薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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悲しき日の出

対よ…対よ…

 

疾く参れ__典麗なる稲妻…ここにあり。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

突然と脳内に響いた声。その声が聞こえた途端にイブシマキヒコは意識を覚醒させると共に身体へと風を溜め込むと、空の彼方に向けて身体を浮かび上がらせた。

 

「見て!イブシマキヒコが!!」

 

ヨモギの声に皆はイビルジョー からイブシマキヒコへと目を向ける。何とイブシマキヒコは上空へと浮かび上がり逃げようとしていたのだ。

 

ヨモギの声に反応したイビルジョー は空高く飛びあがるイブシマキヒコへと目を向けると赤く血走った目を光らせる。

 

 

「ゴルル…!!」

そして喉から唸り声をあげると、イビルジョー は脚に力を込め、一気に駆け出しだ。だが、既にイブシマキヒコは岩の間を抜けようとしていた。

 

「グロォオオオオオオオ!!!!」

 

それでもイビルジョー は諦める事はなく後を追いかけ、大地を踏み締める脚へと力を込めると、跳躍し、イブシマキヒコの揺れる尻尾へと噛みつくべく牙を剥いた。

 

だが、それは叶う事はなかった。

 

「…!!」

イブシマキヒコは間一髪にイビルジョーの噛み付きを避けると飛び上がり逃げるようにして雲の中へと消えていった。

 

「ゴルル…!!」

 

地面へと着地したイビルジョーはイブシマキヒコが消えた雲を見つめながら喉元から唸り声をあげるとモンスター達が去っていった方向へと首を向けた。

 

その様子を砦の高台から見守っていた里の皆は去っていった方向を見つめるイビルジョーを不思議に思いながら見つめていた。

 

 

すると 

 

イビルジョーはそのまま振り返る事なくモンスター達が去っていった方向へと脚を進ませ始めていった。

 

「な…おい!!ゲン___

 

フゲンが名前を叫びかけた瞬間。ヒノエとミノトが誰よりも先にその場から飛び降りイビルジョー の元へと走りだした。

 

「待て!ゲンジ!」

 

「…!!」

 

そしてエスラ、シャーラ、ヨモギにイオリ。彼女らに続くかのように次々と里の皆がその場から駆け降り立ち去っていくイビルジョー を追いかけた。

 

「ゲンジ!!」

 

「待って…!!」

 

ヒノエとミノトは何度も何度も思い人であるゲンジへと手を伸ばしながら何度も何度も名前を叫ぶ。だが、彼はその声に耳を傾ける事も振り向く素振りさえも見せずただ谷の奥へ奥へと歩いていった。

 

 

「お願い…!!行かないで!!!」

 

「戻ってきてください!!!」

ヒノエとミノトは涙を流しながら必死に訴えた。何度も何度も手を伸ばしその名を叫びながら追いかけていった。後から続く皆も。途中で体力の限界が来たのか立ち止まってしまう者もいたがヒノエ、ミノト、エスラ、シャーラ、ヨモギにイオリは決して立ち止まらず必死にイビルジョー を追いかけていく。

 

だが、イビルジョー の歩幅は自身らの倍以上あり、それに加えて駆け出しているために追いつくどころか更に距離を置かれていった。

 

 

「く…!!!待てと言っているだろッ!!!ゲンジッ!!!」

 

そんな中、後方から追いかけていたエスラは声を荒げながら叫びながら麻痺弾を装填し、去ろうとするイビルジョー へ向けて放った。

 

だが、当たっても彼の肉体は痺れる様子を見せる事はなかった。

 

「クソ…!クソ!今度は眠らせてやる!!」

エスラは麻痺弾を全弾打ち尽くすと今度は睡眠弾を装填し彼へと放っていくがそれも効果は全く見られず眠る事はなかった。

 

「なぜだ…なぜ…止まらないんだ…!!」

 

エスラの叫び声も弾丸も彼には届く事はなかった。

 

「く…!!!」

エスラは歯を食い縛ると、“ある一つの弾丸”を装填すると遠のいていく彼の身体へと放つ。

 

「せめてこれだけでも…!!」

 

その弾丸は着弾すると、超高濃度な“桜色の液体”を付着させた。その様子を確認したエスラは足を止めてしまう。

 

 

だが、残りの5人は諦める事なく一心不乱に追いかけていく。何度も何度も名前を口にしながら。

 

「待って…待ってください!!待ってくださいゲンジ…!!!」

 

「お願い行かないで…!!約束…したじゃないですか…!!一緒に…一緒に……ウサ団子を食べてくれるって…!!」

 

何度叫んだだろうか。何回何十回。何度叫んだか分からない。ヒノエとミノト達は必死に叫んだ。だが、いくら名前を呼んでも彼は振り向く事はなかった。

 

皆が走り追いかけても、彼の後ろ姿は遠のいていくばかりであった。次第に地響きのような足音も聞こえなくなっていく。

 

 

 

 

 

そして___

 

 

 

 

 

_____皆の手が届かないまま遂にその姿は谷の奥へと消え、見えなくなってしまった。

 

 

 

 

その姿が見えなくなった瞬間 誰よりも彼を追いかけていたヒノエとミノトの脚が止まった。

 

 

「そん……な…」

 

「ぅ…うぅ…!!!」

 

去っていった方向を見つめていた二人は言葉を失い何も口にする事ができなくなりその場に崩れ落ち涙を流した。

 

何度も自身らを助けてくれた英雄。助けられてばかりであったにも関わらず、悲しき姿へと変貌すると共に野生に帰ったかのように自身らから離れていった。その光景にヒノエとミノトだけでなく辺りの皆も声を上げながら涙を流した。

 

その光景に後ろから見届けていたフゲンは拳を握り締めながら近くの岩を殴りつけ、ウツシも仮面の下から涙を流し、ハモンは歯を噛み締めていた。

 

 

その場にヨモギの泣き叫ぶ声とイオリの絶望する声と里の皆の啜り泣く声。そしてヒノエ、ミノト、エスラ、シャーラの家族を失った悲痛な声が響き渡る。

 

すると その砦の空を覆う雲が晴れていくと共に山々の中から太陽が登り朝日の光がその場を照らした。だが、その朝日は決して気持ちの良いものではなかった。

 

 

 

 

____その日。カムラの里から一人のハンターが百竜夜行を退けると迎えた朝日と共に姿を消した。里は数百年続く災の根源を見つけ瀕死の重傷を与え撃退という快挙を成し遂げたがたった一人のハンターの失踪によってその成功を喜ぶ者は誰一人いなかった。

 

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