君と一緒に居られるなら   作:ユリシー

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アークナイツ二次創作初投稿です。
テキサス、皆さんも好きですよね?好きですね(断定)

と言うわけで、テキサスの二次創作作ってみました!
よろしければ見てくださいね。
そしてテキサス愛を深めてくださいね!


過去に追いつかれようとも

 ロドスでの生活物資を補給するために、龍門へ行く必要がある。

 

 アーミヤはケルシー先生と共にやるべき仕事に取り組まねばならなかったため、

 私と、たまたま予定の空いていたテキサスが、龍門へ行くこととなった。

 

 他にも非番のオペレーターは居るには居たのだが、テキサスは車の運転が出来るし、

 まぁ後は、長く付き合いがあるから融通が利くので、同行してもらうことにした。

 

 「ドクター。食べるか?」

 

 運転中のテキサスがふと、助手席にいる私に菓子を差し出してきた。

 いつも彼女が口にしている棒状のチョコレート菓子。

 

 「ああ。頂こう」

 

 ちょうど甘いものが食べたかったので、一つ貰うことにした。

 

 一口。

 チョコレートのちょうどいい甘さが口の中に広がる。

 二口。

 小気味良い音も楽しみながら、再びほんのりとした甘さを味わう。

 三口。

 クッキー部分の口に残らない食感を楽しんで、食べ終わった。

 

 ……しかし、やはり少し物足りない。

 貰っておいて何だが、むしろ食べない方が良かったかも……

 

 そう思っていると、テキサスは再び、チョコレート菓子の入った箱を差し出してくる。

 

 「一箱分食べるといい。多分、一本じゃ足りないだろう?」

 

 お見通しだったようだ。

 若干恥ずかしさが込み上げてきたが、彼女の言葉に甘えることにした。

 

 「……ありがとう」

 

 「礼ならいい。これはいつものお礼とでも考えてくれ」

 

 感謝の言葉にもクールな対応で返すテキサス。

 彼女らしい、と思いつつも、それが私にとっては心地よかった。

 

 『テキサスからあれを貰えるようになるのに、あたしは二ヶ月かかったよ~。

  ドクターは二週間でしょ?結構気に入られてるんだね、ドクターは!』

 

 以前エクシアから言われたことを思い出す。

 

 あのチョコレート菓子は、テキサスなりの感謝の表現方法だ。

 友好的な間柄である、と彼女が認めた者にはそれをあげている、と思われる。

 

 エクシアから話を聞いたときには、自分が何だかエクシアに勝ったような気がして、少し嬉しかった。

 

 今も、テキサスの信頼を感じ取れたような気がして、込み上げてくるものがある。

 

 「どうした?何か良いことでもあったか?」

 

 急にテキサスから図星を突かれて、驚く。

 

 何故だ……私は仮面にフードという二重体制なはず……

 表情の遮断は完璧だ……それなのに……何故!?

 

 「どうして、そう思ったんだ?」

 

 少し上ずった声でテキサスに尋ねると、

 

 「ん。いや、私も秘書任務は長くしてきたからな。それくらいは仕草で分かるさ」

 

 ……何だって。

 私は仕草で、喜びを表現していたと……?

 

 「……何だか、恥ずかしいな……」

 

 思わず内心を口に出してしまったが、それほどまでに、ある意味ショックだった。

 

 私の独り言を聞いて、テキサスは少し目を丸くしながら、

 

 「恥ずかしがることはないだろう。私は、むしろドクターを良く理解する切欠になったから、それを好ましく思っている」

 

 ……余計に恥ずかしいな……!

 じゃあ今まで、ふとした瞬間にテキサスに好意を抱いた瞬間も……

 

 「チェルノボーグでもう一度眠りたい」

 

 「それは私が許さないぞ、ドクター」

 

 私の渾身のネタも……そうだった。

 テキサスは知ってるんだった……

 

 フフッ、とテキサスが少し笑い声を出したのを聞いて、私はため息を出してしまった。

 

 「ドクター、お前は面白いな。戦場での洗練された指揮が、まるで嘘みたいだ」

 

 「からかってくれるな……」

 

 「からかってなどない。さっきも言ったが、それは私にとって好ましいことだ」

 

 そう言うテキサスをふと見ると、彼女が微笑みを浮かべていることに気がついた。

 

 ……滅多に見ない、テキサスの笑顔。

 私と居るときも、数回しか笑顔を見せたことがない。

 ……のだが……

 

 『え~!?ドクター、テキサスさんの笑顔を見たですって!?

