薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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ミノトの抱く違和感

それは数分前の出来事であった。ゲンジの行方が分からず探していたヒノエとミノトはシャーラからお手洗いに向かったことを聞かされる。

 

「でも、遅すぎるんだ。かれこれ数十分は戻ってこなくて…」

 

「それ程まで…一体どれ程の大物を捻り__「それ以上はおやめください姉様」

 

ヒノエの言葉をミノトは遮る。まぁ、確かにトイレで大物を捻り出そうとすればそれぐらいは掛かる。余談だが、腹を下したフゲンは1時間以上も篭っていた事があったらしい。

 

「まぁヒノエの言う通りかもしれんな。だから気長に待つ事にしよう」

 

「そうですね」

 

ヒノエはエスラの言葉に頷き、訓練を再開する。だが、ミノトは違和感を抱いていたのだ。思い出すは昨晩の虚空を見ながら浮かべていた笑み。あれと何か関係があるのではないのか。

 

「姉様、少々 お手洗いに」

 

どうしても気になって仕方がなかったミノトはヒノエ達にそれだけ告げるとソソクサとその場から離れて拠点へと向かう。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「ゲンジ…一体どこに…」

 

拠点へと入るとミノトは次々と通路を通りゲンジを探した。お手洗いに行く事は嘘であり、心配のあまりゲンジの様子を見に来ていたのだ。彼があの調子ならばトイレと偽り人知れずの場所で一人苦しんでいる可能性もなくはない。

そう思いミノトは次々と場所を当たる。行くと言っていたお手洗いにも、寝場所にも。

 

そんな中 ふと、ミノトは脚を止める。

 

「…!」

そこは砦の拠点の中でもあまり使われずバリスタの弾が立てかけられている場所であった。いくつものバリスタの弾や拘束弾が規則正しく並べられている中に黒くうずくまる影を見つけた。

 

それは紛れもないゲンジであった。見ると頭を抱えながら蹲っており。明らかに腹痛ではない。それを見つけたミノトは即座に声を掛けた。

 

「大丈夫…ですか…?」

 

「…!」

すると、その声に驚いたのかゲンジは即座にこちらを振り向いた。

 

「ミノト…姉さん…」

 

振り向きこちらへと向けられた瞳は酷く怯える様に震えていた。

 

☆☆☆☆☆

 

「なぜこんなところに…お手洗いに行ったのではないのですか?」

 

「…!!」

 

ミノトに尋ねられた瞬間 ゲンジは即座に立ち上がると、顔を拭い答えた。

 

「いや…行ったけど、途中からまた腹が痛くなってな。うん。もう一度行ってくるよ」

 

そう言いゲンジは苦笑しながらミノトの隣を通り過ぎ、再びお手洗いへと向かおうとする。

 

「…え?」

ゲンジの通り過ぎようとする脚が止まった。見ると右手がミノトによって掴まれていたのだ。

ゲンジの身動きを止めたミノトは目を鋭くさせながら見つめる。

 

「何か隠していませんか?」

 

ミノトの問い掛けにゲンジは少し黙り込んでしまうも、即座に表情を作り変え、何も問題がない様に装うために、少しの笑みを浮かべず、ただ答えた。

 

「いや」

 

「……」

目を向けながら答えるとミノトは真偽を確かめるかの様にじっと琥珀色の瞳を向けながら見つめてくる。嘘が少しでも混じっていないかジックリと確認するかのように。

 

「では、なぜ、先程私を見た瞬間 目を震わせていたのですか?」

 

「それは単に驚いてただけだよ」

 

「驚いていただけ………ですか?」

 

「あぁ」

 

ミノトの2度の問い掛けにゲンジは頷く。

 

「…分かりました」

 

すると、真実だと受け取ったのか、ミノトは目を離すと、掴んでいた手をようやく離してくれた。

「ただ、お辛い事があったら…遠慮なくご相談してくださいね」

 

その言葉と共にミノトの両手が肩へと置かれる。手から伝わる暖かい感触と自身に向けられる心強い眼差しにゲンジは戸惑いながらも頷いた。

 

「……あぁ」

 

それからゲンジはミノトを見送ると、しばらくしてから訓練へと戻った。

 

◇◇◇◇◇◇

 

訓練へと戻ってからは恐暴竜の声は聞こえる事はなかった。それでもゲンジは安心する事なく、いつもの様に双剣を取り出して動きの再確認を行う。此度の百竜夜行はこちらへと攻めてくる日が不確定だ。今かもしれないし明日かもしれない。この砦にいる間は決して油断はできない。

 

「ヴォラァッ!!!!!」

 

それに加えてゲンジは許せなかった。あの力に頼ろうとしてしまった自身に。それに対して腹を立てているかのように双剣を獣の様な唸り声と共に振るう。

 

「ヴォォァアアア!!!!」

 

空中から放った乱舞からのトドメの一撃。過剰に乗せられた力によって振われた双剣は設置された的を木っ端微塵に破壊してしまった。

 

「ふぅ…ふぅ…」

 

着地したゲンジはゆっくりと息を吐く。だが、それは荒々しい。

 

「お…おいゲンジ大丈夫か!?少し休んだ方がいいんじゃ…」

 

後ろでスラッシュアックスを振るい共に訓練していたトゥークはゲンジの普通ではない様子を見て少し心配したのか、声を掛けてくる。

 

だが、ゲンジは止める様子はなかった。

 

「…大丈夫だ」

 

ただそれだけ言うと、一度だけシルバーソルヘルムを取り、息を整えると再び装着する。そして遠方へと的を設置すると、そこへ向けて駆け出し次々と辺りにステップしながら撹乱するかの様に近づくと最後の一歩の際に大きく踏み出し身体を回転させ、その発生した遠心力によって的を斬りつける。

 

「もっと強く…もっと力を…!!」

 

ただ願いながらゲンジは身体を振るう。恐暴竜に頼らない力とそれを抑え込める精神力を手に入れるために。

 

だが、この時ゲンジは知らなかった。知らぬ間に自身の身体へと得体の知れない“何か”が少しずつ入り込み始めている事に。

 

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