再生の結界師   作:画鋲的存在

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第十四話 亜神獣

「さて、もうそろそろあいつらに挨拶しに行かないとな」

 

 ディルはアルフェールが唐突に切り出した言葉に対し、疑問を抱いた。

 

「あいつら?」

 

「この前会うのを延期した神獣達だ。亜神獣といって我達四神獣とは役割が違う」

 

 亜神獣とは、大陸グロードの天地にそれぞれ佇んでいる神獣である。天空は天雷の神獣エレパルズが、地底は地水の神獣ルエンテが支配しており、生態系のバランスを調整している。

 

 そのことを教えられたディルはその違いに対し、分ける必要が無くないかと考えたが、今変えてもややこしくなるだけなので特に口にはしなかった。

 

「まずは…… ルエンテの方が近いか」

 

「ということは?」

 

「地下だ」

 

「へえ」

 

 この世には重力という物がある関係上、上に昇るより下に落ちた方が幾分も楽で速い。それに、天空は地面がないので、飛べないディルには何かと不便だからだ。

 

「どうやって地下に行くんだ?」

 

「グロードとヴォイドのあいだの海から行く」

 

 アルフェールが言うには、大陸グロードと大陸ヴォイド間の海の底、グロード側にある洞窟にルエンテは住んでいるのだ。

 

 行き先が決まった以上、特に話をする必要もないので、すぐさま出発することにした。ディルも、アルフェールに乗るのを楽しみにしていたので待ち遠しかったのだろう、両手を挙げて喜んでいた。

 

「じゃあ行くぞ」

 

「やった! またアルの背中に乗れる!」

 

 この時、ディルはあることに気づけなかった。洞窟は地下深くにあり、水中ではアルフェールの速度が出にくいため、()()()()()()()()()()()()()

 

 

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「さ、着いたぞ」

 

「ぶぇ…… ごほっげほっ…… がっぼ……」

 

「この先にルエンテが居る」

 

「ぐぉ…… おえ…… ぐふぅ……」

 

「さっきからどうしたんだ?」

 

「聞いてないぞ…… こんな時間がかかるなんて……」

 

 意気揚々と出発したディルだが、水中など精々30分程しかいないだろうと高をくくっていた。しかし現実は非常である。数十年もの特訓で肺活量が増えたといっても人間には限界があるのだ。

 

 事実、三時間という時間は、ディルもギリギリ……いや、少しだけ限界を超えてしまう時間であった。もう少し長ければ溺死していたであろう。流石の再生能力も窒息には無力である。

 

「そうか…… 息を止める訓練もしないといけないな」

 

(強制的に限界まで水中に沈めるということを繰り返せば……)

 

「!?」ゾワッ

 

 ディルは何かを感じ取り、強烈な寒気に襲われた。日課である訓練メニューが地獄と化するのはまだ知らない。

 

 息と気を取り直したディル達は、洞窟を進んで行くことにした。道中には何もなく、ただ自然でできたトンネルを歩いている感覚になっていた。

 いつでもたっても景色が変わらないので、この道は無限にあるのかと勘違いするほどだ。

 

 だが変化が訪れるのは突然である。ピリピリと弱い静電気が空間に充満し始めたのだ。そしてそれは、先に進むほど強くなってくる。

 ディルは、これはただ事ではないと身構えていたが、アルフェールの何かを察している顔を見て、特に気にしないことにした。

 

 そして、静電気により髪が逆立って来た頃、奥から何やら話し声が聞こえてきた。

 

「なんでここに来たんだお前は!」

 

「いや、アルフェール達は先にここに来そうだったからな。どうせ会うなら二人同時が良いだろう。その方が効率がいい」

 

「は? いやいやどうしてこんな所にまで効率の話をするんだ? 単純にお前が気に食わないだけだ! 分かったらさっさと戻れ!」

 

「さて、迎えようとするか」

 

「無視すんじゃねーよ!」

 

 その話し声の正体とは、この洞窟にいる、目的であった地水の神獣ルエンテと、本来ここにはいないはずの天雷の神獣エレパルズであった。

 

 エレパルズがここにいる理由、それは、アルフェールの行動を読み、自身が居る環境を考えれば、ルエンテの居る洞窟で二人同時に会う方が効率がいいからだ。

 