  そんなぁ……私はないのに~!』

 

 ソラから聞いたが、テキサスが滅多に笑わないことは事実なのだが、そもそも笑顔を見たことがあるのは、エクシアと、後は私しか居ないという。

 

 それは……それは本当なのだろうか。

 本当だとしたら、それは……

 

 「ドクター、ちょっと寄り道してもいいか?」

 

 「あ、ああ。まだ時間には余裕があるから、大丈夫だ」

 

 「ん。わかった」

 

 珍しいな。

 テキサスはいつもなら仕事は第一に優先するはずだ。

 私も、彼女を秘書として見てきたから、大分彼女の性格は分かっているつもりだ。

 

 仕事を中断してまでどこに行くのだろう……と思って、しばらく車に揺られていると……

 

 「着いた。ドクター、ここで降りて、休憩しないか?」

 

 車が止まった場所は、龍門中心街の一角。

 龍門中心街は、様々な商業施設の並び立つエリアだがここは主に軽食店が多いようだ。

 

 「ロドスの皆が行きたがってた場所があったんだ。私も行ってみたいと思っていてな……付いてきてくれるか?」

 

 「問題はない、ないのだが……私も行って構わないのか?」

 

 「『お前』が居ないと駄目なんだ。行こう」

 

 戸惑う私をよそに、テキサスは私の手を引いて市街を進む。

 テキサスにしては珍しく、若干早足で進んでいたのが気になったが……

 そんなことを思っていると、ある店の前で、彼女が足を止めた。

 

 「こ、ここなんだが……」

 

 少し恥ずかしげに……っと、ちょっと待て。

 『恥ずかしげに』!?あのテキサスが恥ずかしげに!?

 そう言う。

 

 ……段々と頭が混乱してきたぞ……

 私が知らないテキサスの側面を幾つか見てしまった気がするぞ……これは……

 

 改めて目の前の店を見てみると、そこはどうやら、このエリアの人気カフェのようだ。

 店前のバナーには、『龍門NO.1カフェ』との文字が見てとれた。

 

 「ここに、行きたかったのか?」

 

 そう尋ねると、テキサスは頷く。

 

 若干顔が赤くなってるのを見て、今度は少し微笑ましい気持ちになる。

 そういうことなら……と、私はテキサスの手を引いて店へ入る。

 

 「いらっしゃいませ!お好きな席へどうぞ!」

 

 流石は龍門、といったところか。

 私のようなマスクにフードといったナリの者を見ても店員の表情が変わることはない。

 

 店の奥に空いた席があったので、そこに座ることにした。

 

 緊張した様子だったテキサスも、席に座ってからは平常心を取り戻したようで、メニューを手にとって確認し始めた。

 

 私もそれに倣ってメニューを手に取るも……

 

 「テキサス、ここのオススメはどれなんだ?」

 

 ……さっぱりわからない。

 そもそもこういう店は、私は初めてだった。

 

 「ああ、それなら……ここはパンケーキが人気だと聞いた。ドクターもそれにしたらどうだ?」

 

 「なるほど……それにしよう」

 

 パンケーキか……グムが作ったものを一度食べたことがあるが……それっきりだ。

 人気メニューということなら間違いはないのだろう。

 少し期待が膨らんできた。

 

 程なくして、店員がオーダーを取りにやって来た。

 私はホイップクリーム付きの、オーソドックスなパンケーキを。

 テキサスはイチゴソース付きのパンケーキを注文した。

 

 「ありがとう、ドクター。やっぱりお前が居ないと駄目だったみたいだ」

 

 オーダーを終えた後、テキサスがそう言ってきた。

 

 「礼を言われるようなことはしてないさ。君は、今日のために頑張ってたんだろう?」

 

 今日のテキサスは、普段とは違う格好をしていた。

 女性オペレーターが良く見ている雑誌のモデルのような、トレンドを意識した服だった。

 

 最初は、なるほど、外出時くらいは服を変えたいと思っているのだろうか。

 そうとしか考えていなかったが……

 

 多分、ここに来るためにそうしたのだろう。

 良く見てみれば、彼女の服はまだ真新しい。

 それに周りの視線を少しだけ気にする様子も見せている。

 

 「心配するな。テキサス、その服、良く似合ってるぞ。私が見とれてしまう位だ」

 

 ……ちょっと恥ずかしいことを言ってしまったが。

 でも、テキサスには自信を持って大丈夫だ、ということを伝えたかった。

 

 「……ありがとう、そう言って貰えて嬉しい」

 

 少し頬を赤らめたテキサスが、私に礼を言ってくれる。

 その姿に思わず心の声が出そうになったが……忍耐だ、忍耐しろ、ドクター。

 

 「お待たせしました~。こちらパンケーキとなります~」

 

 こちらが理性を使いきる前に、店員がパンケーキを持ってきた。

 

 ……美味しそうだ。

 グムも料理は得意な方なのは間違いないが、龍門一のカフェは別格のように見える。

 

 テキサスも尻尾を、恐らく無意識に動かしている。かわいい。

 

 「いただきます……!」

 

 「いただきます」

 

 そわそわしながらパンケーキを口に運ぶテキサス。

 私も一口切り分けて、口の中にパンケーキを運ぶ。

 

 

 ーーーーーー!?

