薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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各地に現る天災

ヒノエとミノトが共鳴してからおよそ1週間が経過した。その間は2人が共鳴する事はなく、休憩に専念する事ができ、見事に2人は完体に戻った。

だが、油断は出来なかった。雷神龍と風神龍がいつ現れるか分からない。その為にゲンジ達はその1週間の間は常時警戒体制を取りながら特訓に打ち込んでいた。

 

◇◇◇◇◇

 

その1週間が終わろうとする今日の夕暮れ。太陽が沈みかけ空は薄いオレンジ色に染まっていた。

 

「ふぅ…ふぅ…」

 

修練場にて鍛錬を終えたゲンジは息を吐きながら双剣『イステヤ』をそれぞれクルクルとペンのように回すと背中に背負う。

 

その身に纏う頭の装備を外すと、顔と共に流れた汗が飛散した。汗で濡れた額を2度3度振るとゲンジは双剣を握る手を見る。

 

「…(だいぶ慣れてきたな…)」

 

イステヤの形状は普通の双剣とは異なるので最初は扱い方に戸惑いはしたが、今では慣れてきており、刃の範囲が広がった事で鬼人空中回転乱舞の範囲と速度が向上していた。

 

「タオルです」

 

「あ…すまん」

 

息をついていると、ミノトが横からしゃがみ目線を合わせながらタオルを手渡してきた。

それを受け取ると顔を拭いた。

 

「あまり無理はなさらないように…休む時はちゃんと休んでくださいね」

 

「分かってる。俺も馬鹿じゃねぇ。いつ出てきてもおかしくねぇように、この1週間は休息時間を増やしてるからな」

 

タオルを拭き終え、それを肩に掛ける。ミノトはゲンジにタオルを手渡すと他の皆へとヒノエと共に渡していった。

 

ユクモ村から来たトゥーク達は完全に翔蟲の扱いに慣れたと見ていいだろう。

◇◇◇◇◇◇◇

 

その同時刻。

 

カムラの里のハンターズギルドへとてつもない報告が依頼と共に入り込んだ。

 

報告元は龍宮砦だけでなく寒冷群島、溶岩洞、更に大社跡へと派遣されていた調査隊であり、その内容を読んだゴコクは額から大量の汗を流した。

 

「こりゃ…大変でゲコ…!!」

 

ゴコクは急いでウツシを呼び、皆を招集させる。

 

ーーーーーーー

 

ゴコクからの緊急の招集を知らせにきたウツシからその話を聞いたゲンジ達は即座に集会所へと向かった。

 

集会所へ着き、皆が集まるとテッカちゃんに乗ったゴコクは普段は細く見えない目を開き鋭い瞳を向けながら招集の理由を話す。

 

「皆、急に呼び出してすまぬ。今回 集まってもらったのは他でもない。風神龍…雷神龍についてでゲコ」

 

「…とうとう現れたのか」

 

「うむ…じゃが…」

ゲンジの声にゴコクは頷くが、「それだけではない」と補足した。

 

「集められた報告書によればその他 三つの狩場にも古龍が出現しておるようでゲコ」

 

「「「!?」」」

 

衝撃の事実に皆は驚き目を大きく開きながら瞳を震わせた。古龍は普段ならば人気のない荒地や未開の土地に住んでいる。人間達の目の届く場所へ現れる事など数十年に一度程度だ。

 

だが、それを覆す情報がギルドから報告されている。

 

「まず溶岩洞には『炎王龍 テオテスカトル』寒冷群島には『鋼龍 クシャルダオラ』そして…大社跡には『霞龍 オオナズチ』が現れておるようでゲコ」

 

ゴコクの報告は皆の言葉を失わせてしまう。自然そのものと記されている古龍が現在、カムラの里の範疇である3つの狩場に降り立っているのだ。

しかも大社跡ともなればここから徒歩で行ける場所だ。行商人の通り道でもある場所へ、最も目撃例が少ないオオナズチが降り立つなど、前代未聞である。

 

大社跡の調査に同行していたウツシによると、大社跡の奥地には濃霧が発生しているらしい。恐らくオオナズチが降り立ってしまったのが原因だろう。

 

「ッ…クソ!これじゃあ雷神龍を討伐できても安心できねぇぜ…」

 

「落ち着けフルガ。まぁオオナズチは刺激しなければ人を襲う事はない。それが不幸中の幸いでゲコ」

 

「だが、いつテオテスカトルまたはクシャルダオラが大社跡に降り立つかが心配…そうだろ?」

 

「うむ」

 

ゲンジの推測にゴコクは頷く。古龍は互いを認識して呼び寄せる者も中には存在する。

特にテオテスカトルは古龍の中でも危険であり、人を見れば即座に襲い掛かる程 獰猛である。

 

それからゴコクは即座に話の軌道を持ち直す。

 

「話を戻す。風神龍と雷神龍についてでゲコ。奴らは地上に降りた際に雷神龍は地下に潜ったようでゲコ。あの時の穴を通じてな。その時…奴の卵塊のような袋の中に8つの玉が輝いていた様でゲコ」

 

「成る程…それは恐らく卵だな。そうなれば既に交配をし終えているという訳か…」

 

エスラの見解にゴコクは頷くと話を続ける。

 

