薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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絶対の捕食者

我は悪魔___。統べてを屠り喰らう者。

 

天火__豪雷___村雨___狂飆__羅刹__。

 

我が前には___

 

 

________万物は全て餌。

 

 

喰らえ喰らえ全てを喰らえ。

 

今再び世界を喰らわん___。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

こんな話があった。

 

ある地域一帯を統治し、生態系ピラミッドの頂点に立っていたとある古龍とその周辺に住む大型モンスター達が1ヶ月もしない内に統治者である古龍含めて全て食い尽くされてしまった。

 

それもその地域だけではない。そこから更に近い場所も。

 

ギルドは、連続的に起こる生態系の崩壊というこの事態を重く受け止めると共に、古龍観測所の手を借りながら原因を突き止めた。

 

調査を進める中、現場には必ず謎の足跡と共に地面に牙のような欠片が痕跡として落ちていた。この牙や足跡からギルドはイビルジョーの仕業であると断定した。

 

だが、気掛かりな事がひとつだけあった。

 

生態系を崩す危険性のあるイビルジョーでも、こんな短期間で生態系を崩す事は不可能である。

けれども、疑惑を掛けた故にギルドはハンターを派遣すると共にその手掛かりを追ってイビルジョーの行方を調査していた。

 

そんなある日の事だ。ようやく足取りをつかむ事ができた。潜んでいる地域を特定したギルドは依頼を出し、制限を設けた上で4人編成のハンター達を現場へと派遣した。

 

ハンター達が現場に着き、辺りを捜索している中…辺りの観客に異変を感じた。

 

見れば辺りには黒い靄のような物体が漂っていた。ハンター達はその物質の元素を即座に見抜く。これは龍属性エネルギーだ。

 

それと共にある地点にて血液を発見する。その血液の量は夥しく、その場に小さな水溜りを形成するほどであった。

1人のハンターが痕跡としてこれを採取したところ、何とそれは古龍の血であった。まだ流動性を失っていない事から新しいものだと判断できる。

 

その時だ。

 

生い茂る木々の奥から何かを貪り食う音が聞こえてきた。その音が聞こえたハンター達はその方向へと目を向けると、真相を確かめるべくその場へと向かった。

 

草むらを次々と掻き分けていく度にその音は段々と近づいてくる。

 

そして遂に草むらを掻き分け、音が聞こえてくる場所へと着いた時だった。

 

『…!!』

 

そこには何と一体の黒く巨大なモンスターが幻の古龍であるオオナズチを捕食していた。翼は引きちぎられ、特徴的な尻尾も根こそぎ引き抜かれており、オオナズチの口からは長い長い舌が力を失ったかのように垂れていた。

 

幻の古龍…姿を消す事から滅多に目撃例がない。一生のうちに合わない者が大半であるオオナズチが捕食されている光景にハンター達は目を奪われた。

 

その時だ。1人のハンターが不意に足元に落ちていた小枝を踏んでしまい辺りに折れる音が響き渡る。

 

その音を聞いた途端 先程まで辺りに響いていた肉や骨を噛み砕く音が突然止んだ。

 

それと共にオオナズチを捕食していた正体がゆっくりとこちらへ目を向ける。

 

 

「「「「…!!!」」」」

 

向けられたその顔を見た瞬間 ハンター達は恐怖のあまり震え上がった。こちらへと向けられたその顔は…この世のものではなかった。

その正体はなんとイビルジョーであった……いや、正確に言い表せばイビルジョーである“何か”だ。

 

通常の個体と変わらない体格……だが、目は通常個体とは一変し真っ赤に染まっており、頭部から血飛沫のように龍属性エネルギーが吹き出しており、頭部を覆っていた。

 

 

「グロォオオオオオオオ!!!!!!」

 

天地を揺るがす巨大な咆哮が響き渡ると共に、巨大な黒いモンスターの身体から更に龍属性エネルギーが溢れ出た。

 

 

 

その後、ハンター達からギルドへの連絡が一切途絶えた。

 

ギルドは即座に現場へと調査員を派遣しハンターの捜索を撤退する。必死の捜索の上に見つけたのは__

 

 

_____踏み潰され無惨に散ったハンター達の遺体であった。

 

 

 

そしてその周辺にはオオナズチに加えて、周辺の大型モンスター達の食い潰された死体があった。

 

何も分からない。だが、唯一の手掛かりが、亡くなったハンターの書き記した一枚の絵である。

 

そこに描かれていたのは黒く塗りつぶされたイビルジョーの絵であった。貴重な資料かつ、亡くなったハンターの戦果として、その絵はギルドへと持ち帰られた。

 

更にそこから数日後 事態は急変する。

 

火の国を治る王からある知らせがギルドへと届けられた。

 

 

 

 

『神を喰らう竜現る』_と。

 