 

 

 う、美味すぎるッ!

 何なのだ!この新食感の食べ物は!?

 

 商品説明の欄には『源石を味わうかのような衝撃の食感!』と謳い文句が書かれてあったが……これはあながち間違いとは言い切れないな…… 

 

 テキサスの反応も気になって彼女を見ると……

 

 

 「お、美味しい……っ!」

 

 

 目が輝いていた。 

 耳がピクピクと動いていた。

 尻尾がパタパタとしていた。

 

 ーーーーーーかわいい。かわいいかわいいかわいいいいいい!

 (ドクターの理性は0となりました。理性回復剤の使用を推奨します)

 

 PRTSが警告をしている気がするが、そんなことはどうだっていい。

 こんなテキサスの姿を私は一生に何度見れるだろうか?

 それを考えればここで理性がどうのこうの言う前にテキサスのかわいさを目に焼き付けるべきだろう……!

 

 夢中になってパンケーキを一口、そしてまた一口頬張るテキサス。

 良いよ。たーんとお食べ、テキサス。

 私は君のその様子を見られただけで幸せだよ……

 

 かわいい、という言葉が私の思考回路を支配してから何分が経過しただろうか。

 テキサスが急に、はっとなって私を見つめる。

 

 「ドクター!これを食べてみてくれ!これはドクターも味わうべきだ!」

 

 えっ。

 急にどうしたんですか、テキサスさん?

 どうしてパンケーキを私の口元に持ってくるんです?

 

 「口を開けてくれ、ドクター。一刻も早く食べるんだ!」

 

 えっ。

 これってもしかしなくても……

 

 「わ、わかった」

 

 私は考えるよりも早くその言葉を口にし、しまったと思ったときには既に口を開けていた。

 それをテキサスが見逃すはずもない。

 あくまで優しく、ゆっくりと、それでかつ鋭く、私の口の中にパンケーキが放り込まれた。

 

 再び流れる電流。

 この美味さは間違いなく源石級だ間違いない。

 

 「美味しいな、テキサス!」

 

 「そうだろう!お前のはどうだった?」

 

 「勿論美味しかったさ!テキサスも食べるか?」

 

 「ああ。私も食べたい!」

 

 そう言われるや否や、私は先程テキサスがしたようにパンケーキをテキサスの口元に運び……

 そしてそのままテキサスに食べてもらった。

 

 「美味しいぞ、ドクター!感謝する!」

 

 「どういたしまして!」

 

 ……ん?あれ?

 テキサスとそこまで言葉を交わして、ようやく私がしでかしたことに気づく。

 

 パンケーキの美味しさが理性0だった私に追い討ちをかけて……

 テキサスが乗り気だったとはいえ、あんなことをしてしまって良かったのか……?

 

 「……フフッ」

 

 だが、テキサスの様子を見ると、そんなことは気にした様子もなく、むしろ嬉しそうにしていた。

 凄くニコニコとしているし、尻尾も耳も強く自己主張している。

 

 ……そんな風にされたら、こちらも嬉しくなってしまう。

 かわいいなぁ!

 

 テキサスのかわいい様子を見続けて数分(私の体感時間だが)。

 彼女は急にはっとした表情になって、こちらをチラチラと見てくるようになった。

 

 私の方を向いては下を向き、そしてまた私を見る。

 

 どうしたのだろうか、と考えていると、テキサスが何かを決意したかのように私の目を見据えて、口を開いた。

 

 「今日は、私とここに来てくれて……ありがとう、ドクター」

 

 「……それなら、さっきも言ったが気にしなくても……」

 

 「いいや、本当に嬉しいんだ。だから礼を言わせて欲しい。」

 

 それに、と彼女は更に付け加える。

 

 「今までのことにも、感謝したい。ドクターが居なければ、私は私のままではいられなかっただろう」

 

 先程とはうってかわった様子にやや困惑したが、だが彼女の発言の裏にある僅かな哀愁を感じて、私はあえて何も言わずにテキサスの語りに任せた。

 

 「覚えているか、ドクター。私がロドスに着任した頃のこと」

 

 「……勿論、覚えているさ」

 

