薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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カムラの里のほのぼの日常 〜酒乱のヒノエ姉様〜

ある夏の日の昼頃。季節は夏でも比較的に涼しい午後。空に輝きながら熱を発する太陽に照らされながらもカムラの里の製鉄に務める者達の活気は欠けることは無かった。

 

 

「ふわぁ〜…」

集会所入り口付近に位置する広間にていつものようにヒノエは受付の仕事をしていた。すると、里の入り口から物音が聞こえ始める。その物音はやがて近づき、広間に入ってきた。

 

「よっと…」

カムラの里の和服を纏ったゲンジが数本の樽を乗せたリヤカーを引っ張っていたのだ。自身よりも小柄ながらも巨大なリアカーをまるで草が詰め込まれた荷台を引くかのようにのしのしと順調に引っ張っていた。

 

「あらあら。大変そうですね。手伝いましょうか?」

 

「いや、いい。ふぅ…」

ゲンジはヒノエの前に着くと一休みのためにリヤカーの引き手を離し首に巻いていたタオルで顔を拭う。

 

「なんですか?これは。随分と大きな樽ですね…」

ヒノエは立ち上がるとゲンジが引いていたリヤカーに積まれている樽を覗き込む。その樽は切り株のように太く大きいものであり、小さなコルクの棒らしきものが埋め込まれていた。

 

「酒だよ酒。なんでもフゲンさんの姪子が送ってきたらしい。配達便の奴らが苦労してたから代わりに運んでやってたんだ。これがあと2セットある」

 

「そうだったのですね。それにしてもこの量がまだまだあるとは驚きですね〜」

 

「軽い運動になる。取り敢えず集会所に置いてくるよ」

そう言いゲンジは再びリヤカーの引き手を持ち直すと集会所へと向かっていった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

集会所へと到着したゲンジはリヤカーを階段の前で止めると、荷台から一本を持ち上げる。

 

「よっ…」

一つにつき約数十キロ。ゲンジは普通に2本運べるが、贈り物のために無闇には扱えないので、一本ずつ丁寧に運ぶ。

 

「よっと。お〜い。贈り物の酒樽到着したぞ」

そう言いながら中へと入ると受付の仕事をしていたミノトとテッカちゃんに座っていたゴコクが気づき、歩いてくる。

 

「ふぉ?お主がなぜ配達の品を?」

 

「忙しそうだったから代わりに運んできてやったんだよ。フゲンさんの姪っ子からだ」

 

「ほぉほぉ!あの子からか」

因みにフゲンの姪っ子は容姿は不明だが、アオアシラを素手で倒す程の逞しい女性らしい。

ゴコクは面識があるのか、差出人の名前を耳に入れると喜んだ。なんでもアオアシラを素手で倒す程のパワフルな人らしい。

 

「中身は何でしょうか?」

 

「酒。結構強めな奴だ」

 

「お酒ですか…」

酒という単語を聞いたミノトは顎に手を当てながら酒樽を見つめる。

すると、入り口から荷物が運ばれた事を聞きつけたのかフゲンが歩いてきた。

 

「おぅゲンジよ。運ばせてすまないな」

 

「別に軽い運動になったからいいさ。それよりもこの酒どうするんだ?団子には合わないだろ」

 

「ふむ。そうだな。今宵の夏の空を見ながら酒盛りでも開くとしよう。エスラとシャーラの歓迎も兼ねてな」

 

「そうか。なら、外に置いとくぞ」

せっかく集会所に持ってきたというのにまた外に持っていくという二度手間にミノトは首を傾げながらも、その一方でゲンジはトコトコと歩きながら運んで行った。

 

◇◇◇◇◇◇

 

その晩。仕事を終えた里の皆は子供達を連れて里の広場へと集った。その中にはエスラやシャーラもいた。

 

「いいなぁ。辺りから舞う蛍が幻想的だ」

 

見ると里を囲む川とその周辺にある草むらから蛍が現れ、明るい点が奇跡を残しながら暗い夜の景色を彩るかのように舞っていた。

 

「そういえばゲンは?」

 

「あぁ。酒樽を持ってくるそうだ。いいね。この景色で酒を飲めるなんて」

エスラはこう見えて酒は嫌いではないらしい。それはシャーラも同じだ。

 

