「…胡蝶、これはどういうことだ…」義勇が目を覚ますと、その体は幾重にも縛り上げられ、そして目の前に胡蝶しのぶが
「冨岡さんには何の恨みもないのですが…」しのぶは申し訳なさそうな声を出していた。
「…お前に、こんな趣味があったとは…」義勇は信じられないといった表情を浮かべていた。
「趣味なんかじゃありません。…男性の柱全員に一時その地位から降りて頂くのです…」
「…鬼殺隊の柱たるお前が、その力を
「…私たちは、女だからという、ただそれだけのことでバカにされ、
「俺は、女性隊士だからといってバカにしたり、虐げたり、まして慰み者にしたなどない…」珍しく義勇は抗議したのであった。
「…確かに冨岡さんには『何を考えているのか分からない』という声はありましたが、『不当な扱いを受けた』と言う者は誰もおりませんでした…」
「まさか、柱の中でそういった者がいるのか?」
「いいえ…」
「…それでは、俺たちを排除したところであまり意味がないのではないか?」
「さすがに柱となる方で、女性隊士を不当に扱う者はおりません。…しかし、どうしても鬼殺隊は男性中心です。男の論理で物事が進みがちなんです…」
「…俺も男だから、男の論理で物事を進め、女性に不快な思いをさせてしまったのかもしれん。それは心から謝罪する。…だが、胡蝶、こんなやり方は間違っているぞ…」
「冨岡さんがうわべだけの謝罪をしていないことは分かります。…ああ、世の男性がみな冨岡さんのようなら、私や甘露寺さんもこのような手段は取らなかったのに…」しのぶは寂しそうな表情を浮かべたのであった。
「…お館様はどうするつもりなのだ?お館様も男だぞ…」
「…あまね様に一時代行して頂きます」
「…そうか。…まあ、そうでなければ一貫性があるまいな…それで、もし、それが実現したらどうするつもりだ?」
「私たちは、男性を女性の下に置こうなどとは考えていません。望むものは、男であろうと、女であろうと、対等に扱ってもらうことだけなんでず…」
「…そうであるなら、俺たち男の協力も求めるべきだ。確かに世の中には『女の意見なぞ聞かん』という
「…冨岡義勇が、命を賭けるとおっしゃってくださいました。しのぶはうれしゅうございます…」
「胡蝶、それなら…」
「いいえ、それはできない相談です…」しのぶは今にも泣きそうな表情を浮かべていた。
「…男の俺の言うことなど信用できないということか?」
「いいえ、とんでもありません。…義勇さんの命は、私などに賭けてはいけないのです」
「どうしても続けるというのか…」義勇は、しのぶからいきなり名前で呼ばれたことで鼓動が早まっていたのであったが、あくまで表情に出さないよう、必死であった。
「これは、やむにやまれぬことなのです…」
「そうか…それなら、俺の
「えっ…」
「お前たちの言っていることは理解できるし、改革が必要なことも認める。…だが、これではまるで
「そんな…」
「中途半端な覚悟なら、最初からやるな!場合によっては俺たちを斬る覚悟でなかったのか!」
「…女だからと差別することのない義勇さんなら、協力とまではいかなくとも黙認して頂けるものと思っておりました…」
「…俺はやり方を非難しているのだ…」
「…仕方ありません。革命に犠牲はつきものですから…」
「…俺は、胡蝶たちに向ける刀など持ち合わせていないし、また、俺の血で胡蝶を
「そんな…介錯なしの切腹など…凄まじい苦痛を伴うと聞きます…それならいっそ、義勇さんが私を斬ってください…」
「…
「えっ、今、何と…」
「『好いた女子を斬れるか』と言ったのだ。ええい、恥ずかしい。何度も言わせるな…」義勇が自らの気持ちを吐露したそのとき…
「…義勇、ようやくしのぶに想いを伝えたね…」産屋敷燿哉とほかの柱たちは、どこからとなく二人の前に現れたのであった。…燿哉としのぶ以外の柱たちはニヤニヤしながら…
「お館様、それにほかの柱たちまで…これは一体…?」煉獄たちによって拘束を解かれた義勇は、訳が分からないといった表情を浮かべたのであった。
「いや、いつまで経っても自分の気持ちを伝えようとしない義勇に皆、やきもきしてたからね。…今回、私の命で、しのぶに一芝居うってもらったんだよ。…それにしても、しのぶ、迫真の演技だったね。…事情を知っている私ですらハラハラさせられたよ…」
「いえ、義勇さんの真剣な表情と態度に引き込まれてしまい…私も役になり切ってしまいました…義勇さん、初めは芝居でしたが…相手が女であっても真剣に、そして対等に扱いつつも思いやりを持って対応してくださる義勇さんのその態度…しのぶは、もう義勇さん以外の方は考えられません…」
「おい、冨岡!鬼殺隊員なら一度は憧れるとまで言われるしのぶにここまで言わせたんだ!お前も何とか言ってやれ!!」
「…胡蝶…いや、しのぶ…こんなマネは二度としないで欲しい。…だが、こうでもしなければ、俺は、お前に気持ちを伝えられなかったかもしれない…騙されたことは癪にさわるが、今回ばかりは皆に感謝したい…」義勇は素直に燿哉たちに頭を下げたのであった…
この一件はすぐに鬼殺隊員全員に知れ渡ることとなった。鬼殺隊員全員の応援と冷やかしを受けた二人は交際を開始し…そして二人は結ばれた。
当初二人は、ごく簡単な結婚式しか考えていなったのであったが、燿哉から「現役の柱二人の結婚式が質素すぎると、下の者が迷惑する」と言われてしまったため、やむなく宇髄も驚くようなド派手な結婚式を挙げることになったのであった…