薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
「コイツは驚いたな…まさか大型モンスターを投げるとは…」
イビルジョー に続き一介のモンスターとは遥かにかけ離れた行動を取るラージャンにトゥークは圧倒される。
相手にしていたディアブロスさえも、その姿を見て呆然としていた。
その時だ。
「おい…おいおい嘘だろおい!!」
更にとんでもない光景が広がる。何とラージャンは近くにいたゴシャハギの背中へと飛び掛かると両手を抉り込ませ、強引に持ち上げたのだ。体格が倍近くの差があるというのにまるでその重さを意に介さず平然と持ち上げると、ラージャンは砦に身体を向けて大きく飛び上がりながら腕を振り回し、もがくゴシャハギを砦に向けて投げつけた。
「グロォオオオオオオオ!!!」
トビカガチに続いて投げられたゴシャハギの身体は砦へと叩きつけられると、第一関門の門へとヒビを走らせる。
「まずい!」
その行動を見たエスラは即座に相手をしていたタマミツネから目を離すと、関門付近にいるゲンジ達へと呼びかける。
「二人とも!いますぐその2体を撃退するんだ!!ラージャンの狙いは砦の破壊だけじゃない!!」
「どういう事だエスラ!?」
近くにてティガレックスと交戦していたフゲンはエスラへと問う。それに対してエスラは答えた。
「コイツの狙いはワザと傷を負わせ暴走させる事が目的なんだ!!」
「なんだと…!?」
エスラの考えは完全に的を射ていた。
中途半端に傷をつけられた2体のモンスターはゆっくりと起き上がると、その痛みによって我を忘れて、次々と関門へ向けて体当たりをし始める。
ラージャンの狙いは砦の破壊…いや、それもある。それとは別にモンスターを興奮させ、我を忘れさせる事も狙っていた。1箇所だけに深い傷をつける事で、その痛みによって冷静さを失わせ瞬間的に暴走させる事が目的だったのだ。
「くぅ…いくよゲン!」
「あぁ…!!」
シャーラはゲンジと共にゴシャハギとトビカガチを攻撃するべく武器を手に取り駆け出した。
◇◇◇◇◇
一方で ティガレックスの相手をしていたフゲンはその光景を見て、即座にティガレックスへの攻撃する速度を速めると同時に皆へと呼び掛けた。
「皆の者ッ!!!急いで撃退するぞッ!!!」
その時だ。 ラージャンの目がフゲン達と対峙しているティガレックスへと向けられる。
その視線に気づいたフゲンは冷や汗を流す。すると、ラージャンは突進し、暴れるティガレックスの頭に目掛けて剛腕を振り回した。
「グロォオオオオオオオ!!!」
「ギャァオオオ!!」
ラージャンの拳の一撃がティガレックスの巨大なアギトへと深く沈み込むと鈍い音を立てながらティガレックスの巨体を崖へと叩きつけた。
「ぐぅ!?」
発生した風圧はすさまじく、フゲンとその他の二人のハンターは向かってくる風により行動を停止させてしまう。
その隙をついたラージャンは崖へと叩きつけられたティガレックスの尻尾を掴み出すと、引っ張り始めた。
ティガレックスもラージャンからの攻撃を受け、敵と認識したのか、引きずられながらも暴れ始める。
「させぬぞッ!!」
ティガレックスをゲンジ達のいる場所まで投げることを阻止するべく、フゲンは翔蟲を取り出し、ラージャンの顔付近にまで飛ばすと、弾性力を利用してその場から飛び上がる。飛び上がったフゲンは百竜刀を構えるとラージャンの額に目掛けて太刀を振り下ろした。
「セイヤァッ!!!」
振り回された太刀は見事なまでの太刀筋を残しながらラージャンの角へと振り下ろされ、絶対強者の証である2本の角の内、砕けた方とはもう一方の角を切り落とした。
「グォオオオ…!!!」
角を切り落とされたラージャンは頭へと伝わるその苦痛により、掴んでいたティガレックスの尻尾を離してしまう。
