【急募】女の子から変化した武器の手入れの方法【戻して】 作:ぴんころ
「本当はもうちょっと待つつもりだったのよ? でも、どうしても我慢できなくって……」
そう口にした次の瞬間、女の姿はその場から消えていた。
永遠神剣第二位『赦し』。その能力は、至極単純。名は体を表すを体現したかのような存在である。
短刀型の神剣は空間ごと全てを切り取るが故に、相手の内に存在する罪過を相手の肉体から切り離し、文字通り『赦す』のだ。
ただし切り離すのは相手の命ごと、の話ではあるが。
「あら……? 珍しいこともあるのね」
本来ならば、誰も打ち合うことができない永遠神剣。けれど多種多様に存在する永遠神剣の固有の能力には当然相性のいいものだってあるだろう。
普段、青属性の魔法として使われるユーフォリアの固有能力、永遠神剣の力を打ち消す能力もその一つだった。
「まさか、食べられるのを拒否するなんて」
空間転移により逢夢の眼前に出現したイャガは受け止められた短刀に少し首を傾げながらも、試してみましょうと一度二度、連続して武器を振るう。
そこに技量と呼べるものはない。ユーフォリアの手を借りずとも十分弾ける程度の攻撃。
一撃を奇襲で当てさえすればその瞬間に抹殺……彼女の言葉に従うならば捕食できるのだから、必要なのは剣士ではなく暗殺者としての技量だ。
「いや、そりゃいきなり言われて『はい、食べられます』なんて答える食材なんていないと思いますけど」
「そうかしら? 結構いるものよ。辛い思いをしてきた子とか、罪の意識に耐えられない子とか。もうこれ以上生きていたくない子は、最後に人のためになれるなら、って言って差し出してくれるわ」
「ならそういう奴らだけ食っててくれます? 俺、まだ食べられたくないんですよ」
だからこそ、予兆だけは見逃さないように。
軽口を叩きながらもマナの感知能力は最大限。空間跳躍の前兆たる揺らぎは確実に捉える。
鞘を握る力も強く、流し込むマナは一切の加減がない。
「ふふ……これでも私、グルメだと思ってるの。たまには美味しいものも食べたいのよ」
「それで食われるこっちとしてはたまったものじゃないですけど」
「大丈夫よ。食べられる時の痛みも不安も、全て私が引き受けるわ。そのために私はここにいるの。だから、安心してちょうだい?」
だからこそ、対応が間に合った。
空間跳躍ではなく、口上。マナを宿した言葉が起動させたのは、神剣魔法に連なる金色の魔法陣。
出現した赤い光は彼女が引き受けるべき『痛み』そのもの。ダメージではなく痛みを与える光球に世界が悲鳴をあげ、その対象を叩きつけられた白い光に移して消滅する。
それを見届けることもなく、背後へ向けて鞘を一閃。
「あら、バレちゃったわ」
空を切るはずだったそれは、転移により背後に回ったイャガの短刀と激突して火花を散らす。
膂力は逢夢が上。拮抗は生まれずイャガは吹き飛び、その勢いのまま空間を超えて天より落ちる。
吹き飛んだ勢いを乗せての一撃は、ユーフォリアが体を動かしたことで彼に届くことはなく。
返礼とばかりに放たれた
(ユーフィー。あの防御、どうやったら抜ける?)
