GWが終わり、仕事が少し億劫に感じております。
GW終わったので、今日から毎週日曜18:00投稿です。
どうぞ!
第4Q、陽泉は劣勢ではあったが、紫原の覚醒により士気が上がっていた。沼咲がボールを運んでいく。福井と鈴木が立ち塞がる。2人はドライブを警戒して少し下がっていた。それを見て沼咲はシュートの体勢に入った。福井と鈴木は一瞬遅れたが、紫原がすぐ反応し、シュートコースを塞いだ。沼咲は空中でボールを下げて、下から放った。
「防ぐなよー、これじゃ形違うやん。」
そのボールは高く上がり、上空で止まり、ゴールに真っ直ぐに入った。紫原はその軌道に見覚えがあった。
「みどちん…!?」
沼咲はボールが宙に待っている間に自陣に戻っていた。福井がボールを運ぼうとすると、紫原がすぐに要求した。まだ自陣コートから出ていなかった。しかし、紫原の威圧に押されて大人しく渡す。すると紫原がドリブルで駆け上がって行った。沼咲が立ち塞がる。
「良い感じじゃん、紫原。」
「絶対負けない!」
紫原は普段見ないようなドリブルをし、沼咲を振りにかかる。青葉青果のメンバーはもちろん、陽泉のメンバーも紫原の相手を揺さぶるようなドリブルは見たことがなかった。沼咲が少しバランスを崩したところで紫原が抜きにかかる。そのスピードとキレは全国でも稀に見るようなレベルであった。
「ほいっ。」
しかし、沼咲は後ろからボールを突いて弾いた。そのボールを川崎がキャッチし、前に走り始めた沼咲にパスする。
「くそっ!?」
陽泉のメンバーも驚く。福井が口を開く。
「あれでも抜けねーのかよ、バケモンかあいつは!?」
紫原のドリブルは確かにレベルは高いが、沼咲は全国でも止められる人がほぼ存在しないような青峰のドリブルすらも止められる。普段ドリブルをしない紫原ではゾーンに入っても抜けるはずがなかった。
「止めるぞ!」
福井が声をかける。岡村、劉、鈴木はそれぞれ構える。福井と鈴木が沼咲の前につく。3Pを打たれないように鈴木が少し前に出る。
「ははっ、止めれるなら止めてみてよ!」
沼咲は笑いながら変則的なドリブルをし、2人を躱す。岡村と劉がゴール前に立ち塞がる。沼咲はそれを無視するように飛び上がった。
「やらせん!」
「やらせないアル!」
「高いねー…。」
沼咲は空中でターンをし、2人を躱し、ターン中にボールを放った。
「無理だったね。」
沼咲が着地すると同時にゴールへと吸い込まれた。両ベンチのメンバーも驚く、沼咲の圧倒的な能力、それはまるでコート上を舞い踊っているかのような姿であった。沼咲は立ち尽くす陽泉メンバーを背に楽しそうな表情で
「もっと遊ばせてよ?」
と言い、自陣コートに戻って行った。沼咲の圧倒的なスキルに呆然としかけた陽泉メンバーは紫原の気迫に起こされた。
「俺がやる!」
福井が口を開く。
「わかった、だが、中でパスを受けろ!お前の本領は中のプレイだ、それで負けるはずがない!」
福井がボールを運んでいく。沼咲につかれる前に紫原に回す。沼咲は中に戻り、紫原につく。紫原は少し力で押し、沼咲を躱し、ターンをしながら両手ダンクを決めに入る。
「よっ!」
沼咲がすぐさま前に入り直し、飛び上がり、紫原の持つボールに片手を置く。
「んらぁぁぁ!」
紫原は自身のフルパワーで決めにかかる。しかし、沼咲は一瞬力を弱め、手首を折り、下からボールをゴール側に弾いた。紫原は予想外の力の加わり方にボールをこぼした。
「力だけじゃ、俺に勝てないよ。」
そのボールはバックボードに跳ね、凪佐がそのボールを取る。沼咲はすぐ前に走り、ボールを要求し、凪佐がパスをした。
「2度もやらせるか…!?」