 ただ、ディルとしては、エレパルズがここに居る理由などどうでも良く、二人の不仲の理由が気になっていた。

 深い理由があるかも知れないし、ココリリスとベンギルオンみたいなどうでもいい理由かも知れない。ただ、ディルの神獣に対する印象がぶれているのは確かだ。

 

「やはりエレパルズも来てたな」

 

「なんかピリピリしていると思ったらそういうことか」

 

 洞窟に充満していた静電気は、天雷の神獣、つまりは雷のエキスパートであるエレパルズが出していたのだ。この静電気により、エレパルズはディル達を感知していた。

 

「お前がディル…… でいいのか?」

 

「ああ、そうだが」

 

 ディルは自分の名前が知られていることに一瞬驚いたが、よくよく考えればエレパルズが自分達が訪れることを知っていたことに気付き、気にしないことにした。

 

「む? 確かお前は初対面の相手には敬語を使うと言っていたはずではないか?」

 

「ありゃ? そうなのか?」

 

「あっスマン、なんか話しやすかったからつい……」

 

「そうかい、それならよかった」

 

 この気楽な性格に親近感を覚え、思わずタメ口で話してしまうのはのは必然であろう。

 

 そして初対面の神獣らは簡単な自己紹介を始めた。

 

「じゃ、自己紹介するぞ。まずはボクから」

 

「ボクは地水の神獣ルエンテ。分かってると思うけど地底をおさめている」

 

「で、隣にいる効率厨の正義バカが天雷の神獣エレパルズ」

 

「今紹介を預かったエレパルズだ、よろしく。私は本来ここにはいなく、天空をおさめている」

 

「こちらこそよろしく」

 

 ディルはルエンテ達に見覚えがある気がした。それもそのはず、ルエンテはカラスを青くしたような姿をしていて、エレパルズはトンビを黄金色にしたような姿をしていたからだ。

 

「ところで君の正義についての見解を聞かせてくれるか?」

 

「え?」

 

 エレパルズからの唐突な質問に、ディルは困惑を隠せれなかった。前後の文脈から考えても唐突過ぎるため、しばらくの間は思考を止めざるにはいられなかった。

 

「エレパルズはいつもそればっかりだな……」

 

「全くだ」

 

 どうやらこれは日常茶飯事らしい。効率を求めるあまり、こうなってしまうのが彼の悪い癖だ。

 

 ディルはディルでエレパルズからの質問に答えようとしたが、質問が抽象的なので答えが出しにくく、とてつもなく悩んだ。だが結局どうしようもなかったので、思ったことを言ってみることにした。

 

「正義ってその人だけにあるものじゃないか?それぞれその人の信念に基づいて行動するのが正義だと思うんだが」

 

「……」

 

「神獣は人ではないぞ」

 

「……知ってる」

 

 やけくそで出した意見なので何かしら言われるかと思いきや、しばらくの間沈黙するという気まずい状態になっていた。この気まずい空気の中では、アルフェールの水差しが癒しと思える程だ。

 

 すると、考えを纏めたエレパルズがこの沈黙を破った。

 

「気に入った。貴方の考えを尊重して私も自分の信念に基づいて行動してみよう。私はこれまで、正義を求める者に手を差しのべることが正義だと考えていたが…… 参考にさせてもらう」

 

「けっ、ボクはそういった正義何ちゃらは嫌いなんだよ。……ただディルの考えは嫌いではないぞ」

 

「え? え?」

 

 思いつきで言った事が案外高評価だったので、ディルは困惑し、謎の罪悪感を感じた。ここまで都合がよい状況に、ある既視感を感じた。

 

 それは、幼児の機嫌を損ねないために、大人がおだてている状況であった。そして、この場合だと、その幼児は自分であり、神獣という大人からおだてられていることだとに気がつき、落ち込んだ。

 

「……」

 

「何を考えているかは知らんが、少なくともお前が想像していることは違うと思うぞ」

 

 どうやらディルは相当渋い顔をしていたようだ。

 

 そんなことをしてると、エレパルズが帰らないといけないことを伝えた。

 

「どれどれ、もうそろそろ戻らないとな」

 

 やはり持ち場を長い間離れるのはまずいのか、それとも用事を済ませたためすぐさま帰るのか、どちらにせよあっさりとした別れなので、ディルは少し寂そうにした。

 

「そうか」

 

「ではな」

 

 エレパルズが飛び立つと同時に、手元に黄色の塊が現れた。神獣恒例の証だ。亜神獣の場合、四神獣と違って正三角錐の形をしていた。

 

