元アクア団員のお菓子屋さん   作:ロートシルト男爵

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都内は禁酒、首都圏内も時短営業という事でネットでしこたまワインとチーズを買って昼間から家で飲み始めたら悪酔いしたぜ。

もう気が狂う(代わりに筆が進む)


ちなみにマグマ団カガリのビジュアルに関してはorasより初代、ポケスペの方が好きです(断じて)


第十一話 VSバクーダ

 

 

「……そう。俺が『ツナミ』……『アクア団のツナミ』だ。何か用か?マグマ団の皆々様方」

 

 

 

 

「シラーズさん……そんな…嘘ですよね…?」

 

 

 

 

ミツルは驚愕の表情を浮かべながら俺を問いただす。

 

 

 

 

 

「フッ……残念ながは本当だ…といっても『元』だがな…今は堅気(カタギ)だ」

 

 

 

 

 

「何ゴチャゴチャ喋ってやがる‼︎えんとつ山での恨み、忘れたとは言わせねぇぞ‼︎」

 

 

 

 

 

詰め寄ってきたリーダー格の2人のうち一人が俺を連行しようと背後から手を伸ばす。

 

 

 

 

 

「まぁまぁ……。そう焦るなって。ほら、コイツは遥々来てくれた礼のサービスだっ‼︎」

 

 

 

 

 

俺は団員の手をこちらに思い切り引くと、きのみブレンダーの上に鎮座していたマトマの実を奴の顔面に思い切りぶつけた。

 

 

 

 

 

「ギャァァァァッ‼︎目……目が痛ぇ‼︎」

 

 

 

 

 

果肉にカプサイシンをふんだんに蓄え、育て方によっては唐辛子以上のスコヴィル価を出すマトマの果汁を眼球、鼻腔、口腔といった粘膜に一気に浴びせられた団員の一人は俺達の足元に崩れ落ち、ひたすら顔を押さえて喚いた。

 

 

 

 

 

「野郎っ‼︎いい気になるなよ‼︎行けっ———ぐあぁぁっ⁉︎」

 

 

 

 

 

次いでモンスターボールを出そうとした2人目の団員に俺は飛び掛かると、ボールを持つ手に自分の手を重ね、ボタンを押そうと伸ばした親指を関節とは逆方向に思い切り捻った。

 

 

 

 

 

 

「あんまり大した事はねぇな……ホラどうした‼︎」

 

 

 

 

 

 

ボールを取り落とし、痛みで指を押さえながら首を垂れる2人目の喉仏に向けて義足での上段蹴りをぶち込んでやると、そいつは糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。

 

 

 

 

「半殺しの屑肉二丁上がりだ。さぁ、次はどいつだ?」

 

 

 

 

俺は軽口を叩くと、入り口を封鎖していた男女2人がわらわらと駆け寄り、同時にモンスターボールを投げてバクーダとクロバットを繰り出した。

 

 

 

 

おかしい……。

 

 

 

 

本来どちらも、幹部クラスにしか支給されない筈のポケモンだ。

 

 

 

 

それが何故コイツら下っ端ごときに扱えるのか……。

 

 

 

 

「アクア団のツナミ……話には聞いていたがなんと容赦のない…」

 

 

 

 

「いや怖気付くな。この場で奴の首を持ち帰れば、いずれは我々がホカゲやホムラに代わり幹部(三頭火)の座に……」

 

 

 

「三頭火……?ホカゲ…?ホムラ……?」

 

 

 

「バカ‼︎頭を上げるな‼︎」

 

 

 

ルビーは2人の出した名前に聞き覚えがあるようで、思わずそう口にした。

 

 

 

当然、団員達の視線も彼にフォーカスする。

 

 

 

「あぁ。誰かと思えばトウカシティのルビー君じゃないか。先の動乱ではうちのカガリが世話になったねぇ」

 

 

 

「カガリさんは団を抜け、総統(リーダー)マツブサも行方不明……マグマ団はあの騒動以降解体したと聞いてますけど、それが何でこんなところに来るんですか⁉︎」

 

 

 

下っ端の女性はルビーの問いかけの代わりに頭のフードに生えた角を取り外し、手元のスイッチを押すと煌々と輝く焔を眼前に映し出した。

 

 

 

「あんたもカガリから貰ったんだろう?『記憶の炎』。そこに答えがあるさ」

 

 

 

「こ…ここに一体何が……」

 

 

 

ルビーは懐から女性団員が持っている物と同じ角型ライターのスイッチを押すと、彼女が言う『記憶の炎』を手元に映し出した。

 

 

 

聞くところによると、我々のように高度に組織化されたアクア団に比べマグマ団は『山賊』に近く、個人主義的性質を持っているという。

 

 

 

基本的な連絡は頭のツノに仕込んだライター———通称『記憶の炎』で行い、後はそれを基に各々で作戦を立て実行するらしい。

 

 

 

ルビーの手元にあるライターもカガリ———マグマ団三頭火の一人からどういう経緯か譲り受けた物のようで、炎の向こうには俺のかつてのえんとつ山での抗争劇が赤裸々に映し出されていた。

