時は戦国。冨岡家と胡蝶家は幾度にも渡って〇〇国の支配権をめぐって戦いを繰り広げていたが、隣国からの脅威が増してきたため、一転して同盟を組むことになった。
こういった場合、一番手っ取り早く、確実な方法として政略結婚が用いられるのが戦国の常であった。
そういう訳で冨岡家の
「
「当家に
「ハハハ…某の寝首でも狙ってくるか。それくらい気が強くなければ面白くない」
「
「この同盟は、胡蝶家にとっても死命を制するものだ。過去のいきさつはともかく、それくらいのことも分からぬほど愚かではあるまい。…それに、しのぶ殿は昨日までの仇の家に飛び込んでくるのだ。いろいろ思うところがあって当然だ」義勇は相手の心情を思いやることができる男であった。
……………
「
「〇〇
この日
「そなた、当家に来るに当たって怖くはなかったのか?」義勇は隣で横になっているしのぶに語り掛けたのであった。
「怖くなかったと言えば、嘘になりましょう」しのぶの声はほんの僅かではあるが震えていた。
「正直でよい。しかし、しのぶ殿は大したものだ。某には、胡蝶の
「…
「見上げた覚悟だ…だが、そなた自身の幸せはどうなるのだ?」
「このような乱世にそのようなことを望んでも
「確かに某は今日までそなたの顔も知らぬまま祝言を挙げた。だが、そなたのように美しい
「世辞など結構です。妾より美しい者など掃いて捨てるほどおりましょうに」
「いや、
「…そんなことより、いつまでこんな話を続けるのですか?今日から夫婦になったのですよ。ひょっとして、妾など相手にできぬということですか?」
「いや、並の女なら有無を言わさず抱きすくめていたやもしれぬ。だが、某はそなたが心底気に入った。そなたが某を受け入れるまで待とうと思ったのだ」
「妾の気持ちを推し量ってくださるというのですか…何とお優しい。しかし、こんな乱世にそのお優しさは身を滅ぼしかねません。いや、その前に妾が冨岡家を乗っ取ってしまうかもしれませんよ」しのぶは稀代の悪女のような笑みを浮かべた。
「ハハハ…それも悪くあるまい。そなたの願い通り、血を流さずに済むからな」義勇はしのぶに答えた。
しのぶは義勇の器量を測るために一芝居を打ったのであった。もし、器量の小さい男なら隙を見て義勇を討ち取ってしまうことすら考えていた。しかし、義勇の器量は、はるかに大きかった。しのぶは、義勇が誠実で優しいばかりでなく、器量も優れた男であると認め、惹かれたのであった。