ゆるキャンパーと新米姉妹   作:ある介

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さて、三回目の今日はいよいよ四人が一堂に会します


ゆるキャンパーと新米姉妹の邂逅

それぞれが昼食を終え、一息ついてしばらく経った頃、二人の釣りキャンパーが動き出した。これから午後のひと勝負といくようだ。

 ただ、今度は二人バラバラにではなく、並んで話しながら気楽に釣るようで、早くも他愛もない会話が繰り広げられていた。 

 

「ねぇねぇリンちゃん、リンちゃんのバイクって荷台あったよね」

 

「まぁ、伊豆キャンの時に付けたのがあるけど」

 

「じゃぁ今度、だるまでも……」

 

「載せねぇよ……」

 

 リンは、なでしこの言葉にかぶせ気味で返すと、続けてまくし立てる。

 

「ってか、そばも米もなまはげも載せないからな!ギア無いからウイリーもしないし」

 

「えへへ、だよねー」

 

「って、急になんの話だよ」

 

 呆れたようなリンの言葉に、なでしこは苦笑いしながら説明し始めた。 

 

「いやー、リンちゃんなら知ってると思うけど、今度あの番組、新作が放送されるじゃん?だからお姉ちゃんが『復習するわよ』ってここのところDVD見返しててさ」

 

「あー、なるほど」

 

「全部じゃないけど、わたしも一緒に見てたんだよね……それにしてもリンちゃんもさすがファンだね。返しが早いや」

 

「……まぁな」

 

 そう言うなりそっと顔をそむけるリン。

 

(私も同じことしてるなんて言えない……)

 

 と、そんな風に楽しげに二人が釣りをしていると、背後から声をかけてきた人物がいた。

 

「こんにちわー」

 

「こ、こんにち……わ」

 

 サチとあやりの二人だ。

 

「こんにちわ」

 

「……こんにちわ」

 

 誰か近づいてきていたのは感じていたらしく、さほど驚かずに挨拶を返す二人。とはいえ、やはりというかなんというか、ちょっとそっけなく返してしまうあたりがリンらしいといえばらしい。

 もっとも、声をかけた方のあやりも人見知りが発動して尻すぼみになってしまっていたが……そんなあやりがサチに促されて、勇気を出した。

 

「あ、あの、よろしかったら温かいお茶……いかが……ですか?」

 

 そしてそのあやりをフォローするように、サチが言葉を続ける。

 

「午前中見かけてから気になって声をかけてみたんだ……年も近そうだし、嫌じゃなかったら一緒にお茶どうかな?って。釣りのお話とか聞いてみたいし。それに、あやりの淹れるお茶おいしいんだー」

 

「ちょ、ちょっと姉さん。そんなハードル上げないでください。今日はティーバックしかないんですから……」

 

 そんな二人の言葉に真っ先に反応したのはやはりなでしこだった。

 

「ありがとー。リンちゃん、どうかな?」

 

「まぁ、いいんじゃないか」

 

(お相手は頼んだぞなでしこ……というかこの二人姉妹だったのか。あんま似てないっていうか、姉と妹逆かと思った……)

 

 何やら失礼なことを考えている者が若干一名ほどいるが、同世代の女子どうしということもあって、割とすんなり顔合わせが進む。

 するとなでしこが何かを思いついたように手を打った。

 

「そうだ、リンちゃん!私たちも何か用意しようよ!お茶請けに……なんだっけ、アレ。サモ……じゃない、スモ……スモア?」

 

「合ってるよ。てか、今までにも何度も食べてるのに、なんでそんなに自信なさげなんだよ」

 

 呆れた口ぶりのリンと、「えへへ」と頭を掻くなでしこのやり取りを見て、すぐに反応したのは意外にもサチではなくあやりの方だった。

 

「スモアってあれですよね、チョコと焼きマシュマロをビスケットで挟んだお菓子ですよね。そのおいしさから『もう少し欲しい』という意味の『some more』が名前の由来になったと言われる……あぁ、なんで買い物の時に思いつかなかったのでしょう……キャンプでは定番のお菓子だというのに……」

 

 知っているお菓子の名前が出て少し饒舌になるあやりだったが、買い物に行った時には思いつかなかったらしい。そのことで落ち込み、だんだん声が小さくなっていく彼女になでしこが声をかけた。

 

「あやりちゃん……だっけ?詳しいんだねぇ。それに、そんなに落ち込まなくても大丈夫。マシュマロもビスケットもいっぱい用意してあるから、一緒に作って食べよ!」

 

「え、あ、はい。ありがとうございます……えっと、各務原さん」

 

「なでしこでいいよぅ。そうと決まれば早く行こう!ほらほらそっちの二人も!」

 

 持ち前の人懐っこさで他の三人を引っ張っていくなでしこ。そのすぐ後ろをサチが「スッモア、スッモア」と追いかけていく。そんな二人の背中を見ながら、残された二人の心の中はといえば……

 

(なんかこの二人似てるかも……)

 

