Ravens lane ─鴉達の未来─   作:ダイヤモンド傭兵

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新しく海域を奪還することに成功し、ヒロは祝勝会のための準備に参加するが···


第17話 優しい世界であったなら

ヒロとロイが祝勝会に必要な物を運んでいる過程で門の近くを通りかかる。

すると門の外から騒ぐような声が良く聞き取れないものの聞こえてくる。

 

ロイ「なんだか騒がしいな···」

 

ヒロは首をかしげている。

 

ロイ「早めに通り過ぎよう」

 

ヒロは頷いてロイと共に足を早める。すると、声の届く範囲に来ると···

 

男性「悪魔めー!」

 

女性「KAN-SENとその関係者は悪魔に協力しているー!」

 

ロイ「なんだ?」

 

ヒロはなんの事か解らずキョトンとしている。するとヒロの頭に投げられた卵が当たり、ヒロの顔に割れた卵の中身が流れ落ちる。

 

ロイ「ヒロ君!大丈夫かい!?」

 

ロイが目を向けると、どうやらデモが行われているようで、ペットボトルや空き缶、卵を投げつける人もいる。

ヒロは顔を拭いながらデモ隊の方を見る。すると再び卵がヒロのいる方向に投げられ、今度はヒロの顔面に当たる。

ヒロは顔を拭うことすら忘れ、呆然としている。ロイは急いでヒロを建物の中に連れ込む。するとちょうど三笠とボルチモアと鉢合わせる。

 

三笠「ヒロ!どうしたのだ!?」

 

ボルチモア「まさか外の騒ぎと···」

 

ロイ「三笠さん!僕はヒロ君を医務室に運ぶから、他の皆に伝えてくれ!」

 

三笠「承知した!」

 

ボルチモア「私は外を見てくる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後デモ隊は鎮圧され、軍港に所属している兵士達と一部のKAN-SENが門の周りを掃除している。

そしてヒロはというと、医務室のベッドで膝を抱えており、その顔は困惑に染まっていた。銀治達に「気にするな」と言われたものの、どうしてもヒロは気になってしまっていた。

 

なぜ、どこが差別をしているのか?なぜ、あのようなデモを起こしたのか?ヒロには理解できずにいた···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、軍港にロイヤルからの来訪がある。来訪に来たのはエルデアだった。

 

エルデア「お前のラーメンを食えなくて残念だぞ」

 

銀治「仕方ないだろ···」

 

エルデア「まあ、そこは理解している」

 

夏月「あの、今回はどのような要件で?」

 

エルデア「主に2つだ。1つは新勢力の件でもう1つは···ヒロと直接話をしに来た」

 

夏月「新勢力?」

 

銀治「とりあえず、中で話そう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルデア「新勢力というのは『アイリス』と『サディア』の2つの勢力だ。アイリスはアズールレーン側、サディアはレッドアクシズ側でそれぞれ名乗りを上げたようだ」

 

夏月「戦争が···また長引くって事かよ···」

 

銀治「まったくだ···儂らは内輪揉めしてる場合じゃないだろうに···」

 

エルデア「気持ちは解るが、単純な問題ではない···銀治、重桜との連絡は取れているのか?」

 

銀治「試してみたが、まったく反応が無い。義人、本当に何があった···」

 

エルデア「ロイヤルではアイリスをアズールレーンの一員として迎える方針だ。夏月はどう思う?」

 

夏月「俺は賛成です。争ってるのは別として、戦力は必要ですから」

 

エルデア「なるほどな···さて、ではそろそろヒロと話をしてこよう」

 

会議室から出ると、エルデアのお供として着いてきていたKAN-SEN『キュラソー』が待っていた。

 

エルデア「ヒロとは2人で話したい···なに、心配はいらない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルデアとヒロは海と空がよく見えるバルコニーに用意された椅子に座っていた。

 

エルデア「こうして話すのは初めてだな···ヒロ」

 

ヒロは頷く。

 

エルデア「まず、お前にはこの世界がどう見える?それを聞かせてくれ」

 

ヒロはメモ用紙に返答を書き込む。

 

『今までは話し合って手を取り合えば争いは無くなると思っていました。けど、この前のデモ隊の言ってたことが頭にあって、もうなにがなんなのかわからなくなってます』

 

エルデア「なるほどな···確かに、話し合い、手を取り合おうというのは理想だ。その考えは大切だ···だが、アズールレーンとレッドアクシズの分裂のように、そう上手くいくものではないのだ」

 

ヒロは少しうつむく。

 

エルデア「だが重桜に関しては、視察に来たお前達の様子を思い浮かべると、とても良いところだと思える。儂が生きている間にあの桜を見に行きたいものだ」

 

エルデアは少し間をおく。

 

エルデア「様々な事情があるだろう···それに、デモの件も聞いている···」

 

エルデアはヒロの頭に優しく手を置き、優しい笑みを浮かべる。

 

エルデア「この世界がもっと優しい世界であったなら、戦争は起きず、皆が楽しく笑顔でいれただろう···だが残念なことに、この世界はお前が思うほど優しくはない···」

 

ヒロはエルデアを見つめる。

 

エルデア「だからこそ、お前の"優しい心"はこの世界に必要なのだ」

 

そう言うとエルデアは置いていた小さめのアタッシュケースをヒロに手渡す。

 

エルデア「開けてみろ」

 

ヒロがおそるおそるアタッシュケースを開くと、中には空のキューブが"2個入っていた"。

 

エルデア「1つは以前から見つかっていたものだ。もう1つは遠征に行ったKAN-SENが見つけたものだ」

 

ヒロはエルデアを見る。

 

エルデア「それは2つともお前に渡そう。秘匿KAN-SENが設計図から出現したということは、これはこちらが持っているより。設計図を持つお前が持つべきだ」

 

エルデアは海と空を見る。

 

エルデア「ヒロ···ここは良い景色だ。海や空は戦時中だというのに美しく、今吹いている風は心地よい···」

 

ヒロも海と空を見る。するとエルデアは再びヒロに顔を向ける。

 

エルデア「私はもう長くはない···だからこそ、私は己の立場より"未来"を選んだのだ」

 

エルデアはヒロに手を差し出す。そして、ヒロとエルデアは握手を交わす。

 

 

 

 

 

 

 

そして、この日から数日後···エルデアは暗殺される事となる。

 

 




読んでくださり、ありがとうございます!

アイリスとサディアが参戦したと同時に、ヒロはエルデアから空のキューブを託されましたね。
さてこれらがどう関わってくるのでしょうか?

 最近読み返した際、少し思う所があったので少し修正しました。
 今後、大規模な修正の際にまた修正します。
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