薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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実験の真相

「…」

 

ヒノエは瞳を震わせながら今もなおモンスター4体を羽虫の如く蹂躙するイビルジョー を見つめていた。

 

「ゲンジ…」

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

それは百竜夜行の起きる数時間前であった。

 

「ふぅ…ごちそうさま…」

 

「あらあら。もういいのですか?」

 

「あぁ。今日はもう寝る」

いつものように大量の夕食を平らげたゲンジはまだ皆がいるというのに1人立ち上がると、ヒノエに軽く答えながらその場を去っていった。

去りゆくその背中はとても寂しいものであった。

 

 

「……」

 

そんな中 ゲンジがいなくなった事を待っていたかのようにエスラは突然目を変えた。

 

「シャーラ…様子を見てきてくれ」

 

「うん」

 

エスラから指示を出されたシャーラは即座にゲンジの跡を追い掛けるようにして走っていく。

 

「あの…どうしたのですか?」

 

「うむ……ようやく分かったのだ。私の父親がなぜゲンジにあのような薬とイビルジョー の血を打ち込んだのか」

 

『…!?』

 

エスラの切り出した言葉に皆は驚くと共に食事の手を止める。皆の動きが止まった事を確認すると、頷く。

すると、シャーラが戻ってきた。

 

「どうだった?」

 

「ぐっすり眠ってるよ」

 

「では…話すとしよう」

 

ゲンジが寝ている事に安心したエスラはあぐらを掻くと皆へと目を向けながら話を続けた。

 

「私は前回の百竜夜行の時からゲンジの血について妙に気になっていてね。なぜ、私の父親はあれ程の恐ろしいモンスターの血を注入したのか。そこで密かにゴコク殿の力を借りてギルドからそれに関する資料を幾つか頂いて見せてもらったのさ」

 

それについてはゴコクも頷く。

 

「その中にゲンジに施された一連の流れと同一の物があった。それは_

 

 

 

 

 

___【人体モンスター化計画】

 

言うなれば人の身体を媒体にモンスターへ変形させ生物兵器として扱う事を目的とした人体実験だ」

 

その実験の名前を聞いた皆は息を呑む。その研究が発案されたのは百竜夜行が始まった時と重なっており、当時から生きていたゴコクは詳細を語り始めた。

 

「人間の身体へ儂ら竜人族の血を取り入れて土台を作り、そこへモンスターの血を注ぐ事で…原理は分からぬがモンスターへと変異する事が可能だと…当時に確認されたらしい。まぁ…極めて低い確率だがな…。

じゃが、変異できた分…被験者に対する副作用がとてつもなく悲惨なものでのぅ…。成功例が1人誕生したようじゃが、被験者は毎晩モンスターの鳴き声に脳内を揺さぶられ、精神が不安定となり、その後、自殺が確認された。ギルドはこの事態を重く受け止めると共にこのような類の実験を一切禁止する法律を作った」

 

「だが、私の父親はその実験へと目をつけ、生まれつき身体機能の悪いゲンジを使って…その実験を開始したのだ…!」

 

皆は沈黙に包まれた。即ちゲンジは秘密裏に禁止されたその実験の被験者とされていたのだ。

 

「今の状態ならば…近いうちに必ずゲンジは覚醒してしまうだろう…。もしもゲンジがモンスターに変化してしまったら…皆は…手を出さずに避難してほしい」

 

『『『…』』』

 

エスラの言葉に皆は俯くも頷き始める。

そんななかでヒノエはエスラへと問う。

 

「もしモンスターになってしまえば…ゲンジは…もう元に戻れなくなってしまうのですか…?」

 

「いや、それはないだろう。過去の実験からするに最長は1ヶ月。それ以降はしばらくはならない事が確認されているようだ。

まぁ…この話はまだゲンジに伝えていないがな…」

 

「え?」

その言葉にヒノエは驚く。彼にはいち早く伝えていたと思っていた。だが、それは違っていた。見ればエスラはとてつもなく気苦しい表情を浮かべていた。それはまるで話すこと自体が気が重くなるかのように。

それでもエスラは皆へとゲンジには教えていない理由を話した。

 

「ゲンジは…今もなお父親を愛していたんだ…」

 

○○○○○○

 

