スペ「すぺしゃるうぃーく、さんさいです」   作:にゃるまる

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稚拙様、ファントムソード様!
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第22話

 

「君が……生徒会長?」

 

「はい。まだ若輩者の身ではありますが、生徒会長をさせて頂いております」

 

帯広トレセン学園生徒会長《モーリス》。

そう名乗った彼女の登場に、シンボリルドルフは2つの理由から驚きを隠せずにいた。

 

1つは彼女を知っていたからだ。

彼女の走り、それをシンボリルドルフは一度見ている。

彼女が見せたマイルでの走り。まだ若いウマ娘でありながら、中央に所属する数多の強敵達を打ち破って見せたその走り。

それを見たシンボリルドルフは彼女を中央に欲しいと考えた。

彼女自身の未来の為にも、そして学園に通う生徒達に新たな刺激となってほしいと言う願いから、欲し、求めた。

その為に中央に働きかけ、勧誘の為の職員を彼女が住まう北海道にまで送ってもらったのだが――

 

《申し訳ありませんが、お断りさせて頂きます》

 

――とバッサリ断られてしまっている。

その後も幾度か勧誘を繰り返したらしいが、彼女がその誘いを受ける事はなく、派遣された職員もこれ以上の説得は時間の無駄だと勧誘は諦めたのだ。

その後、帯広トレセン学園に入学したと言う話は聞いていたが……

 

「(それがまさか生徒会長とは……)」

 

まだ若い身でありながら、年功序列を吹き飛ばして生徒会長になれたのも彼女の実力があるからだろう。

年齢の壁、それさえも覆して見せた実力に驚愕させられた。

それが一つ目の理由であり、もう1つの理由はと考えてから、それを口にしても良いのかと一瞬迷う。

だが、私の記憶通りならば…と迷いながらも、シンボリルドルフはその疑問をぶつけてみようと決心する。

 

「すまないが、今一度確認しておきたい。本当に君が生徒会長なのかい?」

 

シンボリルドルフがそこまで疑う理由――それはシンボリルドルフが記憶している限りだと帯広トレセン学園の生徒会長は目の前にいるモーリスではなく、別人だったからだ。

頻度こそ少ないが他校の生徒会長とは幾度か生徒会主催の意見交換会等で集まる事もあり、互いに交友もある。

その中でシンボリルドルフは帯広トレセン学園の生徒会長と出会っている。

目の前にいるモーリスではなく、全く別人と、だ。

 

だからこそ、可笑しいと疑問をぶつけているのだ。

彼女が引退したと言う話は全く聞いていないし、生徒会を辞めたと言う話も聞いていない。なのに生徒会長が変わっている。

その理由を知りたい、その一心で彼女にその疑問を問い掛けようとしていたのだ。

だが、それは―――

 

「――お話し中に割り込む様で失礼ですが、何故そこまで疑うのですか?私達の生徒会長に何か不満でも?」

 

――1人のウマ娘の不服を買ってしまったらしい。

モーリスの前に立ち塞がる様に割り込んできたのは栗毛のウマ娘だった。モーリスを疑う発言をしたシンボリルドルフに対し、鋭い目つきが向けられている。

其処に敵対心と怒りが含まれているのは誰の眼にも明らかで、その姿を前に、私は相当お怒りを買ってしまったらしいと自らの言葉を反省し、謝罪しようと口を開く。

 

「…いや、すまない。不快にさせてしまったなら謝罪しよう。それで…失礼だが、君は?」

 

「…………」

 

「こら、シチー」

 

シンボリルドルフの言葉に不満たらたらと言わんばかりに沈黙していた彼女だったが、モーリスが促す様に言葉を掛けると渋々と居た感じに彼女はその名を呟いた。

 

「…………帯広トレセン学園で生徒会副会長を務めております。《エスポワールシチー》です。よろしくお願いします」

 

彼女が名乗ったその名前。それを聴いたシンボリルドルフはこれはまた、と驚きを露にする。

《エスポワールシチー》。地方に属しながらも中央で数多の活躍を繰り返していた優秀ウマ娘の1人だ。

その姿は中央の職員の目に留まり、中央から好待遇での勧誘を受けたが、その全てを断り続けたと言う話は聴いていた。

だが、まさか……

 

「(モーリス、そしてエスポワールシチー……中央が欲し、それでも得られなかったウマ娘が2人も帯広に、か)」

 

帯広トレセン学園に所属する二人の登場。

それに驚愕させられたシンボリルドルフであったが、当の二人はその反応に慣れているのだろう。モーリスは小さく笑みを、エスポワールシチーはまだ不満があるのか不愉快そうにモーリスの隣に並び立つ。

 

