Contraindication 作:まっちゃんのポテトMサイズ
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「…は?」
俺は端末越しに爺さんから伝えられた事に唖然としながらそう言った。
「いやな、アイツら、お前と一回話がしたいだとか言ってるんだよ」
「知るか。俺には関係ない」
俺は吐き捨ててスマホを離し、通話を切った。
そして、スマホをポケットの中に仕舞い、ドアを開けて外に出る。
すると、先日出会った、赤茶の髪をしているのツインテールの娘と後ろ髪を一束括っている、右眼を隠している焦げ茶の髪の娘と銀髪の娘。
それに加えて、俺から視線を逸らし、何かブツブツと言っている薄紫の髪をした娘が、ジャージ姿の彼女達の後ろに居た。
俺は即座に扉を閉め、履いてあった靴を持って二階の自室へと駆け上がり、そこの窓から飛び降りる。
そして、着地と同時に靴を履き、足に力を込めて駆けだす。
走っている途中、背後を振り返ると、先程の四人が追いかけてきていた。
中でも、薄紫の子は恐ろしい執念を持ちながらそうしていた。
「…仕方ない。少し本気を出すか」
俺はそう呟き、前を向き、足に更に力を籠める。
そして、その力を自身を押し出すように前に放つ。
その瞬間、左眼の視界は赤く染まり、走力は格段に上昇した。
力一杯地を蹴り、彼女達を更に突き放す。
暫くすると、俺は公園に辿り着いた。
振り向けば、彼女達はもう追ってきてはいなかった。
俺は溜息を吐き、左眼を閉じながら近くの木のベンチに腰を掛ける。
その瞬間、俺の肩を誰かが掴んだ。
「漸く見つけましたわ…!」
振り向けば、先の薄紫の子が俺の肩を掴んでいた。
その子は息を絶え絶えにしながらも、
俺は半分驚きながら半目開きで彼女の事を見つめて溜息を吐く。
そして、両手を上げて降参のポーズをする。
「まったく…。それで、何の用?そこまで執拗に追ってくる程、重要な用事なんだろ?」
「ええ。ですが、用事があるのはあそこで隠れている彼女達ですの」
俺は彼女が指さした先を見ると、先の三人のウマ娘たちが木に隠れながらこちらを見ていた。
額に手を付き、溜息を吐く。そして、ベンチから立ち上がると、彼女達は逃げようとする素振りを見せた。
「逃がすか。散々こちらを追っておいて、何でも無かったじゃ済ませないぞ…」
俺はそう呟き、力一杯地を蹴り、彼女達の背後に移動する。
そして、彼女達を押し倒して逃走を阻む。
「さて、俺にどんな要件があるのか、確り話してもらおうか。チームスピカの部屋でな。そしたら、爺さんにも話が聞けて一石二鳥だろ?なぁ?」
俺は内心怒りながら、彼女達を見下ろしながらそう言った。
彼女達はそんな俺に怯えながら、「は、はい…」と言った。
それから暫くして、俺とそのウマ娘たちはチームスピカの部屋にやってきた。
俺が笑みを浮かべながら入ってくると、爺さんは何かを察したように急いで椅子を人数分並べた。
「ありがとう」
それだけ言って俺は腕を組みながら三人のウマ娘たちの前に置かれた椅子に腰を落とす。
「さて、これだけの時間を取らせたんだ。何の用があったのか、じっくりと教えてもらおうか。それがくだらないものだった時、どうなるか分かってるよね?」
彼女達は観念したように顔を見合わせてから、銀髪のウマ娘が口を開いた。
「それじゃあ、単刀直入に言わせてもらうぞ。お前が初めて此処に来た時の帰り、暴走してたトラックにお前は乗り込んだよな。…何でそんなことが出来た?」
その時の事を聞かれ、俺は直ぐに爺さんを見つめた。
爺さんも俺をじっと見つめていた。
その視線はどこか慌てているようで、俺は爺さんから目を逸らし、歯を食いしばって俯いた。