それはマルバとの一件が終わってから数日後の修練している時であった。

 

快晴の空。晴れ渡る青い空の上に浮かぶ太陽が修練場を照らす中、休憩していたゲンジは空を見上げながら後ろにいるエスラにふと口を溢した。

 

「俺はこんな血を注入されたとしても…少しだけ親父に感謝してるよ」

 

その言葉にエスラは首を傾げる。

 

「なぜだ?その所為でどれほど辛い事があったのか覚えていないのか?」

 

「確かに俺は親父のせいで小さい頃は最悪だった。実験材料にされて金儲けの片棒を方がされたのはムカついた…けど、この姿にならなきゃハンターにはなれなかったし、ヒノエ姉さん達にも会えなかった。…よくよく考えてみれば身体の悪かった俺には必要だったかもしれんな」

 

「…」

 

そう言いながら空を見つめるゲンジの顔は少しながら満足気であった。

 

○○○○○

 

「身体が悪いから打った…いや違う。父親にとってゲンジは都合のいい実験体だったからだ…。

もしも…父親の本当の目的を知れば…ゲンジは精神的に大きな傷を負ってしまうだろう。生まれても祝福されなかった上に兵器の実験材料として扱われていたのだからな…」

 

「そんな…!!」

 

ゲンジの不遇の境遇にヒノエは衝撃のあまり口を手で覆ってしまった。

 

「皆はどう思う?今の話を聞いて」

 

「「「「…」」」」

 

その問い掛けに皆は黙り込んでしまう。それもそうだ。この先ゲンジは自身らを苦しめていた元凶と同じかそれ以上のモンスターへと変貌してしまう可能性がある。そうなれば、彼には近寄り難くなってしまうだろう。

 

「いや…応えなくていい。暗い話をしてすまなかった。話は以上だ。私は先に失礼する」

その様子を見て話してしまった事にエスラは頭を押さえると立ち上がり、その場から去っていった。

 

後に残った皆はただ何も答えを出す事が出来なかった。フゲンやハモン達も腕を組みながら厳格な表情を浮かべていた。

 

 

そして皆は答えができないまま百竜夜行を迎えてしまった。

 

◇◇◇◇◇

 

目の前に映るのは圧倒的な捕食者へと変貌してしまったゲンジ。いつも恥ずかしがりながらも皆を大切に思う彼の面影はどこにも残っていなかった。

 

それは身体だけでなく意識も。

あの低姿勢に馴染んでいるかのような動き。あれは間違いなくゲンジの肉体に宿るイビルジョー本体の意思だ。

 

即ち

 

___ゲンジは変貌すると共に完全に意識を乗っ取られていた。

 

「グロォオオオオオオオ!!!」

 

巨大な咆哮を上げながらイビルジョー は口に加えた身体の長いティガレックスをまるで鈍器の如く地面や他のモンスター達へと縦横無尽に振り回していく。

 

「ギャァァァァ…!!」

 

叩きつけられたティガレックスの悲鳴が響く。翼や爪は次々と傷つき、目の上にあるツノのような突起も破壊された。

 

目の前にある高台は木っ端微塵に破壊し大地は衝撃によって抉られていった。モンスターをまるで道具のように扱いながら迫り来る脅威に遂に3体のモンスターは限界へと来る。

 

「キャィィン…!!」

 

まるで生まれたてのガルクのように弱々しい声を上げながらジンオウガは身体を逆方向へと向けると、走り出していった。それはタマミツネも同じだ。そして両角をへし折られたディアブロス も同じく逃げ出していった。

 

迫り来る恐怖に耐えられなくなってしまったのだ。圧倒的な強者かつ捕食者というプライドが1匹の竜によって完全にへし折られてしまった。

 

逃げ出した3体は決して止まる事はなく、後ろにも振り向かなかった。“恐怖”から少しでも生き残るために。

 

「ゴルル…!!」

 

その様子を見たイビルジョー は口に加えていたティガレックスをその方向へと向けて投げ飛ばした。

 

地面へ回転しながら叩きつけられたティガレックスは即座に四肢を動かして立ち上がると、何もせずにジンオウガ達と同じ方向へと走り出していった。

 

そんな中 イビルジョー によって一蹴されたイブシマキヒコの身体が動き始めた。

 

 

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