スペ「すぺしゃるうぃーく、さんさいです」   作:にゃるまる

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カレンチャンが来ない…代わりにゴルシが勝負服覚醒しました
ちなみにスーパークリークとグラスワンダーの能力はウチの育成した子を参考にしているのでは他と違っていたらごめんなさいです。


第8話

 

ーー最初は嫉妬心でした。

スペちゃんとの初めてのレースだった宝塚記念。私はずっと貴女を見ていたのに、貴女とのレースを楽しみにしていたのに……貴女が見ていたのは私ではなくスズカさんでした。スズカさんの心配をするなとは言いません。私だって逆の立場ならきっとそうします。

だけど……私とのレースの時だけはスズカさんではなく、しっかりと私を見てほしかった。

そんな状態で挑まれても、そんなスペちゃんを相手に勝利を勝ち取ってもただ虚しいだけで…あの時程楽しくないレースはありませんでした。

 

ーーけどあのレースを経験したからこそ理解してしまったんです。

私が本当に望んでいた事を、友人と言う言葉に隠してしまっていた私の汚れた本心を、理解してしまいました。

 

私はーースペちゃんの事が大好きなんだって。

友人としてではなく、恋愛の対象としてーー

 

スズカさんの事を楽しそうに話していた時も、スズカさんの為に必死にリハビリのお手伝いをしている姿を見せられている時も、スズカさんとの用事を優先して私を後回しにしてしまっていた時も…全部本当は嫌で嫌で堪らない思いでした。

私を見てほしい。スズカさんじゃなくて私だけを見てほしいと何度も心の中で叫び続けていました。

 

けどそれを言葉にして伝える事は絶対に無いと分かっていました。

この気持ちを伝えたら、スペちゃんとの絆が消えてなくなるかもしれない。スペちゃんが私を嫌ってしまうかもしれない。そんな恐怖に負けた臆病者の私は《友人》と言う関係に逃げてしまいました。

己の心に本心を隠し続け、向けられる笑顔に苦しい感情を抱き続ける愚かな道を、私は選んでしまいました。

今後もずっと続く苦しい道、そんな道を選んだ事に後悔しながらも耐え続けていたある日ーーー1つの分岐点を迎えました。

 

それがスペちゃんの記憶喪失でした。

ウマ娘の記憶喪失と言う過去に事例のない未知の事態。病室で再会したスペちゃんは本当に子供みたいになってしまっていて、最初はそんな彼女を助けたい一心で彼女の面倒を見ると立候補しました。

けれど向けられる笑顔を、純粋無垢なその笑顔を見る度に私の胸の中に隠し続けようとしていた本心が滲み出て、そして何時からかこう思ってしまっていました。

 

《ずっとこのままで良いのに》と。

 

それが歪んだ感情である事は理解していました。

けれど、どうしても思ってしまうんです。

スズカさんの事を語らないスペちゃん。

他の人は警戒するのに私には懐いてくれているスペちゃん。

スズカさんじゃなくて、私だけを見てくれているスペちゃん。

そんなスペちゃんを見ているとどうしても隠そうとしていた本心が出てきてしまい、段々と歪んだ感情は私を飲み込んでいきました。

 

スペちゃんに愛されたい。

スペちゃんの瞳に映る相手を私だけにしたい。

スペちゃんの全てをーー私の物にしたい。

 

「……だから」

 

この勝負だけは絶対に負けられない。

私の……私のスペちゃんを奪われてなるものか……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《さあ今ゲートが開きました!!》

 

ゲートが開くと同時に二人は駆け出す。

両者共に完璧なスタートダッシュ。一切の遅れがない状態でレースは始まりを告げた。

 

《まず先頭を行くのはスーパークリーク!安定した動きで前を行きます!!しかしグラスワンダーがそのすぐ後ろに並ぶ!!》

 

駆ける足のまま前を、追い縋る相手を見据える。

スーパークリーク先輩の武器はスタミナとコーナーの加速だ。

特に適切な体力調整と加速を同時にこなすコーナーの加速は凄まじく、一度離されたらそう易々と追い付くのは困難だろう。だからと行って前に出るのは危険だ。彼女が持つ圧倒的なスタミナがこちらのスタミナを削りきってしまう。

 

だからこそ私が取る手段はただ1つーー

 

「逃がしません……!」

 

ある程度の距離が引き離されるのは仕方なしと考えて、体力を温存しながらその背中を追い続ける!

