千雨infinity(改稿版)   作:雑草弁士

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Episode:17『世界ニンジャ戦?』

 翌朝、千雨はゆっくり寝た事もあり、元気を取り戻していた。それは良いのだが、修学旅行3日目の今日は、完全自由行動日だ。京都の町中に、護らねばならない対象者がバラける事を思うと、せっかく取り戻した元気が何処かへ飛んで逃げて行く様な気がする千雨である。

 

 それはともかく、朝食を食べた後に千雨は3班の班部屋に戻り、窓際に座ってぼーっとしている風体を装って、光一たちと体内無線で通話していた。

 

『なるほど、狙われそうなのは近衛木乃香嬢と、あとは魔法先生であるネギ少年、他の魔法生徒たちは、敵からすると若干優先度は落ちるのかな?』

 

『だと思います。とりあえず、普通に班ごとに分かれて動き回るはずですんで……。わたしはいいんちょに一言入れて、班を離れて近衛の方に行こうかと思います』

 

『ソレナラ、ネギ少年ノ方ニハ、ダイガ付イテクノラ』

 

『了解だ。俺とリープは、とりあえず京都の中央近辺で、いざと言う時には何処にでも急行できる様にするよ』

 

『お気をつけて、長谷川さん』

 

『サンキュ』

 

 通信を閉じた千雨は、出掛ける準備をするために立ち上がった。

 

 

 

 千雨は舌打ちする。

 

(ち、人が多過ぎる。敵の位置はわかってるが、おおっぴらに反撃するわけにも行かねえ……)

 

 彼女は木乃香と刹那、早乙女ハルナらと共に、京都の町中を走っていた。流石にハルナや木乃香がいるため、速度はたいした事は無い。人間体であるとは言え、マシナリーである千雨であれば、ついて行くのに苦労は無い。

 

 しかし時折刹那や木乃香に向かって投擲(とうてき)される、暗器が厄介である。暗器を投げる『敵』は、千雨から見ればその位置取りはセンサーでしっかり掴めている。だが他の面々からすれば、『敵』は何処に居るのかわからないだろう。

 

(ちっくしょ、あのゴスロリ女め……。迷惑な……)

 

 そう、暗器を投げて来る『敵』は、白いゴスロリ風の少女であった。そこまでしっかり捕捉しておきながら、この人混みのせいで反撃もままならない。高速転移して攻撃する事も考えたが、衝撃波とか出たらまずいし、相手が楓レベルの技量があった場合は超音速無しだと派手に立ち回る事になる。しかしこの人混みの中で派手な攻撃は、できれば避けたい。

 

(地味な攻撃方法って、わたしは結構少ないんだよなあ……)

 

 突然ハルナが叫ぶ。

 

「あれ!? ここってシネマ村じゃん! 何よ桜咲さん……。シネマ村に来たかったんだ~!? そうならそうと言ってくれれば」

 

「すいません! 早乙女さん、長谷川さん! わ、私、このか……さんと、ふ、二人きりになりたいんです!! ここで別れましょう!!

 お嬢様、失礼!」

 

「ふえ?」

 

 そしてこれも突然、刹那が木乃香を横抱き……所謂(いわゆる)お姫様抱っこにすると高々と跳躍し、シネマ村の壁を越えて中へと入ってしまう。千雨はちょっと頭が痛かった。

 

(いや、緊急事態なのは分かるけどよ。誰かにこのジャンプ力見られたらどうすんだよ。ここは麻帆良じゃねえぞ。あと、シネマ村の料金……。いや、今の状況で入場の列に並ぶのヤバいのは分かるが……。

 !? 追手のゴスロリも、ジャンプして壁越えやがった!? ち、仕方ねえ。嗚呼(ああ)、わたしも非常識になったもんだ……)

 

 千雨はハルナからこっそり離れると、人目の無い場所でこれもジャンプで壁を越える。後には『女の子同士で二人っきり……。まさか?』とか桃色の妄想に浸るハルナだけが残された。

 

 

 

 千雨は忍者装束の衣装で、シネマ村の中を歩いていた。ちなみに何故忍者装束かと言うと、顔を隠すのに丁度良いからだ。なおこの姿は仮装ではなく、物陰でマトリクスを書き換えて変身した物であった。彼女は体内無線で、光一たちと連絡を取る。

 

『……と言うわけでして。今、そのゴスロリ女を、かなり離れたところから追ってます。人間体でのセンサーの有効範囲ぎりぎりなので、流石に桜咲レベルじゃないかと思われる相手からも気付かれてない……気付かれてないとは思うんですが』

 

