薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
弱肉強食 血煙飛揚 戦塵招くは 非道の乱入 情け無用 赤熱の凶漢
八方炸裂 阿鼻叫喚 弁え知らずが 横行跋扈___。
☆☆☆☆☆☆☆
それは数週間前の事だった。
「なぁゴコク殿。この地域に出てくるモンスターの一覧ってあるのか?」
「ふぉ?」
ゲンジはカムラの里周辺地域に出没するモンスターに興味を持ち、その他にも未発見のモンスターがいるのではないのかと思い集会所へと訪れていた。
ゴコクは軽く数百年は生きている。しかもこの里でだ。ここらの地域を知り尽くしていると言ってもいいだろう。ならばこの辺りによく出没するモンスターについても知っているはずだ。
「ならばコイツを見るといいでゲコ。今まで現れたモンスターがちゃ〜んと描いてあるからのぅ」
そう言いゴコクは自身が書いたモンスターの絵の一覧を差し出してきた。
「へぇ…」
ゲンジは集会所にある椅子に腰を掛けそのイラストがまとめられた本を次々とめくっていく。
するとゴコクの絵を見たいのか、絵が趣味であるミノトは後ろから覗き込んでくる。
「……」
めくればめくるほど興味が湧いてくる。自身が初めて目にするモンスター達ばかりであった。トビカガチ、ヤツガタキ、オロミドロ、そして自身が狩ったマガイマガド。
「ふぉ〜ほっほっほ。凄いじゃろ?全て儂がこの目で見て描いたモノでゲコ………あれ?聞いてる?」
ゴコクの話はそっちのけ。ゲンジは次々とページをめくっていった。
そんな中、進める手があるページで止まった。
「…コイツは…?」
ゲンジはそのページをゴコクへと向ける。
そのページに描かれていたのは何とも異形なモンスターの絵であった。翼が描かれており飛竜である事は確かだが、その翼以外の頭部の下には帯びたしいほどの鱗が細かく描かれていた。
その絵を見たゴコクは顎髭を撫でながら思いだすかのように答えた。
「ソイツはバゼルギウスと言ってな。どんな狩場にもたま〜に乱入してくる厄介な奴なんでゲコ。その上、凶暴でな。特にその鱗は『爆鱗』といってのぅ。地面に落ちると爆発するんでゲコ。しかも獲物に向けて次々と落としてくるのでのぅ…その所為で一時は周辺の生態系に異常をきたし掛けた時があったんじゃ。いやぁ…遭遇した時は死ぬかと思ったね。あれは」
