混色の水   作:とて 

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こんにちは!
みなさんはGWどうお過ごしでしたか?
私は仕事関係で少しバタバタしておりました。新しい上司と上手くやっていけるか不安です。。。
コロナはいつまで続くんでしょうね?
私の予想は最低でも1年、最大は予想つかないです。
では、どうぞ!


8話

第3Qが終わり、101対64で青葉青果がリードしていた。2分のインターバル中、青葉青果は変わらずに余裕の表情でいた。しかし、全員に疲れが見え始めていた。その中で、沼咲のみ、余裕綽々としていた。桑田が口を開く。

 

「良くやった。蒼を下げて優馬を入れる。ポジションは第1Qと同じ、蒼がいたSGに奏が入れ。」

 

「「「はい…。」」」

 

全員返事はするものの、疲れからか、声はあまり出ていなかった。沼咲が口を開く。

 

「俺、本気でやっていいすか?」

 

その言葉に全員が驚く。しかし、海野と川崎は笑っていた。桑田が問う。

 

「本気?」

 

「いやまぁ、体力のためにも抑えてたんすけど、最後の10分ぐらいなら持つかな?って。その間にみんな回復しといてよ、最後の1,2分は皆でやろう。あっ、でも優馬は20分休んでるからそこそこ動けるだろうけど、休んでていいよ。バレーのときは半ローテで奏と代わってたんだし、体力的にまだキツいでしょ。」

 

「…!?助かる…?」

 

沼咲の虚勢を張っているわけでも、嘘をついているわけでもなさそうな表情に驚く。

 

「わかった、頼む。」

 

「お願いね。」

 

海野と川崎はそう言い休憩し始めた。桑田が何かを決めたように口を開く。

 

「任していいんだな?」

 

「うん、身体は充分温まってるし、キセキの世代全員が相手じゃなきゃ10分ぐらいはどうにかなるよ。基本的に俺以外は上がらなくて良いよ。ゆっくり動いてなるべく体力回復して。全部俺がやる。」

 

短い話し合いが終わり、残りのインターバルの時間を休憩に使った。美和が沼咲に寄る。

 

「茂樹、無茶はしないでね。」

 

「わかってるよ。」

 

「久しぶりの本気、期待してる。」

 

「おう!」

 

 

 

陽泉ベンチでは最後の対策を練ろうとしていた。しかし、紫原がベンチに座るとともに周りを驚嘆させた。

 

「もーやーめた!誰か代わってよ、どうせ練習試合じゃん。」

 

「おい、竹刀とれ。」

 

荒木がキレそうになるのを岡村が制して、紫原の目の前に立つ。紫原が岡村をチラ見する。紫原が口を開く。

 

「なに?」

 

──────バシンっ!

 

岡村が紫原の頬を平手打ちした。元々背が高く体格の良い岡村の平手打ちには紫原もよろける。しかし、すぐに睨み返す。

 

「痛いんだけど、何なの?」

 

「練習試合であろうと負けは許されんじゃろが。そして、例え負けたとしても全力で試合をしてくれた相手に失礼じゃ!」

 

「なにその武士道精神?みたいなやつ。そもそも負ける試合に全力でやるのが意味わかんない。」

 

「お前が唯一対抗できるんじゃ!悔しいがワシたちでは抑えることすら難しいんじゃ!紫原、お前はワシたちの高校、陽泉高校を勝たせるために入部したんじゃろ!?頼む、力を貸してくれ!!」

 

岡村が涙を流しながら土下座をする。その姿に青葉青果も含め、体育館にいる全ての人が衝撃を受けた。陽泉高校は秋田県王者、IH,WC両方とも全国優勝の経験を持つ、日本の高校の中でも超強豪校。その主将が4月に入ったばかりの2つ年下の新入部員に頭を下げている。福井は周りの目に気が付き、岡村を立たせる。岡村の目にはまだ涙が溢れていた。

 

「…ワカッタヨ。分かったやるよ!」

 

「紫原ぁぁぁぁ!!」

 

岡村が感動で抱きつこうとする。紫原はそれを防ぐ。

 

「暑苦しいなぁもう…やられたまま負けるのもやだし、そもそも負けるのもつまんないし、出るよ。」

 

