「鬼舞辻無惨を倒すために協力しませんか?産屋敷邸にいらしてください」
「鬼舞辻を倒すお役に立てるなら何でもします。ただ、炭治郎さん以外の鬼殺隊の方は、鬼である私の姿を見た瞬間に私を斬り捨てるのはないのですか?」
「鬼となった禰豆子を斬らなかった柱がいます」
「鬼殺隊の中核をなすという柱でもそんな方がいるのですね…ご迷惑かもしれませんが、そのお方に道中の警護をお願いできないでしょうか?…途中で襲われるとも限りませんので…」珠世があえて対象を言わなかったのは、襲う相手が必ずしも鬼舞辻の息のかかった者と言い切れなかったからであった。
「お館様から『珠世殿の条件は全て飲む』と言われております」
「…そこまでおっしゃって頂けるのであれば、産屋敷邸まで同行いたします」珠世は覚悟を決めたのであった。
……………
「お館様の命により、珠世殿の警護を仰せつかった冨岡義勇と申します」義勇は珠世に頭を下げていた。
「…あなたが鬼となった禰豆子さんを斬らなかったというお方なのですね」
「俺は、禰豆子がほかの鬼と違うと思ったので、斬らなかったまで…」
「禰豆子さんは運がいい。…おそらくほかの方なら、悩みはしても結局斬られていたでしょう…それで冨岡様は私をどうしますか?」義勇に全く隙を見いだせなかった珠世はその命を義勇に判断に委ねたのであった。
「…お館様の命でもあるし、そなたにもほかの鬼とは違う何かを感じる。よって斬ることはない。たが、そなたと協力する胡蝶は、鬼への恨みが人一倍強い。…珠世殿、胡蝶に嘘はならん。あいつを怒らせたら怖いからな…」
「冨岡様よりですか?」
「胡蝶は鬼殺に不利な体躯ながら、その努力と才能で柱にまで上り詰めた。俺など足元にも及ばぬ…」珠世は、その言い方に敬意のみならず、わずかなら思慕の念を感じていた。
……………
「あなたが珠世さん…私が胡蝶しのぶです」しのぶは珠世に会釈をした。
「道中、冨岡様から蟲柱様のことはお伺いしております…」珠世は少し緊張した表情をしながら会釈を返した。
「私は、炭治郎君から
「胡蝶、藪から棒に無礼ではないか…」義勇は、いきなり答えにくい質問を投げかけたしのぶにたまらず声をかけたのであった。
「いえ、構いません…はい、私は人を殺したことがあります」
「何人ですか?」
「鬼舞辻に意識を奪われていた間については、正確な数は把握していませんが、決して少ない数ではありません」
「今、鬼舞辻の名前を出しても何も起こらない…鬼舞辻の呪いから解放されているのは間違いないようですね…それではあなたが人の命を救っていた理由は?」
「生きるために必要な血を頂くためも確かにありましたが、罪滅ぼしが主な理由です」
「…それではこれが最後の質問です。あなたはなぜ鬼舞辻を倒したいのですか?」
「…かつて私は死の淵に立ちました。子の成長を見届けたいという私の願いにつけこんできた鬼舞辻の企みにより、鬼に変えられた私は、この手で夫とわが子を殺してしまいました。私自身の罪は決して消えませんが、地獄に墜ちる前に私をだました鬼舞辻だけは何としても地獄に叩き落したい…その想いだけで今日まで生き延びて参りました…」珠世は淡々と答えたのであった。
「…胡蝶、俺は、珠世殿は嘘をついていないと思う。俺たちが珠世殿の罪を問うのはあるいは簡単なことかもしれない。だが、珠世殿はその罪の重さを知って何百年も苦しんできたのだと思う。…俺には胡蝶や珠世殿の苦しみの全てを理解することはできないが、今回は曲げて、鬼舞辻を倒すための共同研究に当たってもらえないだろうか…」そう言うと義勇は二人に向かって頭を下げたのであった。
「冨岡様、どうか頭をお上げください。私は、胡蝶様が受け入れてくださるなら、私の得た知識の全てを提供いたします」珠世は、鬼である自分に対してすら節度を保つ義勇の態度に心打たれたのであった。
「冨岡さんは鬼となった禰豆子さんを斬らず、また、那田蜘蛛山で禰豆子さんを斬ろうとした私を止めました。…今の私は、冨岡さんのその判断は正しかったと思います。その冨岡さんがそこまでおっしゃるのであれば、私も珠世さんと協力します…」しのぶは、自分が鬼と協力することに若干の抵抗はあったが、珠世の持つ知識が鬼舞辻打倒の切り札になり得るのではないかとの思いを強くしていたし、何よりも義勇が珠世を信じるのであれば、自分も信じてみたいと思ったのであった。
「胡蝶様、どうかよろしくお願い致します…」しのぶの心の内を読んだように珠世はしのぶに向かって頭を下げた。
「いろいろ答えにくい質問をして申し訳ありませんでした。これからは、しのぶとお呼びください」しのぶも珠世に対して頭を下げた。
こうして珠世としのぶは、お互いの知見を交換し、鬼舞辻を追い詰める毒の開発を進めたのであった…
愈史郎との絡みも入れたかったのですが、筆者の能力では書ききれませんでした。