スペ「すぺしゃるうぃーく、さんさいです」   作:にゃるまる

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久しぶりに掛けました…
後今回はシンザン視点の過去のお話です。


第34話

――都会 某墓地――

 

「うわ。ほんとうにあるよ」

 

まさか生きていながら自分のお墓を見る日が訪れるとは――

近年稀に見ぬと言う大雨のおかげで他には誰もいない墓場。

そんな墓場で自身の名前が刻まれた墓石を前に私はいったいどんな表情をすればよいのだろうかと戸惑い半分困惑半分と言った面持ちで、墓石を見詰めていた。

 

「ね?嘘じゃないでしょ?」

 

そんな私の傍に控えているのは、遠く北海道の帯広トレセン学園の生徒会長コスモバルク。

地方校でありながら中央に追い付くレベルの規模と設備を保有するまで帯広トレセン学園を成長させた稀代の名君であり、URA上層部とも幾度も言葉と言う矛を交えてきた屈指の強者。

レースにおける成績こそ決して上のランクとは言えないが、その政治力とカリスマは本物であり、中央が特別枠での勧誘も幾度か申し出たと言う程の傑物。

そんな彼女は私の傍でクルクルと何処かで見覚えのあるカエルの絵柄の傘を回しながら、やっと理解してくれたと言わんばかりにやれやれと言った表情を浮かべていた。

 

「うーん…まさか本当に死んでる扱いとは…これは驚いたね」

「あれだけ説明してもそれはないでしょーって言い続けるから、これは見せた方が速いなーと思って、わざわざURAとの会談の為の都会旅行にこっそりと連れて来てみたけど、納得して頂けたら努力した甲斐がありますね~」

「いやー、だって《貴女はもう死んでいる》って言われても信じる方が難しいと思うんだけどね。思わず何?北○の拳のネタ?ってツッコみたくもなるよ」

 

親し気に会話をするが、実際私と彼女との間に作られた縁は1月にも至っていない。

それでもなおこれだけ親しくなれているのには1つ訳があり、それを話すにはまず私がどうして行方不明になったのかを説明しなければならないだろう。

 

私があの日姿を消した理由。

それはただ単純に――世界の全てと競ってみたいと思ったからだ。

世の中には様々な理由でレースの舞台に立つ事が出来ず、才能がありながらも別の道へと進む者が多くいる。

それが自分の意思で選ばれたのであれば仕方がないで済むだろう。だが、その中には当然自分の意思ではなく、他の何かが原因で諦めるしかなかった者達もいる筈だ。

 

その最もな例を私は日本で体験している。

偶々路地裏で出会った所謂不良と言われるとあるウマ娘。

彼女は家庭の事情でレースを走る事なく別の道へ行く事を選ぶしかなく、けれどその道が上手く行かずに不良と言う道へと逃げてしまった子だった。

そんな彼女に偶々出会い、喧嘩を挑まれたが、私は走りならと答え、彼女も驚きながらもそれを受け入れて競い合い――ほんの僅かの差で勝利すると言う結果だった。

 

ハッキリ言って才能があった。

中央でトレーナーと組んで鍛えれば、まず間違いなく才能が開花するタイプの子であるのはその脚で分かった。

久しぶりに楽しいレースだったと心の底から感じ、そしてその喜びを感じたいと私は、同じ境遇にいるであろう世界中のウマ娘と競い合う為に、旅に出た。

 

実際、楽しい旅だった。

多くの国を巡り、多くの才能あるウマ娘と競い合い、そして全員こそ無理であったが幾人かのウマ娘には新しい舞台を用意してあげる事も出来た。

実に楽しく、充実し、心の底から歓喜に震える旅であったのだが、その旅は意外な形で終わりを告げてしまう。

 

それこそが例の私が死んだとされた紛争国だ。

その地で私は同じ様なウマ娘と競い合い、充実した時間を過ごしていたのだが…まさかの停戦終了からの戦闘再開となり、私は銃弾の中を走り回って逃げると言う貴重な体験をする羽目になってしまった。

ただまあ結構な時間を掛けて無事に逃げる事に成功し、安全であろう隣国まで逃れ、そろそろ一度日本へ帰ろうかなーと思った矢先に、私は自身の身分を証明する生徒手帳を始めパスポートやらなんやらを全て紛争国で紛失した事に気付いた。

