side:木村達也
青木の説得に成功した俺は高校入学までの間、青木と一緒にトレーニングを始めることにした。
といってもトレーニングするのは基礎の身体作りだけで、パンチ系の練習はやらない。
素人の俺達が独学で練習をして変なクセがついたら面倒だからな。
それにしても……
「や、野球とは全然違うな……」
「あぁ……そうだな……」
そう言って青木と俺は地面に伸びている。
俺達はさっきまで野球の練習にもあったペッパーをやってたんだが、野球の時の様に回数じゃなくボクシングの1ラウンドに合わせた3分を2セットやっただけでこのありさまだった。
まぁ考えてみりゃこうなるのも当然だろうな。
野球は結構勘違いされやすいが瞬発力が重視されるスポーツで、ボクシングの様に持久力はそれほど必要とされるわけじゃない。
野球ってのはワンプレー毎に一度試合が止まる。つまり次のプレーが始まるまでインターバルがあるんだ。
だから重要なのは瞬発力と回復力なんだ。
もちろんある程度は必要だ。けどボクシングと比べたら全然だな。
そんなこんなで俺と青木は主に足りない持久力の強化に努めていくと、あっという間に時間が過ぎて高校入学の時がやってきたのだった。
◆
side:青木勝
高校のボクシング部に入部して1ヵ月、今日は初めてのスパーリングを行うことになったんだが、リングに上がった木村は1ラウンド目はまだリングに慣れてないのもあってまごついていたが、2ラウンド目に入ると対戦相手の先輩を圧倒していた。
「嘘だろ!?またカウンターが決まった!」
「本当に初心者かよ!?」
先輩達は驚いているが俺からしてみれば当然の結果だった。
野球をやっていた時からわかってたんだが、木村はタイミングを取る天才だ。
どれだけタイミングを外そうとしてもピタッて合わせてきちまう。シートバッティングでは何度も悔しい思いをしたもんだぜ。
それにしてもすげぇもんだな。ボクシングはまだまだ初心者なのにああも先輩を圧倒しちまえるんだから。
俺に出来るか?……無理だな。
木村も知ってることだが俺はこう見えて繊細なんだ。自分のリズムを作れねぇとどうにも上手くいかない。
そして今の俺は初心者だ。マウンドならともかくリングの上で自分のリズムを作る技術はねぇ。
木村と違って俺は先輩にボコボコにされるだろうな。
「うわっ!?ダメだ!完全にノビてる!」
「おいっ!バケツに水を入れて持ってこい!」
おっと、色々と考えてたら木村が先輩をKOしちまってたぜ。うん?アマチュアボクシングだからRSCか?まぁどっちでもいいか。
ボクシングは野球みたいなチームスポーツじゃねぇ。リングの上での出来事は全部自分次第……そう考えると、緊張と同時に興奮もしてきたぜ。
「おい青木、次はお前の番だ」
「はいっ!」
ヘッドギアをつけて準備をしていると、リングから下りてきた木村が声を掛けてきた。
「よう青木、ちょいと思い付いたことがあるんだが、試してみねぇか?」
「あん?なんだよ思い付いたことって?」
「コークスクリューブローって知ってるか?」
コークスクリューブロー?……たしか先月買った月刊ボクシングファンに載ってたな。
「あぁ、知ってるけどそれがどうした?」
「やってみろよ。たぶんお前に合ってるぜ」
木村の言葉に俺は首を傾げる。
「あれは日本人の体質には合いにくいって載ってたぞ?」
「腕の外旋と内旋はピッチャーやってたお前にとっちゃ慣れっこだろ?」
言われてみればその通りだな……よし、いっちょやってみっか。
この日の俺は想像すらしてなかった。
まさか軽い気持ちで試してみたコークスクリューブローが、俺のボクサー人生を通して使い続けるサンデーパンチになるなんてな。
あん?スパーリングの結果?負けたに決まってるだろ。木村と違って俺は繊細なんだよ。
これで本日の投稿は終わりです。
というわけで拙作の木村はカウンター使いに、そして青木はコークスクリューブロー使いになりました。
二人共野球経験者で上手いということで、それらをボクシングに取り入れられるのならこんな形になるかなと……。
ボクサーとしてのスタイルは木村が宮田型のカウンターを使う沢村っぽい感じに、そして青木が変則型に寄った伊達さんっぽい感じになると妄想しておりますね。
それとたぶん、もしかしたら、連載に切り替えるかもしれません。
続きの妄想が少し沸いてきているので……
連載になったらまたお会いしましょう。