【急募】女の子から変化した武器の手入れの方法【戻して】   作:ぴんころ

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これにて本編は完結です。実は途中からもうエタりそうでしたが「お前、永遠神剣シリーズ沢山書いてはエタったんだから一作くらいは完結させろよ!」って、皆様の感想を受け取った頭の中の天使がペシペシ叩いてくれたおかげで、失速しながらも完結できました。ありがとうございます。


最終話

『さあ、行きましょうおにーさん』

 

 マナで構築された世界を侵食し、『焦土』へと書き換えるナルでできた津波が視界を覆い尽くす。

 エターナルであっても絶望的な光景。触れてしまっては一貫の終わりな一撃を前に、けれどユーフォリアの声は平時と何も変わらない。

 いつもと同じように鞘にマナを通し、納刀。そしてもう一度刀を引き抜いた。

 空色の刀身に収束する力がユーフォリアによって整えられ、新たな武装の形を形成する。

 

『イャガが全てを原初に還すのなら──』

 

 構成されたのは、特殊な形状の槍剣とでも呼ぶべきもの。

 知る者からは永遠神剣第三位『悠久』と呼ばれるその武器を正面に掲げ、起爆剤としてマナを打ち込む。

 

『原初から終焉まで、悠久の時の全てをあたしたちで貫いて、縫い止めます!』

 

 槍からこぼれ落ちるマナの粒子は、もはや全身を覆い隠すほど。

 そのまま全力での突進を行い、ナルの津波へと切り込んだ。

 鞘の力で変換、消失するナル。操ることはできずとも、マナ(天位)ナル(地位)のバランスを取る役割を持つ鞘に、ナルによる侵食が通用するはずもない。

 

「貫け」

 

『ドゥームジャッジメント!』

 

 無害な力の塊と変わったナルが魔法という形を保てずに霧散する。

 津波が塞いだ視界も開かれ、逢夢が捉えたイャガの姿は、どう見てもナルを取り込んだという様子ではない。

 ナルをただ放射するだけの機械。あるいは、ナルに振り回されているというべきか。

 マナと同じように力の制御ができているなら、こんな無様なものになるはずがない。

 

 そして、どうやら本人もそれに気がついていなかったようだ。

 

 切り開かれた波の奥、絶大な力を手にしたはずのイャガは驚きに目を見開いている。

 

『おにーさん、早く終わらせてあげましょう。あの人、多分ナルですっごく痛いはずです』

 

(そうだね。そうじゃないと、お隣から毎日ナルの痛みで叫ぶ声が響いてきそうだ)

 

 いや、鞘の能力であればナルの消失自体は不可能ではない。

 けれど、エターナルを構成するマナが全てナルと移り変わったイャガを相手にそれをするとなると、時間がかかる。

 ただの一刀でナルを消滅させられるけれど、その一刀が両断するまでに削り切られるという可能性がないとは言えない。

 

 ただ、それと入れ替わるように、エターナルであった頃のイャガと比べて負ける可能性は格段に下がった。

 今のイャガは手にしたばかりの玩具で遊んでいる子供のようなもの。これまで練り上げたマナの技量の全てを投げ捨てているような状態。

 普通のエターナルであればナルというだけでお釣りがくるような交換だが、今必要なのは彼女が投げ捨てたもの。

 マナであろうとナルであろうと相性関係を無効化できる彼に対抗するには、力の種類ではなく質の方が重要だった。

 

(ユーフィー、出力全開。この世界からナルを消し飛ばす勢いでいこう)

 

『はいっ! いっきますよー!』

 

 ユーフォリアが声に応え、少年を中心にマナの嵐が吹き荒れる。

 中心に近いマナを感覚で従え、行使するのは白属性の身体強化系神剣魔法。

 高まる力を感じ取り、イャガもまた己の中から限界まで力を汲みあげるのだが、その途中で首をかしげるのがはっきりと見えた。

 

「あら、腕の感覚が……」

 

