薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
ある地域のとあるハンター訓練所。その訓練所は地域……いや、現大陸の中でも特に過酷な場所だと言われている。それゆえにこの訓練所を出たものは王国直属の『ギルドナイト』はたまたギルド公認の敏腕ハンターへとなるものが後を絶たない。
訓練へと参加しているのは屈強な体格を誇る男女。男は7割が筋骨隆々、その巨大な体格は軽く平均して六尺は下らない。鍛え上げられたボディに加えて卓越した身体能力。
年齢はややバラツキがあるが、将来が有望とされている訓練生。だが、その屈強な男達が次々と倒されていったのだ。
「ガハァ!!」
吹き飛ばされた男の内の1人は超新星と呼ばれる程の高い実力を持つ訓練生であり、身長は5.8尺ながらも成績は今期の中で3位と上位である。その男の目の前には何と背丈が5尺程度の小柄な少年が腕を組まずに仁王立ちしていた。
女子とそう変わらない輪郭。そして長く伸びた髪に透き通る様な青い目。一見して少女に見えてしまうだろう。だが、顔から下へと目を向ければそれは一気に消え去る。
細い身体に極限なまでに溜め込まれた筋肉。細い腕の上腕二頭筋も発達しており、腹筋も六つにクッキリと割れている。
「やっぱり…アンタには敵わねぇな…」
吹き飛ばされたハンターは起き上がると降参するかの様に両手をあげる。
すると、それを確認した少年は男へと歩み寄ると手を出す。
「筋力勝負だったらアンタの勝ちだよ」
「ソイツも怪しいけどな…」
少年にとっては事実。青年にとっては皮肉とも取れる言葉の意味を互いに受け取りながら立ち上がる。
「勝負有り!!!」
肉体とのぶつかり合いが終了すると今度は各自の武器での演習となる。
皆が武器を手に取る中 少年は武器を取らず、ただ肉体の修行を再開した。
巨大な岩を持ち上げ、何度も何度も状態起こし。そして長距離走。彼が武器を手に取り訓練に参加するのは週に一度きりだ。
「なぁ。アイツっていつもあぁなのか?」
「いや、いつもどころじゃない。俺達が休憩してる時もずっとアイツは一人で筋トレばっかやってるんだ。卒業が近いのになにやってんだかな。それにあんな体格で今更鍛えたって無駄だろうに」
二人のハンターがコソコソと言う中 少年はただ肉体を鍛え続けていた。
多くのハンター達はある程度まで肉体を精錬すればそこで止めてしまう。その後は武器を扱いどの高みまで目指していけるかだ。
だが、少年は鍛え続ける事をやめなかった。
◇◇◇◇◇
この訓練所には数ある訓練所の中にはない特殊な訓練が存在していた。
それは 支給品装備による“サバイバル”
参加は自由。不参加による卒業不認定などは存在しない。そうなれば受けない者も中にはいる。だが、高みを目指すと心に決めた者達やハンターライフを先行体験したい者達は自主的に参加していった。
フィールドは『森・丘』
ここで1日を過ごす。参加したとしても途中に辞退は可能だ。
参加したのは全員の中でも男女合わせておよそ30パーセント。この全員で狩場でのサバイバルを生き抜くのだ。生死は全て自己責任。更にモンスターの繁殖期による危険度も一切無視。
