笑うトランプ   作:夏野 雪

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 化粧をしている大男はどや顔で決めると続けて自己紹介を始めた。

「私は花畑(はなばたけ)チャイカだ。このチーム『レジスタンス』の()()()()()()ポジションを

担っているのだが、リーダーと呼ばれるのは大嫌いなので覚えておいてくれ。」

「レジスタンス? 聞いたことがないなー。僕は大怪盗ルイスの相棒でびる様だ。」

顔を真っ赤にしたでびるが、ふわふわとよろめきながら三人に近付いていった。

「わー! もしかして、大怪盗のお二人ですか! 私は夜見(よるみ)れなって言います。」

「うむ。お前は礼儀正しくて素晴らしい! 一緒に飲もうではないか。」

夜見は元気よく返事をすると、でびるを抱きかかえてカウンターに向かって行った。

「あたしは椎名唯華(しいなゆいか)や。よろしくなー。」

全く張りの無い声で挨拶をしたのは椎名だった。挨拶を早々に済ませると一番近いテーブル席に

座ると、誰かが注文していた山盛りポテトを何も言わずに「助かるわー。」と言いながら

何とも美味しそうに食べ始めた。

「ところで、お三方は何故遅れて参加になったのかしら? 」

「初めましてチャイカさん。私は白雪巴よ。よろしくね。ところで、お三方は何故遅れての参加に

なったのかしら? 」

「こちらこそ。白雪か...聞き覚えがあるな。まぁいいか。聞いていないのか? 我々はしっかりと

仕事をしていたのだよ。これがその成果だ。」

チャイカは徐に取り出した書類を白雪たちが座っていたテーブルに置いていった。

「これは...すごい。ホテルの内部資料じゃないですか! 」

驚くべき事にテーブルに並べられた資料は全てRAINBOW DREAMの内部資料だった。

カジノフロアの詳しい見取り図にマシンレイアウト、カメラの位置までも書かれていた。

それに地下一階と二階の詳しい図面などだったのだ。

「これは驚いたな。こんな資料を一体どうやって? 」

叶も順番に資料を手に取り確認しているが、珍しく驚きを表情に表していた。

「だから言っただろう。私たちは()()をしていたのだよ。私たちは既にホテル内に

潜入している。私はガードマンとして。椎名はフロアスタッフ。夜見はディーラーとしてな。」

「ほー...伊達に遅れて登場したわけじゃ無いってことか。ああ。僕は叶だ。よろしく。」

「おう。ヒーローは遅れて来るもんなんだよ。叶くん。しかも、まだお土産はあるんだよ。

椎名。あれ出してくれ。」

チャイカに呼ばれ、ポテトを頬張る手を止めると一枚の紙を机の上に置いた。

その紙に書かれていたのはカジノフロアの見取り図だった。それは先ほどチャイカが

出したものと同じようにも見えた。

しかし、よく見ると何か所かに手書きで何かが書き加えられていた。

「じゃー説明するでー。まずフロアのお金は定期的に金庫へと運ばれてくんよ。

二人の決まった従業員がフロアのここからバックヤードに向かう。」

椎名は見取り図のある地点をポテトで指した。そこには扉と様なものがあり、

手書きで『指紋認証』、『暗証番号(日替)』と書かれていた。

「ここが第一関門。登録された人物の指紋プラス毎日変わる日替わりの暗証番号の入力が

必要なんよ。バックヤードの出入り口にはガードマンとカメラのおまけ付き。次はここや。」

次にポテトが示したのはエレベーターらしき場所だった。

「このエレベーターは地下一階と二階に行けるようになってんねんけど、御覧の通りに

地下一階はスタッフルームに事務所やセキリティルームとか普通の会社のバックヤード。

だけど、地下二階はそーはいかん。売上金の終着駅。特大金庫のある階。

それもあって、地下二階に行くにはセキリティレベルを一段階上げた指紋認証が

必要なんよなー。」

「...ん。セキリティレベル? 」

椎名に全部食べられてしまう前にとフレンもポテトを頬張っていた手を止めて見取り図を見た。

「せや。登録された指紋には、それぞれレベルが設定されてて、その人間が行ける限界が

決められてるんよ。出入り口と地下一階が『レベル1』とするなら、二階に降りるには

『レベル2』が必要ってことやね。」

「なるほど...こりゃ確かに厄介だな。」

「でも、これで終わりじゃないんだよ。イブラヒム君。」

声のする方に目を向けるとチャイカがいつの間にかにカウンターで美味そうに

ビールを飲んでいた。

「そうなんよ。リーダーの言う通り。ラスボスがこの巨大金庫。指紋認証は『レベル3』、

出入り口に使われていたものとは別の『日替わり暗証番号』に『固定の暗証番号』。

それに加えて『アナログキー』による施錠。つまり四重の鍵を開けないといけんちゅうこと...って

ポテト無いなってるやん! 」

普段の何倍も頑張って喋ったにも関わらず、目の前のポテトが消失していることにショックを

隠しきれない椎名は崩れるようにテーブルへ沈んでいってしまった。

「しかもだ。金庫内の床には加圧センサーと赤外線センサーが仕掛けられているんだ。

赤外線センサーは一定時間毎に切り替え式になっていて何パターンかに張り巡らされている。」

椎名がショックで動かなくなってしまったので、チャイカが続きの説明を始めた。

しかし、あまりにも絶望的な情報だった。厳重にセキュリティされているとは思っていたが、

ここまでの仕掛けを張り巡らされているのは想定外だった。

高ければ高い壁の方が登りがいがあるとは良く聞く話だが、この壁はあまりにも高く、

あまりにも危険なものであるのは誰に目にも明白であった。

思考と絶望が生み出した沈黙を破ったのはチャイカだった。

「はっきり言おう。この金庫に()()()()侵入(はい)るのは無理だ。」

「...諦めろって...こと? 」

「フレン君...急いては事を仕損じるというであろう。私は『諦める』何て一言も言ってないぞ。

開かぬなら開けずに入ろう金庫室。つまりはそう言うことだ。なぁ...そうだろ? でびる様。」

全員の視線が一斉にカウンターで酔い潰れている真っ赤なコアラへと向けられた。

「...ふぇ? 」

 

 

 

 

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