「シチーが失礼しました。えっと、先程の質問の答えですが、今現在の生徒会長は確かに私です。ですが、私が生徒会長になったのは本当にごく最近の話で少し前までは私ではなく、あの御方が生徒会長でした」

 

あの御方、それが誰を意味するのかを差す様にモーリスの視線がバスに向けられる。それに釣られて視線を向けてみると、1人の見知ったウマ娘が降りてくるのが目にはいる。

その姿に、思わずシンボリルドルフはその名を口にした。

 

「コスモバルク!!」

 

《コスモバルク》

彼女こそがシンボリルドルフが記憶していた帯広トレセン学園の生徒会長であった筈のウマ娘だ。中央のみならず、海外での出走記録を持っており、日本のみならず世界にその走りを知らしめた道営のエースだ。

シンボリルドルフとも交遊があり、互いにその走りを称えあった二人が久しぶりに再会を果たしたーーのだが……

 

「んぁ……?……あー、ルドルフー……元気だったー?」

 

その姿はシンボリルドルフが記憶しているそれとあまりにも異なっていた。明るく活発的だった姿は何処へ消えたのか、疲れきった表情で無理やり浮かべた笑顔は痛々しく、普段はきちんと着こなしていた制服も着崩された上にシワだらけで目の前にいるのが本当にコスモバルクなのかと疑ってしまう程だ。

 

「……こ、コスモバルク?」

 

「あー……お気持ちは察しますけど、あれ間違いなく前会長です」

 

その声に視線を向けてみると、いつの間にかモーリスの側にもう1人ウマ娘が増えていた。

 

「コトノアサブキ!君も来ていたのか!!」

 

「ういっす!お久しぶりですシンボリルドルフさん!」

 

《コトノアサブキ》。

ダービーに出走した記録を持つウマ娘で、中央での活躍はあまりないが北海道においてはまさしく強者の走りを繰り返し、今や《道営最強》の異名を持つウマ娘だ。

 

「久しぶりだな。それで……コスモバルクはいったい……」

 

「それについては私から説明をさせてもらいます」

 

シンボリルドルフの問いに代わりに答えたモーリスが経緯を説明し始める。

 

コスモバルクがああなった原因は少し前に出走したとあるレースにある。そのレースでコスモバルクはあるウマ娘の前を横切ってしまった。無論そこに悪意はない。レースの最中に起きたアクシデントだ。

だがその横切られた相手のウマ娘は相当に頭に来たらしく、レース終了後にコスモバルクに散々に文句を言ったらしい。

その内容は凄まじかったらしく、本人はそれをレース後も強く気にしてしまい、それ以降スランプの様な状態になってしまっている。

 

そのおかげでレースも生徒会での仕事も上手く行かなくなってしまい、事を重く捉えた学園はコスモバルクを療養させる事を決定。

その判断に本人は一切逆らう事なく受け入れ、その後に行われた生徒会選挙で当時生徒会に所属し、コスモバルクの代わりに生徒会業務をこなしていたモーリスが選ばれてーー今に至る。

 

「それ以降、前会長はあんなんになっちまって……シンボリルドルフさんや中央の皆と会えたら少しはマシになるかなって連れて来たんですけど……」

 

そう語るコトノアサブキの視線の先でぽけーと日を浴びているコスモバルクの姿はさながら老後の生活を向かえた老バと言った所だろう。

 

「そうか……そう言う事情が……」

 

「はい。当学園としましてもこれまで学園を引っ張ってこられたコスモバルク会長の不調は大きな問題になってしまい箝口令……とまでは行きませんが、自然と口外しないようにしようと誰もが口を閉ざし、その影響で会長の不調を知るのは学園関係者のみです。私も会長が回復なされるまでと言う限定条件で生徒会長の任を引き受けましたが、回復の兆しが無く……」

 

なるほどなと思う。

そのレースでの出来事はシンボリルドルフも知ってはいた。

相手ウマ娘の怒りに対し、コスモバルクは一切反論する事なくそれを聞き、ただ言われるがまま沈黙していたのも知っていた。

だが中央トレセン学園の生徒会長である自分が地方の問題に介入すれば、それが大きな問題となってしまうのは明らか。

だからこそ歯がゆい思いであったが、シンボリルドルフは沈黙を選んだのだが……その結果を見せられ、後悔する。

 

あの時助けていれば、と。

だからこそ決意する。友の今の姿を見せられ、それに苦しむ者達を見せられ、決心する。

 

「……委細承知した。私に出来る事は少ないかもしれないが、交流会中は可能な限りサポートさせてもらおう」

 

友を助けたい。その一心でそれを口にした。




帯広トレセン学園生徒会
生徒会会長モーリス
生徒会副会長エスポワールシチー
生徒会会計コトノアサブキ
生徒会前会長 現生徒会役員コスモバルク
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