武器はそれぞれ簡単に作られたレア度が2程度のモノのみ。装備も全員チェーンシリーズ。
いわゆる擬似ハンター体験である。
多くのハンター達は夢に見た狩場での生活に心を震わせる。だが、数ある中でも猛者の部類に入る者達は常時警戒を解く事はなかった。
この時期の森・丘は最悪の時期だった。それは『リオレウス』と『リオレイア』の邂逅。
即ち、繁殖期による凶暴化である。
それを知らなかった者達は知った途端に夜が来る前にキャンプへと逃げる様に帰還していく。
だが、逃げ遅れた者は恐怖に襲われるだろう。
「うわぁぁ!!みんなどこいっいまったんだよぉ!!!」
仲間と逸れたハンターは涙を流しながら逃げ回る。その後ろからは陸の女王と名高いリオレイアが突進してきていた。
「来るなァァァァ!!」
リオレイアが直前まで迫ってきた時だった。
「オラァッ!!!!」
突然その場に巨大な叫び声が響くと共にリオレイアの翼を何者かが斬りつけた。
それは訓練時に自身が見下していた訓練生であった。
それと共に後ろからは双剣とヘヴィボウガンを持つ二人の女性の訓練生。更に辺りからは大剣、太刀を構えた訓練生が飛び出してきた。
全訓練生の中でもたったの2%。その5人は借りた武器にも関わらず、次々とリオレイアへとダメージを与えていく。
その中でも、双剣を持つ男女とヘヴィボウガンを操る女の3人は別格であった。
素早い動きで辺りを駆け抜けていき、リオレイアを翻弄し、その隙を突き次々と斬りつけていった。
そしてそれをサポートするかの如く、ボウガンを持った彼女は一発も外す事なくモンスターへと弾丸を放っていた。
その他の二人のハンターも同じく武器を構えて攻撃していく。
その時だ。
___ギャァァオオオオ!!!
その場を揺るがす巨大な咆哮が響き渡った。
見ると上空からリオレウスが飛来し、リオレイアの前に降り立った。妻を傷つけられた事で怒り狂い、口からは大量の炎が漏れ出していた。
だが、5人のハンター達は決して引く事はなかった。双剣を持つ男女は再びリオレイアの時と同じコンビネーションによってリオレウスを翻弄し、その隙をついたヘヴィボウガンを扱う女性は麻痺弾を投射。
そして麻痺したところを双剣の男女と大剣、太刀を持つ男性ハンター達は総攻撃を仕掛けていった。
その結果、何と凶暴となったリオレウスは空高く飛び立ち、他のエリアへと撤退。リオレイアも逃げていった。
尻餅をついていたハンターはこの時 5人との圧倒的な違いを実感させられたのだった。
それと同時にあの双剣使いの男がなぜ、ずっと身体を鍛え上げ続けていたのか理解できた。
それは“武器の強さ”によるハンデを打ち消すためであった。たとえ武器が弱く屈強なモンスターに遭遇しても、それを技術と身体能力で補う事でその力量差を埋めることが可能となる。
程なくして5人のハンターにより擬似体験は幕を閉じた。
◇◇◇◇◇
所属しているハンター訓練所に入隊試験も卒業試験も存在しない。
教官から『いろは』そして『武器の扱い方』を叩き込まれて終わる。そこから自給自足。死んでも自己責任だ。だが、自由であるからこそ、人は何が必要か、何をするべきかを判別する事ができ、成長していく。
この訓練所はそれに則っていた。
「君たちは今日までよく頑張った。記念に君達には好きな種類の武器を一つずつプレゼントしよう。卒業した後もこの調子でG級への昇格を目指して頑張ってくれ」
『『『『『はいッ!!!!』』』』』
およそ100名の猛々しい声が響き渡る。
「では、卒業生代表の言葉を聞こう。54番!前へ!」
「はい!」
卒業生代表。それはこの100人の中でも教官から選ばれし『極めて優秀な者』である。
教官から呼ばれると大きく返事をする声が響き渡った。教官に向かう様に登壇したのは何と双剣を使いリオレウスとリオレイアを相手に善戦していた小柄な少年だった。
「代表の君から今後の抱負を聞きたい」
「はっ!!」
これは教官の興味本位である。どう受け答えしてもよい。女性にモテたい、強くなりたい、王になりたい。どんな言葉でも人それぞれ個性のある目標だ。それに対して少年は脚を揃えると共に答えた。
「ここで得た経験とこれから育む経験を糧に精進し、新たなる拠点の者達から頼られるハンターへとなります」
その言葉に辺りは静まり返る。何とも普通の答えだ。
それに対して教官は頷いた。
「良い答えだ。それを叶えられるよう頑張ってくれ」
そして 少年の答辞が終わると卒業の式は幕を閉じ、新世代としての期待を背負った皆は次々と自身好みの武器を手に取り旅立っていった。
そんな中 代表となった少年は双剣を担ぎながら悠々と歩いていく。多くのハンター達はその少年が歩いてくる姿を見ると道を譲るかの様に左右へと避ける。その後ろから少年と共にリオレウスとリオレイアを撃退した二人の女性ハンターも後に続く。
この訓練所にて小柄な身体でありながらも首席で卒業した彼。そして彼女らは後にこう呼ばれる事となった。
______『暁』
______『宵闇』
そして
______『薄明』と。