 これが与えられたということは、認められたこととなる。

 

「じゃあボクからも」

 

 エレパルズのものと同じ形の水色の証がディルの手元に出てきた。これもまた、認められた証拠である。

 

「ありがとな」

 

「なーに、今後の付き合いの為さ」

 

 ルエンテにとって、ディルは気が合う存在らしい。双方とも嬉しそうに笑いあっていた。

 

「おい、もういいか?」

 

「ああ」

 

 だが、その時間は過ぎた。顔合わせという当初の目的は達成したため、ディル達も帰ることにした。

 

「じゃあな」

 

「また来いよ~」

 

 

 

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 一方、一足先に帰っているエレパルズが海中を進んでいると、一際巨大な魚が目の前に現れ、エレパルズに襲い掛かった。

 

 強くなったため調子に乗ったのだろう。相手がどんな存在であるかも知らずに襲い掛かるのは、結局は、何も考えれない魚でしかないということだ。

 

「殺傷はしたくないからな…… すまない、少し眠ってくれ」

 

 ただ、幸いか幸運か、襲い掛かった対象が、できるならば非殺傷をモットーとするエレパルズだったため、巨大魚の生命は保証された。

 

 エレパルズは巨大魚が死なない程度に()()を放った。

 

 

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 ディル達は地上に出るために水の中を進んでいた。

 

(息…… もつかな……)

 

 これはただの希望的観測でしかない。行く道も帰る道も等しいのだ。なので同じくらいつらい目に遭うことは決定されている。

 

 ただ、それよりもひどい目に遭うとは予想していなかった。

 

「む、何か不穏な気配がする」

 

「んがぶふ?(え? 何?)」

 

 その時、ディル達に謎の電撃が襲ってきた。

 

「あばばばばばばば!」

 

「ちぃっ、エレパルズのバカが」

 

 エレパルズの電撃がディル達のところにもやってきたのだ。海の中なので通電するのは当たり前である。幸い、殺さないようにショックを与える程度の電撃だったので海の生物が全滅することは無かった。

 

(くそっ…… 何やってんだあいつ…… 文句言い付けてやりたい)

 

 そう思うのは無理もない。実際、この電撃でディルの息が更に持たなくなり、溺死必至の状態にまでなってしまったのだ。

 

 それに気付き、軽く絶望しながら進んでいくと、どこからか喚き声が聞こえてきた。

 

「ああああああああ…… 罪の無い生き物達の命まで奪ってしまった……」

 

「あああああああああ……」

 

(なんなんだあいつは……)

 

 声の主はエレパルズだった。これにはディルも呆れるしかなかった。しかし、この状態のエレパルズに対しては、呆れている暇もない、ある事が起こるのだ。

 

 ここで、それを知っているアルフェールは状況を理解し、ディルに伝えた。

 

「あいつは感情的になると無差別に電撃をだしてしまうんだ」

 

「んぐ?(は? ということは?)」

 

「……覚悟しろ」

 

 もはやどうすることも出来ない。ディルにとっては死刑宣告だ。

 

「ああああああああああああああああああくそぉ!!!!!!!!!!!!」

 

 海中に、全ての生物を殺しかねない強烈な電撃が走っていった。

 

 

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「すまない…… つい感情的に……」

 

 エレパルズは黒焦げのアルフェールとぴくりとも動かないディルに向かって謝罪した。

 海の生物を大量に死なせた事については、起きてしまったことは仕方がないと割り切っている。これが神獣と呼ばれる生物だ。

 

「我は平気だが……」

 

「ディルのやつはどうする?」

 

「」

 

 強烈な電撃による感電と、肺に入った大量の水により、不遇な人は気絶していた。ここまでされても死なないのは、日頃のスパルタ訓練の賜物であろう。

 

「電気ショックで起こすか」

 

「そうしよう。──あ、やり過ぎた……」

 

 一度暴走した魔法をコントロールするにはしばらく間を開けないといけない。だが、エレパルズはそれを省みなかった。神獣であるの自信によるものだろうか。

 結局失敗し、ディルに追撃をすることとなってしまった。

 

「ふがががががが」バチバチバチバチ

 

「災難だな……」

 

 ディルはこの一件で海に深いトラウマを負ってしまった。

 

 

 

展開はやい?

  • 疾風の如くはやい
  • 別に
  • ダレない程度におそく
  • もっとかっ飛ばせ!
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