再生の結界師   作:画鋲的存在

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第二十話 忌みある存在 1

 

 ルーフエ山────

 風の象徴と呼ばれる神獣が治めていることにちなみ、その神聖なる名を元に名付けられた山に関する、ある習慣があった。

 それは魔に取り付かれたとされ、普通の人間より突出した力をもつ禁忌だとされる者、人呼んで“忌み子”を神獣に処理してもらうために、生け贄として捧げるものだ。

 

 

 

 いつものようにまた一人、罪の無い幼子が連れて来られた。

 

 

 

 

 

 

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「やった! 女の子です!」

 

 その叫び声に近い歓喜の言葉よりもさらに大きな産声が部屋を埋め尽くした。それにより、部屋の中に充満された不安げな空気が全て吹き飛ばされた。

 

「うおおおおおおッッしゃあッ!!!!! やったな!!!」

 

「はい…… よかった…… 本当によかった……」

 

 その声に負けず劣らずの叫び声をあげている、この瞬間父となったと思われる男性と母となったと思われる女性が手を取り合って喜んでいる。

 

「よ゛がっだ…… ほん゛どう゛に゛よ゛がっだ…… あ゛り゛がどう゛」

 

「あなた…………………… すごいみっともない」

 

 新生児よりも大量の涙を流す父に呆れたような言葉を送る母だが、その顔は言葉と裏腹に優しい笑顔を浮かべていた。

 

「お二方!! この子の名前は決めてらっしゃいますか?」

 

 助産婦と思われる女性が、少し興奮した様子で二人に訪ねた。

 

「もちろん! 女の子だから…… 名前は────だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あー、そー、ぼー!!」

 

「うん!」

 

 あたしはおもいっきり返事をした。だって遊ぶのは楽しみだからね。それに友だちのサリーちゃんがさそってくれたんだから行かないと!

 

 そして急いでお家をでたらとてもびっくりした。それはいっしょに遊ぶのはサリーちゃんだけだと思っていたら、それ以外の友だちがみんな集まってたんだもん。けど、みんなとたくさん遊べるのは楽しみだからおどろいたことなんてふっとんじゃった。

 

 すると、たぶんみんなを集めたサリーちゃんが全員に聞こえるような大きさの声で尋ねた。

 

「なにするー?」

 

 みんなを集めたはいいものの、何をするか決めてなかったみたい。それを聞いて、あたしは反射的に、それならいいのがあるよ! と言いながら、手をいっぱいに挙げた。そしてそのまま思いっきり一つの提案をした。

 

「かけっこ!」

 

 これならみんな同じように遊べるし、たくさんいても余る人はいないんじゃない? それにあたし、かけっこ大好きなんだもん。と、意気揚々としていたけど、男子たちはなぜだか不満そうにしている。

 

「オレは嫌だ!」

 

 一人の男子が、そう声を荒げた。なんで? 楽しいのに。それにこの子、走るのが苦手という訳でもなくて、逆に男子の中で一番速いのに。嫌になる要素が無いじゃない。あたしには勝てないけどね!そういうことだから、ちょっと腑に落ちないかな、何故だか聞いてみよう。

 

「え? どうして?」

 

「だっていっつもお前が一番なんだもん」

 

 あたしがいっつも一番になるのが気に食わないみたい。でも、みんなが遅すぎるのがいけないんじゃない? 適当にやってても勝てちゃうんだもん。

 まあ、これを言ったら怒られそうだから言わないでおくけど。仕方ないよね、あたしはおとななんだから別の遊びにしてあげるわよ。

 

「じゃあ別のにしよっか」

 

「うん」

 

 どうやら納得してくれたみたい。じゃあ別の遊びは…… 鬼ごっことか。え? ダメ? ……なら魔法使いごっこは?

あっ、これならいいんだ。じゃあやろう!

 

 

 

 

 

 

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「やーいっ、化け物ゴリラーッ、あっちいけっ!」

 

 今日もいつものような罵倒が飛び交う。標的はもちろんあたしだ。別にあたしは化け物でもないし、ゴリラでもない。はっきり言ってそう言われる筋合いなんかないのに。

 

「やめてよ、そんなこと言わないで」

 

 あたしは言われっぱなしは嫌だし、みんなに変わってもらえる希望も含めて言い返している。

 

「へんッ、化け物がなんか言ってるぜ。逃げるぞ」

 

 ……まあ、はなから期待はしていなかったわ。もう何言っても無駄なのだろうか。いや、あたしの所為だからあたしが変わればいいってのは分かっている。

 ……もうッ!何なのよッ!あたしにどうすればいいっていうわけ?