荒木は岡村の覚悟と、紫原の心の入れ替わりに驚いていた。紫原が荒木の方を向く。

 

「雅子ちん」

 

「監督と呼べ!」

 

「ヘアゴム貸して。」

 

荒木は自分の予備のヘアゴムを紫原に渡す。紫原は長い髪を後ろにまとめた。全員が荒木の元に集まる。荒木が口を開く。

 

「第4Q、紫原中心で行く。紫原はなるべくオフェンスに専念してくれて構わない。見た感じ、向こうのメンバーは限界が近い。全員1年生、そして選手は6人。どう頑張ってもあと1,2分程度で全員動けなくなるだろう。そしたら、後は高さで攻めろ。鈴木は隙があったら3Pを打ちまくれ。リバウンドは3人が必ず取れる。」

 

荒木がそこまで言ったところで審判が笛を鳴らす。

 

「勝つぞ!!!」

 

「「「おう!!!!!」」」

 

陽泉の5人は気合いの入った表情でコートへと戻っていく。それとは逆に、青葉青果の沼咲以外の4人はやる気のない表情でコートへと戻って行った。沼咲は1人、楽しそうにしていた。沼咲が紫原に話しかける。

 

「あれ?投げ出したのかと思ったけど?」

 

「うん、そうしようと思ったけどやめた。面倒くさくなりそうだけど、負けるのはもっと嫌なの。」

 

「やる気満々だね(やべぇな、やる気無くしといてくれよ‪w)。」

 

陽泉からのボールで始まる。福井がボールをスリーポイントライン手前まで運んだ瞬間に海野が福井のボールを奪い取る。

 

「なっ…まじかよ。(体力限界じゃねーのかよ。)」

 

「体力はもう限界ですよ?だからこれだけです。」

 

すぐに沼咲にパスを送る。陽泉のメンバー急いで自陣に戻る。そこで見たことない光景を見る。岡村が思わず口を漏らす。

 

「茂樹以外、自陣から動かないじゃと…!?」

 

沼咲がゆっくり陽泉コートにボールを運ぶ。当然、福井と鈴木が沼咲1人の前に立ふさがる。福井が口を開く。

 

「舐めてんのかてめぇ…!」

 

「うん。」

 

沼咲はニコニコしながら返す。福井と鈴木は沼咲の放つオーラに恐怖を感じた。

 

(やべぇなこの雰囲気…まさかこいつ…本気で俺ら5人から1人で点を取るつもりか…!?)

 

沼咲が突然高速のドリブルを始め、福井と鈴木は釣られて前後左右に振られ始めた。

 

「うん、この感じ。」

 

急に静止し、福井と鈴木が止まりきれずに脚を崩す。一瞬の静止の直後、急加速で福井と鈴木を置き去りにした。3Pラインの内側には2m×3人が待ち構えている。

 

「ほらほらぁ!!!」

 

劉を躱し、両手でボールを持って、シュートの体勢に入る。岡村と紫原が飛んでブロックしようとする。

 

「えー…と、こうだっけ?」

 

「なんじゃそりゃ!?」

 

「これは…!?」

 

沼咲は飛び上がる瞬間にコートを斜めに蹴り、横っ飛びをした。飛びながらシュートを打つ。そのボールはリングで跳ねながらもゴールに入った。

 

「あぶねぇー、外したと思った‪w」

 

「沼咲…(今のは青ちんのシュート…と言うかドリブルも青ちんのやつ。でも青ちんよりも突発的でリズムがまるで無さすぎる。)」

 

「やるのぉ、茂樹。」

 

「ゴリラと重戦車程度には負けないよっ!」

 

そう言い残し自陣に戻っていく。紫原と岡村2人揃って怒りを我慢した表情になっていた。紫原が口を開く。

 

「アゴと一緒にすんなし。」

 

「アゴ!?ゴリラどこ行った!?てかゴリラもおかしいじゃろがい!」

 

「うるさいアゴリラ。」

 

福井が岡村の頭を叩く。陽泉はすぐにリスタートする。青葉青果のメンバーは中に固まっており、福井がボールを3Pライン手前で、海野が福井の前に出る。福井は周りを見渡す。

 

「(中は密集しすぎてパスカットよくて外に出される。なら…)鈴木!」

 