 お互い元気っ子と物静かな組み合わせのコンビ。それぞれ何やら通じあうものがあるようで……四人が仲良くなるにはそう時間はかからなそうだ。

 

 その後、キャンプサイトまで戻ってきた四人はさっそくお茶の準備を始めた。姉妹がお湯を沸かしてる間に、キャンパー二人は手早く木を組み、火を熾す。お皿にマシュマロとチョコビスケットをあけて、いい感じに火が育ったらお茶会スタートだ。

 

「どうぞ志摩さん。ティーバックのお茶で申し訳ありませんが」

 

「ありがとう……あ、あやりさん。それと、私のこともその……リンでいいよ」

 

 そんな落ち着いたやり取りが行われている反対側では、二人の元気っ子がわいわいきゃいきゃいとはしゃいでいた。

 

「ねぇ、なでしこちゃん。そろそろいいかな?」

 

「まだ。まだだよサッちゃん。ちょっと焦げたくらいがおいしいんだから…………うん、もういいかな。そしたら、チョコビスでマシュマロを挟んでー、ぎゅっと潰しながら串を抜いてー、たべるっ!」

 

「はむっ!……んー、んまぁ!あまぁ!こんな甘さの暴力にやられてしまってはサチはもう……」

 

 半分になったスモアを片手にずるずると椅子を崩れ落ちるサチとその隣で早くも二つ目のマシュマロを焼き始めたなでしこ。焚火越しにそれを見ていた二人も、それぞれスモアにかぶりついた。

 

(あー、やっぱうまいわ。そして紅茶がこれまたいい感じに口の中をリセットしてくれて……スモアと紅茶の無限ループ……至福だ)

 

(これは、姉さんの言う通り甘さの暴力ですね。私にはちょっと甘すぎる気もしますが、これに勝てる女の子はいないのではないでしょうか……『some more』とはよく言ったものです)

 

 そんなこんなで、出会ったばかりの四人ではあったが、お茶とスモアのおかげか少しずつ話が進む。

 

「なでしこちゃんたちはよく釣りするの?女の子の釣り人さんてめずらしいよね?」

 

「うん。といってもまだ初めて半年ぐらいだけどねー」

 

「へー、さっき遠くからちょっと見たけど、かっこいいよね。道具も本格的だし。私なんて釣り堀くらいしか経験ないや」

 

「そうなんだ……あ、でも私たちも普段は管理釣り場がほとんどだよ?あれ、でも管理釣り場と釣り堀って同じ?違う?……どうなんだろう、リンちゃん」

 

「まぁ、同じといえば同じだけど、二人が想像するような所謂『釣り堀』とは違うと思うぞ?私らが行ってるのはエサ釣り禁止のところだしな」

 

「へぇ、そんなところがあるんだ……なんだかまた一つ賢くなった気がするよ。ねぇ、あやり」

 

「そうですね。私もよくは知りませんが、リンさんたちがやってるのはルアーフィッシングと言って姉さんたちと行った釣り堀でやるような釣りのように、初心者でも簡単に釣れるものでは無いそうですよ」

 

 お茶を飲んで、スモアに舌鼓を打ちながら他愛ない話をしていると、なでしこたちの椅子の脇に置かれたルアーロッドをじっと見つめながらサチが口を開いた。

 

「二人はこの後もまた釣りするんだよね?」

 

「うん、晩御飯の分も釣らないと!」

 

 腕まくりをするような仕草をしながら、フンスと鼻息荒くなでしこが答えると、笑いながらサチが言葉を続けた。

 

「じゃあさ、写真とか撮ってもいいかな?邪魔にならないようにするから」

 

「そんなこと気にしなくてもいいよ。撮りたいように撮って。あ、でもあんまり近づくとルアーが引っかかったりして危ないから、そこは気を付けてね」

 

 写真と聞いたとたんにドヤ顔で謎のポージングを始めたなでしこに代わって、リンが答える。そして、その向かいではあやりが声を殺して肩を震わせていた……なでしこの謎のポージングがツボに入ったらしい。

 

 しばらくたってあやりが落ち着いたところで、四人はさっそく川辺へと向かうことにした。適当なポイントを見つけてキャスティングを始めるなでしことリン。

 

 サチとあやりの質問に答えたり、まったく関係ない話もしたりしながら釣りを続けていると、リンのロッドが大きくしなった。

 

「あ!リンちゃんヒット!サッちゃんシャッターチャンスだよ!」

 

 すごいすごいと興奮しながら手をたたくあやりと、決定的瞬間を収めようと色々な角度でスマホを構えるサチ。そんな二人の反応を背中で感じながら、リンは内心焦っていた。

 

(いやいやいや、そんな注目されると恥ずかしいのだが。ってかここでバラしたらもっと恥ずかしいっ!)