『今のは咄嗟だったからダメだっただけですよ。おにーさんの最大出力なら全然問題ないです』
(なるほど)
鞘に纏った光がより高密度になる。
鞘に紡がれた刃はミニオン数百体分のマナを内包した代物。生半可な存在では見ただけで戦意を喪失しそうな武装を前に、イャガはどこか楽しそうな様子。
「本当に美味しそう。あなたも、あなたの永遠神剣も。きっと、とても美味しいのでしょうね」
「は?」
そうして呟いた言葉の返答は、音速を超えて迫る刃だった。
永遠神剣が生み出す精霊光の衣を貫き、物質的な白い衣を引き裂き、女の腕を切り裂く一撃。
それを放った逢夢は、自らの攻撃が生み出した成果に頓着することなくさらに殺すための斬撃を繰り出す。
「お前、今、なんて言った? ユーフィーを食うとかほざいたか?」
「ええ、そう言ったわ。その
イャガのそれが空間を削り取るのであれば、彼の攻撃は空間を強引に引き裂くもの。
紙一重で躱そうとすれば、まず確実に衝撃に飲まれて裂傷を負うことになる。
だというのに、女は避けるそぶりすら見せない。当然、イャガの肉体を千切るはずだった一閃は、けれどまるで透過するように彼女の肉体を通り抜けていった。
「怒らなくていいの、悩まなくていいの。私に身を委ねて……」
直後、剣を振り抜いた姿勢の逢夢の眼前に空間跳躍で出現するイャガ。
紡ぐ声音には慈悲の色。食べようなどと言いながら、本心から敵を慮る声で苦悩を取り払おうとしている。
他者を苛む罪を赦す『禊』を思わせる攻撃は、無造作な振り下ろし。
「そして、終わりなさい」
「ふざけんな」
そんな全てを削ぎ落とさんとする一撃を受け止めたのは、刀身の側面を叩くように速射で食らいついた白い光弾。
強烈な音を生み出しながら、逢夢を斬り裂く軌道からそれてしまった一撃。
今度は逆に、逢夢の前にイャガが無防備な姿をさらしている。それを視認した瞬間、一切の躊躇なくその胴体を切り裂くための横薙ぎ。
「……!?」
炸裂するのは金属音。上半身と下半身を両断するはずだった一撃を防いだのは転移してきた短刀。
周囲のマナを固め、その場に固定された短刀が盾となって火花を散らす。
その隙にイャガは新たな魔法の用意をしている。突き出した手のひらの前に浮かんだ魔法陣。
「そんなに暴れちゃうと食べ残しが出ちゃいそう」
それは『禁句』だった。
口にすることすら許されない言の葉には、当然ふさわしい罰がある。
「それはもったいないもの。ぜーんぶ、燃やしてからちゃんといただくわ」
「グルメを名乗ってるのに焼くんじゃなくて燃やすのかよ」
天罰。励起したマナが形を変えて空間を焼却する炎となった。
魔法陣の破壊……不可能。属性としては白属性。
ならばと、永遠神剣の能力を行使する。魔法陣に訴えかけるのではなく、魔法陣によって励起するマナそれ自体を鎮静させ、魔法の効果を消失させた。
『おにーさん』
(どうしたの、ユーフィー)
『この人、ロウ・エターナルです』
(なるほど、殺すのに躊躇しなくてもいいってことね。……する気もなかったけど)
『ええっ!?』
する余裕もなかった、とまでは思考しない。
もしも味方だったらどうするつもりだったんですか、というユーフォリアの驚きが伝わってくる。
(いや、ユーフィーを食べるとか言ってたし。その時点で敵でしょ。ユウトさんも同意してくれると思う)
全力の加速で踏み込んで──
700:名無しの転生者
いけー! イッチー! そこだーっ!
701:名無しの転生者
殺せー! ユーフォリアちゃんを食べようとかいう不届き者はぶっとばせー!
702:名無しの転生者
ユーフォリアちゃんを食べる(物理)
703:名無しの転生者
これが性的な話なら俺たちは百合の間から放逐されるイッチを笑って見ていられたんだがな
704:名無しの転生者
でもイッチごと食べるつもりらしいから、百合と同時にノンケな矢印もできてしまうことになるんだよね……
705:名無しの転生者
いや待て、双方向の関係性じゃないからただのレズだぞ
706:名無しの転生者
ユーフォリアちゃん相手に無理やりとか許されざるよ
707:名無しの転生者
イッチ、この掲示板見てる余裕ないでしょ
708:名無しの転生者
俺たちは一応実況モードでイッチの活躍見れてるけど、何やってるのかまるでわからん
わかるニキ助けて
709:名無しの転生者
あ、おいバカ
あいつを呼ぼうとするんじゃない
710:名無しの転生者
……?
どこの掲示板にも一人はいる戦闘系に強い有識者を呼ぼうとしただけだけど、ここのそいつはなんかやべえやつだったりするの?
711:ユーフォリアちゃんすこすこ侍、義によって助太刀いたす
呼んだでござる?
712:名無しの転生者
うわぁぁぁぁぁっ!?
713:名無しの転生者
出やがった……この掲示板でも弩級にやべえやつだ……!
714:名無しの転生者
(名前を見て)……あ、こりゃどう見てもやべえやつですわ
715:名無しの転生者
むしろなんでこんな名前にしたんだよ
許されてもユーフォリアちゃんすこすこ侍までだろ
716:ユーフォリアちゃんすこすこ侍、義によって助太刀いたす
いや、拙者も自分でこんな名前にしたんじゃないでござる!
この喋り方も掲示板側で勝手に変換されてるんでござるよ!
717:名無しの転生者
掲示板のせいにしようとするな
718:名無しの転生者
掲示板が変えたんだとしてもお前が変えられるような言動をしていたことは忘れてないからな
719:名無しの転生者
しかも聞いた話では、お前ユーフォリアちゃんの言動を把握するために動体視力鍛えたとかなんとか
720:名無しの転生者
イャガとかいう言いづらそうな名前のお隣さんよりもこいつを消した方がこの世のためなのでは……?