「このままでは第二第三の風神龍と雷神龍が生まれてしまう…。そうなれば百竜夜行が大地を覆い尽くし里だけではない。付近のユクモ村までも壊滅してしまうでゲコ」

 

確かにそうだ。このまま再び百竜夜行が起き、カムラの里が壊滅してしまてば次の標的はユクモ村、そしてモガの村。更に砂の国の大都市とされるロックラックまでも標的とされてしまうだろう。

そうなれば人類は大きな主要都市の一つを手放さなければならない。

 

もはやこれはカムラの里 だけではない。このロックラック地方全体の存亡を賭けた闘いと見ていいだろう。

 

ユクモ村までもが標的にされる事にトゥークは怒りを露わにし、歯を食い縛る。それはフルガ、ティカル達も同じだ。

 

 

どうすれば良いのか。本来ならば龍宮砦へ今いる全ハンターを投入して雷神龍と風神龍を袋叩きにする算段であったが、3つの狩場に他の古龍が現れてしまった事でそれは不可能となった。

 

その事について、ゴコクは一つの考えを思いついていた。

 

「そこで儂は考えた。チームを分けてそれぞれの討伐に当たってもらいたいと」

 

「「「「!?」」」」

 

皆は驚く。古龍は未成熟個体でもマスターランクもしくはそれレベルのハンターでも苦戦を強いられる相手である。そうなれば厳しい闘いとなるだろう。

 

だが、これしか方法がない。

 

「やるしかねぇな…。いいか?皆」

 

「「「「…!」」」」

 

トゥークは覚悟を決めてゴコクの案に賛同し、自身の弟子であるティカル達へ目を向ける。彼女達も覚悟を決めたのか頷いていた。

 

その傍らでもゲンジはシャーラと共に手の骨を鳴らしていた。

 

そんな中 ゴコクはある事をゲンジへと尋ねた。

 

「ところでゲンジよ。お主…理性は保てるのか?古龍と会敵すれば前のように反応して奴も目覚めてしまうのでは…」

 

そうだ。ゲンジの中に潜む恐暴竜は古龍が近くにいれば目覚める。前のような事態になってしまう事をゴコクは懸念しているのだ。

それに対してゲンジは答えた。

 

「それについては問題ない。モンスター化してからアイツの声は聞こえてこん。けど…いつ目覚めるかは分からん。だからその前に奴らを討伐しなきゃならん」

 

「時間は有限…でゲコな」

 

そして ゴコクの知識のもと、それぞれに振り当てられるチームが編成された。

 

 

【溶岩洞にて炎王龍テオテスカトルの討伐または撃退にはフルガ、トゥーク、ジリス、シャーラ】

 

【寒冷群島にて鋼龍クシャルダオラの討伐または撃退にはセルエ、ティカル、リオ、ククルナ】

 

そして【龍宮砦にて雷神龍ナルハタタヒメおよび風神龍イブシマキヒコの討伐にはゲンジ、エスラ】

 

オオナズチは苦悩の末に調査隊およびウツシによる監視に留めておくようだ。あのモンスターは知能が高く、人を襲うときは命を取る事なく荷物だけを奪っていくらしい。

 

「…ん?ちょっと待ってくれよゴコクさん。雷神龍と風神龍が出るなら2人じゃなく4人の方がいいんじゃないのか?」

 

「それがのう…」

トゥークの疑問にゲンジ、エスラ、シャーラ、リオを除く皆が頷いた。

なぜ、最も危険である二体が潜む目的地にゲンジとエスラだけが向かうのか。それにもちゃんとした理由があった。

 

「簡単な話だ」

気づいていたゲンジはゴコクの代わりに説明する。

 

「撃退してからこんな短期間に完全に傷を癒す事はまず不可能。だとしたら今も手負いの状態だ。それにも関わらず奴らは交配をした。交配は人間もモンスターも変わらず大量の体力を消耗する。なら、奴らを討つには交配直後の今しかない。だから2人いれば十分。そして風神龍と一度会敵した事がある人物ならば更に容易となる。そういう事だろ?」

 

ゲンジの推測が全て的を射抜いているのかゴコクは頷いた。

 

「全くもってその通りでゲコ。ゲンジとエスラは風神龍と一戦交えておる。手負いの奴なら動きも鈍いし見切りやすい。それに対して他の古龍はピンピンしておる。そんな状態の奴に2、3人では足りないのでな」

 

その説明に皆は納得する。

そしてゴコクは両手でそれぞれゲンジとエスラの手を取る。

 

「頼んだぞ。決着をつけるときは来たでゲコ。数百年の災いへ終止符を打ってくれ…!!」

 

「あぁ。任せてくれ」

それに対してエスラは頷く。特にゲンジにとって百竜夜行を終わらせる事は自身を治療してくれたヒノエへの恩返しでもある。義理を返す為に必ず成功させなければならない。

ゲンジのその血のように赤く染まった瞳には炎が宿っていた。

 

「ここで奴らを殺し必ず里を救う…!」

 

その後、皆は解散となり、トゥーク達は宿屋へゲンジ達は自宅へと戻っていった。

 

出立は今宵の真夜中である。数百年続く災いに終止符を打つ決戦の火蓋が遂に切られたのだった。

 

 

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