 引き出せば引き出すほど、元がマナ存在だったイャガの肉体には反動がはっきりと現れる。

 腕の感覚が鈍くなったのか、あるいはなくなってしまったのか。

 けれどそれも困ったの一言で済ませ、最後の聖母は赦されざる罪に対する罰を繰り出す。

 

「それじゃあ、消えて……!」

 

 構築された形は暴風。

 津波と同じく、広い範囲を覆い尽くす技であり、自らよりも格上に対する攻撃としては収束させて、技量で叩きつける方が効率的なのだが、もうそれすらできないらしい。

 そんな、罰の暴風が迫る中、逢夢がユーフォリア(永遠神剣)の力を引き出し、ユーフォリアが逢夢(契約者)の身体能力を引き出す。

 少女が引き出しきれない域の鞘としての力が殺戮の突風をただの暴風へと変換し、少年が持ち得ない技量が強大な身体能力から繰り出される。

 

(ユーフィー、タイミングは全部任せるよ。君のやりやすいタイミングで言ってくれればその通りに使うから)

 

『お願いしますっ』

 

 暴風に切れ目が生まれ、そこから形を保てなくなっていく。

 同時に、イャガも転移を敢行。ナルの体を一度霧散させ、切れ目の目前で収束。ナルが集まったことで残っていたマナが全てナルへと書き換えらえ、自らの内に増えた毒に世界が悲鳴をあげる。

 自浄作用が働き、どうにかして体内に生まれた世界を殺す毒を抹消しようと空間圧殺に近い現象が発生するが、エターナルにとってはちょっとした阻害にしかならない。

 多少緩慢になった動作で振るわれた『赦し』が、切れ目からその姿を見せた空色の刀身と激突。弾かれたのはイャガの短刀、それに逆らうことなく二撃目の鞘に合わせる。

 

『ここですっ』

 

(任された!)

 

 ユーフォリアの指示に従い、解放する氷華がナルを氷結地獄に閉じ込める。

 内側を吹き荒れながら、決して侵食することができないその氷もまた鞘謹製。

 イャガも、手にしたほとんどの存在に対して有利を取れる力が、けれど彼らに対してだけは有効に働かないということを、何度も繰り返したことで理屈を知らぬままに理解する。

 

 膂力では敵わぬ。ナルもなぜか消し飛ばされる。

 ならば、必要なのは必殺の一撃。

 

「これで終わらせましょう」

 

 『赦し』がイャガの手から消え失せる。

 虚空の彼方に消え去ったその武器の、視覚ではなくマナを感知する力で探り当てた現在地は遥か彼方。

 疾駆するその一刀は一太刀にて広範囲に存在する生命、その全てが纏った穢れを命ごと消し飛ばす『大祓』。

 

「総ての罪を浄化する……これが、断罪よ」

 

「赦すんじゃなかったのかよ」

 

 で、あるならば彼もやるべきことはわかりやすい。

 いつものように、ユーフォリアの肉体操作の最中、彼はマナを練り上げる。

 マナの凍結にて『大祓』を減速させながら、ユーフォリアがその間に切り裂く。

 

『いつもと何も変わりませんよ。最大の力を、最高の速度で』

 

(最善のタイミングに叩き込む!)

 

 ユーフォリアから最初に習った、ユーフォリアもまた父親から習ったその極意に則って。

 絶対に避けられないタイミングで、その一撃が叩き込まれる。

 

『これで──』

 

「終わりだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

700:名無しのエターナル

 というわけで学園祭の時間だオラァっ!

 

701:名無しの転生者

 おらぁ!

 じゃ、ねーんだよ! イッチ!

 

702:名無しの転生者

 イャガ倒した直後に「疲れた、寝る」だけ言い残して放置するとはいい度胸だなおらぁ!

 

703:名無しの転生者

 神と仏が許してもここの掲示板民は赦すつもりはねえぞオラァ!

 

704:名無しの転生者

 >>703はイャガに食われた食品民かな?

