薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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出立の朝

薄明の空。まだ太陽が顔を出さず暗い明朝。鳥もまだ目を覚まさず、物音一つ聞こえる事はない。

 

そんな中で誰よりも早く目が覚めたゲンジはゆっくりと起き上がる。両隣には今でも寝息を立てるヒノエとミノトの姿があった。

 

「…」

ゲンジはただ、無表情のまま、今回の百竜夜行の中心であるヒノエの顔を少し見つめると、即座に起き上がり、アイテムボックスの中から捕獲用麻酔玉を取り出し、自身のポーチへと入れる。これはモンスターを罠にかけた際に投げる事でモンスターを眠らせ、捕獲する事ができるのだ。人体に扱えば、間違いなく一瞬で眠りにつくだろう。

 

故にゲンジは出来るだけ持っていく。

 

___暴走したとしても すぐに眠りにつけるように。

 

すると

 

「おはようございます。ゲンジ」

 

後ろから声が聞こえ、振り向くと目を覚ましたヒノエがあくびをしながら上半身を起き上がらせていた。

 

「おはよう。ヒノエ姉さん」

 

その姿を見たゲンジはいつものように返した。それに対してヒノエはいつものように優しい笑みを自身に向けてくる。

 

その顔を見たゲンジはゆっくりとヒノエに近づくと片膝を下ろし現在の体調について尋ねる。

 

「身体の調子はどうだ?大丈夫か?」

 

「えぇ。大丈夫ですよ」

 

「…そうか。良かった」

それに対してヒノエは答えた。その笑みを見たゲンジはゆっくりとヒノエの背中に手を回すと、抱き締める。

 

「…!」

いつもならば自身から抱擁をするというのに、いきなりゲンジの方から抱擁された事でヒノエは調子を乱し、頬を赤く染めてしまう。

 

「ゲ…ゲゲ…ゲンジ…!?どうしたんですか!?」

 

ヒノエが戸惑う中 ゲンジは伝えた。

 

「……俺が必ずヒノエ姉さんを助ける。あの古龍を殺して…」

 

「ゲンジ…」

伝えられたその言葉を聞いた瞬間取り乱していたヒノエは冷静になると、自身も腕を回しゲンジの小さな身体を抱き締める。

 

「突然そんな事を言われてはびっくりしてしまいます…何かあったのですか?」

 

「…」

不意にヒノエから尋ねられたゲンジは何も答える事はなかった。返答しないゲンジを不思議に思いながらもヒノエは頬を擦り寄せる。

 

「でも…嬉しいです。ありがとうございます旦那様」

 

ヒノエは一度ゲンジから離れると擦り寄せた頬へと柔らかな唇で口付けをした。

そして再び顔を合わせると琥珀色の瞳を水晶のように輝くゲンジの蒼い瞳へと向ける。

 

 

「必ず終わらせましょう。百竜夜行を」

 

「あぁ」

 

それに対してゲンジは頷く。

 

 

 

 

「……姉様ばかりずるいです…」

 

「「!?」」

不意に聞こえた声。ふとヒノエとゲンジは同時に声が聞こえた方向へと顔を向けるとそこには頬を膨らませたミノトが嫉妬しているかのようにこちらを凝視していた。

 

「い…いつから起きてた…?」

 

「姉様が旦那様の頬に口づけをした時です…」

ミノトは両手を広げゲンジに向けて揺れる琥珀色の目を向ける。

 

「私もお願いします旦那様…!さぁ!」

 

「わ…分かったよ…//」

両手を広げ抱擁を強要するミノトにゲンジは頬を赤く染め戸惑いながらも頷きミノトの背中に手を回し抱き締めた。

抱き締められたミノトは力強くゲンジを抱き締め返し、完全にホールドする。

 

「よしよし…良い子ですね」

 

