スペ「すぺしゃるうぃーく、さんさいです」   作:にゃるまる

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第21話

 

「と言うわけなんだけど、ちょっとトレセン学園に行ってきて良い?」

 

登校早々に何を言っているんだこの子はとトレーナーは頭を抱えた。

時刻は朝。生徒の多くが登校し始める時間に彼女はトレーナー室へと電撃訪問を敢行し、そのままの勢いで急に変な事を言い出したのだ。

彼女らしいと言えばそうだが、と諦め半分でため息をつきつつひとまずはと説明を求める

 

「いやいや…いくら何でも説明飛ばし過ぎです…きちんと説明をしてください」

 

「えー、そこは分かるっしょやー私のトレーナーさんでしょ?」

 

「貴女の中でのトレーナーは超能力者か何かですか…とりあえず、何が目的なのかは知りませんが、そう簡単に許可は出せませんよ。それにそもそも貴女どうやってトレセン学園に行くつもりですか?」

 

「どうやってって…そりゃ飛行機でバビューンと…」

 

「その資金は?」

 

う…と痛い所を突かれたと顔を歪める。

彼女達ウマ娘は基本的に多くの支援を受けられる立場にあるが、それはあくまで公的な要件のみであり、それ以外においては自腹が基本。

大抵のウマ娘はレースで出る賞金なんかでまず苦労する事はないのだが、彼女に限っては違う。何せ彼女は――

 

「と、ともかく!費用に関しては何とかするっちゃ!だからさぁ~お願いトレーナーさん!!お願い聞いてくれるなら私の尻尾モフらせてあげる!!」

 

「モフりません!しかし…ん~……」

 

確かに彼女には時間的余裕があるにはある。

それも全ては彼女が自分が勧めている提案を受け入れてくれないからだ。

それさえ叶えば今からでも忙しくなるのに…そう考えながらどうしたものかと悩み――

 

「――何のお話ですか?」

 

其処に現れた1人のウマ娘に2人は思わず硬直する。

それもその筈、彼女を知らない人はこの学園に存在していないからだ。

何故なら彼女は――

 

「せ、生徒会長!」

 

この学園の生徒会長であり、その実力は中央でも名高い活躍を果たし、更には海外で行われたレースでも勝利をしている程の華々しい成績を収めているウマ娘だからだ。それでいて中央からのスカウトを断っている事が更にその知名度に拍車を立てている。

 

そんな彼女は2人の様子に特に気にする事なく近寄り、トレーナー室に置かれていた花瓶の水を入れ替える。

生徒会長の仕事ではないそれを丁寧に、そして楽しそうに変えていき、さほどの時間を掛けずにし終えると、2人の前に静かに座った。

 

「それで?いったい何の話をしてたんですか?生徒会長として興味があります」

 

「い、いや生徒会長に聞かせる程の話では――」

 

「トレセン学園に行きたいけどトレーナーさんが許可をくれませんッ!!」

 

「おい言い方ッ!!それじゃあ完全に俺が悪いみたいだろ!?」

 

「だってトレーナーさんが!!」

 

ぎゃーぎゃーと騒ぐ2人に微笑みながらトレセン学園にですか…と呟く。

トレセン学園…トレセン学園…と何かを思い出す様に何度も何度も呟き、そしてその果てに、あっと声を出す。

浮かんだある行事に、そしてそれがちょうどよく迫っている事に。

それを思い出すと、彼女は静かに、そして面白そうに笑みを浮かべながら――

 

 

「それなら良い提案があるのですけれど、聴きませんか?」

 

 

――《それ》を提案した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「学園交流会…ですか?」

 

理事長室に呼び出されたシンボリルドルフに向けて秋川やよいは忙しそうに書類に目を向け続けながら彼女を呼び出した理由――北海道にあるウマ娘の学園から提案されたそれを説明していた。

 

「謝罪ッ!向こうからの要望を引き受けていたのだが、多忙で君達に知らせるのを忘れてしまっていた!!当学院としても他校のウマ娘との交流は互いの実力を高め合える良い機会になると判断し、独断であったが引き受けた次第だったが…迂闊ッ!!本当にすまない!!そして急で本当にすまないが交流会成功の為に生徒会に協力を求めたいッ!!」

 

「それは構いませんが…」

 

多忙と言うのは決して嘘ではないのだろう。

以前からの理事長としての仕事に、スペシャルウィークの記憶喪失の件と先のレースでのURAとの揉め事など今の彼女は1秒さえも惜しむ程に仕事に明け暮れている。その力になってあげたいとは思うが、生徒会長と言っても所詮は1生徒でしかない自分に出来る事はさほどない。

だからこそこうして頼ってくれる事に素直に喜びを感じ、少しでもその重みを楽にしてあげたいとシンボリルドルフはその提案を引き受けた。

 

「分かりました。生徒会は交流会成功に尽力を注がせていただきます。それで?相手校はどちらですか?」

 

