薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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変わらぬ心情

ゲンジはアケノシルムを無事に討伐すると、キャンプに戻り、肉を焼いていた。

 

次々と油が滴り,香ばしい匂いにハチは涎を垂らしていた。

そんな中、ゲンジは肉を回しながら近くで座っているミケにある事を聞いた。

 

「なぁミケ。ミノトって奴はいつもあぁなのか?」

ゲンジは不審に思っていた。クエストに出かける前のミノトの目は明らかに冷めていた。まるで何も見出していないかのように。

ゲンジはあれがいつもと受け取っていると、ミケは否定する。

 

「たしかにいつも無表情だニャ。けど、本当は誰よりも里の皆を大切に思っているんだニャ。里のお店の看板を見た事があるニャ?あれはミノトが作ったんだニャ」

 

「へぇ」

そこまで皆を大事に思っていた事にゲンジは驚くと、こんがりと焼けた肉をハチの前に置く。目の前に置かれたこんがり肉にハチは目を輝かせると、バクバクと食べ始める。

 

「(だが…あの時のあの対応はなんだったんだ?何か憎まれているような…まぁいいか)」

ゲンジはそれ以上の詮索は止める。今はただ、新しい狩場と翔蟲に慣れる事だ。

 

ーーーーーーーーー

 

帰還したゲンジは手続きをする為にミノトがいるカウンターに向かう。案の定 クエスト前と変わらず自身とは目を合わせなかった。

 

「おい。終わったぞ」

そう言うとミノトは報奨金が積まれた麻袋を取り出すと、自身の前に置いた。

 

「…」

 

ゲンジは黙ってそれを受け取ると集会所を後にする。

 

 

ーーーーーーーー

 

その日はゲンジは修練場へと赴き、双剣の具合と、身体の調子を整える為にカラクリを起動させる。

 

 

集中…集中…

 

ゲンジは翔蟲を空中に飛ばし、カラクリの目の前まで飛翔する。

 

神経を研ぎ澄ましながら、ゲンジはゆっくりと双剣を構えると持ち方を変化させる。

 

そして

ゲンジの目が輝き出すとナルガクルガの如く、目の残光を残しながらそのカラクリへと迫った。

 

「ヴォオオオオオラァアア!!!」

その瞬間 獣のような雄叫びと共にゲンジの身体が光の輪っかをつけたコマのようになり、次々とカラクリの身体の線をなぞるかのように斬り刻む。

その速度は最初とは全く違っていた。更に、ここの修練場では、翔蟲は無限に扱える為に、ゲンジは乱舞を中止し、空中へと回転しながら跳躍すると、再び翔蟲を使い、カラクリに武器を構えながら接近するとその回転跳びをした方向とは逆方向に身体を回転させると、乱舞を放つ。

それが何回も何回も行われていた。

 

その速度も次々と増していき、遂には誰にも捕らえられないほどの神速の域へと達する。

 

 

速く…もっと速く。ゲンジは身体に命令する。すると、更に速度は増していった。

 

 

「ゲンジ〜」

 

「…!」

突然の呼び声にゲンジの意識は現実へと戻された。

体勢を立て直し、着地すると、声がした方向へと顔を向ける。そこにはヒノエが手を振りながら歩いてきた。

 

「戻ったと聞いて探したわよ。さぁ。お団子食べにいきましょう!」

 

「あぁ」

クエストから帰ってきたらお団子。気づけばこれが日課となっていた。前まではそんな馴れ合いが嫌いであったゲンジはいつしかそれが満更でもなくなっていた。

 

団子屋へと足を運んだ2人はヨモギに団子を注文する。

 

出されたお団子をヒノエは美味しそうに頬張っており、その横でもゲンジはヒノエと同じく頬を緩ませながら頬張っていた。ゲンジもゲンジでウサ団子が好物となってしまったのだ。

 

甘い…何て良い甘味だ。噛む度に疲れが取れてくるし口の中が甘味で満たされる。更にこの柔らかい歯応えや周りに添えられている粒々もまた違う歯応えがあって美味い。

そして、その甘味の虜になったゲンジはゆっくりと頬を緩め、満面の笑顔を浮かべてしまった。

里に来てから笑う事が無かったゲンジの顔がウサ団子によって、再び笑顔を取り戻したのだ。

 

「〜♪」

遂には鼻唄までも。これはゲンジにとって安らぎの一時となっている。

 

「……ん?」

ふと、視線を感じ、その方向へ目を向けると、

 

「(^ ^)(ニコニコ)」

そこには自身の顔を見つめながらニコニコとしているヒノエの顔があった。しかも、自身が団子を楽しみ始めてから見ていたようである。

 

「!?」

咄嗟に食べている団子を飲み込むと、顔を逸らす。けれども完全に見られていたのでもう遅い。

 

「あらあら、もっと見せて。ゲンジの笑った顔なんて見た事ないんですから♪」

そう言いヒノエはゲンジの笑った顔を見ようと顔をさらに寄せてくるが、ゲンジは首を振り拒否して最後の団子を頬張り、すぐさま飲み込む。

 