福井はサイドの3Pラインでフリーになっていた鈴木にパスを回す。

 

「おうっ!舐めんなよっ…!?」

 

パスを貰い、クイックリリースで3Pを狙う。が、ボールを放った瞬間に突然腕が伸びてきてそれを防がれた。その腕を伸ばしたのは沼咲だった。沼咲はそのままボールを拾い、攻め上がっていく。福井は自分の行動を悔いる。

 

「(くそっ…、あいつあんなに速かったか?中に人数集中させて、外は沼咲の超スピードで追いつくってことかよ!)待ちやがれ!」

 

1番近い福井が直ぐに追いかける。しかし、沼咲はスピードを突然0にして、止まる。

 

「なっ…ぐっ!」

 

福井は全速力からギリギリ止まった。しかし、沼咲は再び加速して福井を置き去りにした。

 

「なん…だと!?」

 

福井はそのスピードに足下が崩れ、コートに転がる。その横をとんでもないスピードで走り去る影がもう1つ。紫原であった。沼咲もそれに気づく。紫原は3Pライン手前で沼咲に追いつき、沼咲の動きを止めた。

 

「ははっ、流石だねっ。」

 

沼咲は止まった瞬間に、ドリブルの流れからそのまま下投げでボールをゴールに放った。

 

「くそっ!?」

 

そのボールは綺麗なスピンをしてゴールへと吸い込まれた。紫原が沼咲に声をかける。

 

「やっぱり、青ちんのシュートだよね?もしかして、お前は黄瀬ちんと同じ、いや、それ以上の…。」

 

「いや、違うよ。俺と大輝のスタイルが似てるだけ。ただ違うのは、俺は型にハマった動きの練習を習ったこともしたこともないだけ。」

 

「なっ…!?」

 

「もちろん、型にハマったのもできるけど、ちゃんと習ったことはないから全部モノマネよ。第3Qまではそれをやってただけ。」

 

そう言い残し、自陣のコートへ戻っていく。紫原は驚くとともに、嬉しそうな表情をしていた。キセキの世代の5人は全員が個々のスタイルを持っている、そして全員が自分の才能を主軸にして成長していた。それでも、帝光中では基礎練は一軍でも必ず行っていた。その要因もあって3連覇という記録を樹立させた。自分より才能がある、本気の力でバスケが出来るかもしれない、そのことが紫原を喜ばせた。

 

福井が再びボールを運ぶ。紫原はゴールより少し離れた場所でパスを要求していた。福井は紫原の何かが吹っ切れた様子に気づき、パスを送る。沼咲が紫原とゴールの間に立ふさがる。沼咲は紫原の雰囲気が変わったことに気づく。

 

(この感じ…?)

 

紫原は今までとはレベルの違うドリブルを見せ、ゴール下へと入った。沼咲が叫ぶ。

 

「全員どけ!」

 

沼咲は振り切られないようについて行く。しかし、紫原を止めることは出来なかった。紫原がゴール手前で飛び上がる。それに合わせて沼咲も飛ぶ。

 

「うらぁ!」

 

紫原は片手ダンクを決め、沼咲を吹き飛ばす。沼咲はコート外に転がった。そして紫原を見上げる。

 

「(やっぱり…ゾーン!!!)…いいじゃん紫原!」

 

「絶対負けない!」

 

他のメンバーも紫原の変わりように気づく。そして全員が確信する、ゾーンに入った、と。凪佐が沼咲に駆け寄る。

 

「茂樹、俺はほぼ回復してるから手伝おうか?」

 

そう声をかけた直後に沼咲の様子が変わったことに気づく。沼咲がニヤケながら口を開く。

 

「いらないよ、残り2分まで休んでて。やっと80%が出せるかもしれないやつが現れた…流石キセキの世代だ。」

 

ベンチの美和はコート外から真っ先に沼咲の様子に気づいていた。

 

「咲さん、絶対タイムアウト取らないでください。」

 

「元々そのつもりだが、どうしてだ?」

 

「茂樹が…本気になります。」

 

「!?」




いかかだったでしょうか。
次回で陽泉編は終わりです。
GW終わるので投稿頻度は元に戻して毎週日曜18:00からです。
次回の投稿は5月9日(日)18:00です、
お楽しみに
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