描かれなかった鬼滅   作:夢幻遊人

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 タグをつけるほどの内容は書けませんが、これまでよりはエロチックになっております。苦手な方はこれまで同様、ブラウザバック願います。


ぎゆしの戦国草紙 エピソード2 【少しアダルト】

「ハハハ…それも悪くあるまい。そなたの願い通り、血を流さずに済むからな」

 

 義勇は、夫婦(めおと)(ちぎ)りを交わしてなお、しのぶを一方的に押し倒すことはしなかった。

 しかもそれは、しのぶに魅力を感じていないからではなく、むしろしのぶの気高いまでの心根の美しさに心惹かれた義勇が、しのぶに無理を強いてはならぬと思ったからこそであった。

 

 しのぶは、心の隅で、義勇がこれまで少しでも自分をよく見せようとして誠実さと優しさを装っているのではないかと疑っていた。

 確かに義勇の瞳には、オスとしての隠しきれない欲望の炎が揺らめいていたことから、しのぶに女としての魅力を感じているのは明らかであった。

 だが、仮に()()()()()であったとしても、妻となった自分に一方的に関係を強要するのではなく、自分の気持ちを汲もうとする男が、まさか自分の夫として目の前にいるという奇跡に、しのぶは驚いたのであった。

 

 しのぶは、義勇との祝言が決まった後、男という生き物がいかなるものか教えられた。その中には、例え悪気(わるぎ)はなくとも、経験が浅いと自分の欲望のままに動きがちだということも含まれていたのであった。

 そして、夫となった義勇に女性経験があるかまでは分からなかったが、義勇はしのぶから見ても、もう少しうまく立ち回れるのではないかと思うほどであったことから、経験がないか、それに近いであろうことは推察できたのであった。

 それにも関わらず、自分の欲望を抑えようとしている義勇の態度を見て、しのぶはこの男になら抱かれてもいいと思ったのであった。

 

「殿…(わらわ)に欲情されておりますね?」

 

「しのぶ殿は誠、美しいゆえ…」

 

「それにも関わらず、妾が殿を受け入れるのを待たれるというのですね?」

 

「そのとおりだ…」

 

「…殿がどのようなお考えでそうなされるのかまでは分かりませぬ。…なれど、妾は殿のそういった態度を見て…このお方なら抱かれてもよいと思いました…」そう言うと、しのぶは布団から体を起こすと三つ指をついて言葉を続けたのであった。

「…このようなこと、口の端に乗せることも恥ずかしきことなれど、妾は殿方を知りませねば、殿を悦ばせるようなことはできぬと存じまする。…ですが、精一杯お相手をつとめとうございますれば、よろしくお願いいたしまする…」

 

 その姿を見た義勇も飛び起き、両手をついて応えたのであった。

「…(それがし)女子(おなご)を知らぬ。しのぶ殿は逆であろうであろうが、某は、祝言の前に『何かと女子は苦労や苦痛が多い』と教えられた。…頭の中では、いくばくかでもしのぶ殿の苦労や苦痛を減らしたいと思っているのだか…おそらくうまくいかぬであろう。…どうか気長な目で見てもらえぬだろうか…」

 

「何と気の利かぬお言葉…」しのぶはわずかに笑みをこぼした。しかし、すぐに真剣な表情に戻して言葉を続けたのであった。

「…なれど、殿の誠実さとお優しさは、まがいものではないと存じまする。…妾は生まれて初めて父上以外の殿方を信じてみようと思いました…」

 

「某の責任は重大だな…」そう言うと、義勇はおそるおそる手を伸ばし、しのぶを抱き寄せたのであった。

 

「…なぜ、殿が震えておられるのですか?」しのぶは、義勇がかすかに震えているのを感じたが、情けないと思うのではなく、むしろ(いと)おしいと思ったのであった。

 

「そう言うしのぶ殿も震えておるではないか…」

 

「…どう言い(つくろ)ってみたところで、妾は得体の知れぬものをわが身に受け入れるのです。分からぬものに恐怖を感じるのは致し方ないというものではございませぬか…」

 

「得体の知れぬもの…確かにそうだな。…某は、自分がうまくできず、嫌われてしまうのは自分のせいだから、仕方がないと思う。なれど、某が、しのぶ殿に痛みを与えてしまうことを恐れているのだ…」

 

「…本当に不器用なお方。なれど、耐えきれぬ痛みならば、とうに人は死に絶えておりましょう。どうかお気になさりますな…」

 

「それはそうなのやもしれぬが…某もしのぶ殿の心意気に近づきたいものだ…」そう言うと義勇は目を閉じ、しのぶに唇を近づけたのであった。

「ああ…殿方も目を閉じるのだ…」本当に些細なことであったが、しのぶは男もまた同じ人間なのだと初めて実感することができたのであった。

 そして、お互いの唇と唇が合わさったとき、しのぶはこれまで感じたことのない感覚を味わったのであった。

 

 しのぶが祝言の前に学んでいたことの中には、男女の()()()()(ねや)での男の悦ばせ方というものも含まれていた。だが、しのぶは恋というものを知らなかったため、自分がそれを行うということについて遂に実感が湧かず、どこか他人事のようにさえ思っていたのであった。

 しかし、これまでのやり取りで、少なくとも憎からず思えるようになった男と実際に唇を交わしたとき、「もっと触れたい、もっと触れられたい」という衝動にかられたのであった。

 

「自分で『初めてだ』と言っておきながら、これ以上求めたら、()()()()()と思わてしまうのではないか…」しのぶは初めて生じた自らの肉欲をどうすればいいのか、その扱いに困ってしまったのであった。

 そしてそんなことを考えていると、義勇と目が合ってしまったのであった。

 

「しのぶ殿…一度唇を交わしたのみで、それ以上されぬ。…本当は某に抱かれたくないのではないか?」

 

「いいえ…殿と唇を交わして…その…もっとしたいと思いました。…なれど、女の私から求めては、()()()()()と思われるやもしれず…」本当のことを伝えなければ、義勇を傷つけてしまうと思ったしのぶは、恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら答えたのであった。

 

「…()()()()()?はしたなくて何が悪い?」

 

「えっ?」

 

「男なら、好いた女子が、己の前で乱れるのを見て、喜ばぬはずがない。…もし、しのぶ殿がそういう気持ちになってくれたなら…思うがままにされるがよい…」

 

「加減が分からぬゆえ、粗相(そそう)があるやもしれず…」

 

「加減が分からぬのは某も同じ。…某のよき加減を伝えるゆえ、しのぶ殿も某に伝えてくれぬか…」しのぶは義勇の誠実さ、優しさに心が溶かされるのを感じた。そして、例え口先だけだとしても、ここまで言ってくれるこの男を何としてでも満足させてやりたいと思ったのであった。

 

「…ならば、妾は心のままに動きますれば、何とぞ殿もそうしてくだされ…」いくら事前に教育を受けていたとはいえ、所詮は初めて同士。技術面では大したことはなかった。しかし、お互いがお互いを思いやる心では誰にも負けなかった。

 

 二人はこの日、夫婦として極めて細く、弱いものであったが、確実に絆を紡いだのであった…

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