薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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跡地への出港

トゥーク達が集められると、エスラは自身の考案した作戦を伝える。聞かされたその合理的な作戦にトゥーク達も同意し、首を頷かせる。

 

「ゲンジが龍宮砦の付近に現れたと報告が入ればすぐに向かう。それまで各々、準備を整えておいてくれ」

 

その後、皆は解散しトゥーク達は宿へ、エスラ達はゲンジの自宅へと向かう。その作戦にはヒノエ、ミノトも同行するようだ。それについて、エスラは当惑していたものの、彼女達がいれば、ゲンジも正気に戻れる可能性があると判断して承諾した。

 

それから翌日に、ゲンジが見つかり彼を連れ戻す作戦が計画された事は瞬く間に里中に知れ渡り、鎮火していた炎が再び燃え上がるように皆は活力を取り戻し始めていった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

それから数日が経過した。

 

「ギルドからようやく届いたでゲコ」

遂にギルドから書状が届いた。その書状を手に集会所に現れたゴコクの言葉に集会所へ集合していた皆は待っていたかのように目を向けた。

その封筒の中身は2通であり、一つは龍宮砦付近の地域にイビルジョーの出現。もう一つは龍宮砦に潜んでいる“対”の詳細であった。

 

まずは対の存在だ。届けられた書類の中にはスケッチされた絵も同封されていた。その姿形はイブシマキヒコに酷似しており、全身が雷のような金色に輝いていた。更に報告書によると、雷を操るらしく、ギルドはこのモンスターを『雷神龍ナルハタタヒメ』と名付けたようだ。

 

そしてもう一つ。砦付近に現れたイビルジョーはやはりナルハタタヒメに向けて侵攻しており、調査隊によると、道中に遭遇した大型モンスター達が次々と殺されているらしい。

この書類が届いたとなると、既に交戦寸前に迫っていると見ていいだろう。

 

「なるほどな…。では急いで向かうとしようか」

 

「待てエスラ」

そう言いエスラは皆へ呼び掛けると、すぐに出港するべく船に向かう。だが、それをフゲンは止めた。

 

「悪いが行く者たちを絞らせてくれ。砦付近の天候が悪化しているらしく、この人数を乗せられるほど、船は多く出せないようだ」

 

「まぁそうだな…。それに、各地でモンスターが凶暴化していると聞いているしね…」

 

書状を受け取ったフゲンの判断にエスラは頷く。そして、フゲンは集会所へ招集された皆の中から、エスラ、ヒノエ、ミノト、シャーラ、トゥーク、を作戦メンバーに選抜した。

残りの皆は里の防衛にあたる事となった。

 

やはり天候によって、出す船も限りがあるらしい。

また、ナルハタタヒメの影響によって、各地でモンスターが凶暴化しているらしく、いつ、大社跡にモンスターが現れてもおかしくない事もあり、故に多くのハンターを残す事に決めたのだ。

 

「すまないが、里を頼む」

フゲンは残るハンター達に頭を下げると、皆は頷き了承した。

 

そしてフゲン達は里の皆に見送られながら船を出し、カムラの里を後にする。

波打つ海に出された船は揺られながら夢の跡地である龍宮砦へと向かっていった。

 

船が海を突き進み、荒れ狂う地へと向かう中、ヒノエとミノトはただ前を見つめていた。その目には覚悟と見れる炎が宿っており、二人の意思が感じ取れる。

 

((必ず彼を連れ戻す…!!))

 

二人は互いに決心を固めるとゲンジがいるという龍宮砦の方向を見つめた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

同時刻 龍宮砦付近にて__。

 

「…おいおい…コイツはすげぇや…」

 

上空から望遠鏡を手に観察していた調査員は冷や汗を流しながらその光景を見つめていた。

 

そこにはナルハタタヒメの影響によって、凶暴化した周辺地域の大型モンスター約数十頭が一体のモンスターに蹂躙されていた。このモンスター達はナルハタタヒメの雷撃によって刺激され、カムラの里に向かいやがて百竜夜行になり得る可能性のあるモンスターの群れであった。

 

だが、そんなモンスターの群れがたった一体のモンスターによって次々と吹き飛ばされていった。

 

「ゴルル……!!」

進行方向の目の前に一体のモンスターを咥えながら赤い目を光らせる黒いモンスター『イビルジョー 』

一体のモンスターの喉笛に喰らい付きそれを武器の如く振り回し、辺りにいるモンスター達を羽虫の如く蹴散らしていった。

 

次々とその場に飛び散るモンスターの血飛沫。それを浴びながらも尚も進撃を止めないイビルジョー の姿はもはやモンスターの域を超越しており完全なる『悪魔』へと成り果てていた。

まるで殺しを『娯楽』かのように。

 

そして、僅か数分が経った時には、辺りにいたモンスター達は皆、全て屍と化していた。

 

辺りを浸す血と屍の海の中に立っていたイビルジョーは屍を踏み潰しながら次々と血肉を貪る。辺りには露出した牙が骨を砕き肉を千切る音が響いていた。

屍を貪り尽くし、口の周辺についた血を長い舌で舐め取るとその首を持ち上げる。すると遂にその頭部が顕となった。

 

「ゴルル…」

その目はもはやこの世のものとは思えぬ程まで血走っており瞳が存在していなかった。更に黒い全身にはヒビのような紋様が不規則に走っており、目と同じ血の色に輝いていた。

何もなく、ただの血の色へと染まったその双眼は先にある龍宮砦を見据える。

 

見つめる龍宮砦の上空には空を舞う金色の竜の姿が微かに見えた。

 

__我が…喰らう…!!

 

それを目にしたイビルジョー は口から煙状となった龍属性エネルギーを吐き出しながら天地を揺るがす巨大な咆哮をあげた。

 

 

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