 

この時の私は知る由もなかったが、どうもその間に私の死亡ニュースが世界規模で流れてしまっていたらしく、またその国に日本国の大使館などが無かったのがとどめとなった。私は自身の身元を証明する事が出来ず、また連絡しようにも機器も紛失したので持っていないとなり、お金もぶっちゃけなかった。

なので飛行機も船にも乗れない。日本に帰れない。希望がないとなり、「あ、詰んだ」と嘆いたものだよ…

 

だが、それで折れないのが私の良い所だろう。

《空も海もダメなら、大地を走って日本へ帰ろう》と。

 

そう思い立ったら何とやら。

どうせ走って帰るのならと私は世界の主だった国々を避け、秘境と言う秘境を選び、其処で素晴らしい才能の持ち主を見つけては走りを教え、競い合い、そしてまた次の国へと旅立つを繰り返すと言う驚愕の旅を続けて、遂に日本へと――辿り着けなかった。

 

具体的に言えば、ロシアの最も日本に近い場所までは行けた。

だが、其処からはどう足掻いても海を渡る必要があり、流石の私も列○王みたいに水上を走るのは無理。

かと言って身元を証明する事が出来ず、またお金がない私には船に乗る事も出来ない。

最悪某金塊争奪戦の様に流氷の上を、と考えこそするが、時期的に流氷もないときた。

さてさてどうしたものか、と悩んでいた時に出会ったのが――

 

《あれ?もしかしてシンザン?え?死んだんじゃなかったっけ?》

 

――偶々ロシアへと赴いていたコスモバルクであった。

何故ロシアに居たのかは決して教えてくれなかったが、それでも彼女が色々と協力してくれたおかげで日本への帰還を果たしたのだが、そこで明かされたのが世間的には私がもう死んでいると言う事実。

だがまあ、いきなりお前死んでるよと言われても信じる事なんて到底無理な話であり、それならばとコスモバルクは都会で行われるURAとの会談にこっそりと変装させた私を同行させて、そして今に至ると言う形だ。

 

「いやぁ。本当に死んでる扱いなんだね私って。大抵の事は驚かないつもりだったけど、これは驚いた」

「ほら~嘘じゃなかったでしょ?私は嘘は嫌いだからね~」

「え?」

「……え?何その反応?私嘘嫌いだよ?」

「…え?いや、だって…ねぇ」

「え、ちょ、ま、待って!?シンザンの中で私ってどんなキャラになってるの!?ちゃんとあれだよね!?嘘が嫌いな高貴な生徒会長のイメージであってるよね!?」

「―――――うん。ノーコメントで」

「ちょっとそこはコメント欲しいんだけどな!!?」

 

誰もいない墓場。其処で二人は笑いあう。

コスモバルク。出会ってわずか1月足らずでこそあるが、彼女はハッキリ言って良い人だと思う。

願ってもないのに様々な支援をしてくれるし、日本に着いてからも数多くの協力をしてくれている。

今現在生活出来ているのも彼女のおかげだ。それらの点において私は純粋に感謝しているよ。

 

だからこそ―――

 

 

 

 

 

「で?私に何をして欲しいの?」

 

 

 

 

――その優しさの裏から滲み出ている《欲》に容易く気付けた。

 

「――分かる?」

「うん。分かる」

 

最初から理解していた。

コスモバルクが向ける優しさの中に感じる思惑。

それが何かまでは流石に分からなかったが、それでもハッキリと感じていた。

《嗚呼、この子は私に何かをさせようとしているな》と。

 

「うへぇ~流石は天下のシンザンだね~。まさか見抜かれてるとはね~」

「アハハ―――冗談上手いねコスモバルク。最初から見抜かれてるって知ってたでしょ」

「……たはぁ~やっぱりそこからかぁ~…確信はなかったけどねぇ~」

 

一度会話が途切れて雨音だけが音を奏でる。

数秒、数分だったのかもしれない。長いような短いような沈黙。その果てにコスモバルクは口を開く。

 

 

 

 

 

「協力してほしいシンザン。私の掲げる夢に――地方と中央との境界をぶち壊すこの夢に」

 

 

 

 

 

その瞳に狂おしい程の欲を魅せて―――

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