薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
ミノトとトゥークからゲンジの様子を聞かされるも誰一人とゲンジに事情を聞こうとする者はいなかった。
今聞いても彼は答えることはないだろう。聞いてしまえば彼の心に迷いを再び生じさせてしまう。
故にヒノエ、ミノト達は聞く事を堪えた。
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それから早くも数日が経過したその日の夜。
「…」
寝床で横になっていたゲンジは寝苦しくなり目を覚ましてしまった。
見ると辺りのベッドでは寝相の悪いフゲンやトゥーク達がイビキをかきながら寝ていた。それを見て更に眠気が失せてしまったゲンジはその場から出て夜の砦へと向かった。
◇◇◇◇◇◇
いつも夜は月明かりが照らしとても静かである。物音一つ聴こえる事はないその景色は心を落ち着かせてくれる。だが、今日この夜はそうはいかなかった。空を見上げるといつもよりも慌しくモンスターが来る進行方向から風が吹き荒れ満天の星空を不気味な灰色の雲が覆い尽くしていた。
「…!!」
“もうすぐ来る”
ゲンジの頭の中は次々と怒りで埋め尽くされた。自身の妻であるヒノエそして第二の故郷であるカムラの里を数百年間苦しめ続けた怨敵が刻一刻と迫ってきているのだ。予想すれば明日が決戦となるだろうか。
その時
『餌だ…!!我の餌が近づいてくるッ!!!』
「ぐぅ…!?」
頭の中に高揚感に満ちた声が響き渡ると共に頭痛が襲ってる。体内に眠る恐暴なイビルジョーの思念が目を覚ましたのだ。だが、いくらなんでも目覚めるのが早すぎる。まだ古龍の姿さえも目撃していない。
「(コイツ…!?)」
それでもゲンジは必死に押さえ込もうと意識を保つ。いや、それだけではない。コイツが目覚めたという事はかなりの至近距離に古龍がいる。即ち
“今この時 百竜夜行が起ころうとしている”という事だ。
その予想は的中してしまうこととなる。
すると
高台に聳え立つ見張り塔から金具を叩く音が聞こえてきた。
「…!!」
それを聞いた直後 警戒体制に入る。すると、見張り塔から里守が大声を上げた。
『来たぞぉぉお!!!!百竜夜行だぁぁ!!!!』
「ぐうぅ…!!!」
その知らせを聞いたゲンジは溢れ出る思念を歯を食いしばりながら抑え込むと寝床へと急いで戻る。
そして、入り口の壁を殴りつけると眠る皆に向けて大声で叫び出した。
「起きろぉお!!!来たぞぉ!!!」
『『『!?』』』
ゲンジの腹から吐き出された巨大な怒声にフゲン達は即座に飛び起きる。そしてその声は女子陣へも鮮明に伝わっていた。
目を覚ました皆は次々と装備を纏い準備に取り掛かる。
「急ぐな!落ち着いて持ち場につけ!!」
目を覚ましたフゲンは装備を纏いながら就寝していたため、起き上がった直後に慌てる里守の皆を落ち着かせながら指示を出していった。
◇◇◇◇◇◇
それと同時刻。最前線の砦から数キロ離れた入り口には巨大な竜巻が発生し追い立てられたモンスター達が逃げるように深い谷の道へと入り込んでいった。
その様子を上空から見物していた蒼い表皮を纏う古龍イブシマキヒコは叫び声を上げた。
“今こそ…かの恐ろしき悪魔を討ち払わん”…ッ!!!
叫び声と共に辺りの木々が吹き飛ばされていき更にイブシマキヒコを取り囲むように地面からくり抜かれた岩石が宙を舞い始める。
恐れと悲しみそして怒りに満ちた龍は金色に輝く目を真っ直ぐとゲンジのいる方向へと向けた。