薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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絶望の報せ

夜になっても揺らめく灯が消えない集会所にて書類を整理し終えたヒノエは一息をつくかのように背伸びをする。

 

「ふぅ…終わりました」

 

内容は今届いているクエストの書類の簡単な仕分けである。だが、いつもより少ないのでたった30分程度で終わってしまった。

 

「ありがとうございます。姉様のお陰ですぐに終わりました」

 

「いえいえ。気にしないでください。これぐらいどうって事ありませんから」

 

すると、二人の仕事が終わったのを見計らい、集会所の席でお茶を飲んでいたシャーラは立ち上がる。

書類が少なかったのか、彼女の出番は無かったようだ。

 

「シャーラもごめんなさい。わざわざ来て頂いたのに何も頼めず…」

 

「いいよいいよ。気にしないで。それじゃ、夕食の材料を買って帰ろ」

 

仕事が終わり、ミノト、ヒノエと共に言葉を交わすと、シャーラは二人と共に集会所を後にした。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

集会所を出ると里は静寂に包まれていた。数日前まで静まり返っていた里の雰囲気を思い返させる。だが、夜なので当たり前だ。昼間までこれほど静寂に包まれていたと思うと改めて変に思う。

 

「そうだ。確か、今日いい魚入ったらしいよ」

 

「まぁ!では早速買いに行きましょうか」

 

シャーラの情報にヒノエは手を叩くと二人の手を引き、夜は商売オンリーの漁場へと向かう。

笑みを浮かべながら向かうヒノエの姿にシャーラは微笑む。

数日前まで酷く静かであった彼女は笑っていた。だが、それは本当の笑みではない。いつもの自身を取り戻すための仮の笑みだ。ゲンジが目覚める事で彼女も本当の笑顔を取り戻し、いつもの日常に帰ってくる。

 

「(早く目覚めてほしいな…)」

 

そう心に願いながらシャーラは脚を進めた。

 

すると 手を引きながら進むヒノエの脚が突然止まった。

 

「あれ?どうしたの?___ミノトまで?」

 

ヒノエが止まった直後に続くようにしてミノトも立ち止まった。不思議に思ったシャーラは二人に声をかけてみる。だが、返事が返ってこなかった。おかしい。耳が聞こえていない訳でもない。

 

改めて声を掛けてみようと思い、口から言葉を出そうとした。

 

すると 前を歩いていたヒノエが突然 後ろに立ち止まるミノトへと身体を向け、向かい合った二人の両手がまるで操り人形であるかのように動くと、それぞれの両手を合わせた。

 

「…ん?どうしたの二人とも?」

 

手を合わせる二人の体制にシャーラは更にふしぎに思いながら顔を覗き込もうとする。

 

 

 

その時だ。

 

__対よ__対よ___今こそ巡り会わん_。

 

「…!?」

 

突如として二人の声が重なり合いながらその場に響く。その声はまるで風のように漂うと空気に浸透していった。その声を聞いたシャーラはイブシマキヒコが現れた時、そしてナルハタタヒメに接近した時を思い出すと共に一筋の汗を流す。

 

「まさか…!」

 

二人の声は更に続く。

 

 

__子々孫々__大地にあまねく_。

 

 

__伊吹け風_。___鳴れ雷__。

 

失踪したイブシマキヒコ、死亡したナルハタタヒメを次々と連想させるかのような言葉が現れ、まるで彼と彼女が向かい合っているかのようだった。

 

そして 二人の声が再び重なり合う。

 

 

 

____我ら混じりて_かの恐ろしき竜を祓わん__。

 

 

 

その声が響いた瞬間 夜の里を静寂に包み込んだ。

 

その直後に風が吹き、向かい合っていた二人の間を駆け抜けていく。すると、その風に煽られた事で二人は正気を取り戻した。その光景を見ていたシャーラは驚きを隠せなかった。

 

「ミノト…今のは…!」

 

