薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
「いよいよか。新種の古龍を相手にできるとは…興奮してくるな…!」
ライトボウガン『鳳仙火竜砲』の手入れをしながらエスラは頬を赤く染め上げ、未知のモンスターへの挑戦に胸を高鳴らせる。
「姉さん。今回はヒノエさんの命が関わってるんだから笑えないよ」
その隣ではいつものように無表情のシャーラがギロチンの整備をしていた。それに対してエスラは頷く。
「それもそうだな。それに…奴だけではない。ゲンジの恐暴竜や“対”というのもまだ残っているからな」
あの日、ヒノエが口にしていた言葉を思い出す。
“対は何処 対は何処”
対とは即ちあのモンスターと同種の者。もう一体がどこかに潜んでいると読み取れるだろう。
「対も早く見つけなければ…」
「うん。…ゲン?どうしたの?」
そんな中、シャーラはずっと黙り込みながらも武器を整備するゲンジはと目を向ける。目はただ一心不乱に磨かれている武器へと向けられていた。まるで自身だけの世界に浸っているように。
「…何でもない。少し風に当たってくる」
シャーラに声を掛けられたゲンジは武器を磨く手を止め、武器の様子を確かめながら答えると、もう終わったのか、武器を立てかけて外へと歩いて出て行ってしまった。
その一方でエスラはヒノエへと声を掛ける。
「ヒノエは共鳴が起こった時に何か分からないのか?奴の言っていた『対』の存在については」
エスラの問い掛けにランスを整備しているミノトの隣で同じく弓の整備を行っていたヒノエは難しい表情を浮かべながら答えた。
「申し訳ありませんが…今のところはまだ分かりません。ただ、イブシマキヒコが悲しみと焦りながらその『対』という存在を探している事しか…」
「そうか。それが分かればもう少し深く解き明かせるんだがな…」
顎に手を当てながらもエスラは武器の整備を続けた。
◇◇◇◇◇◇
空が焼け色に染め上がろうとする景色をゲンジは里の入り口にある橋の上から眺めていた。
「…」
心に残るのはヒノエの百竜夜行への同行。もしも彼女が共鳴によって命を落としてしまったらどうしよう。生きたとしても後遺症が残ってしまったらどうしよう。
それがずっと不安で仕方がなかった。
「…あれ?待てよ…?」
___そんな中 ある考えが頭の中を過ぎる。
ヒノエが共に来るならば、イブシマキヒコを彼女に近づけさせなければいいんだ。
近づいてきても奴を瞬殺してしまえばいい。共鳴を起こしたとしてもすぐさま殺してしまえばいい。
次々と出てくる方法にゲンジは笑みを浮かべる。だが、そんな事をすれば自身は更に自我を蝕まれていき、最悪の場合、暴走してしまう。
それについてゲンジはある事を思い出す。それは1週間前にマルバの寝込みを襲った際にエスラに撃たれた痺れ弾。それによって自我が失われそうであった自身を鎮めた。
即ち、あれを打ちこんでもらえば暴走したとしても行動不能となり人を襲う事はない。
____何だ。良いアイデアじゃねぇか…!!!
それを思いついた瞬間 ゲンジは声を出しながら笑ってしまう。
「あはは…!(何でこんな事に早く気づけなかったんだ?人を襲うなら襲えないように拘束しちまえばいいんだ…!!)」
ゲンジは自身の恐暴竜の突然の目覚めによる暴走にも恐れていた。もしもモンスターがいなくなっても身体の所有権が取り戻せなければ、その場にいる皆を襲ってしまう。それも怖かった。
だが、今の考えが思いついた瞬間にその恐れは架空へと消え去っていた。
___もう暴走したとしても人を襲う心配はない。
「いいなぁ…!!(喜べイビルジョー。お前にたっぶり食事をさせてやる…!!)」
ゲンジは遥か彼方にたなびく雲へと目を向けそこにイブシマキヒコがいるかの様に見つめる。その瞳からはハイライトが消え去っていた。