 

その後、皆は風呂敷を敷き、それぞれの場所を作る。そしてゲンジが樽を運び、料理担当の者達が料理を持ってくると、それぞれの場所に座る。準備ができると、それを見据えたフゲンは皆が座っている中、立ち上がる。

 

「皆の衆よ。今宵は集まってくれて感謝する。此度の宴は里に新たに住まう事となった家族を歓迎するために開いた。では、新たなる家族を紹介しよう。我が里の英雄であるゲンジの姉『エスラ』と『シャーラ』だ」

 

 

すると、辺りから拍手が立ち上がる。里の皆もゲンジに続き新たなる家族を大歓迎しているようだった。そして、名を挙げられたエスラは張り切りながら立ち上がる。

 

「やぁやぁ里の諸君。ご紹介に預かったエスラとシャーラだ。私達もこの里へと住む事となった。だからこれから長い間、よろしく頼むよ。因みに希少種の話が聞きたい者は後で私の陣地に来るがいい。夜空に舞う金色のリオレイア、そして快晴の空に輝く銀色のリオレウスの話を聞かせよう」

 

 

『おぉ!!』

その話に興味を持った里の子供や大人達は歓声をあげる。一方で、シャーラは特に何も喋る事がなかった為に、エスラとシャーラの紹介はアッサリと終わった。

 

「では、紹介も終わった事で皆の衆よ。今宵は全て忘れて夏の夜空を楽しもう!」

 

『『『おぉ〜!!』』』

 

皆の手に持ったジョッキがフゲンと共に掲げられた。それから宴は始まった。辺りではドジョー掬いに興じている者や歌を熱唱する者もいた。

 

特にフゲンのいる場所に集まっている男達は

 

「“盃”を“乾す”と書いて!!“乾杯”と読むッ!!!!」

 

『『『せぇ〜の…かんぱぁぁぁぁい!!!!!』』』

 

 

何とも他とは一線を画しており、フゲンの猛々しい音頭と共に皆は可燃性の水を大量に口の中に流し込んでいた。よくよく見ると皆が炎に包まれている様に見える。

 

そんな中 ゲンジの周辺にいる者達はなぜか、頬を赤く染め膨らませながら震えていた。吹き出すのを堪えているかのように。

 

『〜……!!!』

 

その視線の先にいるのはジョッキを手に持ちゴクゴクと飲むゲンジ。

 

「ヒノエ姉さん…もう一杯…」

 

「はい。ふふふ…」

 

ヒノエも笑いを溢しながらゲンジのジョッキに黄色い飲み物を注ぐ。それは何と…泡立つ事のない果汁100%の甘い飲み物。

 

 

_____ジュースだった。

 

 

「だぁ〜ハッハッハッハッハッハ!!!!」

 

1人の里の者に釣られるかの様に辺りにいる者達も次々と爆笑していった。

 

「まさかゲンジさんがお酒苦手だったなんてな!」

 

「そういえば前に間違えて酒を瓶に注いで飲んじまった時もすぐ酔ってたよな〜!」

 

「いや〜…見た目に合ってる合ってる!」

 

「んぐ…」

聞こえてくる爆笑の渦にゲンジは顔を赤くしながらプルプルと震えていた。

 

そしてその傍らでもヒノエは笑みを浮かべており、ミノトに至っては爆笑しようとしているのを抑え込んでいるのか顔を手で覆っていた。

 

「しょ…しょうがねぇだろ!?身体に合わねぇんだから!俺だって飲めたら飲みたいわ!」

 

「それでも飲んだら倒れるんですよね?」

 

「うぅ…」

 

遂に頭にきたのか、ゲンジはヤケになり、過去の出来事を自暴自棄に語り始めるが、ヒノエが途中から質問を掛けてそれに答え止まってしまった事で辺りは更に大爆笑に包まれた。

 

「ハッハッハッ!そこがゲンジの可愛い所さ!」

 

すると、今日送られてきた強い酒が入った酒茶碗を片手に陽気な気分となったエスラがゲンジの首に手を回し抱き寄せた。

 

「ちょ!?姉さん酒臭い!強いからって飲み過ぎだよ!!」

 