「うぅ…」

ゲンジから抱擁を受けた事にミノトは満足すると、まるで赤ん坊をあやすかのようにゲンジの背中を尋常ではない速度でスリスリと撫で回した。

ゲンジは自身から進んで抱擁する事に抵抗はあるものの、そこまでではない。だが、相手からされるのは大の苦手であり、即座に顔を真っ赤にしてしまうのだ。

 

「あらあら♪」

 

ミノトがゲンジを赤ん坊のように抱き締めるその様子をヒノエは微笑みながら見つめていた。

 

それから朝日が昇り窓から差し込んだ陽光が家の中を照らし始めるとエスラ、シャーラも目覚め始めていく。

 

そして 5人は装備を装着し、武器を手に取り家を出た。

 

◇◇◇◇◇

 

それから5人は集合場所である集会所前の広場へと着く。すると、前と同じくヨモギとイオリが手を振りながら歩いてきた。

 

「おぉ〜い!皆〜!」

 

「おはようございます!」

 

こちらに向けて振られた手にゲンジ達は手を振り返す。その後ろからはハモンも続いていた。

 

「ハモンさんも行くのか?」

 

「当たり前だ。何より今回は百竜夜行を起こしている奴が出てくる…。今までの借りを返してやらねばな。お前らばかりには良い格好はさせん」

 

そう言いハモンは拳を握り締める。いつも厳格な表情を浮かべている表情が更に険しくなっていた。ハモンの実力は今もなお衰えを知らず、50年前の百竜夜行ではたった1人でマガイマガドを撃退したらしい。

ハモンもフゲンと同等かそれ以上の強さを持っているといってもいい。

 

「相変わらず皆は早いな」

 

すると、集会所の入り口から百竜刀を背負ったフゲンとゴコクが現れる。

 

「フゲンさん。遅いじゃねぇか。イオリとヨモギに負けてるぞ?」

 

「フッ。ジジイは早起きが苦手なんだ。お?ゲンジよ。お主 武器がいつもとは違うな」

 

「あぁ」

そんな中、フゲンはゲンジの背負う双剣を見て形状が違う事を見抜く。ゲンジが背負っていた双剣は『双剣リュウノツガイ』空の王者リオレウスの素材から作り出された火属性の双剣で、タンジアの港に滞在していた頃に作成した武器である。

 

「イブシマキヒコは雲の中を飛ぶから雷は絶対に効かないと思ってな。雷属性以外の双剣を選んだのさ。な?シャーラ姉さん」

 

「うん。それに風を吹かせるなら火も更に威力が高くなるからね」

そう言いゲンジはシャーラへと目を向ける。彼女もピースをしながら同じく双剣リュウノツガイを取り出した。モンスターの弱点を瞬時に環境から見抜く点についてはエスラ程ではないが、ゲンジもシャーラも十分に長けていると言っていい。

 

◇◇◇◇◇◇

 

その後、トゥーク達や前回の百竜夜行にて活躍した2人のハンター。それに加えて出撃する里の皆も集まると、フゲンは階段の上へと立つ。

 

「皆の衆よ。よくぞ集まってくれた。此度の百竜夜行は今までの比ではない。過酷な闘いとなるだろう。だが!これを撃退しイブシマキヒコを討伐すれば百竜夜行の根絶に大きな一歩を踏み出す事ができると俺は思っている。故に皆も気を引き締めてほしい。

そして、此度の百竜夜行には我が里の専属ハンターゲンジ、エスラ、シャーラに加えてユクモ村から7人のハンター諸君が駆けつけてくれた!!」

 

そう言いフゲンの目がゲンジ達の隣に固まっているトゥーク達へと向けられた。

 

「お主らの助力に感謝する。共に頼むぞ…!」

 

それに対してトゥーク達は頷く。

 

「では、これにて解散する。砦に向かう者は荷車へ乗ってくれ」

 

里での最後の集会を終わると、戦場へと赴く里の戦士達、そしてハンター達は次々と荷車へと乗り、砦へと出立した。

 

 

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