『こっちは今、シネマ村に入ったよ。俺も忍者風の外見にマトリクスを書き換えてる』

 

『わたしは忍犬風ですね。と言うか、動物連れてシネマ村に入る訳にはいかないので、わたしも不法侵入ですが。ちょっと申し訳ないですね』

 

 そこで、猫型マシナリーのダイが割り込んで来る。ダイはネギたちの後を()けて行ったのだ。だがあちらでも、何かしら騒ぎがあった模様だ。

 

『ネギ少年ハ、敵襲ヲ何トカ切リ抜ケタ……。タダ、何ヤラ結界トカ言ウノニ閉ジ込メラレテ、シバラク出ラレナカッタノラ。

 襲撃者ノ子供ヲ叩キノメシタ後デ、ユックリ魔力感知? トカノ魔法使ッテ、結界ノ重要部サガシテ、破壊シタミタイ』

 

『そっか。ダイは手出しとかしなかったのか?』

 

『チョットダケ、ヤッタ。ネギ少年ハ、ダイガ長谷川ト一緒ニ以前吸血鬼カラ助ケタノ、憶エテタノラ。

 ソレト、チョットダケ、マズイ。4番綾瀬夕映ト、27番宮崎ノドカ。コッソリト、ネギ少年ヲ()ケテ来テタ……。デモッテ、2人ニ魔法ガ、バレタノラ』

 

『おう、ジーザス……』

 

『それは、不味いな……』

 

『2人ハ魔法ノコト、内緒ニスルトハ言ッテイタケド……。ダケド、見タトコロ、興味シンシンナノラ』

 

 千雨は内心で、頭を抱える。夕映とのどかの2人が魔法に興味を持ち、魔法を学びたいとか言い出したらと思うと、頭が痛かった。可能であれば、後々で太い釘を刺しておく必要があるかも知れない。しかしどの様にして、釘を刺したものか。

 

『長谷川、その件は後で考えた方がいい。今は……』

 

『そうでした。……!? あのゴスロリ女が、この間の晩に出た敵の呪術師と、あと白髪の少年みたいな奴と、落ち合いました! く、ちょっと声が聞き取れない……。近寄って……』

 

『いや、それは危険だ。やめておいた方がいい。それより、そいつらの画像を転送してくれるかい? ……幸い、ここはシネマ村だ。痛手を与えて追い払うぐらいの事は……』

 

『何をやるんです?』

 

『そうだな。こう言うのは、どうだい?』

 

 続いた光一の台詞に、千雨は一瞬唖然とした。だがまあ『いい考えかも知れない』と同意し、彼女は『準備』を始めた。

 

 

 

 刹那と木乃香の追手である月詠は、うきうきとする心そのままに、弾む足取りで歩いていた。彼女は戦闘中毒(バトルジャンキー)である。それが故に、京都神鳴流の剣士として彼女の先輩格である桜咲刹那との、血で血を洗う様な戦いを彼女は望んでいた。

 

 そしてここシネマ村では、唐突に客を巻き込んでの即興劇が始まったりする。それにかこつけて、彼女たちはその劇の振りをして、刹那と木乃香を襲撃するつもりなのだ。それならば、衆人環視の中でもやり様があると言う物だ。

 

 彼女は式神に操らせた馬車に乗り込もうとする。この馬車で、刹那と木乃香の前に現れて宣戦布告を叩きつけるつもりだった。

 

 そして突然、馬車と月詠の間に、2体の影が姿を現す。彼女はしかし、すかさず二刀を構えて誰何した。

 

「何者どすえ!?」

 

「ドーモ。何処ゾノ貴婦人=サン。謎のニンジャです」

 

「ワン」

 

 目の前で、忍者装束の少女? らしき人物が、忍犬と共にオジギをしている。月詠は唖然とする。彼女は神鳴流剣士であるが故に、ニンジャの儀礼を知らないらしい。いや、これはフィクションのニンジャの儀礼であるから、長瀬楓であっても知らない可能性が高いが。

 

 謎のニンジャは、素手で構えを取ると高らかに言った。

 

「やあやあ、とある筋からの依頼で、お主を誘拐するでござるよ! いざ尋常に勝負!」

 

「あ、あら~? ウチはこれから忙しいので、お相手してられまへんのんやけど~」

 

 そう言いつつも、月詠は焦っていた。これから即興劇のフリをして、刹那と木乃香を追い詰める予定だったのだが、その即興劇に自分が巻き込まれるとは。

 

「そう仰らずに。では参りますぞ!」

 

「ワン!」

 