「何を言っている?私がお酒大好きなのはお前がよく知ってるだろ〜?ほれほれ〜!」

 

「や…やめろ…!!」

そう言いながら顔を赤くしたエスラはゲンジの頭に手を置くとスリスリと撫で回し始めた。

 

「あらあら。義姉さんもだいぶ酔ってらっしゃる様ですね」

 

その様子を茶碗に注がれたお茶を飲みながら見ていたヒノエは微笑む。

 

そして一度置かれた茶碗を手に取ると、ゆっくりと喉元に流し込んだ。だが、この時ヒノエは茶碗に目を向けていなかった為にいつものような感覚で横に置かれていた酒茶碗に手を掛けていたことに気づかなかった。

 

「あれ?何か変な味がしますねこのお茶…」

 

「あぁ?………ってヒノエ!?それは私の酒茶碗だぞ!?」

 

ヒノエの言葉に不思議に思いながら振り向いたエスラは即座に赤くしていた顔を引っ込める。何とヒノエが自分のものだと思い手に取ったのはエスラが置いた酒茶碗であった。中にはまだ半分もの酒が残っており、ヒノエはそれに気づかず、全て飲み干してしまった。

 

その言葉に隣で飲んでいたミノトも驚きの表情を浮かべた。

間違えて酒を飲んでしまったヒノエは空になった酒茶碗を手から落としてしまう。幸いにも酒茶碗は割れることは無かったが、ヒノエは顔を俯かせてしまう。

 

「ね…姉様…?」

 

ミノトがゆっくりと声を掛ける。すると

 

 

 

「………ヒック」

 

突然と俯いたヒノエから何やらしゃっくりの様な音が出始めた。その音にゲンジとエスラは固まってしまう。すると、ゆっくりと俯かせていた顔が上げられた。その顔はいつものように優しい笑みに包まれていたが、林檎の様に真っ赤に染め上がっていた。

 

「う〜ん…」 

真っ赤な顔に蕩けた琥珀色の双眼がヒノエの前にあるミノトの顔を見つめる。

 

その瞬間

 

 

「ミ〜ノ〜ト〜!!」

 

「ひょわ!?」

突然と身を乗り出し、ミノトの首に手を巻きつけると抱き着き始めた。

 

「ねねねね姉様!?だめです!公衆の面前でこんな事は!?」

 

「ふふ〜可愛い妹に抱き着いてダメな事なんてありませんよ〜♪」

 

抱きつかれたミノトは顔を真っ赤に染め上げ、即座にヒノエを引き離そうとするが、引き離そうとするとヒノエは笑みを浮かべながら更にヒートアップし頬擦りと共にミノトの胸に手を当て始めた。

 

「あらあら〜?最近身長だけでなく胸も大きくなったんじゃありませんか〜?これなら旦那様も大喜びするれしょうね〜」

 

「ひやぁあ!?ね…姉様!お戯れを!?み…皆が!皆が見ております!」

 

「大丈夫れすよ〜姉妹同士が仲良くしてるだけなんですからね〜。うんうん良く育ってますね〜♪」

 

ヒノエは次々と着物越しからミノトの胸を揉み始め、それをされたミノトは顔を真っ赤に染め上げてしまう。

 

「いやぁ!あ…ね…姉様!そこは…!あ…でも幸せ…」

 

だが、何故がミノトは嬉しそうであった。

 

辺りへと目を向けると皆はフンドシ一丁で騒いでいるフゲンの元へと集まりどんちゃん騒ぎしていたので幸いにも近くにいるのはゲンジとエスラとシャーラだけであった。だがそれでもミノトは恥ずかしさと幸福感で気絶してしまいそうであった。

 

「ヒノエさんって…もしかしてお酒弱いの?」

 

「そうなるな…あの絡み様…しばらく続きそうだ…」

 

「これはすぐに逃げた方が良さそうだな…」

 

ヒノエの酔い潰れた状態を見て危険な状況と判断したゲンジ達は小声で口裏を合わせるとミノトに合掌し、即座に逃走を図るべく背を向ける。

 

「あら…?」

 

すると、その音に気づいたヒノエがミノトに抱き着く動作を止めるとブリキのおもちゃのように振り向き、琥珀色の瞳を輝かせながらこちらを睨んだ。

 