沼咲は戻りきれていない4人を躱し、中に侵入して行った。
「くそっ!!」
「バケモンアルか!?」
「速すぎじゃ!?」
しかし、紫原が追いつき、ゴール前に立ち塞がる。
「沼咲ぃぃぃ!!」
「ほらよっ!」
沼咲はスピードを殺さずにドリブルの流れで下からボールを放った。紫原は虚をつかれ反応ができなかった。そのボールはバックボードに当たり、跳ねる。沼咲はそのまま飛び上がり、そのボールをキャッチした。
「やらせないよ!」
紫原が飛び上がり、ボールに手を被せる。
「流石だ…でも…。」
沼咲は悲しそうな目をして、ボールを下げ、反対の手で紫原の横からダンクを決めた。紫原はその勢いに押され、倒れ込む。沼咲はそれを見下ろしながら口を開く。
「もう終わりだね。楽しかったよ。」
そう言い残し、自陣へ戻って行った。紫原は立ち上がろうとしたが、足が言うことを聞かず膝をついた。その様子に岡村たちが駆け寄る。
「大丈夫か、紫原!?」
「平気だし、まだ…」
紫原がそう言いかけたところで審判が笛を鳴らす。交代の合図だった。荒木が口を開く。
「紫原、交代だ。戻れ!」
「まだ出来る!」
「うるさい!戻れ!!」
紫原はその圧に押され、黙った。岡村が紫原に肩を貸し、ベンチに連れていく。紫原の頭に手をやる。紫原の目からは涙が零れていた。
「これは練習試合じゃ…、本番じゃない。今お前に怪我されるのも困る、またリベンジしろ。」
「…。」
紫原は大人しくベンチに座り、試合が再開した。荒木が紫原の頭にタオルをかけ、口を開く。
「お前は体が大きい分、人より体力が必要になる。これからつけていこう。」
「…もう辞めるし…。」
「そうか、私にはそう見えないがな。」
荒木は優しい目で紫原を見る。紫原は下を向きながら悔し泣きをしていた。
試合は岡村たちが頑張ったものの、沼咲、そして残り2分で体力が回復し動き出した4人を止められず、無情に点差が開いて行った。
結果は149対76。青葉青果の圧勝であった。片付けが終わり、青葉青果のメンバーが帰り始める。岡村が沼咲に声をかける。
「次は負けんぞ?必ずIHでリベンジじゃ!」
「はい、ゴリラさんも頑張ってね。」
「お前!結局全部ゴリラ呼びじゃないか!?」
沼咲は逃げるように体育館から出ていった。岡村はその様子を見て微笑んでいた。帰りの新幹線、沼咲は川田の隣に座っていた。2人ともパソコンを開いている。川田が口を開く。
「茂樹くん、いつもパソコン持ち歩いてるの?」
「うん、試合のデータとか練習の記録とかメモとって集計してるからね。例えばこれとか。」
沼咲が開いたデータには青葉青果のメンバーの強み、弱点などがこと細かく入力されていた。
「チーム全体のことまで!?ごめんね、そういうの本当は私の仕事なのに…。」
「いや、俺のは趣味に近いものだし、紀子も徐々に覚えけば良いよ。せっかく上から見てるんだから、そこで気づいたところとかメモとってデータにしとけば、帰ってからの反省で使えるし。」
「…うん!ありがとう!」
他のメンバーは試合に疲れて寝ていた。桑田と美和は試合のことについて話していた。沼咲と川田はその後、練習試合の動画の共有をし、楽しく話しながら時間を潰していた。
桐皇学園、屋上。青峰は授業をサボって寝ていた。放課後になり、桃井が屋上に駆け込んで来る。
「青峰くん!また授業サボったの!?もう練習の時間だよ!?」
「あー?行かねーよ。そーゆー条件じゃねーか?」
桃井はその言葉を聞き、少し悲しそうな目をするが、すぐに口を開く。
「今度練習試合する青葉青果高校が強いの!」
「青葉…?高校か…知らねーよ。どうせ勝てるよ。」