 

 

 

 

 

 

隕石学者のソライシ博士をたぶらかすイズミ。

 

 

 

イズミの命令通り隕石(グラン・メテオ)を装置に設置し、えんとつ山の活動を止めにかかる下っ端達。

 

 

 

装置の奥でボールベルトを取り上げられ、両手を上げさせられたマグマ団員1個分隊。

 

 

 

そして、俺の『やれ』との一声と同時に無抵抗の彼らに向けてシャドーボールを撃ち込むグラエナが六匹。

 

 

 

 

「………ひ…酷い…」

 

 

 

「分かるだろう?ルビーさんよ。それがコイツ……『脅かす者———アクア団のツナミ』の過去の罪業で、俺らがそいつを追って来たのもいわば『弔い合戦』兼『次期幹部就任の為の手柄の為』って訳さ」

 

 

 

 

下っ端の男がそう語ると、鬼神の如くマグマ団員達を屠る過去の俺の姿を炎の奥に見出しながら驚愕の表情を見せた。

 

 

 

 

「シラーズさん……何かの間違いですよね……あなたがアクア団の幹部だったなんて…」

 

 

 

「……残念ながら本当だ。それより下っ端共。頭領(マツブサ)は姿を消し、グラードンは地中へ消えたと聞いた。今更アクアもマグマも無いだろう。何故俺に拘る?」

 

 

 

「ケッ‼︎分かってねぇなぁ。俺らはそもそも『人類の発展』なんて高尚な理想には興味がねぇ。ただポケモンを使って、気に入らねぇ奴等をぶん殴れればそれで良かったんだよ。そう……過去のテメェがそうであったようにな‼︎」

 

 

 

「くっ……」

 

 

 

コイツの言う通りだ。俺は結局『海を増やしポケモンと人間の共生を図る』という理想を題目に好き勝手暴れていたに過ぎない。

 

 

 

『同族嫌悪』

 

 

 

奴等の話を聞いて、俺の頭に浮かんだのはその四文字。

 

 

 

自分勝手な理屈を並べる目の前の下っ端達を前に、辛うじて人間社会を渡れる程度に抑えていた俺の『理性』のタガは完全に外れた。

 

 

 

「とまぁそんな訳だツナミ。大人しくアジトまで来るってんならここでは手荒な事はしねぇ。逆らうならこの会場にいる面子全員巻き込んででも、テメェの塩漬けの首を持って帰るまでだ」

 

 

 

下っ端の男が目の前のバクーダの尻に蹴りを入れると、興奮したバクーダは背中の火山と鼻から白煙を噴射し、蹄をロビーの絨毯に擦り付けた。

 

 

 

 

 

「ルビー君、ミツル君……すまないな。出会ったばかりだというのに、こんな事に巻き込んでしまって」

 

 

 

 

「……いえ、いいんです」

 

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「だって…見て下さいよ。あなたのキルリア……あなたにあんなに懐いて……それにそのヒンバスだって……」

 

 

 

気付けば俺の手持ちのキルリアは俺を庇うように下っ端の前に立ちはだかり、ヒンバスも腕の中で徹底抗戦の表情を固めていた。

 

 

 

「残念ながら『ポケモンが好き』かどうかと『良き市民』であるか否かはイコールではない。君はミツルくんを連れて逃げるといい」

 

 

 

 

「イヤです」

 

 

 

 

 

「馬鹿‼︎あいつらのポケモンを見れば分かるだろう?いくらあのホウエン危機を解決した君だからといったって、無傷じゃ済まない筈だ!それに…ここで戦えば他の客だって…」

 

 

 

 

 

「……薄々気づいてましたが、やっぱり僕の事…知ってたんですね……シラーズさん」

 

 

 

「………ああ」

 

 

 

「僕はジョウトの生まれで、父さん(あの人)の都合で引越してきたここ(ホウエン)にはあまり愛着がなかったんです……あの危機の時も、どこか他人事といった態度で……でも、僕の大切な人が、その目を覚まさせてくれた……だから最後まで、命を掛けてでも戦えたんです」

 

 

 

 

「……サファイアちゃんか……」

 

 

 

 

「ハハ……本当によく知ってるんですね。僕の事」

 

 

 

 

「まぁな。総帥(アオギリ)には『三幹部(イズミ達)がやられた際はお前が始末しろ』と言われていた分色々調べさせてもらった」

 

 

 

 

 

「相変わらず恐ろしい組織ですね…アクア団も…マグマ団も……でも、僕は今回だって逃げませんよ。いつも僕を応援してくれているコンテスト会場のお客さん…親友のミツルくん…そして……僕のポケモンを褒めてくれたあなたを守るために‼︎」

 

 

 

 

 

 

「おいお二人さん。お喋りの時間は終わったか?ほらルビー君も、邪魔立てするなら容赦はしねぇぞ?こっちは同志をソイツに何人もやられてんだからな。行けぇっ‼︎バクーダ‼︎」

 

 

 

 

しびれを切らした下っ端達は2体のバクーダに突進を命じる。

 