721:名無しの転生者
こいつ絶対ユーフォリアちゃんが元に戻ったらパンツ覗くぞ
722:名無しの転生者
無駄に鍛え上げた動体視力で確かに見そうだな
723:名無しの転生者
ま、すこ侍はイッチに報告しておくとしてとりあえず説明よろ
724:名無しの転生者
(なんでこんなボロクソに言ってるのに説明してもらえると思ってるんだろう?)
725:名無しの転生者
(あ、ちくわ大明神先輩ちーっす)
726:名無しの転生者
(ちくわ大明神の先行入力やめろ)
727:名無しの転生者
(ちくわ)
728:名無しの転生者
(大明神)
729:名無しの転生者
誰だ今の
730:名無しの転生者
まさかの二段構え
731:ユーフォリアちゃんすこすこ侍(最後まで表記するの面倒臭くなりました)
しょうがないでござるなぁ
とは言っても今のところは特に説明しないといけない部分はないでござるよ?
連続しての空間跳躍を相手に……あの動きはユーフォリアちゃんでござるな
ユーフォリアちゃんが迎撃をしているだけでござる
732:名無しの転生者
名前が変わってる!?
733:名無しの転生者
その名前で真面目な説明されるとなんともシュールだな
734:名無しの転生者
というか後ろの括弧内、一体誰の発言だよ
735:ユーフォリアちゃんすこすこ侍(あ、管理人ですよろしく)
本当でござる!? 名前が変わってるでござるよ!
使ってる魔法はよくわからないでござるね
攻撃だということはイッチが迎撃していることからも明らかでござるが、その種類がわからないからイッチも当たらないように迎撃しているのでござろう
736:名無しの転生者
名前変えてるのやっぱり管理人かよww
737:名無しの転生者
管理人のせいですこすこの発言が頭に入ってこないぞ
738:名無しの転生者
普通にレスしろよ管理人
739:ユーフォリアちゃんすこすこ侍
それにしてもこうして見るとユーフォリアちゃんの能力はチートでござるな
あの永遠神剣が通った空間が斬り裂かれているというのにユーフォリアちゃんは普通に打ち合えているでござる
能力を打ち消し純粋な技量に持ち込めるというのは、使用者がイッチではなく歴戦のエターナルであればかなりの脅威でござろう
何せ能力を起点とした戦術を全て叩き潰すことができるのでござるからな
というか説明を求めるであればちゃんと聞くでござる!
740:名無しの転生者
いや、すまん……
741:名無しの転生者
さすがに管理人が出て来るとは思ってなかったから
742:名無しの転生者
エターナルが本気で動くと普通の行動もまともに見えなくなるんだな……
743:名無しの転生者
その場に留まって尋常な斬り合いを始めたら腕だけ見えなくなりそう
744:名無しの転生者
説明を聞くにイッチはやっぱり未熟なんだな
745:名無しの転生者
ま、イッチはあくまでただの人間だからね
選ばれた主人公様だったりすれば、あるいはなりたてで勝てるのかもしれないけどそういうのもないし
746:名無しの転生者
ユーフォリアちゃんのお父さんは成り立てでエターナル撃破したらしいけど、それだって周囲には仲間がいて、エターナルになる前から永遠神剣とは契約していたって話だしね
747:名無しの転生者
やっぱり、まともな師匠のいないイッチは大変だな
748:名無しの転生者
でもエターナルだから、いずれはこの掲示板でもかなりの歴戦個体になるんだろうね……
749:名無しの転生者
イッチが歴戦の転生者になるって全く想像つかんのだが
750:名無しの転生者
まあ今の、相手の能力を制限してもかなりボロボロにされてる現状だとね……
751:名無しの転生者
……あ!? イッチが吹っ飛ばされた!?
【実況モードを終了します】
752:名無しの転生者
……イッチ、気絶した?
753:名無しの転生者
死んではない、よな?
754:名無しの転生者
でも戦闘中に気絶したって……もう……
755:名無しの転生者
いや、イッチが死んだらこのスレッドも消えるはずだ
756:名無しの転生者
多分、最後に誰か永遠神剣の契約者っぽいのが見えたから死んではない……はず……
757:名無しの転生者
味方なのか敵なのか……
758:名無しの転生者
消えてしまうんじゃないかとめちゃくちゃハラハラしてきた
759:名無しの転生者
あの永遠神剣、時深さんのじゃないのか?
760:名無しの転生者
分かんね……一瞬だったから
761:名無しの転生者
イッチ……
負けるシーン何回書いても納得いかなくて掲示板に頼ってしまった……無念