「バゼルギウス…」
ゲンジは異形な姿で描かれたバゼルギウスの絵を見つめた。
◇◇◇◇◇◇
「まさかこんなにでかいとは思わなかったな…」
目の前に悠々と立つバゼルギウスにゲンジは息を飲む。その姿や放たれる威圧感から分かる。このモンスターの危険度は下手をすればイビルジョー に匹敵する。
バゼルギウスは小さな頭部にある鋭い眼光を向けながら首を持ち上げる。
その瞬間 巨大な咆哮が響き渡った。
___グォオオオオォォォッ!!!
「!?」
その咆哮は声量、威圧感 共に一介のモンスターを遥かに凌駕しており辺りの空気を振動させた。
「ぐぅ…!!」
ゲンジは即座に頭を捻り策を考える。先程のようなモノを撒き散らされるとなると2人で掛かるのは危険だろう。一方に気を取られていたとしても、攻撃した拍子に爆発する鱗がもう一方へ向けて放たれる可能性がある。
ゲンジはシャーラに向けて叫ぶ。
「姉さん!コイツは俺がやる!!姉さんはここから離れてフゲンさんの援護に回れ!!!」
「えぇ!?」
いきなりの指示にシャーラは頷かず驚く。
その一方で バゼルギウスはゲンジに向けて爆鱗の実る尻尾を振り回してきた。
「コイツは2人だと厄介だッ!!…く!?」
「でも…」
その振り回しをゲンジは身体の体制を比較する事で避ける。小柄な身体が功を制したのか、振り回された尻尾は頭上を横切り、その際の爆鱗も遠心力によって、ゲンジの後方へと放り出された。
「早く離れろッ!!!」
「く……」
シャーラはゲンジの指示に歯を食い縛りながらも従う。
「すぐに助けに来るから…!!」
それだけ言うとフゲンと交戦するアンジャナフの元へと走っていった。
「エスラ姉さんもだ!絶対に手を出すなよ!」
「ぬぅ……仕方がない」
ゲンジは高台にて援護射撃の為にボウガンを構えるエスラにも注意を掛ける。
ようやく一対一となると、ゲンジは目を鋭くさせ黒色に染まる目の中で赤く輝く瞳と白い目の中で蒼く光る目を向けた。
「さて…ようやくやり合えるな…!!!」
「ゴルル…!!」
尻尾を振り回したバゼルギウスは再びゲンジの方向へと目を向けると鋭い眼光を光らせると共に喉から唸り声をあげゲンジを睨む。
互いに視線をぶつけ合う中 風が吹き2体の頬を擦る。そんな中 後ろへと放り投げられた先程の爆鱗が破裂し音を響かせた。
その音が開戦のゴングとなる。
「グォオオオオ!!」
爆発音と共に咆哮を上げながらバゼルギウスは巨大な身体を支えている発達した脚を動かし突進してきた。
その突進は素早くはない。だが、この速度でもあの巨体に体当たりされればタダでは済まないだろう。
故にゲンジは翔蟲を空高く投げ上げる。
「ゼィヤァッ!!!」
すると バゼルギウスの身体が迫るその軌道上からゲンジの身体が高く飛び上がった。
『櫓越え』だ。
空高く飛び上がった事でバゼルギウスはそのまま止まる事が出来ず後ろへと突き進んでいってしまった。
「一気に終わらせる…!!」
それを見てチャンスと見たゲンジは空中で手を交差させながら背中に背負う双剣を引き抜き構えると、両手を前に突き出し力一杯 後ろへと引いた。すると、身体がその動作によって引き寄せられ、走り抜けたバゼルギウスに向けて落下していった。
そしてバゼルギウスに向けて落下していくゲンジは双剣を持つ手を広げると身体を回転させていった。
「ヴォォァアアアッ!!!!」
回転したその身体は武器から発生した炎を纏いながら火炎車と化しそのままバゼルギウスの巨大かつ長い胴体へ向かうと、尻尾の先端部分から頭へとかけて回転しながら刃を斬りつけていった。
「グルル…!?」
突如として背中に襲ってきた痛みにバゼルギウスは苦痛の声を漏らす。
頭へと刃を斬りつけたゲンジは最後の一振りを終えると、頭をジャンプ台として蹴り、高く跳躍した。
「まだまだぁ…!!」
すぐさま2体目の翔蟲を取り出し、先程と同じく空へと投げ上げ高く飛び上がる。
そして2回目の空中回転乱舞を放った。
「オラァァァァァッ!!!!」
先程のように炎を纏った回転斬りは耐熱性の誇るバゼルギウスの背中の甲殻へと次々と切り傷に加えて黒い跡を残していった。
「ギャォオオオオ!!!」
再び背中へ襲ってくる痛みにバゼルギウスは叫び声をあげながら怯み出す。
「ふぅ…!」
2連続の回転乱舞を放ったゲンジは怯むバゼルギウスの後ろへと着地する。
「ゴルル…!!!」
すると 怯んだバゼルギウスが先程よりも激しい唸り声を上げながらこちらへと顔を向けた。唸り声からして怒り状態へと移行した事を悟ったゲンジは再び双剣を構える。
だが、振り向いたバゼルギウスの身体を見た瞬間 ゲンジは冷や汗を流した。
「…へぇ…まさかそうなるとはな…」
怒り状態となったバゼルギウスの顔の下、そして尻尾の下に生えている爆鱗がバゼルギウスの感情に順応しているかのように赤熱していたのだ。
そしてその爆鱗は次々と雨のように零れ落ち、地面に落ちると先程と違いすぐさま爆発していった。
「ここからが…本番か…!!」
ゲンジは目を開きながら久々の高揚感に笑みを溢す。その直後にゲンジを睨むバゼルギウスの巨大な咆哮がその場に響き渡った。