再生の結界師   作:画鋲的存在

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第十五話 人里 1

「いらっしゃいませ、今日は何をお売りに?」

 

「いつものだ」

 

 そう言って慣れた手つきで出している物は、アルフェール山で採取や狩りをした物の余りである。

 

「はい、ポイズンスネークの牙4つとヒール草10枚、ウインドウルフの毛皮1枚ですね。一万九千ディエラになります」

 

「いつも世話になるな」

 

「こちらこそ、貴女のおかげで経済が良く回っているので感謝です。ね? 隔廻の魔女さん?」

 

「その呼び方恥ずかしいからやめてくれっていつも言っているだろ……」

 

「でも10年前から一切背丈が変わらない人を魔女と呼ばずして何になるのでしょうか」

 

「う…… それは……」

 

 ディエラとは西方の国、ウィンディエラの通貨である。ディルは先程の会話のとおり10年前からその国の取引所に通い、余った素材を売っていた。

 最初こそ奇怪な目で見られていたが、1年もすると次第に人々の目が慣れ、さらに街に降りてきた魔物を撃退したりしていたので信頼を得る事ができ、“隔廻の魔女”という敬称で呼ばれるようになっていた。

 隔廻という命名の理由は、よく『隔離結界』を使っていたからだ。

 

「ならその服装やめてくださいよ。怪し過ぎます」

 

 この取引所の受付嬢は、ディルと新人時代からの付き合いなので、友人のように接していた。ただ、ディルの名前も全体像もわからないままだが。

 

「名前さえ教えてくれればそう呼びますのに」

 

「あまり個人情報は出したくない」

 

 ディルはもしもの時があったらいけないと、たとえ10年の付き合いだろうと名前や姿を出さないようにしている。

 

(なんか恥ずかしいから出来ない……)

 

 否、ただの人見知りであるからだ。前世から人との付き合いは皆無に等しいのでそうなってしまうのも仕方のないことだろう。

 

 いつもの会話を済ませ、取引所を出ようとすると、大きな破裂音と共に取引所の大部分が吹き飛んだ。

 

「きゃっ!」

 

「なんだ!?」

 

「オラァ!! ここにある素材全てよこせ!」

 

 案の定強盗である。しかし強盗にしては些か派手すぎないかとディルが思う間もなく、受付嬢のうめき声が聞こえてきたため、そちらの方へ思考を移した。

 

(強盗も気になるが…… これだけ派手にやってくくればすぐに人も来るだろう。問題は受付の人のほうだ)

 

「大丈夫か?」

 

「うぅ……」

 

 受付嬢の太ももに、先程飛び散った木の破片が刺さり混んでいた。ディルが慌てて手当をしようとすると、強盗がこちらに気づいた。

 

「おい、そこの奴ら! 殺されたくなければ動くな!」

 

「お前らは黙ってろ!」

 

「え? ヒッ!」

 

 ディルは反射的に殺気を飛ばしてしまい、強盗は蛇に睨まれた蛙のように動けなくなった。

 

「……スマン、痛いと思うが我慢してくれ」

 

 動けなくなった強盗を尻目に、ディルは木の破片を引っこ抜いた。そのあと、傷口に着ていたローブでヒール草をくくりつけた。

 

「応急処置はこれでいいと思うが……」

 

「いてて…… あっありがとうございま……!!!」

 

 この時、手当にローブを使っていたのでディルの姿を隠しているものが無かった。つまり、受付嬢に全て見られてしまったということだ。

 

「え…… 天使……?」

 

 受付嬢はディルの容姿を見て、絶句し、まるで自分が昇天したかのように思えるというあられもない勘違いをした。

 

「かわいーっ! 抱き着いちゃいたいーっ! ぷにぷにさせてーっ!」

 

 そう言いながらディルに抱き着いていくあたり、自制心は昇天していたようだ。

 

「や、やめろ! 離せ! 強盗がそこにいるだろっ」

 

「は! そうでした!」

 

 この流れですっかり二人の危機感も昇天してしまい、強盗への注意が疎かになってしまっていたが、既に騒ぎを聞き付けた大人達によって強盗達は拘束されていた。

 

「何はともあれ…… 一件落着だ」

 

「そうですね。それにしてもそんなに可愛いのに隠しちゃうのは勿体ないですよ」

 

「その可愛いってのがダメなんだ」

 

 多少の違和感が出たが、事件としては解決し、安全も保証されたので、二人は他愛のない会話を始めていた。すると、大人達の中にいた一人の男性がディル達を見るなり駆け寄って来た。 

 

「エレメ!! 大丈夫か!?」

 

