薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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光が指す里

彼がいなくなってから一週間と数日が経過した。里はまるで鎮火された炎のように静まり返っていた。

姉様も私も…あまり食事が喉を通る事がなかった。腹の虫が鳴こうとも食欲は湧くことは無かった。

私は大丈夫ではあるものの…ヒノエ姉様が凄く心配であった。いつも大食である姉様が小量しか口にしないとなるとそのショックは大きかったのかもしれない。

…いや、今朝方、何も食べなかった私が言えた事でもない。

 

 

__「ミノト姉さん。クエスト受けるから本貸してくれよ」

 

「…!」

 

不意に耳に入ってきた声に私は即座に顔を上げる。彼の声だ。彼がクエストを受けにきたんだ。

 

だが、それはただの空耳だった。顔を上げても彼の可憐な顔も…装備を纏う勇姿も…どこにも無かった。

 

「…」

彼の顔を思い浮かべる度に私の涙腺から涙が溢れ、零れ落ちようとしていた。

 

会いたい…。彼に会いたい…!ヒノエ姉様とシャーラとエスラさん…そして彼と共に寝食を共にする日々に戻りたい…。それに一番苦しんでいるのは彼だ。自身があの日、蹲っている彼をもう少し気に掛けていればこうはならなかったのかもしれない。

 

「ゲンジ…」

 

 

 

 

 

 

 

____対よ。対よ_。

 

「…?」

ふと頭の中に何者かの声が聞こえ、私は溢れそうになった涙を拭い取る。その声はどこから…いや、頭の中にしか聞こえなかった。

 

_対よ対よ。疾く参れ__。典麗なる稲妻ここにあり__。

 

__我と共にかの竜を討たん_。

 

その声が聞こえた途端に私の胸の内が“恐怖感”と焦燥感に包まれた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

集会所へと着くと、いつも厳格な表情を浮かべながら書類を見ているミノトがまるで何かに操られているかのように集会所の天井から見える空の彼方を見つめていた。

その様子にその場にいたゴコク、フゲンは当惑していた。

 

ヒノエは駆け寄ると、彼女の目の前に立つ。

その目はいつもの琥珀色の瞳ではなかった。雷のような黄金色に染まっており反射した自身がハッキリ見える程まで輝いていた。

 

「ミノト!!」

 

「…!」

ヒノエはミノトの肩を掴むと強く揺さぶる。すると、ヒノエの声に反応したのか、ミノトの目が一瞬閉じるとすぐに開き、先程のような黄金色が消え失せていつもの琥珀色の瞳に戻っていた。

 

「姉様…?」

 

「ミノト…!よかった…」

いつものミノトに戻った事を確認したヒノエは安堵の息を吐くと共にミノトを抱き締めた。

 

「ひぇ!?ね…姉様!?」

 

抱き締められたミノトは気がつけばヒノエに抱き締められていた事に顔を赤くしながら困惑する。

 

「これこれヒノエ。ミノトが苦しそうでゲコ」

 

「あ、ごめんなさい…」

ゴコクに注意を受けたヒノエは即座に離れるも、抱き締められたミノトは顔を赤く染めあげており、嬉しそうであった。

 

「ミノト…体調に異常はないか?」

 

フゲンが恐る恐る尋ねると、ミノトは赤くしていた顔を元に戻すと、胸に手を当てる。

 

「…問題ありません里長」

 

「ふむ…なら良いのだがな…。詳しく話してくれぬか?」

 

それからミノトは落ち着きを取り戻すと、何があったのかを話した。

 

「実は…突然頭の中に知らない声が聞こえたのです。そして…それが聞こえた瞬間に私の胸に孤独感…そして恐怖感を感じ、それと共に気がつけば先程のような事を口ずさんでいました…」

 

「そうだったのですね…」

 

ヒノエは自身と全く同じ事態に驚く。そんな中、ゴコクとフゲンはある事を疑問に思った。それは、ミノトが口ずさんだ言葉の中にあるある言葉であった。

 

「“かの竜”…」

 

ミノトの発言からすると、対がとあるモンスターを恐れているかの様な意味と捉える事ができる。だが、対となると古龍。古龍が恐れるモンスターなど存在するのだろうか…?