超人的な身体能力は昔からあったもの。それを俺と爺さんは理解していたが、説明する事は到底出来たことでは無かった。
何故ガラスを拳で叩き割れるのか、何故直ぐに傷が治るのか。
そのような事は常人ではできない事だと分かっている。
しかし、俺には出来ている。出来てしまっている。
その原因が分からないからこそ、俺は顔を上げた。
そして、肩をすくめて「知らないね」と言った。
銀髪の子は瞼を閉じ、何かを考え込む様な仕草をした。
残りの二人は腰に手を置き、溜息を吐いた。
「アンタねぇ…。そんな言い訳言ったってどうしようもないのよ?」
「言い訳だ何て、心外だな。俺は真面目に答えたつもりだったんだが」
「『知らないね』が真面目ですって!?そんな訳無いでしょ!」
「…うん。本人が知らないならどうしようもないよな!!さぁて、速くトレーニングに行こうぜ~」
銀髪の子がそう言ってこの部屋から出ていった。
彼女は存外、人に対して気遣いが出来る様だ。
すると、爺さんもそれに乗っかり、二人をトレーニングに行くよう催促した。
二人は文句を言いながらも、爺さんの真剣な様子を見て渋々部屋から出ていった。
「…ありがとう。爺さん」
「いや、気にするな」
「少し、ここに居て良いか?彼女達と会うとまた面倒くさい事になりそうだ」
俺は爺さんに背を向けて、苦笑いを浮かべながらそう言った。
爺さんは「おう」とだけ言って、俺の滞在を許可した。
それから暫く、沈黙が続いた。
先程の会話で気まずさが俺と爺さんの間に発生した為だ。
俺との間で、超人的な身体能力の話題はタブー。
決して触れてはいけないものだ。
特にそう決めたわけでもないいが、自然とそうなっていった。
俺には沢山、不思議な事がある。
先の超人的な身体能力もそのうちの一つだ。
若しかしたら、今判明している事はほんの一部かもしれない。
「…なぁ、爺さん。俺って、長生き出来るのかな」
「何だ、突然」
俺は天井を見上げながら、溜息交じりに呟く。
これから先の事には大した不安は無い。けれど、ただ一つ、小さな不安がある。
それは、長生きしてしまうのではないか、というものだ。こんなどうしようもない奴が長生きしても良いのだろうかと、時折不安になる。
「…それは俺にも分からねえな」
爺さんは棒付きキャンディーを嚙み砕き、そう言った。
俺はいつも通りの答えに、内心諦めたように「そうか」とだけ言った。
それから暫くの沈黙が続いたが、後にその沈黙を破るように二人のウマ娘が部屋の中に入ってきた。
俺は爺さんを恨みながら急いで彼女らに椅子ごと身体を動かして、背を向けた。
「あれ?その人、トレーナーさんのお知合いですか?」
「ま、まぁそんなところだ。さぁ、そんな事はどうでも良いから速くトレーニングに行こうぜ、な?」
爺さんは焦ったような声色で彼女達をトレーニングに行くように催促する。
しかし、何故か、白い前髪に、それ以外の所が茶髪の少女は既に俺に声をかけていた。
「私、スペシャルウィークって言います!宜しくお願いします!」
「あ、ああ。よろしく」
俺は声を詰まらせながら、彼女に右手を上げてそう言った。
そして、彼女達をトレーニングに行かせるようにと、爺さんに視線を向けた。
爺さんは直ぐにその視線に気づき、彼女達を部屋から追い出すようにしてそれに行かせた。
「…さて、そろそろ俺も行くよ。何時までもここに居る訳にはいかないから」
「そうか。良し、それじゃあ、またな」
俺は右手を上げて、部屋を出た。
そして、彼女達に気づかれないよう、直ぐにその場から全速力で去る。
それが、勝利への方程式を立て続ける、彼女との出会いへの歯車が回り始めた時だったのかもしれない。