 駆け寄って来た男性は、受付嬢を緊迫した様子で呼んでいたため、受付嬢の彼氏みたいなものだろうとディルは察することができた。更に、ここで受付嬢の名も知ることができた。

 

「イルさん!?」

 

「よかった…… 無事そうだな…… ってその怪我は?」

 

「この娘がすぐに処置してくれたから大丈夫よ」

 

「そうか…… 君が…… 感謝する。エレメを手当てしてくれてありがとう」

 

「ああ」

 

 ディルは魔女からこの娘呼ばわりと変わっていることには突っ込まずに、駆け寄った男性──イルの感謝の言葉を受け取った。

 

「それにしても君みたいな小さい娘がねぇ」

 

 イルは思ったことをすぐに口にしてしまう性格だ。しかし、ディルはそうなることを予測していて、隔廻の魔女と自分から言うのも杞憂だったのでそのまま事実を受けとろうとした。

 

「ところがどっこいこの娘、隔廻の魔女さんだってね」

 

「ええ!? 本当?」

 

「……そうだ」

 

 受付嬢──エレメが簡単に暴露した。その事実についてイルは半疑であったため、ディルはしぶしぶ肯定することになった。

 

「そうだ! 魔女さん、名前を聞かせてもらっても? 先にこっちから自己紹介すると、私はエレメ・レーメル、こっちのは夫のイル・レーメルだよ」

 

 エレメとイルはもう結婚をしていたと言うことにディルは驚くがそれは置いておき、まず名乗られたら名乗り返すのが礼儀だと考えているので、ここで始めて他人に名を明かすことになった。

 

「──ディルという。姓は無い」

 

「……理由を聞かせてもらっても?」

 

「物心着いたときから山の中にいた。両親とはあったことは無い」

 

 ディルは転生のことは言えないため、本当では無いがこっちの世界からしては間違ってはいないという微妙なラインの嘘をついた。

 

「……すまない。ちょっとデリカシーが足りなかった」

 

「いや別に気にし「ディルちゃん! 家に来ない?」

 

 エレメは突拍子もないことを提案した。その理由は、礼がしたいのと、怪我の手当てに使われたロープを洗って返したいからだ。

 ディルとしては少し困ったが、別に一日程度開けてもアルフェールは心配しないだろうとその提案に乗ることにした。

 嘘で気まずい空気になってしまっている雰囲気を打ち壊してくれた感謝ついででもある。

 

「じゃあ案内するね~♪」

 

「仕事はいいのか?」

 

「だってこの様子だとしたくても出来ないでしょ?」

 

 もうすっかり口調が砕けてきたになったエレメがそういいながら後ろを見たので、ディルも釣られて後ろを見ると、そこにはとても営業出来なさそうな取引所の残骸が目に入った。

 

「……」

 

「~♪」

 

 エレメが楽しそうにスキップをしていると、そこに一人の男性が尋ねてきた。

 

「すいません、少し事情を聞かせてもらってもよろしいですか?」

 

「うっ」

 

 エレメ達は、すっかり懸念し忘れていた役人による事情徴収により、早くは帰れないことを察した。一同──特にエレメは、事情徴収をかなりめんどくさがっていた。

 

(さっきの違和感…… どうにも気になるんだよな)

 

 役人の矛先がエレメを向いてる隙に、ディルは取引所の様子を見ようとちょうど強盗が足を踏み入れた場所に行くと、何かの魔法式が書かれた札が落ちていた。

 

(何だこれ…… 帰ったらアルに聞いてみよう)

 

「ちょっとディルちゃん! 逃げるのは許さないよ!」

 

 ディルは反射的に後ろを見ると、事情徴収の途中にディルがどこかに行って回避したのを見て、機嫌を悪くしたエレメが向かって来ているところだった。事情徴収は早く終わったようだ。

 

「すまん、少し気になったからな」

 

「もうっ可愛いから許す!」

 

 ディルもエレメ達を身代わりにした負い目は多少だが感じていて、それが少し顔に出ていたらしい。だが、それはエレメにとって愛らしい以外何物でも無かったようだ。

 

「おーいまずは療養所行ってからだぞ~」

 

 すっかり元気そうにしていたため忘れていたが、エレメは怪我人だったのだ。ディルのやったことも応急処置程度なので、早く専門家に見てもらわないといけないとイルは釘を指した。

 

 ディルは今日は騒がしくなりそうだと思いながらもこの世界に来てから、いや、前の世界でも一度も無かった人の家にお邪魔するというイベントに心踊らせていた。

 

 後にディルが聞いた話だが、あの怪我で動けていたのはエレメ曰く可愛いパワーらしい。

 

 

 

 

 

展開はやい?

  • 疾風の如くはやい
  • 別に
  • ダレない程度におそく
  • もっとかっ飛ばせ!
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