 

「「「わ~ッッ!!」」」

 

 その掛け声を筆頭に、あたしの周りから人が次々と散らばって行っている。数年前からずっと一緒にいた子も今はこの中に入っているざまよ。

 

 けど…… けどッ! サリーちゃんだけは、サリーちゃんだけはあたしの味方よね? そうよね?

 

「……ごめんなさい」

 

 …………………………分かってた、分かってたけどッ! そうよね、皆から蔑まれている化け物とはそりゃあ仲良くしたく無いわよね。

 だからって敬語は…… 本当に他人として扱われるのは…… 本当に…… もういやぁ…………………………………

 

 気がつくと、あたしは感情を抑え切れずに叫んでいた。

 

「ねえ、なんでッ!? どうして逃げるのッ!? 待って、行かないで……」

 

 叫んだといっても聞いている人は何処にもいない。サリーちゃんもいつのまにかいなくなっているし…… なんなの? 何が悪かったの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出てきなさい、何日引きこもっているの?」

 

 幾千万と聞いた言葉がドアの重く響く叩かれる音と重なり合って、とてつもない威圧感を感じるそれを無視しながらあたしは考えていた。

 

 最近、あたしが化け物と呼ばれる由縁に気がついた。それもそのはず、男子の全速力を軽々と、歩くような感覚で抜かすのは有り得ないし、どうやっても自分以外の物では身体に傷が全くつかないからね。あたし自身でも正直気味が悪いと思うわよ。

 ははっ、こういうことだったのね。化け物ゴリラなんてよく出来たあだ名じゃない。

 

 ……冗談はともかく、気味悪く思ってもあたしは自分の身体から離れたい訳でもないし、逃げたいと思ったことすら無い。謝るのなんてもってのほかよ。その分、あたしはあいつらよりも大人ってことになるのかしら?

 

 幸い、この異常性は両親には気付かれていない。隠せばいいんだわ。隠しさえすれば普通の女の子として生活できる。あいつらのことは放置でいいわ。所詮、その程度の仲だったとして切り捨てるのが一番よ。

 

「わかったわ……」

 

「あっ、やっと出てきた…… はぁ、どうしたの? 何かあったの?」

 

 意を決して出てきた瞬間にお母さんから質問攻めにあった。なんでわざわざ聞いてくるんだろう、自分の口からは話したくないし。けど言わないとずっと聞かれそうだからちょっとはぐらかして説明しよう。

 

「ちょっと友達関係のことで」

 

「……」

 

 お母さんはしばらく黙り込んだ。何か気が利けるような言葉を探してるのだろうか。別にそんなのいらないから「あっそう」って感じで流しておいてくれてもいいのに。

 

 それにしても、これからどうしようかな。おちおち外も歩けないし、あいつらと会いたくない。

 

 

 今日の晩御飯は私の大好物なコーンスープだった。気でも利かせてくれたのだろうか。

 うっとうしいと思う反面、嬉しく思う自分がいる。

 

 やった、まだ普通の子の感性のままだ。でも心まで怪物化しちゃってもいいかもしれない。そうしたら自分が自分で無くなるし、親に迷惑がかかるけど、こんな苦しい気持ちにもならなくて済む。

 ゴメンね、恨むならこんな子を産んだ自分を恨んでね。

 

 

 

 

 

 

 

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 私の精神は普通の子だ。何をどう足掻こうが普通の子。

 ──心を怪物にするなんて無理よ。普通の子には。

 

 そうなんだ、私は普通なんだ。普通でありたいんじゃなく、いたって普通の、根っからの普通なんだ。

 

 

 

 

 

 でも、身体は普通じゃないの。

 

 

 

「あっ! そこ近寄らないで!」

 

「え?」

 

 ガラガラガラ……と私の方へ食器がなだれ込んだ。一瞬驚いたけど全然痛くないし怪我もない。

 下を見てみると割れた食器で大惨事になってる。これは普通の子なら大怪我間違えなしだね。この破片一つでもかなりの脅威だ。

 

 けど、私にとっての脅威は別、今、驚いた顔して固まっているお母さんにどう言い訳するかなのよね。

 

「だっ、大丈夫ッ!? 怪我はない?」

 

「あ~、大丈夫…… 奇跡的に?」

 

「よかった…… 一時はどうなることかと……」

 

