薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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恐暴の声

里を出発し、およそ数時間。

百竜夜行を食い止める最前線である戦場『翡葉の砦』へと到着した。前回と前々回とも連続で百竜夜行の撃退に成功した聖地とも言える。

 

相変わらず多量のバリスタや大砲、撃竜槍さらに最終兵器である破竜砲が殺伐とした雰囲気を感じさせてくる。

 

「すげぇ…こんな厳重な整備の砦は初めてみるな…」

 

「見てください師匠!ドンドルマの巨龍砲みたいのがありますよ!?」

 

初めて訪れたトゥークとティカルは砦の整備の厳重さにポカンと口を開けながら唖然としていた。他のユクモ村の皆々も圧倒され、辺りを見回していた。

 

その後、ヒノエとミノトは彼らを案内すると、砦の整備についての説明もする。バリスタや大砲の経験があるのか、皆は使い方をすぐさま飲み込んでいた。

 

説明を理解した後、砦の最前線にてそれぞれ各個人での訓練となった。

 

「…?」

 

ミノトとヒノエは訓練する中、ある違和感を感じていた。

 

「どうした?2人とも」

 

その場で同じくライトボウガンを扱い訓練していたエスラが尋ねると2人は辺りで訓練をする者達を見渡しながら答えた。

 

「先程からゲンジの姿が見えないのですが…」

 

「言われてみれば確かにな…」

ミノトの言葉にエスラも頷く。多くの者が訓練する中にはゲンジの姿は無かった。

すると、近くで双剣を振るっていたシャーラが答えた。

 

「ゲンならトイレだって言ってたよ」

 

「そうか…。なら安心だが…どうした?ミノト」

 

エスラは何故か表情を曇らせるミノトを不思議に思い尋ねる。

 

「何か…嫌な予感がします…」

 

◇◇◇◇◇◇

 

「はぁ…はぁ…はぁ…!!」

 

誰もいない砦の拠点の最奥にて 頭を押さえながらうずくまる影があった。額からは大量の汗を流し、その地面には黒い皮で作られた眼帯が落ちていた。

 

「何で…あんなことを…!!ダメだ…あの力は…使っちゃいけねぇ…!!」

 

何度も何度も自身に言い聞かせる。昨日の自身が考えた作戦と行動を後悔と共に否定するかの様に。

 

『喜べイビルジョー!!お前に食事をさせてやる!!』

 

分からなかった。なぜ、あんな言葉を口にし力を行使する事に肯定的になってしまったのか。

胸を掴み、昨日 心の中で叫んだあの言葉と次々と溢れ出てくる衝動をゲンジは汗を流しながら抑え込んでいた。

 

「クソが…!!力なんて…俺は使わねぇぞ…!!」

 

__だが使わなければあの小娘が長く苦しむ事になるのだぞ?

 

「…!!」

 

突然と囁く男の声。それはまるでその場にいるかの様に鮮明に聞こえてきた。その声を聞いたゲンジは目を震わせる。

 

「なんで…古龍を見てもないのに…!」

 

その声は今日だけではなかった。昨日のあの日 ヒノエと自身について悩んでいたあの時も同じ声が自身の頭の中で囁きそれを聞いた途端にそれを異常なまでに肯定してしまう気分となった。

 

「コイツ……ぐぅぅ…!!!」

 

即ち 恐暴竜がゲンジの欲望を暴走させようとしているのだ。表面化できないのならば させやすい様にすればいい。力を使いたくなければ使わざるを得ない様にすればいい。

 

『我が力を使えばあの小娘を苦しみから解放する事など容易いぞ?それに我に食事をさせてくれると言っていたではないか。あれはただの戯言か?』

 

 

「ぐぅ…!!!黙れぇぇぇえ!!!!!」

 

ゲンジは腹の底から声を出し叫び出す。すると、頭の中に響いていた声が掻き消されていった。

 

『我が出ずとも依代は必ず我を必要とする。その時は力を貸してやろう』

 

叫び声を上げた直後に恐暴竜の思念は再び闇の中へと消えていった。

だが、最後に囁かれたその言葉だけは鮮明に聞こえていた。

 

「誰がテメェの力なんか…!!クソが!!」

 

気分が晴れないままゲンジは立ち上がると、近くに置いてあるガラスに映った自身を見た。そこには左目が黒色に染まった目玉を持つ自分が映っていた。

 

「ぐぅぅ…!!」

 

覚悟を決めたゲンジは今更になって後悔してしまう。だが、捕獲用麻酔玉を持ってきたのは幸いであった。

 

だが、先程のイビルジョーが囁いた言葉がずっと頭から離れる事はなかった。

 

__あの小娘が苦しむのだぞ?

 

ヒノエの苦しむ姿は見たくない。

その上、今の精神力ではどの道イブシマキヒコと対峙した時にイビルジョーは必ず意識を食い破ってくるだろう。そうなれば意識は残ろうと身体を持っていかれる。

 

「八方塞がりじゃねぇか…!!!」

 

 

その時だった。

 

 

「大丈夫ですか…?」

 

「!?」

 

突然 背後から声が聞こえた。振り向くとそこには自身を心配そうに見つめている人影があった。

 

 

「ミノト…姉さん…」

 

 

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