「感謝ッ!!生徒会長殿には苦労を掛ける!!相手校は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「学園交流会、ですか?」

 

目の前に座るセイウンスカイからそれを聴いたグラスワンダーは僅かな驚きを見せながら傍に座るスペシャルウィークの口元をハンカチで優しく拭ってあげる。

見事なまでに人参ハンバーグでべちゃべちゃになった口元を綺麗にしてあげると、ありがとーと笑顔でお礼を言ってから再度食べ始めて、そして口元はまたべちゃべちゃになっていき、それをまたグラスワンダーは拭いてあげる。まさにエンドレスとなっている口拭きを嫌がることなく繰り返しながら、彼女の話を聞く。

 

「そうみたいだよ~なんか理事長が忘れてたみたいでね~来週にはもう行われるって話だよ~」

 

「来週…随分とまた急なお話ですね…」

 

此処最近生徒会とそれに協力しているウマ娘達が忙しそうにしている事に納得する。

来週だったらその準備も忙しいだろうにと、べちゃべちゃになってもう限界よーと悲鳴を挙げているハンカチを片付けて次のハンカチを取り出して拭こうとして――

 

「は~い♪スぺちゃん口を出してくださいね~♪」

 

「ん~♪ありがとーくりーく!!」

 

いつの間にか其処に居たスーパークリークによってそれを阻まれた。

 

「…クリーク先輩?今日のスぺちゃん当番は私なのですが?」

 

「あら~?そうだったかしら?」

 

笑顔を浮かべる2人だが、その間でバチバチと火花を散り始めるのを見たセイウンスカイはそれじゃお邪魔猫は去りますね~と安全圏へと逃亡していく。

そんな2人に挟まれたスペシャルウィークは――

 

「おいしー♪」

 

――終始笑顔で、人参ハンバーグを食べていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――数日後。シンボリルドルフは主だった生徒会面々と共に校門にいた。

その目的はただ1つ。遠く北海道から訪れる交流会の面々を迎える為だ。

 

「会長。歓迎パーティーの準備が終わったと連絡が入りました」

 

「分かった…ふぅ。何とか間に合ったな」

 

この数日の間、生徒会を始め多くのウマ娘は働きづめだった。

交流校の生徒達を受け入れる宿泊施設の手配から交流会の予定プログラムの編成やその他細々と言った作業。

そして唯一ギリギリとなってしまった歓迎パーティーの準備完了にほっと安堵する。

 

これも全ては生徒会の、そして交流会成功の為に尽力してくれた生徒達の惜しみ無い協力のおかげだ。

今度何かしらお礼をしなければなと考えていた矢先、学園の入り口に数台のバスが見えてきた。

 

「あれか…」

 

バスはそのままトレセン学園へと入ると、職員の案内で駐車場に停車すると、バスの扉が開いて大勢のウマ娘や彼女達のトレーナーらしき職員達が次々と降りてきた。

 

「ほへぇ~これが中央のトレセン学園…でかいっちょやぁ…」

 

「流石は都会…すげぇ……」

 

「ねえねえさっき見たけど、コンビニがたくさんあったよ!!?」

 

「「本当に!?」」

 

その多くは普段なかなか訪れる事のない都会、そしてウマ娘達の憧れの地でもある中央のトレセン学園に呆然としていたり騒いだりしている。まるで田舎から出てきた修学旅行生徒の模範的な反応だと思ってしまうその光景にシンボリルドルフは優しい笑みを浮かべながら挨拶をしようとして――

 

 

「はい。皆さんお静かに」

 

 

――聴こえたその一言が、たった一言が、それまで騒いでいた生徒達を一瞬で静かにさせた。

まるで水を掛けられたかのように静まり返った生徒達が指示されたわけでもないのに、左右に別れてひとつの道を作りあげ、その作られた道を数名のウマ娘が通っていく。

堂々と、そして静かに悠々と彼女達は生徒達の前へと出ると深々とお辞儀をして、顔を挙げる。

その集団の一番前に立つウマ娘。その顔を見た瞬間シンボリルドルフは驚きを隠せないと言った感じに表情を変えた。

 

「…まさか、君が?」

 

シンボリルドルフの言葉に彼女はただ笑みを浮かべながら――

 

 

 

 

「初めましてシンボリルドルフさん。私は帯広トレセン学園で現生徒会長をさせていただいてます《モーリス》と申します。まだ若輩者の身ですが、生徒会長として今回の交流会をお互いに良きものにする為に尽力させていただこうとおもっておりますので、ご指導のほどよろしくお願いします」

 

 

 

 

――静かに、それでいて堂々とその名を告げた。

 

 




提案ッ!!なんか出して欲しいウマ娘(史実あり)(北海道関係)いたら活動報告にリクエスト場作りましたので、其処にコメントしてほしい!!
ぶっちゃけそこまで多く考えてないッ!!
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