 許すじゃなくて赦すだし

 

705:名無しの転生者

 イャガのせいでその二つ誤字る人このスレには多そうだけど

 

706:名無しの転生者

 >>703

 でもユーフォリアちゃんが許したら?

 

707:名無しの転生者

 許しちゃう(はあと)

 

708:名無しの転生者

 うわ、気持ち悪っ

 

709:名無しの転生者

 >>708

 ユーフォリアちゃん以外に言われても別になぁ……

 

710:名無しの転生者

 なんか皆ユーフォリアちゃんへの気持ち悪い感情むき出しになってない?

 

711:名無しの転生者

 だってほら、イッチをお義父さんが生かしておく理由がなくなったわけで

 運が良ければ俺たちも永遠神剣の世界に行った時にユーフォリアちゃんとお近づきになれる可能性が出てきたわけじゃないか

 

712:名無しの転生者

 イッチガードがなくなるとか考えてここでむき出しにしてる変態が出てきてるんだよ

 

713:名無しの転生者

 別にイッチが死ぬのはともかくとして、イッチが死んだところで結局お義父さんガードがあるから無意味なんだよなぁ

 

714:名無しの転生者

 ま、人としてのイッチはここで死ぬんや

 最後の学園祭の間くらい、ここは見ないでユーフォリアちゃんと二人で楽しんでくるとええ

 

715:名無しの転生者

 ついでにユーフォリアちゃんと一緒に回ってるせいでクラスメイトにとっつかまって色々と根掘り葉掘り聞かれるといい

 

716:名無しのエターナル

 残念だったな、実はもうとっつかまってる

 

717:名無しの転生者

 草

 

718:名無しの転生者

 イッチ、ユーフォリアちゃんをなんて紹介するつもりなんや……

 

719:名無しの転生者

 そりゃ、お嫁さんでしょ

 

720:名無しの転生者

 それをクラスメイトの前で宣言するとかかなり度胸あるだろ

 

721:名無しのユーフォリア

 あはは……流石にそんなことはないですよー

 

722:名無しの転生者

 じゃああれかな、生涯を共にするパートナー

 

723:名無しの転生者

 間違ってないけどどう聞いても誤解されるな

 

724:名無しの転生者

 それ、お嫁さんと何が違うんですか……?

 

725:名無しの転生者

 じゃあ、武器と主人?

 

726:名無しの転生者

 それ、普通に倒錯的な間柄だと勘違いされそうですね

 

727:名無しの転生者

 イッチ! 正解はなんなんだイッチ!

 

728:名無しのエターナル

 A.縄を引きちぎって逃走した

 

729:名無しの転生者

 草生える

 

730:名無しの転生者

 最後の最後でこいつ人外の力を見せつけながら逃げ出したぞ

 

731:名無しの転生者

 むしろ最後の最後だからなんの衒いもなく使えたのかも?

 

732:名無しの転生者

 いやあ、どっちにせよ一般人にそれをむけちゃあかんよ

 

733:名無しの転生者

 大丈夫大丈夫、屋上まで逃げてきてから入り口を凍らせたから

 

734:名無しの転生者

 イッチ……いくらなんでもエンジョイしすぎでは?

 

735:名無しの転生者

 でも、それならイッチはしばらくは時間の余裕があるってこっちゃな?

 

736:名無しの転生者

 まあ、そうだろうな……でも、それがどうかしたんか?

 

737:名無しの転生者

 いやイッチがイャガとの戦いで鞘から刀を抜いたわけじゃん

 

738:名無しの転生者

 せやね

 

739:名無しの転生者

 あっ……

 

740:名無しの転生者

 なんか察してる奴もいる……

 

741:名無しの転生者

 前、何個目のスレか忘れたけどユーフォリアちゃんの本体が鞘なのか剣なのかって話があったわけで

 

742:名無しの転生者

 ……イッチを殺せぇ!

 

743:名無しの転生者

 ユーフォリアちゃんを裸にひん剥いた可能性があるイッチを許すなぁ!