「ゴルル…!!」
ようやく自由の身となったティガレックスは自身を殴り飛ばしたラージャンへ鋭い眼光を向けると、その場から右前足を軸に身体を回転させ尻尾を鞭のように振り回した。
「ぐ!?」
近くに立っていたフゲンは直撃とはいかないが、その尻尾の振り回しを受けて吹き飛ばされてしまう。だが、当たる直前に太刀を両手で前に突き出し、大剣でガードするかのように構えていたのでなんとか大事には至らなかった。
その一方で その尻尾の鞭はフゲンとは別に更に付近にいたラージャンの身体に直撃すると、ラージャンの発達した体格の良い胴体を吹き飛ばしていった。
「グォオオオ…!!」
自慢の角の破損。そしてティガレックスの攻撃を受けた事でダメージの限界にきたのか、金獅子の筋骨隆々な身体は着地に成功する事なく地面へと叩きつけられる。
「ゴルル…!!」
尻尾を振り回したティガレックスは唸り声を上げながらフゲン達から切り離した敵対意識をラージャンへと向け、倒れる姿を睨む。
すると
吹き飛ばされた金獅子はゆっくりと起き上がりその金色に逆立った毛を持つ逞しい身体を引き摺りながら元来た道へと身を向けて引き返していった。
「ようやく帰ってくれたか……ん?」
やっとの思いで去っていった暴風雨にフゲンは安堵の息を吐きながらも、まだティガレックスやディアブロス達がいる事を再認識し、武器を構えた。
「おぉ!見ろウツシよ!ゲンジ達もやったようだぞ!」
そんな中 ティガレックスの背後 即ちフゲンとティガレックスの間を全身に傷を負ったゴシャハギとトビカガチがラージャンの後を追うかのように脚を引き摺りながら引き返していった。
「えぇ!流石はあの二人です」
フゲンとウツシが2体が来た方向へと目を向けるとそこには息を吐きながらも撤退する2体を睨むシャーラとゲンジの姿があった。
「す…すげぇな…。ラージャンを相手にした直後だっていうのに興奮状態の2体をこうもアッサリ…」
「ハッハッハ!何と言っても私の弟と妹だからな!」
その状況を見たトゥークやエスラ、そして他の皆の士気が上がる。 7体の内、3体の撃退に成功した事で防衛成功の糸口が見えてきたのだ。
「さて、二人が頑張っているなら…お姉ちゃんも負けてはいられないな…!!」
中でもゲンジとシャーラの活躍によって鼓舞されたエスラは、辺りを金色に輝く瞳で見渡すと、痺れ弾を装填させる。
打ち尽くした弾のカラの実が装填口から零れ落ちると、代わりに装填させた痺れ弾をフルガ達と交戦しているディアブロス へ向けて放った。
次々と放たれていく痺れ弾はディアブロスの背中へと打ち込まれていき、ディアブロス の身体へと電撃を流していく。
すると ディアブロス の身体が突然と止まり、全身が電気に蝕まれながら硬直し始める。
痺れ弾によって『麻痺』させたのだ。
ディアブロス を麻痺させたエスラは次にタマミツネへ向けて麻痺弾を放っていった。横に立つククルナも麻痺ビンを装着させながら援護する。
だが、一体麻痺させるのに多くの時間を要する。一人一体とするならば、二人でそれぞれ2体を麻痺させなければならない。そうなれば麻痺させたモンスターが他のモンスターを麻痺させている間に自由になってしまうだろう。
「二人で4体となると流石に骨が折れますわね…」
「ん?何を言っている。二人ではない。『四人』だろ?」
「え?」
エスラの言葉にククルナは首を傾げる。
すると 背後から2つの足音が聞こえ、自身の横へ来ると立ち止まった。ククルナはゆっくりと横へと目を向けると驚いた。
「まぁ…!」
そしてエスラはまるでその正体を知っているかのように目を向けずニヤリと笑みを浮かべた。
「さて、共に皆を援護するぞ。
______ヒノエ ミノト」
「「はい!」」
そこには最奥の砦にて待機していたヒノエとミノトが武器を構えながら立っていた。