即座に現場へと飛行艇を使いながら捜索に向かう。そしてギルドはようやくその正体を確認することに成功した。

 

観測したのは前回の調査員が遺した絵と同じ特徴を持つイビルジョー 。そして喰らっていたのは何と世界を滅ぼしかねない力を持つ伝説の古龍『アルバトリオン』であった。

 

それからギルドはこの個体を一介の古龍を上回る特級の危険生物とみなし、こう名付けた。

 

_____【古を壊し喰らい尽くすイビルジョー】

 

◇◇◇◇◇◇

 

現れたイビルジョーは首を大きく斜め下へと下げると、そのまま前方向へと振り回し、咥えていたイブシマキヒコを放り投げた。

 

巨体であるイブシマキヒコの身体がボールのように投げ飛ばされ、地面に数回程バウンドすると、近くにある壁へと叩きつけられる。

 

 

「ゴロ…ロ…」

壁へと叩きつけられたイブシマキヒコ。まだ息はあるようだが、重傷には変わりない。弱々しい声をあげると共に再び動かなくなる。

 

イブシマキヒコを放り投げたイビルジョーは里の皆へと目を向ける事なく、こちらを凝視してくるモンスターへと目を向けた。

 

 

「「「「…!!」」」」

 

怪しく輝く赤い目に睨まれた瞬間、4体のモンスターの中に電流が走った。

 

 

 

“殺される”

 

 

それと同時にモンスター達の、生物としての防衛本能が働き始めた。

 

ジンオウガは咆哮と共に一瞬で超帯電状態へ。ディアブロスは黒い息を吹きながら脚を踏み締める。

 

そしてタマミツネは身体に泡を、ティガレックスは超咆哮の用意をする。

 

 

両陣営が睨み合う中、一つの小さな岩が音を立てながら地面に落下する。

 

その音が開戦のゴングとなった。

 

「グロォオオオオオオオ!!!!」

 

巨大な雄叫びと共に超帯電へと移行し、蒼く発光したジンオウガは空中へと跳躍すると、一回転をしながら右前脚へと雷を蓄電する。そして空中から遠心力と共に、最大限に溜め込まれた雷を纏う右前脚を振り下ろした。

 

 

それに対してイビルジョーは、自身の頭部へと向かってくるジンオウガの右前脚に対して口を開けた。

 

「…!!」

 

ジンオウガの身体が空中で停止してしまう。まるで世界の時をためたかのように。

その様子を見ていた里の皆は驚きに包まれていた。

イビルジョーの顎が、ジンオウガの必殺技の一つである前脚の振り下ろしをアッサリと受け止めてしまっていたのだ。

更に、纏っていた雷もイビルジョーの噴き出す龍属性に触れた瞬間、水をかけられた炎のように霧散していた。

 

そして、このジンオウガの攻撃によってイビルジョーの闘争本能に火が灯されてしまった。

 

「グロォオオオオオオオ!!!」

 

口を噛みながらも喉元から放たれた巨大な咆哮と共にイビルジョーの頭が動かされ、それと同時に腕を噛まれているジンオウガは玩具の如く振り回される。

その振り回しによって牙によって押さえ込んだジンオウガの身体が辺りへと叩きつけられていった。

 

次々と聞こえてくる肉を打つ音に加えて堅殻が削られる音。

 

それはなんと十数回にも及び、叩きつけられたジンオウガの角や蓄電殻、そして爪が次々と破壊されると共に超帯電状態が解除されてしまっていた。

 

だが、イビルジョーの進撃はそれでは止まらなかった。

 

 

「ゴルル…!!」

イビルジョーの赤い瞳が近くにて警戒していたタマミツネを捉えると、何と咥えたジンオウガを武器のように振り回し、タマミツネ目掛けてボールの如く投げ飛ばしたのだ。

 

投げ飛ばされたジンオウガの身体は回転しながら地面をバウンドし、反応出来ず逃げ遅れたタマミツネを巻き込んで倒れてしまった。

 

 

「ギェェェェ!」

 

巻き込まれたタマミツネは長い身体が災いとなってしまい、投げ飛ばされたジンオウガの下敷きとなってしまった。

 

短時間で二体のモンスターを圧倒したイビルジョーは吹き飛ばした2体へと目を向けると、口から涎を垂らしてもいないというのに口を開ける。

 

その時だ。

 

「ギェェエアアアアアッ!!!!」

 

耳の奥底を振動させるほどの巨大な咆哮が響き渡る。見るとイビルジョーから離れた場所に翼爪を地面に突き立て、角を向けながら前屈みとなったディアブロスがいた。

 

そしてディアブロスは咆哮をあげると共に脚を踏み鳴らすと、一気に駆け出した。

 