青峰はそう言って桃井に背を向けながら転がった。桃井は続ける。
「元青葉中の沼咲くんがいるの!他にも海野くんと川崎くんもいて、他3人もとっても強いの!」
「沼咲…茂樹か!あいつ全中以降名前聞かなかったけど、青葉青果?ってとこ入ったのか!なら話は別だ!」
青峰は素早く起き上がり、屋上から出ていく。桃井は急いでついていく。
「昨日、むっくんのいる陽泉高校とやったらしくて、沼咲くんからその動画送られてきたんだけど。先に監督に見せるけど、練習後に皆で見ることになると思う。」
「紫原と?結果は。」
「149対76…むっくんは第4Qで交代してその後、一方的に差が開いてって感じで。」
「紫原が手抜いてたのか?」
「むしろ本気に見えた。私の目と、沼咲くんの解説が正しければむっくんはゾーンに入ってたって。」
「…!?」
ゾーン…一流の選手がどんな練習しても実際の試合では80%が上限だと言われている。では100%を出すにはどうすれば良いのか。いくら本気でやってもほとんどの人間は80%までしか出せない。しかし、ごく稀に、その100%を出せる選手がいるという。それはごく一部の人間が、ゾーンに入った時のみ。青峰も自力でゾーンに入れるが、紫原が入れるとは思っていなかった。もちろん、キセキの世代はバスケ界でも稀に見ないレベルの天才であり、能力的には全員が入れる。しかし、能力以外にも決定的な条件があった。それは、バスケが好きなこと。以前の紫原にはそれが欠けていた。しかし、それに入ったとなると…そういうことである。そして、それに勝った青葉青果。青峰は思わずニヤける。
「やってくれんじゃねぇか…解説?」
「そう、送られてきた動画に沼咲くんの実況と解説が音声で追加されてたの。主に陽泉のメンバーについてだけど。」
「おもしれぇじゃん、あいつ!」
桃井は青峰の楽しそうな表情に嬉しそうにしていた。桃井も思わず楽しそうにスキップしていた。
練習終わり、青峰たち桐皇レギュラーと監督 原澤克徳、マネージャー 桃井さつきは沼咲の送った動画を見ていた。全員、沼咲のオーバーな実況、正確な解説に少し引きながら見ていた。唯一、青峰だけは爆笑していた。動画が終わり、原澤が口を開く。
「さて、結果は見ての通り、全国常連の陽泉高校…青峰くんと同じキセキの世代 紫原くんがいるところに圧勝です。今吉くんはどう見ます?」
「強いですねぇ、正直なとこ、勝てるかわからんですわ。元青葉中の3人は流石としか言いようがないですし、残り3人も沼咲くんの言う、バレーボールの動きを活かしていますわ。うちと同じかそれ以上の攻撃力、そして陽泉と同じかそれ以上の守備力、悪夢みたいやん。」
「そうですねぇ、正直勝てるかに関してはわからないとしか言いようがないです。でも、うちには青峰くんがいますし、桃井さんもいます。青峰くん、中学のときに戦った印象はどうでしたか?」
青峰はぶっきらぼうに答える。
「茂樹に関しては中学のときは勝てなかった、ほか2人も俺らキセキの世代と同格と言っていい。」
青峰の言葉に全員が驚く。しかし、紫原を圧倒していた沼咲なら当然であった。しかし、ほか2人も紫原を相手に同等以上に戦っていた。それ相手に勝てるのか、それ以前に勝負になるかがわからなかった。
「そうですか…では対策を考えていきましょう。桃井さん、お願いします。」
桃井が立ち上がり、口を開く。
「はい──────。」
桐皇は練習試合に対して、公式戦に向けるような対策をしていった。
いかがだったでしょうか?
明日からも頑張っていきましょう!
次回の投稿は5月16日(日)18:00です。
お楽しみに!