 

 リンはいつも以上に丁寧にタックルを操るが、魚の方はそんなことお構いなしに縦横無尽に泳ぎ回る。張り詰めた空気が流れる中、あと少しという所まで引き寄せたところで、最後の抵抗とばかりに魚が跳ねた。

 そこに響くシャッター音とリンの声。

 

「なでしこ、網っ!」

 

「はいよっ、リンちゃんっ!」

 

 阿吽の呼吸というか、さすがのコンビネーションで魚を網に収めたリンとなでしこ。それを見ていたサチとあやりも拍手で称える。

 

「すごいですお二人とも!」

 

「うんうん、なんかいいよねー『なでしこっ!リンちゃんっ!』って思わずサチも熱が入ってシャッター切りまくっちゃった」

 

 と、二人から手放しで褒められては、さすがのなでしこも「えへへ」と照れ隠しに頭を掻くのが精いっぱいだった。なでしこがそんな状態なのだから、リンはといえばさぞや照れることだろうと思うのだが……

 

(……よかった……ちゃんと釣れて……)

 

 といった具合にバラさずに釣り上げられたことに、ただただほっとしていた。

 

 その後も何匹かヤマメを釣り上げたり、時には取り込む直前でバラしたりと、色々シャッターチャンスも提供しつつ時間が過ぎていく。

 

 そして、ほどほどに釣果も出て、そろそろ引き上げ時かという頃だった。

 

「おーい!あやりー、サチー!」

 

 管理棟の方から二人を呼ぶ声が聞こえたかと思うと、ほどなくしてその声の主が四人の前に降りてきた。

 

「今日はほんとごめんねー。約束通り、お詫びに食材色々持ってきたから!食べて!」

 

 降りてくるなりそういいながら、持ってきたクーラーボックスの蓋を開け、中を見せてきた。

 

「それはもう気にしないでください……って、すごいですねこれ。こっちは鹿肉と……豚……いえ、この色味は猪ですか?」

 

「さすがはあやり。まぁ、今までに何度も料理をお願いしてるし、もう見慣れてるか。……あなたたちのことを話したら猟友会のおじさん達が持っていけって。熟成もばっちりで、明日には冷凍に回そうかと思ってたらしいんだけど、せっかくだからってね。冬に向けていっぱい食べてるから脂がのってておいしいわよ」

 

 食材に目を輝かせながらみのりと話すあやりの横で、サチもクーラーボックスをのぞき込んでいた。

 

「お肉の他にもキノコがいっぱいだ……しめじに舞茸……椎茸もあるー」

 

「そっちもあなたたちにって。まぁその辺は流石に栽培物だけど……それに、それだけじゃないんだな……」

 

 と、そう言ってもったいぶりながらみのりが小さなかごを出してきた。その中には……

 

「み、みのりさん。これはもしかして……」

 

「ふっふっふ……そう!『秋の味覚』の王様、松茸よ!市場に流せない所謂『ワケアリ』物だけどね。さすがにこれは売ってもらったやつだけど、『ワケアリ』ってことで一山いくらって感じにしてもらえて、かなり安く売ってくれたわ」

 

 みのりが持ってきたかごの中には、傘が開きすぎていたりして市場に出すにはちょっと……という松茸がそこそこの数入っていた。

 ただ、普段食べなれていない四人にしてみれば、それでも松茸の魅力は十分堪能できそうだった。 

 松茸を受け取り「ふぉぉぉ」と奇声を発し目を輝かせながら天に掲げるサチを横目に、みのりは先ほどから気になっていたことをあやりに聞いた。

 

「ところで、そちらのお二人は?」

 

「あっ、はい。先ほどこちらで知り合ったお二人で、各務原なでしこさんと志摩リンさんです」

 

 と、あやりの紹介に合わせて二人も軽く挨拶をする。

 

「お二人ともキャンプをよくされるそうで、いろいろと話を伺っていたんです」

 

「ふーん、へぇー、ほぉー……私はあやりの叔母でみのりって言うんだけど、二人とも仲良くしてやってね」

 

 からかうような口ぶりではあったが、以前のあやりをよく知っているだけにこうして見知らぬ土地で見知らぬ人と仲良くしている彼女の姿に、感慨深いものがあるようだ。

 それから少し五人で話をしてから、みのりが戻っていったのをきっかけに四人はそれぞれの晩御飯の準備に取り掛かることにしたのだが、ここであやりが頑張った。

 

「あっ、あの……結構量もあるので、よかったらお二人も一緒に食べませんか?」

 

「いいの?ありがとう!」

 

「ありがとうあやりさん。じゃぁ私たちはこの魚で何か作ろうか」

 

 あやりがちょっと勇気を出したことで、四人で夕食をということになり、それぞれ食材を持って下ごしらえに向かうことになった。

 




お読みいただきありがとうございます

というわけでついに四人が集まりました
(そしてディナーの食材も)


水どうネタについては入れようかちょっと迷ったのですが
原作もアニメもがっつりぶっこんでるし
D陣アテレコしちゃってるし、ヒゲなんてまぁまぁ重要キャラだし
何しろ思いついちゃったし、これくらいならいいかなと

次回はディナーの調理風景です
彼女たちは一体何を作るのでしょうか
お楽しみに
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