薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
その後、ゲンジは生き生きと歩きながらカゲロウの元へと向かうと、彼から大量の痺れ弾と睡眠弾。そして眠りダケを購入する。
「ありがとうな。カゲロウさん」
「えぇ。またのお越しを。そしてご健闘をお祈りします」
カゲロウはゲンジのいつもの様子に安心しながら品物を売る。売った売り物は剣士であるゲンジには必要ないと思っていたが、エスラから頼まれているのだろうと思いあまり気には止めなかった。
◇◇◇◇◇◇
「ただいま」
「あら。おかえりなさい」
買い物を済ませて家に戻るとそこにはいつものように笑みを浮かべながらミノトと共に夕食の支度をするヒノエの姿があった。
「夕食ならもうすぐできますよ。今日はゲンジの大好きなファンゴのお鍋です♪」
そう言いヒノエは笑顔を向けてくる。それに対してゲンジは頷いた。
「そうか。楽しみだな」
___必ず守る。この2人を…そしてエスラとシャーラも里の皆も。
◇◇◇◇◇◇
その後、5人は夕食を済ませ、いつものように風呂へ向かうべく5人は支度をする。そんな中、いち早く済ませたゲンジは4人へと目を向けると今まで悩んでいたある事を口にする。
「トゥーク達に話そうと思う。俺の事を」
「「「「!?」」」」
それを聞いた皆は驚きの表情を浮かべた。トゥーク達へと自身の秘密を告白する事に対してヒノエは問う。
「いいのですか…?」
「あぁ。いずれは話さなきゃならん。それに、その事でムシャクシャしてた。だから今のうちに話しておきたい」
そう答えるゲンジの表情からは迷いはない。それに対してエスラ達は安心すると頷く。
「…うん。ゲンジが決めたならばそうするといいよ。私達も行こう」
◇◇◇◇◇◇
その後 トゥーク達と共に温泉に入ると、自宅には戻らず、トゥーク達の止まる部屋へと直接向かい彼らを集めた。
「どうした?何かあったのか?」
トゥークは尋ねる。いきなり集められた彼らは勿論なぜ集められたのかという素朴な疑問を抱く。それに対してゲンジは答えた。
「お前らには話しておく」
ゲンジは表情を曇らせながらも左目を覆っていた眼帯を取り外した。目の前に出されたのは黒色に染まった目玉。そしてその中心部で輝く赤い瞳。
それを見た瞬間 皆は驚きの表情を浮かべた。
「この目と俺の体内に眠る恐暴竜についてだ」
それからゲンジは皆へと全てを打ち明けた。初対面であるフルガやククルナ、リオやセルエにも分かるように。最初は皆は驚いていたが、納得してくれたのか途中からは何も喋らずに聞いてくれていた。
尖った耳もトゥークが風呂場で気になっていた異形な3本脚の事も。
全てを話し終えた時の皆の表情はとても真剣であり誰一人と忌み嫌う様な表情を浮かべる者はいなかった。それだけが唯一の救いであった。
「そうか…結構 辛かったんだな」
話し終えるとトゥークはあの時、温泉に入る中で触れられたくない事を質問してしまった事に対して謝罪した。
「悪かったな…気づかずに触れちまって…」
「気にしなくていい。早く話さなかった俺が悪いからな」
そんな中、ティカルの横で険しい表情を浮かべながら聞いていたククルナは突然と手を上げながら口を開いた。
「貴方の事に関してはよく分かりましたわ。それに対して少し質問させてもらってもよろしくて?」
「あぁ。いいぞ」
するとククルナは鋭い目を自身に向けた。
「もしも、貴方の中にいるイビルジョーがこの百竜夜行の中で目覚めてしまった場合…どうすればよろしいですの?」
その質問に対してゲンジは迷いなく答える。
「その時は俺に麻酔か痺れ弾を打ち込んで欲しい。俺が気絶、眠りにつけば奴の意思も同じく引っ込むさ。特にモンスターがいない場合は人を襲っちまう可能性があるから頼む」
「そう。随分とハイリスクな代物ですわね。それにモンスターとの意思疎通ができたと聞きましたが…本当に竜人族みたいですわ」
「…まぁ、奴に身体を乗っ取られてる時だけだがな」
ゲンジは頷くと、再び皆へと目を向けた。
「他に何か聞きたい奴はいるか?」
見渡しても誰も手をあげて聞こうとする気配はない。
モンスターと意思疎通が可能ならば説得して去って貰えばいいのではないのかという生温い疑問を持つ者がいない事にゲンジは安心していた。
誰も聞く気配がないのであればもう自身について話す事はないだろう。
すると
「なぁなぁ!アンタってその力使わずにG級ハンターになれたんだろ!?」
「え…!?あ…あぁそうだが…」
暗くなった雰囲気をぶち壊すフルガの興味津々な質問にゲンジは戸惑いながらも頷く。
「すげぇな!!ますますアンタの戦う所が見たくなっちまったぜ!!」
そう言いフルガは興奮し、頬を好調させる。するとため息をついたトゥークは興奮するフルガの頭へとゲンコツを見舞う。
「おいフルガ。はしゃぎすぎだぞ」
「いた!?おい師匠!何もブつことねえじゃねぇか!?」
「逆に はしゃぐ事でもない」
「んだよ!本当に師匠は堅ぇな〜!!そんなんだからいつまで経っても結婚できねぇんだよ!」
「関係ないだろ!?」
高揚するフルガとそれを制止させたトゥークは次々と言い争いを始めてしまう。その馬鹿げた言い争いにゲンジはポカンとしており、横にいるヒノエは笑みを溢していた。
「ちょ!?フルガ君も師匠もやめてくださいよ!」
「師匠!ちょっと落ち着いて…」
それをティカルとリオは間に立ちながら止める。すると、それをずっと黙って聞いていたククルナが二人の頭へとゲンコツを振り下ろした。
「いい加減にしなさい!近所迷惑ですわよ!」
「「す…すいません…」」
ククルナの鉄拳制裁によって頭にタンコブを付けられたトゥークとフルガは借りてきた猫のように一瞬にして鎮まった。
「大体貴方達はTPOというモノをですね!!___
それからククルナの説教が始まった。その様子はやんちゃした子供を叱る母親の様であり、ミノトは初めて会った時のジリスとセルエのやり取りを思い出してしまう。
「ははは。愉快な連中だよ。本当に」
「えぇ。ゲンジもいい友達を持ちましたね」
その様子をエスラとヒノエは笑いながら見つめる。
そんな中、ヒノエの横でいつも変わらず無表情でいたミノトはふと、ゲンジの方へと目を向ける。
「…?」
そこには先程までポカンとしていたが、今ではヒノエと同じく笑みを浮かべるゲンジの姿があった。だが、その笑顔は一瞬だけであり、その上トゥーク達の団欒としている風景に向けてなどいなかった。少し俯きまるで何かを考え高揚しているかのように。
一度だけ見えたその笑みはすぐに元の無表情へと戻る。
その後、ゲンジ達は立ち上がるとトゥーク達へ目を向ける。
「ありがとうなトゥーク。お前らに会えて良かった」
去り際にゲンジは感謝の言葉を笑みを向けると共にトゥーク達へ掛けると、旅館を後にし、自宅へと戻る。
だが、ミノトは気になっていた。先程の虚空を見つめながら一瞬だけ見せた笑み。あれは一体…何なのだろうか。
「(…いや、あまり気にすることではありませんね)」
ただの思い出し笑いでもしたのだろう。そう解釈したミノトは敢えて聞かずに触れる事は無かった。