 

 

 

 

「うわぁっ⁉︎」

 

 

 

 

 

「おっと危ない」

 

 

 

 

俺はヒンバスを片手で抱えたままもう片方の手でミツルの首根っこを掴むと飛び退き、バクーダの突進を躱す。

 

 

 

バクーダは勢い余って俺たちのいた席——きのみブレンダーに激突し、上に置いていたきのみを床にぶちまけると、くるりとUターンしてこちらを睨みつけ、再び突進の準備を始めている。

 

 

 

 

どよめき、慌てふためく客達。

 

 

 

 

出口は5人目の下っ端が外側から封鎖しているので、偶然居合わせていただけの不幸な観客達はただ只管喚くしかない。

 

 

 

 

 

「シラーズさん。あなたのキルリア、『電磁波』は使える?」

 

 

 

「あぁ、一応は」

 

 

 

Good(グッド)‼︎じゃあ合図と共に、僕のRURUに『でんじは』を」

 

 

 

「ハァ⁉︎お前一体何を———分かった。やってみる」

 

 

 

「ミツルくんは落ちてるきのみの中から『クラボの実』を選んで、MIMIとヒンバスに持たせるんだ。出来るね?」

 

 

 

「ハイ!やってみます」

 

 

 

俺とミツルはルビーの意図を察し、言われた通りの準備を始める。

 

 

 

 

 

「ほらほらほら、背中がガラ空きだよっ‼︎クロバット!『かみくだく』‼︎」

 

 

 

 

下っ端の女は2体のクロバットをけしかけ、バクーダに気を取られた俺達の背後から攻勢をかける。

 

 

 

 

狙うは悪タイプの技が一番有効な、エスパータイプのキルリアとRURU。

 

 

 

 

「今だっ‼︎キルリア、『でんじは‼︎』」

 

 

 

 

キルリアは白い小さな手で目の前のRURUに弱い電撃を浴びせた。

 

 

 

 

 

 

「⁉︎きるぅっ‼︎」

 

 

 

 

 

 

電磁波を浴びたRURUは感電の痛みに思わず声を上げる。

 

 

 

 

 

「ハァ⁉︎ハハハハッ‼︎何だ何だ⁉︎何かコソコソ話してると思ったら仲間割れか‼︎丁度いい。二人まとめて始末してやるぜ‼︎バクーダ‼︎『かえんほうしゃ』‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

バクーダは命令のままに火を吹こうとするが、口を半開きにしたまま硬直した。

 

 

 

 

 

 

「な……何が起こった⁉︎おいバクーダ‼︎クロバットもどうした⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

下っ端達は慌てて自分の手持ち二匹を見比べるが、いずれも硬直して動けないでいる。

 

 

 

 

クロバット二匹に至っては4枚の羽を麻痺させ、会場の床に縫い付けられるような形で伏している。

 

 

 

 

 

 

「あ、あんたら……まさか⁉︎」

 

 

 

 

 

 

「そう。そのまさかですよ。僕のRURUの特性は『シンクロ』。状態異常を周りのポケモンに伝染(うつ)す特性です。シラーズさんのキルリアが放った電磁波がRURUを麻痺させ、RURUは『麻痺』状態をあなたの手持ちに伝染した」

 

 

 

 

「クソっ‼︎『まひなおし』で———⁉︎」

 

 

 

 

 

 

「お前さんがポケットからその『まひなおし』を取り出すのと、俺の相棒がお前さんの首をへし折るの………どっちが早いか試してみるか?」

 

 

 

 

 

 

下っ端の男の身体にはいつの間にか混戦のドサクサに紛れてヒンバスから進化し、ミツルが持たせたクラボの実でとっくに麻痺状態を解かれた俺のミロカロスが絡み付いていた。

 

 

 

ルビーのMIMIも同様に下っ端の女を拘束している。

 

 

 

「悪い事は言いません。ポケモンをボールに戻して、お客さんを解放して下さい。逆らったら何をするか分かりませんよ?」

 

 

 

 

「わ……わかった。カガリ、作戦は失敗だ。とっとと門を開けな‼︎」

 

 

 

 

下っ端の女は言われた通りにバクーダとクロバットをボールに戻すと、外で待機していた最後の団員に向かって大声で叫んだ。

 

 

 

 

 

「カ…カガリ……⁉︎あなた今カガリって———」

 

 

 

 

ルビーはその名に聞き覚えがあるようで、驚愕の表情を浮かべる。

 

 

 

閉ざされていた自動ドアが開き、開放された観客達が一斉に出口に殺到する。

 

 

 

人の波があらかた捌けた所で5人目———姿を隠していた最後の団員が姿を現した。

 

 

 

 

 

 

「あ、あなたは———」

 

 

 

 

 

「フフッ…久しぶりだねぇ……ルビー。それに『ツナミ』」

 

 

 

マグマ幹部———三頭火の紅一点、『カガリ』はフードに隠した美貌に妖艶な笑みを浮かべながら、かつての戦友ルビーに親しげに声をかけた。

 

 

 

 

 

 

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