混色の水   作:とて 

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こんにちは。
今日から毎週投稿を再開していきます。
では、どうぞ。


19話

IH神奈川県予選。神奈川の代表枠は2つ。東西南北4つの支部予選を勝ち抜き、決勝トーナメントを勝ち抜いた4校の総当りで決まる。日程は3日、1チーム1日1試合。その初日。青葉青果VS大木、海常VS厚木千賀の順で試合が行われる。

 

 

 

試合前、青葉青果の控え室。作戦の最終確認が行われていた。桑田が口を開く。

 

「スタートはPG 武則。」

 

「はい。」

 

「SG 飛鳥。」

 

「はい。」

 

「SF 茂樹。」

 

「はーい。」

 

「PF 傑。」

 

「はーい。」

 

「C 優馬。」

 

「はい!」

 

「大木高校は本来、中主体のチームだ。それだけだったら良かったが、今の大木には武則たちの先輩である7番、根潮がいる。あいつを抑えない限り、中の強さも際立ち続ける。高さ勝負ではこのメンバーなら勝てるはずだ。そして、肝心の根潮だが…ポジション的には基本、飛鳥に着いてもらうことになる。」

 

「はい…できるだけ頑張ります。」

 

銀波の返事を聞き、沼咲が笑う。

 

「平気だろ、飛鳥は中学ん時キセキの世代のやつら相手に練習してたんだろ?」

 

「まぁ、いつもダウンしてましたけどね。」

 

「なら大丈夫だ。」

 

桑田が頷きながら口を開く。

 

「第1Qで相手の中を確実に抑える。ポジションはSFだが、相手も中が得意なプレーヤーだ。茂樹、傑、優馬、お前らが鍵となる。確実に中を抑えろ。」

 

「「「はい!」」」

 

 

 

 

 

試合開始の時間になり、両校の選手がコートに並ぶ。青葉青果;PG 海野{4番}、SG 銀波{11番}、SF 沼咲{5番}、PF 川崎{6番}、C 凪佐{8番}。大木;PG 新城{5番}、SG 根潮{7番}、SF 加藤{4番}、PF 飯田{6番}、C 一宮{6番}。両主将の海野と加藤が握手をする。加藤が口を開く。

 

「1年のみで決勝リーグまで来るとはな、驚いた。」

 

「ありがとうございます。このまま全国取らせていただきます。」

 

「神奈川を舐めるなよ?」

 

海野は笑顔でそれを聞き流した。沼咲と根潮が向かい合う。沼咲が口を開く。

 

「根潮先輩治ったんすね?」

 

「完治とはいかなかったけどな…まぁ、君ら3人の成長を見せてもらうよ。」

 

「はい。」

 

両校の選手がそれぞれの位置につく。両Cの凪佐と一宮が向かい合う。

 

──────ピィー!

 

笛の音とともにボールが2人の間の宙を舞う。同時に飛び上がった。2人の身長差は5cm、だが、それ以上の差で凪佐が先に触る。

 

「高すぎ…。」

 

凪佐の弾いたボールを沼咲が取る。

 

「先手…必勝!」

 

沼咲は取った流れでそのままドリブルに入り、ゴールへと向かった。加藤がすぐに立ち塞がる。

 

「易々と先制を取れると思うな!」

 

「いいねぇ、加藤さんっ!」

 

「くっ…?!」

 

沼咲は突然の静止、からの左右へのフェイク、ターンで加藤を躱した。そのままゴールへと向かっていき、ゴール下で飛び上がった。

 

「もらったぁ!!」

 

「やらせるかよ!!」

 

沼咲が加藤を躱す間に飯田が追いつき、沼咲がダンクしようとしたボールを弾こうとしていた。

 

「速いっすね…でも」

 

沼咲はボールを下げ、上に放った。沼咲と飯田が落ち始めた中、そのボールを走ってきていた川崎が両手で取る。

 

「うるぁぁぁ!!」

 

そのまま両手ダンクを決めた。いきなりの派手なプレーに会場が盛り上がる。

 

「すげぇぇ!?!」

 

「本当に高校生かあいつら!!?」

 

大木はすぐにボールを入れ、リスタートした。新城がボールを運ぶ。その前に海野が立ち塞がる。新城は一定の距離を空けて止まった。新城が海野を睨む。

 

(こいつ…本当に1年か?隙がないどころじゃねぇ…気を抜いたら速攻で奪われそうだ。)

 

新城は一息吐いて、コートを見渡した。

 

(他のやつもやべぇな…となると、予定通り…)

 

新城から根潮にパスが回る。根潮は高い位置でボールを受け取った。その前には銀波が立ち塞がる。スリーポイントを警戒し、距離を詰めていた。根潮が銀波を見る。

 

「(こいつは元帝光中一軍…まぁ、でもキセキの世代や沼咲たち程じゃねーってことだよな?)…ほっ!」

 

「速い!?」

 

根潮が下半身を動かさずに腕だけでボールを放った。予備動作が少なく、188cmの身長の打点が銀波の反応を遅れさせた。根潮の放ったボールは綺麗な弧を描き、リングを潜った。ベンチの桑田が舌打ちを鳴らす。

 

「くそっ、飛鳥でも抑えきれないのか。」

 

沼咲が銀波の背中を叩く。

 

「飛鳥、やられたな!」

 

「そうですね。イメージよりだいぶ速いです。流石は茂樹くんたちの先輩ですね。」

 

「だからと言って負けてられねーよな?」

 

「はい。」

 

 

 

次の試合のため、コートの横で海常のメンバーが見ていた。笠松が口を開く。

 

