輝きと暗闇   作:銀河のかけら

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お久しぶりです。


24話(本当の過去5)

光「それで…バンドって何するの?」

 

拓也「はぁ…お前そんな事も知らないで入るとか言ったのかよ…」

 

光「あ〜!絶対馬鹿にしてる!!」

 

2人が言い争いしているようだが、確かにバンドを組んで、それからどうしたいかまだ決めてなかった。

 

響「とりあえず俺と拓也、光の3人か…バンドならあと1、2人は欲しいな…」

 

光「う〜ん…とりあえず5人を目標に人探しする?」

 

3人で色々考えていると、部屋のドアが開く。

 

「あ、あの!!」

 

響「ん…?君は…!」

 

光「駆!?」

 

入ってきたのは光の弟の駆だった。さっきまではずっと無口で下を向いていたが、今はしっかりと立っている。

 

駆「僕を…僕も仲間に入れて!!」

 

駆は先程とは想像できないくらい堂々と3人に言った。

 

駆「この前響さんの曲を聴いて…このままじゃダメだって思った。足は絶対に引っ張らないからお願いします。僕をメンバーに入れてください!!」

 

光「駆……」

 

響は優しく微笑みながら駆の方に歩み寄る。

 

響「もちろん!大歓迎だよ」

 

拓也「よろしくな!えーと…何弾けるんだ?」

 

駆「ギターです!って響さんほどでは無いですが…」

 

響「上手い下手は関係ない…とにかく音楽を全力で楽しもう?」

 

駆「……!!はい!!」

 

これで響、拓也、光、駆の4人によるバンドが生まれた。響にとってはμ'sの時以来…いや、生まれて初めて"自分"も含めてのメンバーで音楽を奏でる。これからの日常に一気に光が差した気がした。

 

 

 

バンドを初めて少したったある日、響はいつも通りLive Boxに来た。

 

響「おはよー…ってあれ?」

 

響が入ると、何やら騒がしい。それに光も駆もバタバタして忙しそうだ。

 

駆「おはようございます!響さん!」

 

響「やけに忙しそうだな。今日なんかあんの?」

 

響が駆に聞くと、大きな機材を運んでいる光が答える。

 

光「今日はここでライブがあるのよ。だからそれの準備!言ってなかったっけ?」

 

いやいや…聞いてないから練習に来たんですが…

 

響「じゃあ俺はここで…「どこ行くの?」

 

あ…もうこの後言われる事分かったわ…

 

光「せっかく来たんだから手伝ってくれるよね?」

 

響「で、ですよねー」

 

これから"確実"にこき使われるという現実に肩を落とす響であった。

 

 

 

響「はぁ……」

 

拓也「随分と大きなため息だねぇ…そんな事だと幸せが逃げるぞー?」

 

響「うるせえ…お前こそ不満じゃねえのかよ?」

 

拓也「……何が?」

 

響は聞く相手を間違えたと思いもう一度ため息をついた。

 

響「光の野郎…男だからって重いものばっかり押しつけやがって…」

 

拓也「1人では持てなかったくせにか?」

 

響「うるせえ!!」

 

響が顔を赤くしながら怒っていると、仕事を片付けた光と駆がこっちに来た。

 

光「響ー!拓也ー!」

 

駆「あと少しでライブなので一緒に観に行きましょうよ!」

 

駆が2人にチケットを手渡してきた。

 

駆「2人なので、中々良い席にしときましたよ?」

 

響「へえ…てか誰のライブなんだ?」

 

よくよく考えたら誰のライブなのか今まで聞いていなかった。

 

光「そういえば言ってなかったっけ?神代 奏(かみしろ そう)。最近巷で話題になってるんだよ」

 

拓也「へえ…神代奏か。いつか見てみたかったから楽しみだな」

 

駆「確かピアノの実力はピカイチでプロも注目するほどでしたよね!」

 

みんな知っているし中々の実力らしいので響は楽しみになってきた。せめて重労働をした甲斐があったと思えるようなライブを観れればいいが。響はそう思いながら拓也と会場へと向かった。

 

 

 

会場の中へと入ると、既に沢山のお客さんで溢れていた。

 

拓也「随分と賑わってるな。俺らとタメだろ?なら凄えや」

 

響「同い年なんだ…益々興味が湧いてきたな」

 

響が光るような眼をステージに向ける。これからどんな音を聴かせてくれるのか…今から楽しみで仕方がなかった。

 

拓也「おっ、始まるみたいだな」

 

拓也の言葉と同時に会場の照明が落ちる。そしてしばらくするとステージのライトが一つに集まる。

 

だんだんと明るくなるにつれて、会場の歓声も大きくなってくる。その歓声を顔色ひとつ変えずに堂々と立っている者が見えた。

 

神代奏だ。

 

そして、彼による一曲目が始まる。

 

奏「それでは聴いてください…燃えよ」

 

曲名を言って少し照明が落ちると、歓声は一段階増してきた。

 

そして静かにピアノの前に座ると、手を鍵盤にそっと近づける。

 

さっきの歓声が嘘かのような静けさに包まれる。彼はそれを待ち侘びていたかのように歌い始めた。

 

 

 

しょげた顔をひっさげて

 

石ころを蹴っ飛ばして

 

太陽が泣いてるよ

 

ほら見上げてみて

 

 

 

ほんとは君の中で

 

くすぶる熱い光

 

太陽に叫ぼうよ

 

ほら見上げてみて

 

 

 

燃えよ

 

あの空に燃えよ

 

明日なんか来ると思わずに燃えよ

 

クールなフリ もうええよ

 

強がりも もうええよ

 

汗かいてもええよ

 

恥かいてもええよ

 

 

 

一曲目が終わり、彼は一礼した。それと同時に会場のボルテージは最高潮に達している。

 

どこを見渡しても、歓声。歓声。でも、何故か俺の耳には歓声はあまり入ってこなかった。

 

彼の声がずっとずっと頭の中から離れなかった。今まで沢山のアーティストの音楽を聴いてきたつもりだ。その中で彼の音楽は何かが違う。それを言葉にしようとするのは難しい。

 

だけど、何か違うものを持っている。

 

それだけは感じた。

 

拓也「凄いな…なあ…って響?」

 

俺は気づいたら、走って会場の外に出ていた。

 

彼と話がしたい。そして…叶うならば……一緒に歌いたい…!


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