「どこへいくんですか〜!!!」

 

「「「ふぎゃぁ!?」」」

 

それと同時にヒノエの身体が飛び上がり、逃げようとした3人に向けて大の字でボディプレスを炸裂させた。その結果、エスラとシャーラとゲンジはヒノエに捕獲されてしまう。

右手でエスラの身体を、左手でシャーラの身体を。そして身体でゲンジの身体を押し付けて捕まえたヒノエはそのままエスラとシャーラの胸へと手を伸ばす。

 

「義姉さんもシャーラも逃げるなんて酷いじゃないれすか〜!」

 

「「ひやぁぁわぁ!!??」」

そして透き通る妖艶な声を上げながら2人の胸を同時に鷲掴みにすると揉み始めた。鷲掴みにされた2人は聞いたこともない様な悲鳴をあげてしまう。

 

その隙をついて小さな身体を生かしながらゲンジは間をすり抜けようとした。

すると、その姿を発見したエスラは胸を揉まれる中、即座にヒノエへと呼びかける。

 

「ヒ…ヒノエ!見ろ!旦那さんが逃げようとしているぞ!お前が心の底から愛する旦那さんが!」

 

「何ですって〜…?」

 

それに反応したヒノエはエスラとシャーラの胸を揉みしだく手を止めると今度はゲンジへと輝く双眼を向けた。

 

「私から逃げようなんて許しませんよ〜?可愛い可愛い私とミノトの旦那様〜!!」

 

「うわぁ!?」

狩人と化したヒノエはゲンジに向けてまるで空腹に襲われたジンオウガの如く飛びついた。飛びつかれた事でゲンジは風呂敷の上で仰向けに押し倒され身動きが取れなくなってしまう。

 

「捕まえま〜したよ〜♪」

 

「ひぃ…!?」

 

目の前にあるのは顔を赤くしながら息を荒々しくあげるヒノエの顔。その目は自身1人だけを完全に捕らえていた。

 

「ね…姉さん!助け……あれ?」

 

即座にゲンジは解放されたエスラ達に救援を求めるが、既に姿が無く、見ると2人でミノトを担ぎながら家の中へと入っていった。

 

「裏切りものぉぉ!!!」

 

叫んでもエスラ達には聞こえない。そしてヒノエはもう止まる様子を見せなかった。周りの皆は辺りの雰囲気に染まりあがり、こちらに目を向ける者は誰一人いない。

すると赤く染まり上がったヒノエの顔が次々と近づいてくる。

 

「旦那様ぁ〜!」

 

「うわぁぁぁぁ!!!!!」

 

その後、ゲンジは酔い潰れたヒノエに密着されながら何度も接吻を受け、遂には力一杯抱き締められた事で気絶してしまった。

 

「旦那様〜まいりましたか〜♪」

それでも酔いが覚めることのないヒノエは上機嫌なままゲンジを抱き締めていた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「ん〜……ん?あら?」

しばらくしてヒノエの顔から酔いの証拠である赤く染まった部分が少し消えた。ようやくいつものようにおっとりとした雰囲気を取り戻したのだ。

 

「どうしてゲンジが?」

目覚めたヒノエは自身の胸に顔を埋めながら気絶しているゲンジを目にして何が起きたのか思い出せなかった。

 

「ふぅ…ようやく覚めたようだな…」

それを見計らって家に避難したエスラ達は家から出て戻ると、ヒノエに水を差し出す。

 

「ほら…水飲んでスッキリしろ…」

 

「まぁありがとうございます!」

差し出された水をヒノエはゴクゴクと飲み干す。もうこれでヒノエは酔っ払うことはないだろう。

 

「何があったのですか?義姉さんもシャーラも。それにミノトも顔が真っ赤じゃないですか」

 

「い…いや…」

 

ヒノエは自身が何をしたのか分からないために、顔を赤くさせていた3人を不思議そうに見つめていた。まぁ、エスラ達にとっては覚えていない方が良いと思っているだろう。

 

 

その後、気絶したゲンジを膝に乗せながらヒノエはエスラ、シャーラ、ミノトと共に夜空に輝く星々を見上げていた。

 

この日エスラ達は二度とヒノエに酒を飲まさないと決めるがミノトは満更でも無かったようであった。

 

 

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