 彼女が初めてロドスに来たとき。

 彼女からは力強さと凛々しさを感じた。

 

 だがそれだけではなかった。

 彼女は、『何かから逃れるために』急いでいるように見えた。

 

 いや、急いでいた訳ではないのだろう。

 彼女は常に自分のペースを一定に保っていたし、冷静さだって持ち合わせていた。

 

 だが、余裕を持った様子が無かったのかもしれない。

 テキサスは、私に指示はないか、業務は残ってないか。 

 そう問うことが多くあった。

 

 「君は、余りにも張り詰め過ぎていた」

 

 「……そうだな。ああ、私は過去に追いつかれたくなかったんだろうな」

 

 

 

 『いくら逃げたところで、いつかは過去に追いつかれる。』 

 

 

 

 秘書業務をテキサスに任せるようになった頃、彼女は、私にそう言ったことがあった。

 だがそんな諦めと取れる言葉とは裏腹に、そうなることを望んでいないように見えた。

 

 『過去が追いついたとして、君が変わってしまう、なんてことがあるのか?』

 

 私は彼女にそう言った。

 例え過去がどんなものであったとしても、それは自分の存在を否定することには繋がらない。

 自分が過去から追いつかれたとしても、それで『今の』自分自身が変わってしまうことなど無い。

 

 それは、私自身が常々思っている事だった。

 

 チェルノボーグで目覚めてから、私の記憶が戻ることは無い。

 だからこそ、一部のロドスのオペレーター達の知っている『ドクター』という存在に成りきらなければ、と自身を追い詰めていたことだってあった。

 結局は自身はその『ドクター』という存在に成り代わらなければいけないのだ、と。

 

 だが、様々なオペレーターと交流していくにつれ、私も考えが変わっていった。

 

 私が目覚めてから採用されたオペレーターも、このロドスには多くいる。

 彼ら彼女らは、以前のドクターという存在を直接的には知らない者は多い。

 

 そうしたオペレーター達から、不確かな感触ながらも、段々と信頼感と呼べるものを獲得出来たと実感した頃から……段々と以前から感じていた強迫観念に苛まれることが少なくなっていった。

 

 これは私が創り出した信頼関係だ。

 これは私が自分の意思で成し遂げたことだ。

 『ドクター』という人物を追いかけての結果ではない。

 

 『テキサス。君がどのような過去を持っているのか、私にはそれを知る権利もないし、そうしようとも思わない。だから……君は今の自分を大事にしてほしい』

 

 

 

 「あの時、ドクターにそう言われて……何と言えばいいのか……あぁ、楽になったんだ。過去から目を背けても、逃げようとしてもそうすることは出来ない……そんな風にだけ思うことを止めた」

 

 俯けていた目を私の目に合わせて、テキサスが言う。

 

 「今の自分を大事にしようと思ったから出来る……『過去と向き合う』という選択肢が目の前に出てきて……そうしてみようかな、という気分になった」

 

 まだ出来ていないがな、と苦笑気味に付け加えるテキサス。

 

 ……それは、当然だろう。

 私もまだ出来ていなからな。

 

 そう言いかけて、止める。

 テキサスにあのようなことを言った手前、そんなことは言えないな、と思ったから。

 自分よりも前に進もうとしている彼女に、単純に尊敬を覚えて、自分が恥ずかしくなったから。

 

 「ドクター。いつか、必ず話をする。私はお前に話さなければならない。いや……ドクターになら話せると思ったから、そうする」

 

 「そうか……私も……君が迷惑に感じないのであれば、私の過去を話したい」

 

 そう言った私の言葉は、彼女の決意の込もった眼差しに応えられるようなものなのだろうか……?

 そう頭の片隅では感じつつも、今は純粋に彼女に信頼されているように感じられた嬉しさが勝った。

 

 「勿論迷惑な訳ないだろう。……お互いに話せたら、いいな」

 

 「ああ」

 

 彼女の過去を聞いて、私はどんな反応をするだろうか。

 私の過去を聞いて、彼女はどう思うだろうか。

 

 ……今は、置いておこう。

 いずれそれと向き合わなければならないが、今はその時ではない。

 

 「テキサス、他にも何か食べたいものはないか?」

 

 「な、い、いいのか!?」

 

 「ああ、勿論だ」

 

 「わ、わかった!どれにすべきか……」

 

 

 

 今は、テキサスの、この嬉しそうな顔を見るだけで、それだけでいい。

 

 

 

 結局、ロドスへ帰還したのは、予定より二時間も過ぎた頃だったが為に、アーミヤとケルシー先生に説教されたのは、また別の話だ。

 




次投稿するのは、多分テキサス視点の物語です。
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