 

744:名無しの転生者

 おい、イッチ! 早く出てこい!

 

745:名無しの転生者

 逃げるなぁ! イッチ!

 

746:名無しの転生者

 (でもこれ、ユーフォリアちゃんに答えを言ってもらえばそれで済む話なのでは……?)

 

747:名無しのユーフォリア

 えへへ……内緒です

 

748:名無しの転生者

 うっ

 

749:名無しの転生者

 まだだ……まだ死ねんよ……

 

750:名無しの転生者

 でもユーフォリアちゃんが可愛いので全部許したくなっちゃう

 

751:名無しの転生者

 お義父さん! イッチを早く処して!

 

752:名無しの転生者

 ……あいつ、ガチで逃げやがった

 

753:名無しの転生者

 まあ今のところは倒さないといけない敵もいないから、後でまた来るでしょ

 尋問はその時にでいいんじゃない?

 

754:名無しの転生者

 そうだな……時間だけはイッチにも無限にあるんだからな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 物部学園の屋上。

 かつての異世界渡航では、たどり着いた世界を一望できるという意味でかなりの人気スポットだった場所。

 けれど今となってはいつも通りの光景が広がるばかりのその空間に、逢夢とユーフォリアの姿はあった。

 

「いやー、完全に忘れてた。ごめんな、ユーフィー。あんなことに巻き込んで」

 

「まさかあんなに興味を示されるなんて思いませんでしたねー」

 

 二人がここにいる理由はたった一つ。ユーフォリアが逢夢と知り合いだということに彼のクラスメイトが興味を異常なほどに示したから。

 逃げるだけならば簡単だが、ただの人間を傷つけるわけにも行かなかったので肉体よりも精神的な部分での疲労が二人の中には積もっている。

 

「でも、ここならしばらくは追ってこられないはずだから、少し休もうか」

 

「あはは……でも、良かったんですか?」

 

 ちらり、と視線を向けたのは屋上と学内をつなぐ唯一のドア。そこは今、絶対零度に近しい温度の氷で覆われている。

 誰であろうと開けることのできない扉。永遠神剣の力であろうと、鞘の出力で行使された氷を簡単に溶かすことはできないだろう。

 無論、凍らせた当人であればすぐに解けるのだが。

 

「いいんだよ。学園祭が終わったらそのまま出て行くんだから」

 

「だから、なんですけど。あたしを呼んで時間を使うなら、その時間を他の人たちと遊んでも文句は言いませんでしたよ?」

 

「俺が放置したくなかったからいいの」

 

「むぅ……そういうならお言葉に甘えますけど」

 

「そうそう。甘えちゃって甘えちゃって。二人でここで学園祭の雰囲気を感じてよう」

 

 寝転んだ逢夢の隣にユーフォリアが座る。

 屋上から校庭を見下ろせば、そこには校庭での出店が生み出す喧騒があった。

 

「……これじゃあ寝られそうにない、かな」

 

「寝て過ごすつもりだったんですか?」

 

「いや、そのつもりはなかったけど、思ってた以上にイャガとの戦いの疲れが……」

 

「だったら……」

 

 てしてし、とユーフォリアが叩いたのは彼女の膝。

 疲労が蓄積している頭でも、その行為の意味はわかる。

 

「使いますか?」

 

「使わせてもらう」

 

 推奨される行為に身を委ね、瞳を閉じて騒めきの中に身を浸す。

 思考は朧げになり、近くにいるユーフォリアの声も遠くなる。

 

「おやすみなさい、おにーさん」

 

「うん、おやすみ……」

 

 最後の学園祭、もう二度と訪れない人間だった頃の日常。

 彼が本当の意味でエターナルになるまでのわずかな時間は、特別なことをするわけでもなく過ぎ去るのだった。




ぶっちゃけ、最終話書き終えて最初に思ったのは「エタらなくて良かった……」でした。

読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。
……最終話だし、高評価、催促してもええやろか?
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