 謎のニンジャと忍犬は、一斉に飛び掛かって来る。峰打ちはやった事無いんやけど、と困りつつも、月詠はその双刀を振るった。ここで役者もしくは観光客を、血の海に沈めるわけにはいかない。彼女は内心で血の涙を流しつつ、相手を斬殺する事を断念、峰打ちで斬りかかった。

 

 そして目の前で、謎のニンジャと忍犬が消える。次の瞬間、月詠の双刀が砕け散り、懐の暗器もまた打ち砕かれた。同時に彼女の体幹にも、染み通る様な深いダメージが与えられる。彼女はかろうじて、動けなくなる様な致命的ダメージだけは避けた。これは、相手の攻撃の気配が荒かったので、何とか読み取れたためだ。ちなみに忍犬の攻撃の気配は、読み取れなかったが。

 

「な……!? 徒者(ただもの)ではありまへんな……?」

 

「誰が徒者(ただもの)だと言ったでござるか? ……一般人の多数いる修学旅行生に、下衆ないやがらせしやがって。迷惑なんだよ」

 

「!!」

 

 姿を再度現した謎のニンジャの言葉に、月詠は内心舌打ちをする。この敵は、本当の意味で『敵』だったのだ。そして彼女は、相手のお芝居に乗って、この場を逃げ出す事に決めた。

 

「ふふふ、残念でしたなあ。ウチは影武者どすえ~。本物の貴婦人さんは、今頃は遠くへ逃げとりますわ~。それでは~」

 

「なんと! それは大シクジリ!」

 

「ワン」

 

 そして月詠は大きく跳躍して、その場から逃れた。刀も暗器も失った今、素手でも戦えない事は無いが、それでは先輩との心躍る戦いにはならない。流石に刹那相手に、勝ち目は無い。身体にも、大きなダメージを受けた事でもあるし。

 

 視界の端に、別のニンジャに雇い主の天ヶ崎千草がこっぴどくやられて、白髪の少年魔術師、フェイト・アーウェルンクスの水を使った転移魔法で逃げ出すのが見えた。

 

 

 

 謎のニンジャもとい、千雨は溜息を吐いた。城の天守閣ではこちらに向かい、光一扮する謎のニンジャMk-Ⅱが手を振っている。光一もまた、即興劇にかこつけて千草たちに戦いを仕掛け、流石の貫録勝ちで式神や使い魔などを消滅させ、相手を撤退に追い込んでいたのだ。

 

 千雨もまた、光一に手を振る。光一は頷くと、姿を消した。千雨もまた適当な物陰で千雨本来の制服姿に戻ろうと考える。と、そこへ、今の様子を観衆たちと遠巻きにして観ていた、刹那が声を掛けて来た。彼女の後ろには木乃香も居る。

 

「あ、貴女は……」

 

「……奴らは一般人を巻き込む事を、さほど気にしちゃいないぞ。人混みに紛れるのは、ある意味悪手だ」

 

「ワン」

 

「その声! 『ディー・エイト』さん!?」

 

 そう、千雨は自分の声にエフェクトを掛け、『ディー・エイト』の声にしていたのだ。と言うか、声ぐらい変えていなければ口調とか同じだし、即座に正体がバレる。

 

 そして刹那は千雨の言葉に何か思う事があったのか、考え込む。彼女は月詠が、今まで刹那たちを追っていた『敵』だと言う事は、重々理解している。そして彼女は木乃香に言った。

 

「お嬢様。今からお嬢様の御実家へ参りましょう。神楽坂さんたちと合流します!」

 

「え……」

 

(なるほど、近衛詠春さんの庇護下に入るつもりか。今の事情なら、一番手堅い手段だな)

 

 千雨と忍犬のフリをしたリープは、その場から高速転移で姿を消した。周辺の観客から、おおお~~~! との声が上がった様だが、それは彼女らの知るところでは無かった。




天ヶ崎千草たちは、自分たちが攻撃する側であって、攻められる側だとは思っても見なかった模様。襲撃計画は、もろくも崩れ去りました。まあ人間体であっても、加速率低くていいなら高速転移使えますし。

ちなみにネギ君も、ダイの手助けはちょっとありましたが無事に小太郎君との戦いを切り抜けてます。原作とは違い、ネギ戦後に獣化した小太郎君はダイにコテンパンにされました。その後で、ゆっくり結界からの脱出方法探しまして。魔法感知系とかの魔法、たぶんネギ君使えますよね? 使える事にしておきます。結界に引っ掛かった当初は、テンパッてて思いつかなかったって事で。

ちなみにバタフライ効果的に、夕映はのどかと共にネギを追いました。そして朝倉とか早乙女は桜咲を追いません。追えません。なので、木乃香の実家に行く人の数は、減ります。
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