「間違いありません…」

古き時代を生きる龍と竜人族の見せる現象『共鳴』だ。その共鳴が起こったという事はイビルジョーによって叩き潰され奈落の底へと消えていったモンスター___ナルハタタヒメも生存している事となる。

 

 

それと同時刻。ナルハタタヒメの消えた大穴を調査する為に向かっていたウツシが帰還し、フゲンへと報告が入った。

 

『ナルハタタヒメの遺体 発見できず』_と。

 

ヒノエとミノトの共鳴。ナルハタタヒメの失踪。この二つの報告から、災いがまだ立ち去っていない事が確認された。

 

 

衝撃となるこの不吉な事実はその日のうちにギルドへと報告された。

 

◇◇◇◇◇◇

 

あれから3人は集会所にて報告を済ませると、帰宅し、寝ているエスラを叩き起こすと共鳴が再発した事を話した。

 

「まさかあの2体が生きていたとはな…」

 

「うん…。そのあと、共鳴しない場所まで離れていったらしいけど…」

 

共鳴が起こった事を聞かされたエスラは腕を組みながら考え込む。

 

二体が再び出会うのも時間の問題だ。それに、あの二体はまだゲンジの中にいるイビルジョー を倒す事を諦めていない。そうなれば再びゲンジが出撃せざるを得なくなるだろう。

 

「気配を消してその場をやり過ごしたのか…または偶然にも気を失っていただけなのか…。運のいい奴だ」

 

ナルハタタヒメのしぶとさに舌打ちを吐くと今後について考える。この後は発見されたならばゲンジと共に向かうべきだろう。もしも2体が揃い、新たなる風神龍、雷神龍が生まれてしまえば再び里は数百年間、災害によって苦しめられる事となるだろう。

 

「…いや、今はまず休む事だ…」

明日、フゲンは集会所へと里の者全員を集めるようだ。その時に作戦会議も行われる事だろう。

幸いにも、トゥーク達も里に滞在するつもりでいるらしいので、少なくとも何もできないという訳ではない。

 

その後、四人は夕食を済ませ、目を覚まさないゲンジの口の中に栄養剤を流し込むと、布団を敷き眠りに入った。

 

「再びゲンジを…苦しませてしまいますね…」

 

「そう言うな。共鳴で苦しむ君達の姿を見る事がゲンジにとっては一番辛いんだ」

 

エスラの言葉に頷きながらヒノエはミノトとシャーラに挟まれながら眠るゲンジを見ると、目を閉じた。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「……う…ん…」

 

眠りに入ってまだ数時間。草も木も眠り、生き物の声も虫の囀り以外は何一つ聞こえない。時刻は深夜と言ったところだろう。

 

そんな静かな夜にミノトは目を覚ましてしまった。

 

やはり落ち着く事ができなかった。ナルハタタヒメの生存も勿論だが、ゲンジの事もだ。もしも彼が目覚めて自身の事を知ってしまったらどうなるのか。

 

たとえ、G級…いや、マスターランクに到達していても、精神が人一倍に成長していても、モンスターへと変貌するという常識を覆した現象が起きる身体へと変えられた上に張本人が自身の愛する父である事を知れば確実に心に深い傷を負う。

それに自身がモンスターに変貌したと知れば尚更だ。彼は必ず自身を責めてしまうだろう。

ゲンジを取り戻せたとしても、それが心配で仕方がなかったのだ。

 

「…」

 

ミノトは上半身を起き上がらせ、身体に掛けていた布団をどけると、ゲンジの眠る姿を見るべく目を向けた。

 

 

「…え…?」

 

自身の横で眠るゲンジへと目を向けた瞬間 ミノトは思考が停止してしまった。

 

そこには掛けられていた布団だけが残され___

 

 

 

 

 

___彼の姿が消えていた。

 

 

 




皆さん公式Twitter見ました?モンジュ可愛すぎません?
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