「集会所に行ってくる」

そう言いゲンジは走り去っていった。

 

「あらあら…」

残ったヒノエは残念そうに自身の手元にある残り一つの団子を見つめる。

 

「少しくらい…見せてくれてもいいのに…」

ヒノエはあの時見ていたゲンジの笑顔を思い浮かべる。

ーーーーーーーーーー

 

団子を食べ終えたゲンジは再び集会所を訪れた。

その時だった。

 

「…?」

ハンターがいない集会所の中から2人の話し声が聞こえてくる。

ゲンジは壁の影に隠れると、その話し声を盗み聞きした。

 

聞こえてきたのはミノトとゴコクだった。

 

「これこれミノト。ゲンジに対しての対応が冷たいんじゃないゲコか?」

 

「…」

 

「お主がハンターを信用できない理由も分かる。じゃが、仕事に私情を持ち込むのはいかんぞ」

 

「ですがゴコク様…私はどうしても彼を信用できません…!先のハンターと同様に途中で逃げ出してしまったら…今度こそ里はお終いです!私はそれが…心配で他ならないのです…」

聞いている限り、ミノトは自身の事を先のハンターと同様に考えていると見れる。

 

「(誰がンなつまらない事すんだよ…)」

そして、更に耳を打ち、話を聞く。

 

「それに…ヒノエ姉様と優雅にお茶を楽しんでいると聞いております!信用できない上に…まるで弱みに漬け込んでいるようで腹が立ちます…!!」

 

「まぁ…それはまぁ…」

 

「私だって姉様とお茶がしたいです!」

「そっちぃ!?」

完全なる私情にゲンジは内心、腹を立てながらもミノトの冷たい対応に関しては納得していた。

故にゲンジはとりあえず、対応だけは通常通りにしてもらう為の方法を考えた。

百竜夜行は未だ起こる知らせが来ていない。ならばどうするか。

 

「…(信頼されるまでは…頑張るか)」

前まではミノトが自身をどう思おうと知った事ではなかったが、あの対応を里にいる間に取り続けられるのは流石に気が引ける。集会所のクエストは大型モンスターが揃っていたので、結構気に入っていたのだ。

 

ゲンジは頬を叩くと、集会所の扉を潜る。

 

 

「依頼。受けに来たぞ」

そう言い中へと入る。案の定 自身が来た瞬間 ミノトは無口となった。

 

「ゲ…ゲンジ…主はいつからそこに…」

 

「別に。今来たとこだよ」

ゲンジはゴコクの問いを切り捨てると、依頼の本を勝手に取り出して次々とめくっていく。

 

「ちょ…勝手に!」

 

「黙ってろ」

ミノトの手を振り払うと、ゲンジは次々と依頼書を取り出していく。

その数は驚くべき6枚だった。それも全てが大型モンスターの狩猟依頼だった。狩場は全て同じ『大社跡』となっていた。

 

「これを受ける」

「えぇ!?」

「ぬぁにぃ!?」

ゲンジはミノトに6枚の依頼書を押し付けた。すると、その枚数にミノトだけでなくゴコクも驚きの声をあげる。

普段はハンター1人につき、依頼は一つまでと決まっていた。だが、ゲンジはそれをあっさりと破ったのだ。

 

「早くしろ」

「ちょ…一度にこの量は!」

ミノトはゲンジに対して反対の声を上げるが、ゲンジはそれを遮った。

 

「いいから押せ。ほら、契約金だ。釣りはいらん」

「ゲンジよ!それは流石に見過ごせないでゲコ!依頼は一つまでと決まっておるぞ!」

そう言い契約金が積まれた麻袋を目の前に差し出す。すると、その規則違反にゴコクも見過ごせないのか、反対の声を上げる。

 

「別にいいだろ。この里には俺以外はハンターがいないようだし。それとも被害を増やしてぇのか?」

「ぐぅ……」

ゲンジの言葉にゴコクは少しばかり唸りながらも悩み込む。確かにゲンジの言う事もごもっともだ。規則は規則だが、あくまでも建前であり、本来の目的は依頼主への被害を消す事だ。故にゴコクは許可を出す。

 

「……まぁいいじゃろう。特別に許可するでゲコ」

ゴコクから許しをもらったゲンジはミノトに向き直ると、机を叩く。

 

「ほら、サッサとしろ」

 

「は…はい!」

ミノトはすぐさま契約金を受け取ると、慌てながらもせっせと印をつく。

 

「お…お気をつけて…」

ゲンジはハチとミケを呼ぶと、そのままクエスト出発口へと向かっていった。

 

その姿をゴコクとミノトは驚きながら見つめていた。

 

「この方生きて初めてでゲコ…あんなに依頼を受けるのは」

 

「はい…」

ミノトの中で、ゲンジに対する印象に少し変化が起きた。

 

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