薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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月光の下

皆が寝静まる中、ゲンジの姿が消えていた事でミノトは動揺してしまう。

 

「(…まさか…目を覚まして里を…!?)」

 

最悪の事態を想定したミノトは皆へと目を向け、すぐに起こそうと考えた。だが、辺りにいる皆はグッスリと気持ちよさそうに寝ていた。エスラはシャーラに抱き着きながら鼻提灯を出しており、横に寝ているヒノエもスヤスヤと寝息を立てていた。

 

今、彼女達を起こす訳にもいかない。自分が探さなければ。

 

そう思いミノトは皆を起こさないようにそっと立ち上がる。すると、

 

「…んん…あら?ミノト…どうしたの?」

 

「!?」

 

突然と後ろから聞こえた声にミノトは驚きながら振り向く。見れば数秒前まで寝ていたヒノエが目を擦りながら起きていたのだ。

再び眠ってもらいたいと考えていたが、起こしてしまっては仕方がないと思い、ミノトはエスラ達を起こさないように小声でゲンジが消えてしまった事を話した。

それを聞いたヒノエは即座に意識を覚醒させた。

 

「…!すぐに探しましょう…」

 

ヒノエも同じく起き上がると、ズレていた着物を再び着直し、草履を履くとエスラ、シャーラを起こさないように外へ出た。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

季節は秋の中旬。中秋といった所だ。冷たい風が暗い山々から吹き頬に触る。

辺りには秋の虫である銀色コオロギが鳴く音が響き渡り、それに重なるように近くの川のせせらぎ、そしてそれを漕ぐ水車の音も聞こえてくる。

美しい環境音に囲まれる夜のカムラの里はとても幻想的であった。

 

ヒノエとミノトは環境音が響く夜の里へと出ると、辺りを見回した。

 

「…布団はまだ暖かかったので時間は経っておりません。私は集会所の向こう側を。ミノトはこちら側をお願いします」

 

「はい…!」

 

二人で場所を分断し、ヒノエは集会所を通して向こう側にある里の皆の住まいを、ミノトはこの場所から入り口の鳥居あたりまでを探す事に決める。

 

ヒノエと別れたミノトは足音をあまり立てないように、早歩きで探し回る。

 

家の裏、集会所の周辺、ヨモギの営む茶屋の道の端からイオリが営むオトモ広場につながる橋。隅から隅まで探した。

 

だが、どこを探してもゲンジの姿、影すらも見つける事は叶わなかった。

 

「ゲンジ…!ゲンジ…!!」

 

何度も何度も名前を口にしながらミノトは探す。

 

「(お願い…)」

 

脚を進めるたびに彼がただ一人で涙を流しながら里の鳥居を潜り抜けて出て行く様子が浮かび上がってしまう。それを思う度に涙腺から涙が溢れ出てくる。

 

「(貴方はモンスターなんかじゃない。里の英雄であると共に私達のかけがえのない家族です…だからお願いです…!!出て行こうだなんて考えないでください…!!)

 

◇◇◇◇◇◇

 

ミノトと別れたヒノエは静かに集会所へ入ると、里の裏側に続く回廊を通っていた。集会所の裏に広がるのは集会所の前に並ぶ旅館やリンゴ飴屋と異なり、ほぼ全ての建造物が里の皆の住まいである。

 

彼を絶対に見つけなければ。このまま見つけなければ、一番苦しむのは彼だ。モンスターとなった自身を責め続け次々と孤独に向かっていく。最悪の場合、自ら命を絶ってしまうだろう。

 

それだけは絶対に止めなければならない。

 

ヒノエは早歩きで入り口から集会所へと続く回廊を通る。

 

そんな中、不意にヒノエはその場所から見える湖畔へと目を向けた。

花が散り緑色の葉だけとなった木が何本か立ち、周りよりも少し凹んだ場所。そこはカムラの里を囲う湖と繋がっていた。

 

「…!!」

 

その場所を見た途端 ヒノエは目を大きく開く。湖の岸に一人の人影が立ち、湖の向こう側を見つめていたのだ。

 

それは月明かりに照らされており今いる場所からも鮮明に見えていた。青い髪に小柄な身体。間違いない。“彼”だ。

 

「ゲンジ…!!」

 

見つけた。ヒノエはミノトを呼ぼうかと考えていたが、再び見失わないようにする為に彼を優先する事に決め、その場から即座に下へ続く道へと向かう。

 

ーーーーーーーー

 

先程見た湖畔へと向かうと、そこにはこちらに背を向けながら湖を見つめる彼の姿があった。

 

「ゲンジ!!」

 

姿を見つけたヒノエは駆け寄りながら彼の名前を叫ぶ。すると その声に気づいたのか、湖を見つめていたゲンジの身体がゆっくりとこちらに向けられた。

 

 

「…!!!」

 

その身体は月明かりに照らされ鮮明になる。その姿をみた途端 ヒノエは立ち止まってしまった。

 

「その身体は…!!!」

 

風に髪を揺られながら振り向いたゲンジの顔にある二つの目玉。その内の輝く青い水晶のような瞳を持つ右目が赤い瞳へと変わり白い目玉は黒色に染まっていた。即ち双眼が不気味な黒色へと染まっていたのだ。

 

それだけではない。月に照らされたその全身には__

 

 

____歪な形の痣が浮かび上がっていた。

 

 

その姿を見つめていると今にも消えてしまいそうな悲しみに満ちた声が風と共に聞こえてきた。

 

「ヒノエ…姉さん……」

 

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