スペ「すぺしゃるうぃーく、さんさいです」   作:にゃるまる

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今回帯広トレセン学園のウマ娘しかでません


第25話

 

「はぁ~!スぺちゃんマジ天使だわ~!!」

 

中央が用意してくれた宿泊施設。

流石は中央と呼ぶに相応しい立派な施設の一室で、コスモバルクは未だに収まらぬ興奮を枕を抱きしめて布団の上をゴロゴロと転がる事で発散し、そんなコスモバルクの姿に同室相手となったモーリスは小さく笑いながら彼女に声を掛ける。

 

「会長。ご回復おめでとうございます。念のための確認ですが、無理はしていませんよね?」

 

「当然無理なんてしてないわよ~♪可愛い可愛い妹分とのひっさしぶりの再会だもの!あれで元気出さなきゃ何時出すのって話よ!あ~スぺちゃんマジ天使……♪」

 

笑みを浮かべながらそう語るコスモバルクの姿に、中央にやってくるまで見せていた元気ない姿は感じられない。

無理をしているわけでもなく、虚偽を申しているわけでもない。

本当に回復しているのだと分かるとモーリスは心底安心したと優しい笑みを浮かべる。

 

コスモバルクの回復。それはモーリスにとって喜ばしい知らせとなった。

彼女の復帰を待ち望む生徒の中でもモーリスはその筆頭と呼んでも過言ではない程この知らせをずっと待ち続けていた。いつか必ず彼女は戻ってくる、そう信じて彼女が戻ってくる場所である生徒会長の座を守り通してきた。

 

そんなモーリスにとって目の前で元気にはしゃぐコスモバルクの姿は吉報以外の何でもない。

今までの頑張りが報われた瞬間でもあった。

それにもしもと言う可能性に備えて交流会が始まる少し前に引継ぎの準備を済ませてきたのも吉となった。

 

「(これで私の役目は終わりですね)」

 

生徒会長の座を降りる事に僅かな抵抗があるにはあるが、この席に座るのにふさわしいのは彼女だ。

だからこそ私は彼女に生徒会長の座を返却し、その傍で彼女を支える。

もう二度とあんなことが起きない様に徹底して彼女を支え、そして共に彼女がかつて語ってくれた《理想》を叶えてゆこう。

そう決意を新たにするモーリスに――

 

「あ、そうそう。ねえモーリス」

 

「え、はい。どうしました会長?」

 

 

 

「生徒会長だけどさ、モーリスが継続してやってね」

 

 

 

――コスモバルクはごく当たり前の様にとんでもない発言をかました。

 

「―――は、い?」

 

「いやだからさ、生徒会長。あれモーリスが続けてやってね♡」

 

「……は、はぃぃぃッ!!?」

 

お淑やかで優しく美人で生徒の多くからお姉さまと呼ばれ慕われているモーリスは思わず叫んだ。

自身のキャラが崩壊していると自覚しながらも叫んだ、叫ばざるを得なかった。

モーリスにとって帯広トレセン学園の生徒会長とはコスモバルクを置いて他はおらず、そんな彼女が戻ってきたのだから必然的に彼女が生徒会長へ戻ると信じて疑っていなかった。

そんな彼女に対してのコスモバルクの発言は、それだけ彼女に驚愕を与えていたのだ。

 

だからこそ納得がいかないと言葉を続けようとする。

生徒会長は貴女に相応しいと。私では力不足だと。

しかしその言葉が出るより先に――

 

「ストップ~とりま説明を聞くでそうろ~」

 

ふざけた言葉と共に手で制される。

普段ならばともかく興奮している今はそんな事では止まらないとモーリスが言葉を出そうとするが、それが止まる――否、止められる。

ふざけた言葉とは裏腹に真剣なその眼差しに。かつて視たあの力強い眼差しを前に、止められる。

 

「よしよ~し。良い子だねモーリスは」

 

そんなモーリスをさながら親が子をあやす様に頭を優しく撫でながらコスモバルクは説明を始める。

どんな説明が出てくるのか、それを一字一句聞き逃すかとするモーリスが聞いたのは――

 

「まあぶっちゃけ言って、私よりもモーリスの方が仕事出来るからってのが主かなぁ。私はまだもうちょっと伸び伸びと自由を謳歌しておきたいの!!」

 

「ちょっと!!」

 

とてもではないが納得が出来るわけもないやる気を感じさせないそれに思わずツッコミを入れる。

そして更なる言葉を繰り出そうとして――

 

 

 

「けどさ、モーリスが此処でやろうとしてる事って生徒会長の立場があった方がしやすいでしょ?」

 

 

 

――止まる。

今度こそ、完全に止まる。

コスモバルクのその言葉がモーリスの動きを完全に止めた。

 