 

「恐怖…かの竜…まさか…!!」

 

ヒノエとミノトは意味を理解したのか、驚きの表情を浮かべる。そして、遅れる様にフゲン、ゴコクもその意味を理解した。

 

古龍を恐れさせるモンスターなど、あれに違いない。そうなれば、彼の行方も分かったも同然だろう。

 

 

 

 

その時だった。

 

「皆!朗報だ!!」

 

集会所の入り口から書類を掴んだエスラが現れ走ってきた。彼女は里についてからゲンジを追うべく編成された調査隊に情報提供をしていたのだ。

 

その手に持っていたのは、なんとその調査隊からの報告書らしい。その報告書を机へと置いたエスラは皆に報告する。

 

「ゲンジがついに見つかった…!!」

 

「「!?」」

 

その朗報にヒノエ、ミノトはもちろん、シャーラとゴコク、フゲンも驚き目を向ける。

 

「ど…どうやって手がかりを…見つけたんですか?」

 

「ゲンジが去った時にペイント弾を撃っておいたのさ。しかも通常の10倍の濃度のヤツをね。イブシマキヒコが逃げた際に撃ってやろうと思って持ってきたのが役に立ったよ」

 

なんとエスラはイビルジョー へと変貌したゲンジが自身らの元から去っていく際にペイント弾を放っており、その時のペイント弾が功を奏したのか、今も尚その匂いと色が付着しており、姿を消したゲンジの行方がたった数日で掴まれた様だ。

 

ヒノエの質問にエスラは淡々と答えると地図と書類を広げた。その書類には報告と地図には幾つもの赤い丸などが描かれていた。

エスラはゲンジがこの後向かうと推測された場所や、現在の進行状況について書かれている報告書を元に地図をなぞっていく。

 

「ゲンジは今のところ大社跡を出て寒冷群島付近にある海へと進んでいるらしい。ある場所を目指している様だ」

 

 

「ある場所…ですか?」

 

「その場所…とは…一体…」

 

ヒノエとミノトの疑問にエスラは答えると共に一枚の古い絵を取り出し、報告書の隣に置いた。

 

「これは…!?」

 

その絵を見たゴコクは驚きの声を上げる。

 

「ゴコク殿が驚くのも無理はない。コイツは太古の昔に海に沈んだ巨大な古戦場『龍宮砦』だ」

 

『龍宮砦』それは、古の時代に幾度となくモンスターと人類の闘いが行われてきた数ある戦場の一つであり、特に兵器に長けていたらしい。また、あたりには歪な形の城のような造形物があり、神秘的な風景から別名『夢の跡地』とも呼ばれていた。

 

「ゲンジが進んでいく先を割り当てたらこの砦が浮かんできてな。現在、行く先である龍宮砦でも調査が進められている」

 

「で…では!その砦に向かえば…!!」

 

「ゲンを連れ戻すチャンスがある…ってことだよね?」

ヒノエとシャーラの問いにエスラは輝く金色の瞳を向けながら頷いた。

 

「あぁ…!」

 

エスラの頷きによって、ヒノエ達の心の中を覆っていた雲に光が差し込み始める。そんな中で、ミノトはエスラに対と共鳴した事を話し、その言葉を伝えた。

そして、エスラ自身も即座にその意味を即座に理解する。

 

「かの竜…それは確実にゲンジだ…!となると、ゲンジは対を喰らう為に向かっているということだな…。そうなると“対”も龍宮砦に潜んでいる事になる…。それなら尚も好都合だ…!」

 

エスラは次々と見解を繰り返していく中で、ある一つの作戦を思いつく。

 

「シャーラ!トゥーク達を呼んできてくれ!」

 

「うん…!」

シャーラはまだ里に滞在しているトゥーク達の元へと走っていった。

 

「義姉さん、好都合とは…?」

 

「簡単な話さ。ゲンジは間違いなく対と会敵する事となるだろう。連戦に続く連戦とならば、流石のゲンジも疲れるはずだ。そこを突いて捕獲し、中身からゲンジをくりぬき出す…!」

 

「「「くりぬき出す…!?」」」」」

 

エスラの予想外の言葉にヒノエ達は驚きの声をあげる。

 

「あぁ。ゲンジがモンスターへと変貌した際に辺りから骨や筋肉が生成されてね、それらがゲンジを取り込むように次々と骨格を形成してイビルジョー の形となったのさ。恐らく首の付け根あたりにいると推測できるな。まぁ、何はともあれ…希望が見えてきた」

 

エスラはうんうんと頷くとヒノエとミノトに顔を向ける。

 

「必ずゲンジを連れ戻すぞ」

 

「「はい!」」

エスラから向けられた眼差しに二人は力強く頷いた。

その後 トゥーク達が集められ捕獲作戦が計画される事となった。

 

 

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