描かれなかった鬼滅   作:夢幻遊人

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被告人冨岡義勇

「失礼しました~」隠たちによって竈門炭治郎は蝶屋敷へと運ばれていった。

 

「お屋敷様…」その様子を見た冨岡義勇は、珍しく自ら口を開いた。

 

「義勇、どうしたんだい?」産屋敷燿哉は尋ねたのであった。

 

「まずは、炭治郎及び禰豆子の存在を認めて頂いたこと、感謝の言葉もありません」

 

「禰豆子は、実弥の稀血の誘惑にすら打ち勝ったんだ。それに義勇、お前がどう思うが自由だが、現役の柱が、自らとその師匠の命を賭けているんだよ。これからは、禰豆子を斬ろうというには、動かしようのない明白な証拠が必要になるね…」この言葉にほかの8名の柱たちは、黙って頭を下げたのであった。

 

「それにつきましては一旦棚上げにするにしても、俺が隊律違反を犯した事実は残ります。かりそめにせよ、鬼殺隊の柱たる者が明白な隊律違反を犯したにも関わらず、何の処罰も受けなければ、鬼殺隊の秩序が損なわれることは必定(ひつじょう)。何とぞご処分を願いたく存じます…」

 その言葉を聞いた胡蝶しのぶは、「せっかくうやむやになりかけていたのに、何故、今ここで蒸し返す…」と思う一方、「確かに、このまま宙ぶらりんのままにしておくのは良くない…」とも思ったのであった。

 

「…冨岡()は凪が使える。凪がある限り、冨岡がその気になれば、俺たちが束にでもならぬ限り、現実問題としていかなる処分もかなわぬではないか…」

 

「…それではお館様、反抗の意思がない(あかし)として、日輪刀をお返し致します…」

 

「義勇が反抗するとは思えないが…それでは義勇の気が済まないだろうから…誰か、義勇から日輪刀を預かってもらえないだろうか…」燿哉は柱たちに命じたのであった。

 

 その言葉を聞いた柱たちが、誰が義勇から日輪刀を預かるかと目くばせをしている間、しのぶがさっさと義勇から日輪刀を預かり…そしてそのまま燿哉にすら渡そうとしなかった。

 …しのぶが、いざというとき、義勇に日輪刀を返すであろうことは誰の目にも明らかであったが、燿哉の命令は、あくまで「日輪刀を預かる」ことであり、「燿哉に引き渡す」ことでなかったため、非難しようがなかったのであった。

 

「それでは、義勇の処分について検討したい…まず、那田蜘蛛山で義勇と共に任務に当たったしのぶの意見が聞きたい」燿哉はしのぶの意図を正確に把握していたが、それについて何も言わなかった。

 

「畏れながら申し上げます。…冨岡さんが隊律を犯したことは間違いありませんが、人を喰らうどころか、稀血の誘惑にすら打ち勝ってしまう鬼の存在に…正直、驚いております。これからも禰豆子さんの監視は必要かもしれませんが、その理由を明らかにできれば…あるいはこれまでの私たちの常識が覆ってしまうかもしれません。…従いまして、今、直ちに処分を決する必要はないと思慮致します。しかしながら、それでは冨岡さんのお気持ちが晴れぬようですから…報酬の一部返上というのはいかがでしょうか?」

 

 燿哉は、理由をつけて義勇にとって最も優秀な弁護士役であるしのぶから最初に意見を聞いたのであった。

 少なくとも柱の中で、しのぶ以上に弁の立つ者などいようはずがなく、結局、義勇に対しては、報酬の一割を1回減ずるという決定がなされたのであった。

 

……………

「冨岡の生活は質素だ。これまでの蓄えが相当あるだろうが、報酬が一割どころか、全額削られたところで、1回限りならさしたる影響もあるまい。胡蝶の奴、うまい処分を考えつきおって…これで『冨岡に惚れていない』と言われても誰も信じぬぞ…」

 

「あれだけ明白なのに、自分では気付かれてないと思っているっていうのが、また派手に笑えるぜ」

 

「しのぶちゃんも可哀そうね。当の本人に気付いてもらえないなんて…」

 

「結局、似た者同士ということか!」

 

「全く、いけ好かねえ!」

 

「胡蝶()は冨岡のどこがいいというのだ…まあ、『(たで)食う虫も好き好き』というから何とも言えぬが…」

 

「…」

 

 義勇としのぶは、よもや自分たちが会話のネタにされていようとは夢にも思っていなかったのであった…

 

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