炭治郎と禰豆子を逃した義勇は、刀を
しのぶが、その様子を見逃すはずがなく、炭治郎たちを追いかけようとしてわずかに注意をそらした瞬間、義勇によって抑え込まれていたのであった。
「…私も柱の
だが、しのぶにも柱としての意地があり、このまま終わりにするわけにはいかなかったが、相手は鬼でなく、仲間であることから、できるだけ穏便に済ませようと思い、義勇に話しかけることによって注意をそらそうとしたのであったが、義勇は全く注意をそらさない。そのため、しのぶはやむを得ず足に仕込んでいた短刀を出し、それを義勇の頭めがけて振りかざしたのであった。
「…炭治郎、禰豆子両名ヲ拘束 本部ヘ連レ帰ルベシ…」
「俺は運がいい…」義勇はわずかに笑顔を見せた。
「どういう意味ですか?」しのぶは少し不思議そうな顔をして尋ねた。
「あと1秒でも遅かったら、胡蝶の刃が俺を貫いていた」
「…それは嫌味ですか?」しのぶは義勇がその気になれば首の骨をへし折ることもできた体勢であったことを自覚していたことから、嫌味を言われたのかと思ったのであった。
「何のことだ?」義勇は心底意味が分からないという顔をしたことから、しのぶは義勇が本気で言ったことを悟ったのであった。
「…それより、俺は、できうることなら炭治郎たちの存在を認めさせたい。…だが、胡蝶が、隊律違反で俺を斬ると言うなら、それまでの話だ…」義勇は覚悟を決めた表情でしのぶに語りかけていた。
「…お館様のところまで大人しくついて来ると誓って頂けますか?」しのぶは、やや緊張した表情で尋ねた。まともに戦って勝てる相手でないことは、嫌というほど思い知らされていたからであった。
「誓う」
その言葉を聞いたしのぶは、安心したような表情を浮かべて刀を鞘に納めて言った。
「抵抗するなら戦うしかありませんでしたが、大人しく従うとおっしゃるのであれば、水柱である冨岡さんを私の一存でどうこうするわけにはいきません。お館様のお裁きを受けて頂きます」
「…胡蝶には手間を掛けさせる。申し訳ない」
「冨岡さん」
「何だ?」
「…注意がおろそかになっていたとはいえ、冨岡さんはいとも簡単に私の間合いに入り、私を抑え込んでしまいました。はっきり言ってその時点で私の負けです。なぜその私に従ってくださるのですか?」
「先ほどは、炭治郎の妹-禰豆子と言ったな-を斬ろうとしたから止めただけだ。胡蝶相手にわずかでも傷を負えば、それは致命傷になるが、胡蝶もケガをさせたくない。だから、とっさにあの体勢を取ったまでのこと。だが、そうは言っても隊律違反は覆い隠しようのない事実。第一当事者である胡蝶の判断に従うのが筋と思ったからだ。それに…」
「それに?」
「胡蝶、お前、最近顔色が優れない。体調が悪いのではないのか?なるべく無理をさせたくないのだ…」
「冨岡さん、それを誰かにおっしゃったことは?」
「いや、俺は余計なことを言うつもりはない。だが、俺に言われたくないかもしれないが、胡蝶、お前はもっと自分を大切にすべきだ…」
「冨岡さんはもっと鈍いと思っていましたが・・意外でした。…普段からこのようにお話してくれれば、嫌われないのに…」
「だから俺は嫌われていない…」
「もう『沈黙は金』というのは時代遅れなのかもしれません…それではお館様のところに参りましょう」
「俺を拘束しないのか?」
「かえって面倒になるだけですから、やめときます」
「胡蝶にはかなわないな…」
「ええ、私は結構腹黒いのですよ」
「腹黒いという割には甘いというか、寛大というか…」
「何か言いましたか?」
「いや、独り言だ…」義勇は、胡蝶に背中を向け、産屋敷方へと向かった。
しのぶは、義勇が無防備な背中を自分にさらしたことから、それが義勇の自分に対する信頼の
しのぶは、義勇が問答無用でほかの柱に斬られるのだけは、何としても阻止しなければと密かに誓っていた…
原作では、ご存じのとおり、禰豆子の「禰」の部首は「ネ」ですが、少なくとも私のパソコンでは出ないため、こちらを使わせて頂きました。
誤字報告頂きました。最初、本気で意味が分からなかったのですが、よくよく考えてようやく意味が理解できたので、全話訂正いたしました。ご指摘ありがとうございました。