 

「(勝負を仕掛けるのはーー最後の直線!)」

 

その狙いをスーパークリークも理解していた。

スタミナでこそ勝っているものの、単純なスピード勝負であればグラスワンダーの方が上だ。このまま直線勝負になれば負ける可能性は高いが……

 

「そうは……させませんよ!」

 

第1コーナー到達と同時に加速する。

遠心力で身体が外側へとずれようとするが、力強く踏みしめた脚がそれを防ぎ、内側で安定した加速を成功させる。

グラスワンダーもそれに追い付こうとするが、僅かに距離が離されていく。第1コーナーでこれでは追い付けなくなると温存する体力を少しばかり消費して完全に離されない程度に加速していくがやはりコーナーでの勝負は向こうが上。徐々にではあるが距離が出来ていく。

 

「―――ッ!」

 

幸いなのは第2コーナーでの加速が無かった事だろう。

第3コーナーに至る直線で離されていた距離をなんとか埋め、再度その背中へと追いつくが距離を埋める際にそこそこの体力を必要としてしまった。

このままでは最後の直線まで体力を温存する事ができない――!

 

「でしたら…!!」

 

第3コーナー到達と同時に再度スーパークリークが加速しようとするのを確認してから――前へ抜け出ようとする振りをする。

 

「ーーッ!?うそッ!?」

 

勝負を仕掛けて来るなら最後の直線だと踏んでいたスーパークリークにとって、グラスワンダーが此処で抜け出ようとしてくるとは思っていなかったのだろう。

咄嗟にスーパークリークは背後を警戒してしまい、加速しようとした脚の動きが鈍り想定していた速度に至らなかった。それを見て良しっと判断し、再度スーパークリークの背後へと戻る。

騙されたと気付いた時にはもう遅く、2人はそのままの脚で第4コーナーへと至り――そして今度こそグラスワンダーが勝負を仕掛けた。

 

《グラスワンダーが前へ出たぁぁ!!速い速い!!グラスワンダー速いぞ!!》

 

残された体力を出し切る様に前へと進む。

スーパークリークの存在を背後に感じながら、グラスワンダーは確かな手ごたえを感じていた。

これならば、と。しかし―――

 

《おっとォ!!スーパークリークが並んだぁぁ!!まだ勝負の行方は分からないぞ!!》

「嘘ッ!?」

 

残された体力を出し切るのはスーパークリークも同じ。

コーナーでの加速に失敗こそしたがその代わり消費する予定だった体力はそのまま持ち越している彼女にとって直線での加速は可能だ。だが理解出来ないのはその速度。スピード勝負ならばグラスワンダーの方が上だと言うのに、今の彼女が繰り出している速度はグラスワンダーと並ぶ程だ。

どうして、そう戸惑いながら横を見ると其処には――

 

「ぜったいに…絶対にスぺちゃんを甘やかすんだからぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

己の欲望を叶えようとする母性の結晶が吠えながら更に速度を上げていく光景があった。

 

「バブバブバブバブ(スーパークリークの力の源は誰かを甘やかせる事にある。勝利すればスペシャルウィークを思いっきり甘やかせると言うご褒美がある以上、彼女は限界の先を出せる!!)」

「スーパークリークのトレーナー!……相も変わらずの赤ちゃん言葉とおしゃぶり装備なのか…」

「バブバブバブバブぅ!!(クリークの勝利の為なら俺は喜んで赤ちゃんになる!!)」

 