ディアブロスの『突進』それは正に兵器といっても過言ではない。角を突き立てながら駆け抜けるその突進は目の前にある障害物をアッサリと粉砕していく。

その突進を受ければ、たとえ空の王者であるリオレウスやジンオウガの堅殻…はたまた巨大な防衛壁でさえも容易く壊されるだろう。

 

ディアブロスは速度を最初から全開にしていた事で、砦に広がる幾つもの高台を破壊していった。高台が無人な事が幸いである。

 

 

 

そして ディアブロスの身体がついにイビルジョーに届いた時だった。

 

 

ディアブロスの突進が突然止まった。

 

「ギェ…ギェェ…!」

 

ディアブロスは何度も何度も脚を踏み締めて前へと向かおうとする。だが、一向に前に進む事は無かった。

 

一方で、その光景を左右にある砦の入り口から見ていた里の皆は絶句していた。

 

「おいおい…嘘だろ…!?」

 

「まさか…あのディアブロス の突進を…!?」

 

更にイビルジョーを一度、狩猟したトゥークに咥えてティカル達もその光景を見て冷や汗を流していた。

 

「マジかよ…こんな事ってあるのか…!?」

 

先程のラージャンによる大混乱が可愛く見えてしまう程の光景がそこに広がっていた。

 

 

なんと超重量級のディアブロスの渾身の突進が__

 

 

___受け止められていたのだ。

 

 

 

「ゴルル…!!!」

 

見ればイビルジョーは小さな頭部にある口でディアブロスの角を噛んでいた。

 

通常のモンスターは毛皮に覆われていたり、硬い堅殻を纏っている。堅殻を纏っているモンスターはそれを利用する事で攻防一体となる事が可能だが、鎧を背負う分、やや鈍りが目立つ。

 

だが、ディアブロスは違った。飛竜でありながら翼ではなく脚を発達させたディアブロスはその鎧の重さを完全に克服しており、攻防一体の攻撃をナルガクルガに届く程のスピードで放つ事を可能にした。

 

だが、それはイビルジョーには全く効かなかった。

 

 

「ゴルル…!!」

イビルジョーはそこから脚を踏みしめると共に頭を振り回し、なんとディアブロスを垂直に等しい程まで持ち上げると共に地面へ向けて叩きつけたのだ。

 

「ギャァオオオ…!!」

 

ディアブロスは叩きつけられた際の痛みにより弱々しい声をあげる。だが、イビルジョーは止まらなかった。

角から口を離す事なく再びディアブロスの巨体を持ち上げると、何度も何度も地面へ向けて叩きつけたのだ。

 

ディアブロスの身体を覆う堅い甲殻が打ち付けられる度に次々と砕かれていった。

 

辺りへと響く巨大な地響き音に加えて蹂躙されるディアブロス 。その光景を見ていたティガレックス、そして起き上がったジンオウガとタマミツネは幼い子供の如く恐怖で身体を震わせていた。

 

 

すると 

叩きつけられたディアブロスの身体がイビルジョーの口から投げ飛ばされ、ジンオウガと同じように巨大な身体を回転させながら地面へと叩きつけられた。

 

叩きつけられた衝撃、更にイビルジョーの顎の力によってディロブロスの残された自慢の角が遂に2本目までもがへし折られてしまった。

その目からはもう獰猛さは伝わってこない。

 

あるのは目の前にて血走った赤い目を向けてくるイビルジョー に対する__

 

 

___恐怖のみ。

 

「「「…!!」」」

 

震えが止まらない。

 

ティガレックスとタマミツネ、そしてジンオウガは四肢を曲げ、姿勢を低くしながら怯えるように震えていた。

 

 

「グロォオオオオオオオ!!!!」

 

辺りを…いや、周辺の地域一帯を轟かす程の巨大な咆哮と共にイビルジョーの脚が大地を踏み締めると震える4体のモンスターに目掛けて口を開けながら跳躍した。

 

◇◇◇◇◇

 

 

拠点の入り口にてイビルジョーの凶暴な力に皆は冷や汗を流していた。

 

「…」

そんな中 フゲンはふと横に目を向ける。そこにはゴールドルナキャップのツバの部分を前に倒して顔を隠しながらも涙を流すエスラ、そしてミノトに支えられながら声を上げて涙を流すシャーラの姿があった。

 

シャーラを介抱するミノトとヒノエも目を震わせながらその光景を見つめていた。

 

そんな中 フゲンは現れたイビルジョーが4体のモンスターを蹂躙する景色を見ながら事実を再び確かめるべくエスラへと問う。

 

「エスラよ…

 

 

 

_____あれがゲンジなのだな…?」

 

その問いに対してエスラはゆっくりと頷いた。

 

 




遅くなって申し訳ありませんが、いつも誤字報告をしてくださる睦月透火(むつきとうか)さん本当にありがとうございます!
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