「――モーリスはさぁ~も~少し演技ってものを覚えた方が良いね。そこで沈黙したら完全にアウトでしょ?」

 

「…会長があまりにも変な事を言い出したから驚いただけです。私が何をすると言うんですか?」

 

そう言葉を返すモーリスだがその表情には僅かな緊張がある。

それに対しコスモバルクは余裕綽々と笑みを浮かべながら言葉を続ける。

 

「ん~?私もさ、モーリスが何をしようとしているのかまでは分かんないけど…《何か》をしようとしているのは分かってるよ。そして恐らく――いや間違いなく、其処にスぺちゃんも関係している。違う?」

 

――思わず、この人はと背筋に冷たい汗が流れる。

この人はいったいどこまで見通しているのだろうかと緊張と僅かな恐怖に口内に溜まった唾を無意識に飲み込む。

 

「あ、それもアウト。こんな話の時に唾を飲み込む、なんて相手からすれば認めたと思われても仕方がないよ~こういう時は無理にでも笑顔を浮かべるのが大人の世界を生き抜くやり方ってやつさ~♪」

 

「…会長もまだ学生で子供でしょう?」

 

「なにを言いますか!私はもう立派なアダルティな大人ですぅぅ!!」

 

――会話して分かる。

つい先日まで生徒会室の窓際でぼーとしていた彼女とは異なる、本来の彼女の末恐ろしさ。

帯広トレセン学園の為、学園に通う多くの生徒の為にURAを始め数多くの大人達と争い、勝利し続けてきたコスモバルクと言うウマ娘の本来の恐ろしさをこの身で体験して分かる。

 

やはり私はこの人の足元にも及ばないのだと。

この人は遥かな高みの上から私を見下ろし、そして私を導こうとしていると。

先程は私が何をしようとしているのかは分からないと言っていたが、それも本当なのか怪しい。

全てを理解した上で、私がやりやすい様にとふざけた言葉を用いて生徒会長の座に残そうとしているのかとさえ思ってしまう程だ。

 

だからこそ私は思ったのだ。

この人を、コスモバルクと言うウマ娘を――

 

 

 

「―――分かりました。全てお話します」

 

 

 

――敵にしてはいけない、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アッハッハッハ!!」

 

コスモバルクは今しがたモーリスの口から聞いた彼女の計画に大笑いした。

 

「なんともまあ!なwんwとwもwまwあwww!!」

 

末恐ろしい子だとコスモバルクはモーリスを笑う。

その企み、そしてそれを叶えるのに必須な条件。

それはあまりにも困難な道行きだ。下手をすれば相当酷い結果さえありうるものだ。

帯広トレセン学園の前生徒会長として止めるべきなのかもしれない。

けれど、そうけれど―――

 

「―――面白い!!!!」

 

――私は笑う。

彼女が考えたその企みに、獰猛に笑う。

面白いと、心の奥底に眠る本能に火が点るのを感じながら笑う。

 

「それでそれで?ぶっちゃけ勝算は如何ほどに?」

 

「…交流会が始まる前に1人ほど欲しかった人を味方に引き入れる事が出来たので4割程度、ですかね」

 

「4割wwそれでやっちゃうのww」

 

ケラケラとひっさしぶりに腹から大笑いする。

本当にこの子はなんともまあ恐れ知らずな事を考えるものだと。

 

だからこそ私は充実な気分だった。

きっとこの子は地方に新しい風を引き入れてくれる、そう思って勧誘したあの子が私の想像を超えて大きく育ち、そして大きな壁に挑もうとしている。

面白い、ほんっとうに面白い子に育ってくれたものだ。

 

きっとこの子はこれからももっと育ってくれる。

地方に、いやウマ娘に新しい風を招き寄せてくれる逸材となる筈だ。

だからこそ私は―――

 

 

 

「じゃあさ、それに私も加われば勝算どのくらいまで上がる?」

 

 

 

――この子をもっと育て上げたいと思った。

 

 

 




帯広トレセン学園生徒 簡易紹介

《モーリス》

帯広トレセン学園現生徒会長。
地方に属してはいるが、中央でのレースにも出走しており、そこで収めた成績は中央トレセン学園生徒会長であるシンボリルドルフが求める程であったが、彼女は中央行きを拒否し地元である帯広トレセン学園へと入学。
成績優秀、運動神経抜群、大和撫子を連想させる才色兼備なその姿から学園の内外から《お姉さま》と呼ばれ、多くの生徒に慕われている。
入学先に帯広トレセン学園を選んだ理由の1つにコスモバルクからの強い説得があったと言う話もあるが、真偽は不明。
スペシャルウィークとは歳が近いと言うのもあって、仲の良い友人としてずっと傍に居たが、一部のウマ娘曰くあの目は友人を見る眼ではなく、もっと深い何かを見ている目であったと語る。
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