「うん…… 大丈夫みたい?」

 

「どうしてそこで疑問形なのよ…… まあ、次からはあまり台所に近づかないでね、お母さんも気をつけるから」

 

「うん、わかったー」

 

 ……あれ? 意外とあっさりだった…… まあいいか。この場を抜けれたし。

 

 それにしてもこの破片達邪魔だなー。片付けよっと。

 

「片付け手伝うねー」

 

「あっ! ダメッ! 触ると怪我するよ!」

 

「えっ、あっ、わかった」

 

 危ない危ない、私は普通の女の子私は普通の女の子……っと。

 どうやら何も感づかれてないみたい。よかったよかった。

 

 

 

 

 

 

 

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「それでね~、うちの子が巻き込まれちゃったんだけど奇跡的に無傷でね~、けど旦那にこっぴどく叱られちゃったの。しっかりしなさい、お前が気をつけないでどうするって」

 

「そりゃあそうでしょ。あっそうそう、お宅の娘さんといえばこんな話を聞いてね……」

 

 

 

 

 

 

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「ちょっとあなたに話があるの。お父さんと一緒にね」

 

 !? もしかしてばれた!? でもどうして…… いやでもただの説教という可能性も…… でも……

 

「ちょっと来なさい」

 

「う、うん」

 

 とにかく足取りが重く感じる。時間も永遠と続いているようだ。

 

「座りなさい」

 

 返事を言えないほど緊張してしまっている。逃げ出したいのを堪えてお母さんの前に座った。

 

「他の子のお母さん達から聞いたわ。けどあまりにも突拍子で、信じれないからこうやって本人に確認しに来たの。さあ、事実を言って」

 

 絶対そうだ…… 

 

「お父さん達は責めてるわけじゃないんだよ。ほら、言ってごらん」

 

 絶対うそだ

 

「あなたが黙ってたら何も分からないの」 

 

 分からなくていいのに

 

「…… よ~し、分かったぞ」

 

 !?

 

「え? あなた、何がわかったの?」

 

「一つだけな…… それはこいつが、俺らを信頼してないってことだけだ」

 

 え!?なんでそうなるの!?

 

「違っ、違う」

 

「おっ、やっと口を開いてくれたな。

 ま、それはともかく、そうだろ? 人を信頼してくる奴なんてな、こっちは何も聞いてないのに勝手にべらべらと自分語りするんだ」

 

 ……そうとも限らないでしょ

 

「今、そうとも限らんって思っただろ? 実際その通りだ。だがな、分かるんだ。親はな」

 

 な、何が分かるって言うのよ。何も分かってないくせに。

 

「言いたくないんだろ? どうせ怒られる~とか、まあそんな軽い話ではないんだろうが。

……言いたくなければ黙っとけばいい。ただ、一つだけ聞いて欲しいことがある。頭の片隅にでも置いておけ」

 

 なに……?

 

「俺らは、お前を信じている」

 

「……え? そこは『俺らを信じろ』なんじゃ?」

 

「くっくっく、信頼されたからには信じ返さないとなぁ」

 

「そういうことね。分かった」

 

 なんだか気が楽になった。あまり納得できないけど、それでも嬉しい。

 ……私はもう悩んだりしなくていいの?

 心の重架が外れたようだ。同時に溢れ出るものが──っと、危ない危ないこんなところで泣くのは格好が付かない。

 

「じゃ、これでこの話はオシマイッと。なんか食いたいものでもあるか? 俺は芋が食いたい」

 

 私は何でもいいや

 

「あなた、最近食べ過ぎよ。だからそんなみっともない体型に……」

 

 確かに。最近のお父さん、太って来てるもんな~

 

「お前だって最近太って──」

 

 その時、空気が一瞬にして冷え切った。お父さん、女性にそれは……ダメだよ。

 女の子には言っちゃダメな言葉があるんだよ? 例えば化け物ゴリラとか……

 

 ……自分で言ってて虚しくなっちゃった。

 

「さ、あなた、少しお話しましょう」

 

「ハ、ハイ」

 

 あんなに頼もしかったお父さんがもうすっかり縮こまっちゃって。ふふふ。

 自然に笑いが出たのなんていつぶり?

 

 私に幸せを感じる感情がまだ残ってたなんて…… 幸せな……家族? へへへ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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展開はやい?

  • 疾風の如くはやい
  • 別に
  • ダレない程度におそく
  • もっとかっ飛ばせ!
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