「やっぱり、あの7番は厄介だな。相手してる11番は元帝光とはいえ、一軍補欠。流石にキツいか?」

 

黄瀬が笑いながら口を開く。

 

「いや、あの7番は間違いなく、俺たちキセキの世代と同格って言っていいと思うっすよ。それでも、勝つのは銀波っちっす。」

 

「キセキの世代じゃねーだろ?11番は。同中だからって買いかぶりすぎじゃね?」

 

「そうすっかね…。」

 

黄瀬は楽しそうに試合を見ていた。

 

 

 

海野がボールを運ぶ。海野がパスコースを探りに入ると、すぐに銀波が目に入った。

 

「(気合十分って感じか…)飛鳥!」

 

海野から銀波にボールが渡る。銀波の前には根潮が立ち塞がる。根潮が口を開く。

 

「やり返す気か?」

 

「えぇ。」

 

銀波がノーフェイクでシュートフォームに入る。根潮はすぐにブロックに入る。しかし、銀波は気にせずにそのままボールを放った。根潮の指先にボールが触れた。見ていた笠松がため息をつく。

 

「やっぱり買いかぶりすぎだ、黄瀬。」

 

「そんなことないっすよ。」

 

根潮の指先に触れたボールは不安定な軌道を描きながら、リングに当たった。ゴール下でポジションを取れたのは一宮であった。凪佐が悔しそうな顔をしていた。

 

「リバンっ!…?!」

 

数回跳ねたボールはリングを潜った。根潮はゴールを見て驚く。

 

「ラッキーシュートか?」

 

「切り替えろ!リスタート!」

 

加藤が声を飛ばす。新城がボールを運び、ハーフラインを越えたところで、根潮に回す。根潮の前には銀波が立ち塞がった。

 

「さっきのはラッキーだったな。でも、俺はラッキーじゃないんでねっ!」

 

根潮がシュートフォームに入る。銀波は先程より早く反応した。それを見て根潮が銀波を抜きにかかる。

 

「おっと!」

 

「なっ?!」

 

フェイントに釣られたように見えた銀波は根潮の目の前にいた。根潮はそれに驚きながらもすぐにボールを上げ、放った。

 

「くっ!?」

 

銀波はすぐに手を伸ばすが、根潮の放ったボールに届かず、そのボールはリングを潜った。悔しそうにする銀波を根潮が少し首を傾げて見ていた。

 

「リスタート!」

 

沼咲の言葉に凪佐がすぐにボールを入れ、海野が受け取り、カウンターをしかける。しかし、ハーフラインを越える前に新城が立ち塞がる。

 

「あなたには無理ですよっ!」

 

海野はフェイクを入れ、新城を抜き去った。

 

「やらせねぇよ!」

 

しかし、すぐに飯田が立ち塞がる。海野の動きが止まり、その瞬間に大木のメンバーが守備についた。それを見た黄瀬が驚く。

 

「速いっすね、大木の守備。」

 

「そりゃそうだろ。神奈川No.1の守備は横須賀南幸台だ、だが、No.2を決めるとしたら間違いなくウチか大木。その守備力があったからこそ、横須賀南幸台に勝ったんだ。」

 

「へぇ。」

 

「さっきみたいなラッキーシュートはそうそう決まらねぇ。あれを崩さない限りは青葉青果は勝てねーぞ。」

 

「ラッキーじゃないっすよ?」

 

海野から銀波にボールが渡る。銀波の前には再び、根潮が立ち塞がった。根潮が口を開く。

 

「さっきみたいなラッキーを狙う気か?また止めてやるよ。」

 

「それは間違いですよ?」

 

銀波はまたノーフェイクでシュートフォームに入った。

 

「またかよっ!」

 

根潮が飛び上がり、また指先が銀波の放ったボールに触れた。根潮はそれに違和感を持った。

 

(また指先?!…まさか…)

 

ボールは不安定な軌道でリングを跳ねた。数回跳ね、ボールはリングに吸い込まれた。根潮が銀波を見る。

 

「まさかお前…狙ったのか?」

 

「えぇ、正解です。」

 

驚く笠松の横で黄瀬が口を開く。

 

「銀波っちは元々身体が弱くて体力がつきにくい体質で、昔からフルで試合に出れないんすよ。それでも帝光中に入学したころから一軍の補欠にいたっす。」

 

「中1だと?」

 

今の高1が中1の年、それは帝光中三連覇の1年目。キセキの世代の名前が全国に知れ渡った年である。黄瀬以外のキセキの世代の4人も1年生から一軍入りを果たしている。それは、銀波はキセキの世代と同格であるという証明であった。黄瀬が続ける。

 

「本来ならキセキの世代に選ばれてもおかしくなかった。銀波っちのシュートは触れても止められない。俺もキセキの世代の誰も真似出来ない、銀波っち唯一の技。」

 

観客席が盛り上がる。

 

「すげぇぇ!!」

 

「なんだあのシュート?!まぐれじゃねぇのか?!」

 

「ブロックに当ててスリーって可能なのか?!?」

 

青葉青果のベンチも盛り上がる。桑田が立ち上がりガッツポーズをした。

 

「よしっ!」

 

沼咲が銀波に駆け寄る。

 

「ナイスだ!飛鳥!」

 

根潮が戻る銀波を見る。

 

「銀波 飛鳥…か…。新城さん。」

 

突然呼ばれて新城が驚く。

 

「いきなりですけど、全部俺に回して下さい。」

 

「(こいつ…久々に相手に対して楽しそうにしてんな…)わかった、頼むぞ。」

 

「はい。」




いかがだったでしょうか。
次回の投稿は4月10日(日)18:00です。
どうぞお楽しみに。
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