想像し、気分が悪くなったディルは、さっさと夕飯の仕度に取り掛かる。今日のメニューは昼に捕らえた蛇の丸焼きである。蛇にあった毒は、事前にディルが抽出し、保管してある。何かに使おうとしているらしい。

 

「いただきまーす」

 

 食事の前にその挨拶をしないと落ち着かないのは、元日本人としての性質であろう。ただ、この行為に対してアルフェールは何の疑問も抱いていなかった為、そのような文化はこの世界にもあるのだろう。

 

「んぐんぐ…… やっぱこの蛇ウメェ! 久しぶりのご馳走だ!」

 

 三メートルもある巨大な蛇を、少しづつ焼きながら食べて行く様は、とても絵になっていた。

 

「ディル…… この量全部食べるつもりか?」

 

 食べる速度がいつまでたっても変わらない様子を見て、このままでは全部食べきってしまうのではないかという疑問をせざるには至らなかった。

 

「いやいやいや、ちゃんと燻製にして保存食にするぞ」

 

「燻製とはなんだ?」

 

 例え神獣でも、人間くらいしか使わない知識は知らないようだ。

 

 その質問、待ってましたとばかりに、ディルは簡潔に燻製の方法を教えると、アルフェールは感心したように口を開いた。

 

「ほう…… 人間は面白い調理法を編み出すんだな……」

 

「偉大なる先人様の知恵だ」

 

 まるで自分のことかのように、胸を張り上げて手を腰に付けていた。

 

「なぜ貴様が威張る」

 

 そんな茶番がありながらもディナータイムが終わったディルは、ナイフを作りはじめた。いつも夕飯の後には、暇つぶしと今後の生活の為に工作か裁縫をしているようだ。今日は工作の日だ。

 

 投げナイフという武器の性質上、いくら数があっても足りないので、毎回何十本も作っている。そのため、ディルの自室はいつもナイフで埋め尽くされており、傍から見れば猟奇的殺人鬼の部屋に見える。

 

 「フッフッフッ……」

 

 怪しく笑っているディルは先ほど保管した蛇の毒を取り出した。今日作ったナイフに、蛇の毒を塗るつもりである。

 

 実はこの山に住んでいる蛇の毒は、一滴で人を数十人も殺せる威力を持っており、それをナイフに塗りたくるという、とんでもない兵器が出来上がってしまったのだが、ディルはそのことについて知る由もない。

 

 一通りの作業が終わり体を水で流して寝ようとしたところ、何かがディルの横で赤く光った。それは北焔の証であり、つまりフォルテシアから何か話があるということだ。

 

(何か用か?)

 

 神獣から連絡が入るなど、それはそれは大層なことだろうと、ディルは慌てて証を手に取り、返事をした。

 

(今からそっちにいってもいい?)

 

(え!? いきなりどうして?)

 

 余りに突発的で、それでいて理由が分からない提案にディルは困惑した。

 

(ちょっと周りがやかましくてね……)

 

 フォルテシアが言うには、山の魔物が戦闘体制であり、その雰囲気の中では寝付きにくいというものだった。

 その原因は、人と近い姿をした魔物や魔物と血が混ざった人であり、人間からは魔族(デミ・ヒューマン)と呼ばれる者達が戦争により弱った国、フレイドを占領したからだ。

 そのような出来事があり、騒がしくなってしまったので山の魔物が警戒しているのだ。

 

(俺は別にいいけど…… アルに確認しないと)

 

(そう、ならもう行くね)

 

 フォルテシアはディルさえよければそれでいいと考えていて、山の主であるアルフェールに対しては特に気にしていないようだ。

 

(は? いや待て、まだ何も…… っておい、聞いてるのか?)

 

 アルフェールに無断でフォルテシアを誘ったなんて思われるのではないか。そしてこてんこてんに怒られるのではないか。という未来を想像してしまい、ディルは焦っていた。

 

「……」

 

「反応がない…… まじか……」

 

 困ったことになってしまったが、ひとまずアルフェールに確認しようとディルは急いだ。

 

 

 

 

 

「で、フォルテシアの奴が今こっちに向かってきてると」

 

 アルフェールは呆れたようにため息をついている。

 

「ああ」

 

「はぁ…… どうしてい「おじゃましまーす!」

 

 大きい声でアルフェールの言葉を遮った声の主はフォルテシアだった。

 

「……帰れ」

 

「ひどい!」

 

 アルフェールにとっては迷惑でしかないため、フォルテシアを冷たくあしらった。

 

「まあまあ、せっかく来てくれたんだしさ」

 

 来てしまったものはしょうがない。そう楽観的なことを言うディルに対し、アルフェールは吐き捨てるように突き放した。

 

「なら二人でさっさと寝ろ」

 

「了解♪ ディルちゃんは貰うわね♪」

 

「自由にしろ」

 

 フォルテシアは寝不足だったせいかディルを抱いたまますぐに寝てしまっていた。当のディルはというと、抱かれたままでは寝付きにくかった。

 

 (寝れない……)

 

 ディルの苦悩は一晩中続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

展開はやい?

  • 疾風の如くはやい
  • 別に
  • ダレない程度におそく
  • もっとかっ飛ばせ!
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