全身筋肉マッスルなナイスガイ(スーパークリークのトレーナー今年で33歳)がおしゃぶりを咥えながら赤ちゃん言葉でスーパークリークの解説をする中で勝負は進んでいく。

欲望をエネルギーへと変えながら前へと進むスーパークリーク。並んでいた均衡はゆっくりと彼女を前へ前へと進ませていき、このまま行けば勝利を手にするのは彼女であるのは明白だった。

しかしそれを良しとしないのが、此処に1人――

 

「――ッ!スぺちゃんはぁ……スぺちゃんは!!私のです!!!!!!!!!」

 

盛大な愛の告白と共に加速した。

 

《凄い凄いぞ!!両者ともに凄まじい加速をしていく!!残り200!!勝利を手にするのはスーパークリークか!!?それともグラスワンダーか!!?》

 

 

 

「「やああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」」

 

 

 

観客席の歓声と実況、そして何よりも――

 

「がんばえ~」

 

2人が最も望む応援を耳に、残された全てを絞り出し――ゴールした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――あれから数時間が経過した。

盛りに盛り上がったレースは大歓声の中終わりを迎え、その勝敗は――

 

「…スーパークリーク先輩。先輩のスぺちゃん当番は明日に決まりましたでしょう?ですので今日の所はもうお帰り下さい」

「もうちょっと!もうちょっとだけ!!」

「きゃきゃきゃ!」

 

――まさかの同着だった。

用意されていたカメラで幾度も映像確認をしたが、どう見ても結果は同着。

まさかの結末に2人は驚愕しながらももう一度レースをして決めようとなったが、それを各々のトレーナーが阻止。ただでさえ限界の先を出し切ってのレースを行ったのだ。それをもう一度するとなれば身体への負担は凄まじい事になると説得され、渋々ではあるが両者共にこれを承諾。

ならばスペシャルウィークの面倒を見る件についてはどうするか?となり、それを上手い具合に仲裁したのが、トレセン学園生徒会長であるシンボリルドルフだった。

 

元々スペシャルウィークの今後についてある程度ではあるが決まった事をトレーナーに報告しようとしていたのだが、レースの最中にそれを伝えるのは野暮だと待っていたらしい。

そんなシンボリルドルフの口から説明されたのは以下の通り。

 

1つ、ひとまず一月の間は以前同様に学園での生活を継続する。

2つ、月の最後の診察で記憶喪失回復の傾向が見られた場合は継続して学園に残る。

3つ、ただしその検査で記憶喪失回復の傾向が見られなかった場合は実家へ帰省させる。

4つ、またスペシャルウィーク本人が希望するのであれば即時帰省も許可する。

 

他にも細々とした内容があったが、大まかに分ければこの4つだろう。

その説明の中でシンボリルドルフは《スペシャルウィーク当番表》なるものを作成。

これによりグラスワンダーとスーパークリークが一日交替でスペシャルウィークのお世話を担当する事が決まったのだったが――

 

「スーパークリーク先輩。何時でも辞退されても構いませんよ?先輩も多くのレースに参加するご予定があるので、そちらの練習に励んでもらった方が良いのでは?」

「グラスワンダーちゃんこそいつでも私に任せてくれても良いのよ?スぺちゃんは私が責任を持って面倒を見るから♪」

 

両者の間に迸る火花。

言葉でこそ冷静だがその内心は大荒れの2人を見ながら、グラスワンダーの荷物を持ってきていたエルコンドルパサーは思う。

お願いだからスぺちゃん、早く記憶を取り戻してと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アメリカのとある空港。

空港の職員であるその男は目の前の少女に貰ったサインを大事そうに抱えていた。

 

「アリガトウ!!」

 

片言の日本語でのお礼に、少女は小さく手を振って応えながら搭乗口へと向かう。

搭乗口に記されている飛行機の行く先は――日本。

大好きな親友が、そして絶対に勝ちたいと願うライバルが待つ国だ。

 

「――待っててね。スぺちゃん」

 

またスぺちゃんに会える、その喜びを感じながら――サイレンススズカは飛行機へと乗り込んでいった。

 

 

 

 




レース描写って超ムズイですね…下手な描写ですみませんでした!
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